そのゴーレム、元人間につき
隣の森(ゴブリン視点)
「行ってくるぜ!」
「おい! 気を付けろよ! いくら使者だからって敵の陣地に単身で行くんだからな!」
俺は隣の森へと最初の使者となった友人であり、相棒のゴブリンを見送った。
アイツはすごい奴だ、俺の幼なじみだがうちのボスに認められているからな、俺も嬉しい。
隣の森は昔は驚異だったらしいが今や落ちぶれた魔物が沢山で強さも俺らと変わらない、それで小競り合いの続いている森だ。
ボスが言うにはそろそろ決着をつけると言っていたが良く分からねぇ、仲良くは出来ないのか?
それをボスに言ったら怒られそうだから言わない、俺達ゴブリンは頭が悪いし短気だから否定されるとすぐキレる。
俺は余りそう言うことは無いんだが、俺がおかしいって言われるんだよ、俺の相棒も俺と同じタイプだが、黙っていようと言っていたので大人しく従った。
でもある日、俺達が賢いことがバレかけた事があったんだが、友人が庇ってくれて俺は無事だが、相棒はあの通り使者として送られた。
この森にはオークもトレントもいるのになんで俺達ゴブリンがやらなきゃ行けないんだ!
……その理由は簡単だ、所詮はゴブリン、力ではオークに勝てないし、トレントには知恵で勝てない、俺達は仲間と言っているが実質ただの奴隷じゃないか。
そんなことより、俺としては相棒が無事に帰ってきてくれる方が嬉しい。
それまで頭が良いことがバレないようにしないとな、庇ってくれたアイツの顔に泥を塗る。
「おい! 何をボケッとしてやがる! 働け!」
ちっ、うるせぇ奴が来た。
やって来たゴブリンは俺達のボス、オークやトレントに媚びへつらってる屑だ、ちっ! 俺に力があったらこの森を支配して皆平等になるようにするってのによ!
因みに働くってのはトレントの枝切りだ、トレントの野郎意外と我が儘な奴等が多い、オークどもはデブで枝に登れないから俺らがやるしか無いんだが、少しでもミスるとトレントは蔦で殴ってくる。
くそ! こんな森いっそ滅べや!
そんな生活が数ヶ月続いた。
俺の相棒は戻ってこない、おかしいな、どうしたんだろうかもしや、向こうは厚待遇だったりして?
「ボス、相棒が戻ってきません」
「あ? 誰だソイツ」
このボケが! テメェで送り込んでおいて忘れるだと? 殺すぞ!
おっと、落ち着け、冷静になれゴミに怒っても無駄俺は一応下っ端だ丁寧にいこう。
「ボスが送った使者のゴブリンですよ、数ヶ月戻ってきてませんが」
「あー、そんなの居たなぁ……数ヶ月だと!? 急いで連絡しねぇと!」
そう言ってボケボスはオークどもの元へ走っていった。
どうせ直ぐに忘れるくせにな、1度怒られて思い出すんだろうよ、ざまーみやがれ。
……しかし、相棒、まさか死んでねぇよな?
それから数日後、帰ってこない相棒は死んだとされ、2度目の使者の選定が行われるときに、俺は思いきった。
「俺に行かせてくれ! アイツとは友達だったんだ! どうなったのか知りたい!」
「だまれ! それを決めるのはオーク様達だ!」
お前が黙っとれボケ! 使えない頭少しは使えよ!
俺はオークを纏めている一際デカイオークを見つめる、正直怖い、体は俺の倍近くあるし目付きも鋭い恐らく戦えば直ぐに死ぬ、今この瞬間だって死ぬかも知れねぇんだ、でも相棒がどうなったか分からない、知らないままでいるよりは少しでも動きたい。
「……良いだろう、どうせゴブリン共の中から出すつもり何だ、自殺志願者は行くと良い」
「ありがとうございます」
よし! これで使者として行ける!
相棒の行き先をこの目で確かめてやる!
俺が使者として決まって数日後にいよいよ出発になった。
誰も見送りする奴はいない、一応代表南だから何かしらあってほしい物だ。
つくづく腐ってるな。
「よし、相棒の安否確認と向こうの森への宣戦布告をしに行きますか」
今回の予定を声に出してしっかり覚え込む。
正直この使者になんの意味もないけどアホなオークが無駄なことをしてるだけだと思うんだよな。
さて、行くか、隣の森は距離が遠い、それに加えて俺らは体が小さいから余計に時間がかかるんだよな。
おまけに持たせてもらう荷物も少ない、だから食べ物を採るためにも時間を使う、少しは待遇を良くしてほしいな。
うん、無駄な愚痴は止めよう。
道中は特に問題なく冒険者に遭遇する事もなかった。
こんな田舎に来る奴はいないと思いきや、うちの森付近にはそこそこ来るんだ、そりゃゴブリンとオークだから初心者にはもってこいの相手なんだ。
なんで隣には行かないんだろうか、詳しくは分からないな、俺が気にすること出もないか。
俺は現在隣の森へと到着し、森の中に入っているところだ。
相棒の痕跡があれば良いけど数ヶ月前だ残るわけないか。
地面を見ながら歩いていると向こうから何か来ている気配がしたので見ると、人間が二人いた、まてよ、俺一匹じゃあっさりと死ぬぞ。
でもなんだろう、普通冒険者ならすぐに攻撃してくると思ったんだが、来る様子がない? 特に男の方は俺の存在意識してるか?
とりあえず相棒の事を聞いてはいるんだけど全く返事しないんだこれが、そういえば人間は俺達の言葉分かったんだっけ?
「おい! お前! 話を聞いているのか!」
こいつ分かる分からないじゃないけど絶対無視してるよな!
「なんだ?」
「だから、この森にいたゴブリンを知らなかったかと聞いている!」
「あぁ、それならかなり前に1匹見かけたぞ、生憎亡くなっていた……折角良い仲になれると思ったのだがな……」
え? 通じた……いやそれよりも!
相棒が死んだ……だと? 嘘だろ!?
「そ、そんな……誰が殺ったんだ!」
「それは知らん」
ダメだ冷静になれない!
怒りしか込み上げてこない、こいつか? こいつらが殺ったのか!?
「ちっ、やっぱりこの森の奴らは糞だな! お前もグルか!」
俺はその男に殴りかかる瞬間、景色が動いたと思ったら周りは暗くなった。
「ん、んん~……ハッ! 何があった!?」
勢い良く立ち上がるけどめっちゃ顔痛い。
これ、やられたんだろうな多分、なんで殺さなかったのか分からないが舐めやがって!
絶対にぶっ倒してやるからな!
っと、ナイスタイミング、アイツ等がやって来た、今度こそぶっとばす!
立ち塞がって、飛びかかる!
「ハッ! 何があった!?」
また意識が飛んでた様だ。
今度は顔の逆が痛い、畜生、俺なんか殺す価値もないのかよ。
身体中が痛い、もうすっかりボロボロだ、だがここで引き下がるのは嫌だ……!
お、つくづくついているな、アイツ等だ……よし、今度こそ!
勢い良くは飛び出せなかったけどしっかりと男を睨み付ける、今度はその蹴りはかわすぞ!
「しつこいんですよ!」
な! まさか女の方が!?
……これは予想出来なかったわ、大人しく帰ろう、オークどもに任せよう、荷が重すぎる……持ってきたものはないけど。
幸い、女の攻撃は重くはなかった、コイツらが去った後に俺も逃げる!
しかし男が俺を鷲掴みにして引き摺る。
抵抗しても全然緩まない! なんでだ!? どこからそんな力が!?
俺は多分森の端まで連れてこられた、殺されると思ったんだけど一体どう言うことだ?
倒れている木に縛られなんか狙いを定められている、なにこれ?
「安心しろ、星になるだけだ」
「え──」
凄まじい勢いで地面が遠くなる。
え? なに、え?
全然理解できない、てか早! どうなってるんだよ!
怖ぇよ! ヤベッ、ちびった。
ん? あの森俺がいた森? いやいや、2日以上かかったんだそんな短期間で帰れる訳がない、でもこの速さならあり得るか?
……多分1時間い以上は飛んでるんじゃないか、もう慣れた。
もう森まですぐそこだ、今考えてることは着地どうなってるんだろうと言うことだよ、正直落ちたら死ぬんじゃないか。
残された時間はないし、それにボロボロなんで特に何も出来ない、相棒、俺もお前のもとに行くぜ。
遂に森に落ちていく俺、だが幸か不幸かアイツがいる、オークのボスだ此方を見上げて驚いていた、これは避ける暇は無いだろうな、よし遂でに事故を見せかけて恨み晴らしたるわ!
「ぐぉぉぉ!」
「すみませんしたぁ!」
はっは! ざまーみろ!
俺はオークのお陰で助かったけど後々殺されるのでは無いだろうか。
「おい、ゴブリン風情が、何してやがる」
予想通り、怒っているな、よしそれもこれも全部あの男が悪い、矛先を向けさせてもらうぜ! 序でに森のやつらも道連れよ!
「ま、待ってください、これは隣の森の奴等にやられたんです、ここまで吹き飛ばされたんです!」
「……なんだと? ほぅ、お前は使者か、なるほど、これで2度目だ宣戦布告と受けとる直ちに準備だ!」
そう言ってオークは準備を始めるために去っていった。
俺はその近くにいたトレントに治療してもらう事にした。
トレントは治癒の能力を持っている、一応ゴブリンである俺にも嫌な顔しながら治療してくれる。
とんだ嫌われものだぜ。
でもあんな化け物がいたらこの森の奴等も敵わないだろうな、俺は何処かで隠れておくことにしよう。
俺は怪我人扱いで一応この森に待機となった、ラッキー。
トレントも動きが遅いから待機だ、この森に残っているのはオークのボス、それとトレント達、ゴブリンは殆どが出ており、こちらのボスも出ている。
ゴブリンは先に出陣させるにはうってつけだろうしな、後は中間にオーク、完全に力任せの戦いだ。
「今こそ、俺様達の勝利を収めあの森を頂く!」
「くっくっく、私達の力ならあのような雑魚どもに遅れはとらないわよ」
トレントのボスは雌だ、正直トレントに性別あるのかよとか思うが知らんな。
俺が思うにこの戦いは一方的に負ける、なんの戦力も見てないけど正直あの男1人でこの森は潰せると思うし。
うん、安全な所に避難しておこう!
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