そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

情報とは良いものだ

「何をしているって……そりゃただの観光だよぉ。私、50年前に来ただけだからさ、街並みも少しは変わってるじゃない? 改めて観てみようかなと思ってねぇ」

 なるほど、コイツは俺達が色々と忙しくしているって時に呑気に観光なんてしていたのか訳か。
 随分と良いご身分だな。

「ちょいちょい、なんで不機嫌なのさ。あ、貴族とのいざこざが有るってときに私が呑気に観光してたからかい? それは検討違いだよぉ、貴族との問題引き起こしたのは自業自得じゃないか」

 無駄に正論で腹立つなコイツ……。

「無駄に正論で腹立ちますね……」

 エマも同意見らしい。
 いっそこの場で殺ってしまうか? 等と本気で考えていると尻尾は焦り出す。

「この程度で怒るなんてランド君らしくないよ? ちゃんと落ち着けば分かり合えるって! ねぇ?」
「すまんな、この程度で怒るんだよ俺は」

 必殺のアイアンクローを尻尾の顔面目掛けて繰り出し、更に持ち上げているので尻尾はジタバタと空中でもがいている。

「ギブギブ! 私が悪かったよぉ! だから離して、あ、脳みそがでる!」

 なにやら気持ち悪い事を言い出したので勘弁してやろう。

 俺が手を離すと、地面に綺麗に着地を成功させた尻尾は踞り頭を抑えていた。

「あー、あれ痛いんですよねぇ。分かります分かります」

 エマが同情の目を尻尾に向けながらウンウンと頷いている。

「まぁ、自業自得な所もありますよね」
「尻尾の言い分は悪いところは無いんだが、イラッと来たからな。八つ当たりだ」
「それは酷いよぉ……それはそうと、ランド君達も観光かい?」
「そんなところだな」

 誰かさんの機嫌とりに来ただなんて言えばこの狐は話のネタにするに違いない。
 主に角との飲み会でぶっちゃけるだろう。
 バレても構わないがその時は森に血の雨が降るだろう。

「……まあ深くは聴かないさ。私も少しずつ色んな事をしてるからね」
「例えば?」
「そうだね、ここは辺境だし王都の方から情報が流れてくるのは遅いけど、流れてきた場合にすぐに広まったりするんだよぉ。だからちょっとずつ情報を集めたりね。あと角達へのお土産かな」

 あ、一応ちゃんと情報集めはしてるんだな。てっきりただ遊びに来てるのかと思っていた。

「何か良い情報でも見つかったか?」
「そうだねぇ、ここだけの話なんだけど、どうやら王都の一部の貴族の間で君達のいる孤児院にはお宝が有るとか無いとか噂されているようだね」

 おや? 解決の予感と言うか、進展する気がする。

「お宝? そんな子供みたいな噂信じるのか?」
「その噂の際で現に貴族が来ているんだろう? あながち間違ってないかもしれないよねぇ?」
「ランドさん、もしそうなら院長さんが何か知ってるんじゃ無いでしょうか」

 ……院長に確かめればすぐ分かるだろうし、解決の糸口になるかもしれない。
 仮に有ったとしてもどうすれば良いのかは領主に任せてしまえば良いだろう。

「そうだな。聞いてみよう、それにしても尻尾。良くそんな情報手に入れたな」
「ん? 簡単だよぉ、貴族の護衛に直接聞いたのさ。孤児院に来る貴族って自分が信頼している奴しか置いてないんだよ、だから何も知らぬ子供のふりをすれば話してくれるのさ。ほら、私って可愛いだろ?」
「なるほど、そう言う手段か。あと自分で言うのは腹立つから止めておけ。じゃあ俺たちは行くぞ、またな」

 ナルシスト狐人間とはここで分かれて、そこそこの速度で孤児院へと向かうことにした。
 予定って基本的に予定通りに行かないな……また埋め合わせ的な事をしなくちゃならん。

「済まんな、埋め合わせは恐らくいつかする」
「そんな気が利ける人になったんですね。意外です」
「アイアンクロー貰っとくか?」
「結構です」

 断られた。
 まぁ良いだろう、そんな下らんお茶目な会話は置いておいてさっさと向かおう。


 孤児院へと着いた俺たちを待っていたのは……と言うこともなく、普通に俺が作り直した扉から中へと入る。
 孤児院の中はやけに静かだ。

 誰も居ないのかと思うほど静寂に包まれており、嫌な予感がしないでもない。
 そんな雰囲気とかよく分からない俺とエマは取り敢えず至るところを探そうとする。

「ん? おや、お帰り。ずいぶん早かったね」
「院長……」

 話しかけられて振り向いた先には院長が1人で立っており、側にはいつも何人か子供が居る筈なのに今は誰も居ない。

「院長さん、お1人ですか? 子供達は一体?」

 神妙な面持ちで尋ねるエマ……それに対して院長は微かに笑みを溢す。
 その事に対してエマは少しだけ表情を曇らせ睨むように再度尋ねる。

「もう1度聞きます。子供達はどうしたんですか」
「ふふふ、寝てるよ」
「へ?」
「上で寝てるよ、お昼寝の時間だからね」

 院長が子供をどうこうしたとかそんな訳もなく、普通に昼寝をしているらしい。
 勘違いをしたエマは大変恥ずかしい思いをしたに違いない。
 院長がこの短時間でそんなこと出来るわけ無いだろう……いや、かなりの怪力だし、いけるか?

「エマ、ドンマイ」
「五月蝿いです、ちょっと黙ってて下さい」
「気にすることは無いぞ、誰にでも間違いや勘違いの1つは有るからな」
「黙っててって言ったじゃ無いですかぁ! 恥ずかしいんですよぉ!」

 照れ隠しだろうか、手に短剣を持って斬りかかってくるんだが、そんなお茶目を通り越した照れ隠しは笑えない。
 物騒すぎるだろ、どんな教育受けてんだこの野郎。

「ん? 私に何か用だったかい?」

 何かを察したらしい院長は俺達に尋ねてくる。
 一方の俺はエマの短剣を振ってくる腕を掴み、関節をきめて動きを封じる。
 このまま先程の恥ずかしい勘違いを何度か喋れば心は羞恥で死ぬだろうがそうすると後々嫌みを言われそうなので拘束のみに留めておく。

「あぁ、噂で聞いたんだが。どうやら、貴族はここにあるお宝とか言う奴を狙ってるらしいな」
「宝? 家にある宝っていったら子供達かね?」

 白々しい、そんな聖人君子見たいな言葉お前の顔じゃ似合わないだろうが、生まれ変わって言いやがれとか思ったが顔つきが厳しくなって言ってるので止めておこう。

「流石は院長、大人の鏡だな。そんな個人的な感情の宝ではなく誰から見ても価値のありそうな物の話だ」
「……ふぅ、まぁ多分アレだろうけどそんな価値有るかは分からないよ? それでも見るかい?」
「頼む、解決の糸口になるかもしれないからな」

 院長は頷くとついて来るように促す。
 俺はエマの拘束は解かず、連行するように連れていく、離した後に照れ隠し殺人なんてされたら溜まらんからな。

 院長に着いていき、壁の所に行くと壁を押す。
 まさかそんな隠し扉があるとは……うん。知ってた。

 いろいろ床も壁も直してたんだが、そのときに変な繋ぎ目を見つけたんだがそれがこの壁だ。
 押したら開いたのだが、勝手に入るのは不味いと思って無視してたがまさかこんなところにお宝が有るとは。
 なんだか分からないが隠し扉と聞くと妙にワクワクするのは気のせいだろうか。

 扉の奥へ入り進むと、倉庫の様な場所に着く。
 掃除されてないのか微妙に汚れており、埃や蜘蛛の巣が張り巡らされている。

 院長は1つの物の前に立つと此方に振り替える。

「これがアンタ達の言ってる宝……かもしれない物だよ」

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