そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

総評

「皆お疲れと言うことで早速賛成会をするぞ。今回の自分の悪かったところ、良かった所、改善すべき場所を個人や仲間と話し合って洗いざらい吐き出せじゃなきゃチョップの刑だ」
「後半脅しになってるわよ!?」

 ツッコミキャラが定着してきているアルカは放置しておいて全員の顔を見渡す。うん、疲れてるね。でも反省会を後に回すつもりはありません!

「じゃあ、フィルからだな。俺は全員の反省を聞いた後に口を出すんで、俺のことはその辺の石だと思ってくれ。あ、本当に石扱いしたらアイアンクローな」
「チッ!」

 おい。アルカ? 石扱いしようとしたのか? アイアンクローしても良いかな? 約束? 忘れたわそんなもん。

「……アルカの舌打ちは流すことにしよう。続けてくれ」
「はいよ、じゃあ俺な、良かった所は役割通りに切り込む事が出来た。それくらいだな、後半はバテたし結局師匠に攻撃が当たらなかった。直すところは体力作りともっと早く剣を振れるようになることかな?」
「そうね、でも集中力も足りないわ。体力が切れて焦るのは分かるけどフィルがやられたら私達まで危ないわ。自覚して」
「……はい」

 アルカの正直な発言に気を落とすフィル。

「でも疲れたって事は本気で戦った訳じゃない? サボらないところは良かったわよ」
「……ツンデレか?」
「石は黙ってて」

 酷い。でもフィルは立ち直れた様だ。

「んじゃ、次はピータで」
「あ、うん。えーと僕は、少し遅れたけどそれなりに攻撃参加は出来たと思う。でも攻撃のタイミングを間違えることが有ったからそこは直したいな」
「そうだな。でもピータは師匠にビビる事なく攻撃が出来たから驚いたぜ、これからもっと頑張ろうぜ!」
「フィル兄……うん、僕頑張るよ!」

 俺も意外だったのはピータが進んで突っ込んだ事だな。最初こそユンに遅れをとったがその最初だけで目立たないものの回りに気を利かせていた。
 例えば弓矢と魔法の射線上に入らないように、そして俺を誘導していたのは分かった。無視したけど。地味な気遣いが上手いと思ったな。

「じゃ、スティーブで」
「む、了解した。良かった所はある程度フィル、ユン、ピータのサポートが出来た所か、悪かったところはやはり体力面だろう。そこは追々改善する。後、俺一人の技量が圧倒的に足りない。師匠になすすべも無かったからな」
「いやー、スティーブのサポートは助かったぜ。後は、俺としては積極的に攻めても良いと思うね」
「そうです、もう少し欲を出してみても良いと思いますよ。スティーブ」
「欲か……なるほど、分かった。行けるときには積極的に攻めてみよう」

 ふんふん、確かに1番の功労者だろうなスティーブは。彼のサポートがなければもっと早く連携は瓦解していただろうし、後はフィルとリズの言う通り積極的に行くともっと上に行けそうだ。

「じゃ、アルカ」
「えぇ、私は師匠を逃がさないように矢を放ったりしたけど地面に刺さったままの矢で逆に皆の邪魔をしたし、師匠が防いで居なかったら皆が怪我をしていたわ。もっと弓矢の練習が必要ね。あと、1度も師匠を狙わなかったのが問題」
「確かに、私もそうですが最後に師匠が突っ込んで来たときの対処が悪かったと見えます」
「ガンガン師匠を狙っていけよ、アルカ」
「分かってるわ」

 そう言えば最後の接近以外飛んでこなかったからな、まだ自信が無いのか? 冷静に努めようとしているが焦っている様にも見える。

「次は私です。良いところは余り無かったですね。あと、魔法の使用上限が短いのが問題かと、直ぐに魔力切れを起こしました。そして先程言った通り前衛が瓦解すると何も出来ないと言うのは直せるべき点だと考えます」
「そうね、少しは体術もやるべきだと思うわ」
「魔法は強力な分消耗も激しいからな、気長に鍛えるしか無いだろう」

 魔力は一朝一夕では上がらないからな、そこは気長に焦らず伸ばすしか無いだろう。そこは我慢がいかに続くかが鍵だな。

「最後は私ね! フィルとの連携は上手く行ったと思うの! でもやっぱり一撃を重視しちゃう所があるし、フェイントとかも使えるようにした方が良いかな? あと斧だけに頼らないようになりたい!」
「あの連携は上手く行ったって俺も思ったよ。師匠には交わされたけど……」
「確かに、ユンの言う通りもっと速さを意識してみても良いかもしれないね、でも……もう少し考える努力をしようよ……」
「う、ピータに呆れられた。うーん、頑張る! ……様にはします……」

 最初の連携の事だろう。あれは少し驚いたな。連携をする奴との戦いはあまりしないから、新鮮味があって面白かったな。ピータの言う通りガムシャラに斧を振るときがある、そこを改善すれば厄介な相手になるな。

「それじゃ、石……じゃなくて師匠。総評をお願い」

 おっと、アルカからの指名だ。あと、今石って言ったよね? 覚えてろよお前。

「そうだな、驚いたのはお前達が自分達の悪いところを指摘出来たところだな。正直期待してなかった」

 本当に10歳かね? と思うほどによく考えている。普通は無理だと思うわけだ。これほど考えられるのなら将来は明るそうだよな。

「まぁそれは兎も角として、俺は全員の補足をしよう。まずはフィル、切り込むのは別にいい、だが切り込むタイミングが問題だ。仲間と余り距離を離すな。今回は良いが相手が単体でなく群れならお前は孤立して死んでいる。もう少し冷静になれ」
「う……はい」

 厳しいかも知れんが世の中甘くはないからな。次。

「次にピータだ、後半、攻撃が当たらなくなってきて諦めたな? 見切りをつけるのは良いが相手が強すぎる場合、撤退を考えろ。諦めてしまえば生き残れる状況でも自分から可能性を0にする行為だそれは、心に留めろ」
「は、はい!」

 状況を判断する素晴らしい機転良はいいがあらゆる可能性を捨ててしまえばそれは生き残る手段も捨ててしまう。そこはもっと頑張ってくれ。

「次にスティーブ、そうだな……皆が言う通り積極的に、あと俺の動きに釣られたな? 自分が中心だと言うことを自覚しろ。お前がやられることがパーティーを全滅させる可能性を秘めていると、酷かも知れんが今のうちに教えておこう」
「あぁ、心得ておく」

 まぁスティーブなら何れ気づくとは思うけど何事も早い方が良いだろう。

「じゃあ、アルカだが。スティーブと同じようにたまには俺を狙うこともした方が良かったな。最初は外しているだけだと思っていたが狙ってないと分かるとお前に意識を向けなくても良いと感じた。狙われてないなんて驚異にもならないからな。そこは要練習だな。まぁ、焦らずに自分のペースでやった方がいい、弓矢はどれだけ自分のタイミングで放てるかが大事だ」
「ええ、出来るだけ焦らないようにするわ」

 集中力が大事な弓矢は焦ってしまえばかなり命中率が下がる。如何に冷静に判断が出来るかが鍵だな。

「次にリズ。回りに気を使いすぎて魔法の発動が遅い、多分。フィルにピータ、ユンの連携とその穴を塞ぐようにスティーブが槍を突き出すから隙間が無いと言うことは分かるがそれでも魔法の方がいい場面だって有った筈だ、そのときは周りに声をかけて魔法を使うようにしたら良い。もっと周りに声かけをするように」
「分かりました、師匠」

 ちょっと遠慮がちな所があるから自分を出すようにした方が良いだろう。そこはピータと一緒だな。

「最後にユン。勝手に行動しすぎだ、最初は良かったが後半は連携になっていない。もう少し皆と協力するように。それ以外は申し分はないと思う」
「分かったよ! 師匠!」

 もう少し協調性があればかなり良くなるだろう。個人としてはかなり強いと思う。まぁ、その歳にしてはと言う話だが。

「さて、総評も終わりだ、この後は好きにしていいぞ。訓練もよし、己の足りないものを補うようにするもよし、戻って寝るも良しだがどうする?」

 恐らくは休憩するだろう。ボコボコに凹ましたからな。これで俺は残りの修復作業に集中できるってもんだ。

「訓練だな!」
「あぁ、フィル、模擬戦を頼む」
「ぼ、僕も!」

 おや?

「リズ、私達は的を用意して練習しましょう」
「えぇ、そうですね。アルカ。貴女も来ますか? リズ」
「私も模擬戦するー!」

 あれ? 誰も休まないのか? 良いんだぞ、休んでも。無理することは無いって、ほらお布団が君達を待っている。

「反省点は直ぐに改善するに限るからな」
「おうよ! 今度こそ師匠をぶっ飛ばすからな! スキルの練習もしようぜ!」
「模擬戦……頑張るぞ」
「ピータ、私が勝負してあげる! ボッコボコにするんだから!」
「この程度で休む私達じゃないわ。直ぐに追い付くから覚悟しなさいよ師匠」
「冒険者になる頃には差を着けて上げます」

 そう言ってそれぞれが散っていった。

 あれ? なんか寂しい。

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