そのゴーレム、元人間につき

ノベルバユーザー168814

性能テスト

 開口一番、俺はカウントゴリラの懐へと飛び込み軽く吹き飛ばすつもりで拳を振るう。

「甘いウホッ!」

 予想していたのかバックステップにて後方へと下がるカウントゴリラはそのままの勢いで木から木へと移動を開始する。

 ふむ、性能テストを兼ねているから軽くやってみたのだが、遠慮はやはり必要ないか。
 相手は仮にもBランク指定の魔物だ、以前も体にヒビは入れられたからな、油断や傲りは禁物だろう。

 カウントゴリラはその体格に似合わない俊敏な動きで俺の前後左右、縦横無尽に木から木へと飛び移りながら隙を探している様子。

 ここで1つ、疑問が発生だ。以前のカウントゴリラはスキルを発動し、自信を強化した時に体はでかくなり、腕もかなりの太さになっていた完全に力に特化していた筈だ。
 それが今は体の膨張はなくなっており、木等も折れること無く移動をしている。……どう言うことだ?

「隙ありウホッ」

 と、考えに更けていると後方から声が聞こえる。恐らく俺は隙を晒していた様だな、確認している暇は無いので感覚のみで振り向き様にカウンターの裏拳を行う。

「んっ?」
「もらったウホッ!」

 カウンターはカウントゴリラのギリギリで空を切り、完全に状態の開いた俺の腹部目掛けカウントゴリラの勢いの乗った拳が襲いかかる。

「ぬっ!」

 まともに当たった俺は地面に体を打ち付けながら飛ばされ、何度目かのバウンドで体勢を立て直し、カウントゴリラを見る。
 カウントゴリラの方は俺を殴り飛ばした後、すぐに木に飛び移り、もう一度隙を窺うようだ。

「……倒れるか、初めてかもしれないな。驚いた」

 今までは攻撃を貰うことはあっても倒れることはなかった。吹き飛ばされてもガードはちゃんとしたし、飛ばされても打ち付けられると言うこともなかった。
 角度や俺の攻撃の受け方もあったとは思うが、叩きつけられるとは……ふむ、貴重な体験をしたな。

 しかし違和感がある。何故俺はカウンターに失敗した? 確かにカウントゴリラの姿やタイミングを確認している暇が無かったとは言え、いつもならこんなミスは無かったような気がする。

「攻撃が速すぎたか?」

 まてよ、今の俺は前とは違うな。体を作り替えたのだ、身長なども別段変えたところは無いが一番の違いは恐らく性能upによる制動機能が少し変わったからだ。
 いつもより軽く感じ、それが俺の強さを少し引き上げている。つまり、僅かな誤差が生じていていつものタイミングでは恐らく当たることはない。

 最初の攻撃もそうだ、今思い出すとタイミングが少しずれていた気もする。
 やはり体の成長にまだ追い付いていないか……急激な変化に人が対応出来ないように僅かなズレは大きな失態となる訳だ。たぶん。

「ふむ、ここに気づけた事は大きいな。性能テストとは言ったが馴染ませる為の修行としても使わせてもらおう」

 これはなかなか骨が折れるぞ、多少の誤差なんて面倒なものにちゃんと合わせなければいけないのだから。

「もらったウホッ!」

 お前はそのセリフしか言えないのかと言うほど先程と寸分違わない言葉を放ちながら飛びかかってくる。
 ご丁寧にこれまた先程と同じ角度からの攻撃だ、ありがたい。

「ふん!」
「ぶほっ!」

 今度は先程より少しタイミングをずらし攻撃してみたが、浅かったか……。
 当たりはしたものの、これといってダメージは与えられていない。あと、吹き飛ばすことも出来なかったので向こうの攻撃も受けてしまった。

「む? 弱くなったウホ? これならリベンジは果たせる、覚悟ウホッ!」
「なめるなよゴリラが」

 煽ってくるカウントゴリラ……面倒だからゴリラで良いや、に腹が立ったので徹底的に叩き潰す事に決めた。

 だが、状況はあまり好ましくはないな。こっちは性能は上がってはいるものの操作にはまだ慣れていないのでもう少し時間はかかる。
 対して向こうは変化らしい変化と言えばスキルの事だが殆ど誤差みたいなものはないと言っても良いだろう。恐らくだがエマが教えた辺りから研鑽をしているはず、不馴れと言うことはまず無いだろう。

 駆け出した俺はカウントゴリラの懐へと飛び込む、最初と同じシチュエーションだ。体を慣れさせたいのだから同じ行動を行って調整をするのが一番だろう。

 対してゴリラも先程と同様に後ろへと下がろうとするが、俺はまだ踏み込み、追跡する。
 同じように避けると分かっているならそりゃ追いかけるだろう。だってさっきは交わされたのだから。

 ゴリラは少し驚いた様な顔をするがすぐに立て直し俺を引き離そうと速度を上げながら木を移動していく。
 それを俺は追い続ける。

 木から木へと移る。それでも離されず、ゴリラの目の前をキープし続ける。

 攻撃をするわけでもなく、ただ其処にいる。どこに動こうともそれらを予測しながら、ゴリラの一挙手一投足を見て考え追跡をし続ける。

 今までは相手の攻撃を予測すると言うことは余りしてこなかったからな、ちょうど良い機会だろう。
 色々と平行してやることになるがこれが出来れば俺自身はそう簡単にやられる存在にはならない筈だ。

「しつこいウホ!」

 ただいま、空中にて、痺れを切らしたゴリラは俺へと拳を振り下ろす。
 確かに空中じゃ身動きはとれないからな、良い判断だ。

 見事にクリーンヒットした俺への攻撃で俺は地面へ真っ逆さまに落ちていくが体勢を整えて着地、それと同時に木へと着地したゴリラは再接近の追撃を仕掛けてくる。

「──[硬化]」

 体をスキルによって固めた俺への攻撃は虚しく無効化され、ゴリラは手を抑えていた。痛そうだな。

 [硬化]を解除し晒した隙をつくように接近し、もう一度[硬化]を拳のみに付与し、顔を殴り付ける。

 すると勢い良く飛んでいくゴリラだが、前回とは違い、ボロボロではあるものの気絶したりはしていない。

 しかし[硬化]、素晴らしい能力だな。毎度助かっていると思う。いや、良く良く考えたら俺って殆どスキル使って戦わないし、宝の持ち腐れなのでは?
 スキルには他にも[攻撃小up]とか[防御小up]とかあるけど良く良く考えてみれば[硬化]1つでどちらの性能も引き出せる辺り、『付与』の中の能力なのに被ってる感じがして損している気がする。

「まだまだ……ウホォッ!」
「やかましい」

 飛び付いてきたゴリラを拳骨で沈める。物理的に。
 地面に埋まったゴリラは足をピクピクと痙攣させていた。

「ぜ、全然弱くなって無いウホ……」

 此方からすればお前の方が化け物だろう。最初に会ったときはお前気絶までしていたくせにメチャクチャ元気じゃないか。
 こっちはやっと強くなったんだぞ、簡単に追い付きやがってこの野郎。

「……これは魔物としてのランクの違いが現れるのだろうか」

 何とも謎が多いな。

 そう、スキルもそうだがステータスと言うのも不思議だ。自らが使える技能、そしてレベルが記載されているのだが、それを目に見えるようにする意味はあったのだろうか?
 ステータスと言うくらいなのだから自らの能力を数値化すると言うことも出来た筈だ、それなのにどうしてレベルのみなのか。

 ……でも数値化したところで良くは分からなさそうだし、そんなことを俺が知っていようとも何にも起きることはないか。止めよう。

「まぁ、性能は大体把握できたからな。助かったまた相手してくれ」
「正直勘弁ウホッ」

 とは言っているが何だか目の奥はやる気に満ちているのは気のせいか? 気のせいだと思っておこう。

「にしても、お前が使ったスキル、前とは違うな。どうしてだ?」
「ふっふーん、自分で考えてみるウホッ、手の内を晒すようなことはしないウホッ」

 腹立つなこのゴリラめ、ウホウホ言いやがって。なんて殺気を込めて睨み付ける。

「じゃ、俺は用事を思い出したウホッ、またウホッ!」

 ゴリラは今までよりも一番の速度で森の奥へと消えていった。

「……エマもそろそろ起きるだろう。帰るか」

 色々と分かったことや改善することも発見できたので今日は大人しく帰る事にした。

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