ステータスの確認

　戦争参加の決意をした以上、弥鶴たちは戦いの術を学ばなければならない。いくら規格外の力を潜在的に持っていると言われていても、元は平和主義にどっぷり浸かりきった日本のいたって普通の高校生だ。いきなり魔物や魔人と戦うことなど不可能である。

　しかし、その辺の事情は当然予想していたらしく、コルネリウス曰く、この聖教教会本山がある【霊峰】の麓の【イシュダル王国】にて受け入れ態勢が整えられているらしい。

　王国は聖教教会と密接な関係を持っており、聖教教会の崇める神――創造神ルシウの眷属であるアルバス・ホーンなる人物が建国した最も伝統ある国ということだ。国の背後に教会があるのだからその繋がりの強さがよく分かるだろう。

　弥鶴たちは聖教教会の正面門にやって来た。下山しイシュダル王国に行くためだ。聖教教会は霊峰の頂上にあるらしく、凱旋門を思わせる荘厳な門をくぐるとそこには雲海が広がっていた。高山特有の息苦しさなどは感じていなかったので、高山にあるとは思いもよらなかったのだ。おそらく魔法で生活環境を整えているのだろう。弥鶴たちは、太陽の光を反射して煌めく雲海と透き通るような青空という雄大な景色に呆然と見蕩れた。

　どこか自慢気なコルネリウスに促されて先へ進むと、柵に囲まれた円形の大きな白い台座が見えてきた。大聖堂で見たのと同じ素材で出来た美しい回廊を進みながら促されるままその台座に乗る。

　台座には巨大な魔法陣が刻まれていた。柵の向こう側は雲海なのでほとんどの生徒が中央に身を寄せる。それでも興味が湧くのは止められないようでキョロキョロと周りを見渡していると、コルネリウスが何やら唱えだした。

「信仰あるものを導きたまへ、“天道”」

　言葉を紡いだ瞬間、それがスイッチだったかのように足元の魔法陣が燦然と輝き出した。そして、まるでロープウェイのように滑らかに台座が動き出し、地上へ向けて斜めに下っていく。どうやら、先ほどのはいわゆる“詠唱”と言われるもので台座に刻まれた魔法陣を起動するためのまさにスイッチのようだった。この台座は元の世界でいえば正しくロープウェイなのだろう。ある意味、初めて見る“魔法”に生徒たちがキャッキャッと騒ぎ出す。雲海に突入する頃には大騒ぎだ。

　やがて、雲海を抜け地上が見えてきた。眼下には大きな国が見える。山肌からせり出すように建築された巨大な城と放射状に広がる城下町。イシュダル王国の王都だ。台座は、王宮と空中回廊で繋がっている高い塔の屋上に続いているようだ。

　弥鶴は、皮肉げに素晴らしい演出だと苦笑した。雲海を抜け天より降りたる“神の使徒”という構図そのままである。弥鶴たちのことだけでなく、聖教信者が教会関係者を神聖視するのも無理はない。

　弥鶴はなんとなく戦前の日本を思い出した。政治と宗教が密接に結びついていた時代のことだ。それが後に様々な悲劇をもたらしたが、この世界はそれよりもっと歪かもしれない。何せ、この世界には異世界に干渉できるほどの力をもった超常の存在が実在しており、文字通り“神の意思”を中心に世界は回っているからだ。

　自分たちの帰還の可能性と同じく、世界の行く末は神の気分次第なのである。徐々に鮮明になってきた王都を見下ろしながら、弥鶴は言い知れぬ不安が胸に渦巻くのを必死に押し殺した。そして、とにかく出来ることをやっていくしかないと拳を握り締め気合を入れ直すのだった。

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　王宮に着くと、弥鶴たちは真っ直ぐに謁見の間に案内された。教会に負けず劣らず煌びやかな内装の廊下を歩く。道中、騎士っぽい装備を身につけた者や文官らしき者、メイド等の使用人とすれ違うのだが、皆一様に期待に満ちた、あるいは畏敬の念に満ちた眼差しを向けて来る。弥鶴たちが何者か、ある程度知っているようだ。

　弥鶴は居心地が悪そうに、最後尾をこそこそと付いていった。

　美しい意匠の凝らされた巨大な両開きの扉の前に到着すると、その扉の両サイドで直立不動の姿勢をとっていた兵士二人がコルネリウスと勇者一行が来たことを大声で告げ、中の返事も待たず扉を開け放った。

　コルネリウスは、それが当然だというように悠々と扉を通る。聖也等一部の者を除いて生徒たちは恐る恐るといった感じで扉を通った。

　扉を通った先には、真っ直ぐ延びたレッドカーペットと、その奥の中央に豪華な椅子――玉座があった。玉座の前で覇気と威厳を纏った初老の男が立ち上がって待っている。

　その隣には王妃と思われる女性、その更に隣には十歳前後の金髪碧眼の美少年、十五、六歳の同じく金髪碧眼の美少女が控えていた。更に、レッドカーペットの両サイドには左側に甲冑や軍服らしき衣装を纏った者達が、右側には文官らしき者達がざっと三十人以上並んで佇んでいる。

　玉座の手前に着くと、コルネリウスは弥鶴たちをそこに止め置き、自分は国王の隣へと進んだ。

　そこで、おもむろに手を差し出すと国王は恭しくその手を取り、軽く触れない程度のキスをした。どうやら、教皇の方が立場は上のようだ。これで、国を動かすのが“神”であることが確定だな、と弥鶴は内心で溜息を吐く。

　そこからは唯の自己紹介だ。国王の名をセブルス・D・イシュダルといい、王妃をリルターナというらしい。金髪美少年はアルバート王子、王女はアリアという。

　後は、騎士団長や宰相等、高い地位にある者の紹介がなされた。ちなみに、途中、何度も美少年の目が美咲に吸い寄せられるようにチラチラ見ていたことから美咲の魅力は異世界でも通用するようである。

　その後、晩餐会が開かれ異世界料理を堪能した。見た目は地球の洋食とほとんど変わらなかった。たまにピンク色のソースや虹色に輝く飲み物が出てきたりしたが非常に美味だった。

　アルバート殿下がしきりに美咲に話しかけていたのをクラス男子がやきもきしながら見ているなんていう状況もあった。弥鶴としては、もしやクラス男子の矛先が殿下に向くのではと、ちょっと期待したりもした。といっても、十歳では無理だろうし、そもそも付き合っているのは弥鶴であるがゆえにそんなことは起こり得ないのだが…

　王宮では、弥鶴たちの衣食住が保障されている旨と訓練における教官達の紹介もなされた。教官達は現役の騎士団や宮廷魔法師から選ばれたようだ。いずれ来る戦争に備え親睦を深めておけということだろう。

　晩餐が終わり解散になると、各自に一室ずつ与えられた部屋に案内された。天蓋付きベッドに愕然としたのは弥鶴だけではないはずだ。弥鶴は、豪華な部屋にどうも落ち着かない気持ちになりながら、それでも怒涛の一日に張り詰めていたものが溶けていくのを感じ、ベッドにダイブすると共にその意識を落とした。

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　翌日から早速、訓練と座学が始まった。

　まず、集まった生徒たちに免許証サイズの銀色のプレートが配られた。不思議そうに配られたプレートを見る生徒たちに、騎士団長マルス・アンドレイが直々に説明を始めた。

　騎士団長が訓練に付きっきりでいいのかとも思った弥鶴だったが、対外的にも対内的にも“勇者様一行”を半端な者に預けるわけにはいかないということらしい。

　マルス団長本人も、「むしろ面倒な雑事や書類仕事を副団長に押し付ける理由ができて助かった！」と豪快に笑っていたくらいだから大丈夫なのだろう。もっとも、副団長さんはいい迷惑かもしれないが…

「よし、全員に配り終わったな？　このプレートは、ステータスプレートと呼ばれている。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ？」

　非常に気楽な喋り方をするマルス。彼は豪放磊落な性格で、「これから戦友になろうってのにいつまでも他人行儀に話せるか！」と、他の騎士団員たちにも普通に接するように忠告するくらいだ。

　弥鶴たちもその方が気楽で助かった。遥か年上の人たちから敬った態度を取られると居心地が悪くてしょうがないからだ。

「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。それで所持者が登録される。 “ステータスオープン”と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。ああ、原理とか聞くなよ？　そんなもん知らないからな。神代のアーティファクトの類だ」
「アーティファクト？」

　アーティファクトという聞き慣れない単語に聖也が質問をする。

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

　なるほど、と頷き生徒たちは、顔を顰めながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。弥鶴も同じように血を擦りつけ表を見る。

　すると……

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黒嶺弥鶴　17歳　男　レベル：1
天職：錬金術師
筋力：10
体力：10
耐性：10
敏捷：10
魔力：10
魔耐：10
技能：錬成・言語理解
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　こんな風に表示された。

　まるでゲームのキャラにでもなったようだと感じながら、弥鶴は自分のステータスを眺める。他の生徒たちもマジマジと自分のステータスに注目している。

　マルス団長からステータスの説明がなされた。

「全員見れたか？　説明するぞ？　まず、最初に“レベル”があるだろう？　それは各ステータスの上昇と共に上がる。上限は100でそれがその人間の限界を示す。つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。レベル100ということは、人間としての潜在能力を全て発揮した極地ということだからな。そんな奴はそうそういない」

　どうやらゲームのようにレベルが上がるからステータスが上がる訳ではないらしい。

「ステータスは日々の鍛錬で当然上昇するし、魔法や魔法道具で上昇させることもできる。また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。それと、後で、お前等用に装備を選んでもらうから楽しみにしておけ。何せ救国の勇者御一行だからな。国の宝物庫大解放、出血大サービスだぞ！」

　マルス団長の言葉から推測すると、魔物を倒しただけでステータスが一気に上昇するということはないらしい。地道に腕を磨かなければならないようだ。

「次に“天職”ってのがあるだろう？　それは言うなれば“才能”だ。末尾にある“技能”と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。天職持ちは少ない。戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。十人に一人という珍しくないものも結構ある。生産職は持っている奴が多いな」

　弥鶴は自分のステータスを見る。確かに天職欄に“錬金術師”とある。どうやら“錬成”というものに才能があるようだ。

　弥鶴たちは上位世界の人間だから、アーガイムの人たちよりハイスペックなのはコルネリウスから聞いていたこと。なら当然だろうと思いつつ、口の端がニヤついてしまう弥鶴。自分に何かしらの才能があると言われれば、やはり嬉しいものだ。

　しかし、マルス団長の次の言葉を聞いて喜びも吹き飛び嫌な汗が噴き出る。

「後は……各ステータスは見たままだ。大体レベル１の平均は10くらいだな。まぁ、お前達ならその数倍から数十倍は高いだろうがな！　全く羨ましい限りだ！　あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。訓練内容の参考にしなきゃならんからな」

　この世界のレベル１の平均は10らしい。弥鶴のステータスは見事に10が綺麗に並んでいる。弥鶴は嫌な汗を掻きながら内心首を捻った。

（あれ？　どう見てもきれいな平均なんですけど…もういっそ見事なくらい平均なんですけど？　上位世界の人間は強いんじゃないの？　いわゆる俺TUEEEEEじゃないの？　…ほ、他の皆は？　やっぱり最初はこれくらい何じゃ…）

　弥鶴は、僅かな希望にすがりキョロキョロと周りを見る。皆、顔を輝かせ弥鶴の様に冷や汗を流している者はいない。

　マルス団長の呼び掛けに、早速、聖也がステータスの報告をしに前へ出た。そのステータスは……

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天野聖也　17歳　男　レベル：1
天職：勇者
筋力：100
体力：100
耐性：100
敏捷：100
魔力：100
魔耐：100
技能：全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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　まさにチートの塊だった。

「ほお～、流石勇者様だな。レベル1で既に三桁か……技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め！　頼もしい限りだ！」
「いや～、あはは……」

　団長の称賛に照れたように頭を掻く聖也。ちなみに団長のレベルは68。ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。しかし、聖也はレベル1で既に三分の一に迫っている。成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。

　ちなみに、技能＝才能である以上、先天的なものなので増えたりはしないらしい。唯一の例外が“派生技能”だ。

　これは一つの技能を長年磨き続けた末に、いわゆる“壁を越える”に至った者が取得する後天的技能である。簡単に言えば今まで出来なかったことが、ある日突然、コツを掴んで猛烈な勢いで熟練度を増すということだ。

　聖也だけが特別かと思ったら他の連中も、聖也に及ばないながら十分チートだった。それにどいつもこいつも戦闘系天職ばかりなのだが……

　弥鶴は自分のステータス欄にある“錬金術師”を見つめる。響きから言ってどう頭を捻っても戦闘職のイメージが湧かない。技能も二つだけ。しかも一つは異世界人にデフォの技能“言語理解”だ。つまり、実質一つしかない。だんだん乾いた笑みが零れ始める弥鶴。報告の順番が回ってきたのでマルス団長にプレートを見せた。

　今まで、規格外のステータスばかり確認してきたマルス団長の表情はホクホクしている。多くの強力無比な戦友の誕生に喜んでいるのだろう。その団長の表情が「うん？」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか？」というようにプレートをコツコツ叩いたり、振ったり、光にかざしたりする。そして、ジッと凝視した後、もの凄く微妙そうな表情でプレートを弥鶴に返した。

「ああ、その、何だ。錬金術師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶するときに便利だとか…」

　歯切れ悪く弥鶴の天職を説明するマルス団長。

　その様子に弥鶴を目の敵にしている男子たちが食いつかないはずがない。鍛治職ということは明らかに非戦系天職だ。クラスメイトたち全員が戦闘系天職を持ち、これから戦いが待っている状況では役立たずの可能性が大きい。

　金田大和が、ニヤニヤとしながら声を張り上げる。

「おいおい、黒嶺くぅーん。もしかしてお前、非戦系か？　鍛治職でどうやって戦うんだよ？　マルスさん、その錬金術師って珍しいんっすか？」
「あぁ、どうだろうな…こんな職業は見たことがないからな。珍しいだろう。だが、技能を見る限り“錬成師”と同じだ。“錬成師”に関しては珍しくない。鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は全員持っているな」
「おいおい、黒嶺～。お前、そんなんで戦えるわけ？」

　金田が、実にウザイ感じで弥鶴と肩を組む。見渡せば、周りの生徒達――特に男子はニヤニヤと嗤っている。

「さぁ、やってみないと分からないかな。団長も見たことない天職らしいし（そもそも見たことないんじゃ判断のしようがないな）」

　マルス団長の「見たことがない」という発言に弥鶴は一筋の希望を見るが、そんなことはどうでもいいというか全く人の話を聞かない金田は

「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだよなぁ～？」

　マルス団長の表情から内容を察しているだろうに、わざわざ執拗に聞く金田。本当に嫌な性格をしている。取り巻きの三人もはやし立てる。強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ。事実、美咲や杏奈などは不快げに眉を顰めている。

　美咲に惚れているくせに、何故それに気がつかないのか。そんなことを考えながら、弥鶴は投げやり気味にプレートを渡す。

　弥鶴のプレートの内容を見て、金田は爆笑した。そして、斎藤たち取り巻きに投げ渡し内容を見た他の連中も爆笑なり失笑なりをしていく。

「ぶっはははっ～、何だこれ！　完全に一般人じゃねぇか！」
「ぎゃははは～、むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃその辺の子供より雑魚なんじゃね？」
「ヒャハハハ～、無理無理！　すぐ死ぬってコイツ！　肉壁にもなりゃしねぇよ！」

　次々と笑い出す生徒に美咲が憤然と動き出す。しかし、その前にウガーと怒りの声を発する人がいた。莉乃先生だ。

「こらー！　何を笑っているんですか！　仲間を笑うなんて先生許しませんよ！　ええ、先生は絶対許しません！　早くプレートを黒嶺くんに返しなさい！」

　ちっこい体で精一杯怒りを表現する莉乃先生。その姿に毒気を抜かれたのかプレートが弥鶴に返される。

　莉乃先生は弥鶴に向き直ると励ますように肩を叩いた。

「黒嶺くん、気にすることはありませんよ！　先生だって非戦系？　とかいう天職ですし、ステータスだってほとんど平均です。弥鶴くんは一人じゃありませんからね！」

　そう言って「ほらっ」と莉乃先生は弥鶴に自分のステータスを見せた。

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宇津木莉乃　25歳　女　レベル：1
天職：作農師
筋力：5
体力：10
耐性：10
敏捷：5
魔力：100
魔耐：10
技能：土壌管理・土壌回復・範囲耕作・成長促進・品種改良・植物系鑑定・肥料生成・混在育成・自動収穫・発酵操作・範囲温度調整・農場結界・豊穣天雨・言語理解
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　弥鶴は死んだ魚のような目をして遠くを見だした。

「あれっ、どうしたんですか！　黒嶺くん！」と弥鶴をガクガク揺さぶる莉乃先生。確かに全体のステータスは低いし、非戦系天職だろうことは一目でわかるのだが…魔力だけなら勇者に匹敵しており、技能数なら超えている。食糧問題は戦争には付きものだ。弥鶴の様にいくらでも優秀な代わりのいる職業ではないのだ。つまり、莉乃先生も十二分にチートだった。

　ちょっと、一人じゃないかもと期待した弥鶴のダメージは深い。

「あらあら、莉乃ちゃんったら止め刺しちゃったわね……」
「み、弥鶴くん！　大丈夫！？」

　反応がなくなった弥鶴を見て杏奈が苦笑いし、美咲が心配そうに駆け寄る。莉乃先生は「あれぇ～？」と首を傾げている。相変わらず一生懸命だが空回る莉乃先生にほっこりするクラスメイトたち。

　弥鶴に対する嘲笑を止めるという目的自体は達成したものの、上げて落とす的な気遣いと、これからの前途多難さに、弥鶴は乾いた笑みを浮かべるのだった。

設定は行き当たりばったり。
見たことがある文章になったりステータスになったりしてると思いますが、僕自身いろいろ同じような設定の作品を読ませてもらっていますし、その影響を受けつつありきたりな設定で書いてるのでそこは勘弁してください。