十勝晴れ

August

2

   農家の1日は世間で思われているほど暇ではない。もしくは忙しくもない。やることはいっぱいあるが、自分の裁量で決められる。
 妻は会社勤めだから、畑仕事はあまりしない。
 農家の嫁は農作業なんてやらなくてもいいと言われて嫁いで来て、実際は夫以上に働くことが多い。夫が強いわけではない。夫があまりにもだらしなく、使い物にならないから真面目に働かざるを得ないのだ。
 坊ずたちの同級生のお母さんたちからは冬樹さんと結婚すればよかったと言われる。嬉しくもないが、嫌な気もしない。
 小学生3年と5年の坊ずたちは、もっと小さい頃には楽しそうに農作業を手伝ってくれた。しかし今はあまり積極的にはやらない。人手は足りないが、子供の時間を奪うほどのことでもない。そういう時代だろうと意識している。
 坊ずたちはアイスホッケー少年団に熱心に通っている。自分が子供の頃にはスピードスケートをやらされたが、つらかった記憶しかない。だからスケートに自分の意志で行くというのは信じられないが、坊ずたちは毎日暗くなるまで練習している。子供のやることを理解しようとユーチューブでプロの試合を観てみたが、突然殴りあいが始まって驚いた。アイスホッケーではファイティングといって正式に殴り合いの決闘が認められているようだ。妻には話せないが、子供が熱心にやる意味が少しわかった気がする。

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