十勝晴れ

August

1

 このまちの空はいつも晴れ渡っている。冷えた風が頬をつくが、ジョンに引かれながら風防林の横を散歩している。帰ったら昨日の残りで朝食を作って、坊ずたちを起こして学校に送り出さないといけない。だからジョンには悪いがそんなに遠くにはいけない。
 アスパラ畑の近くまで来た。リードをとってやるとジョンは勢いよく走り出す。まだ背の低いアスパラを器用によけながら飛び回っている。楽しそうに遊んでいるが、タバコを一本吸い終わるタイミングで戻ってくる。賢い犬だ。
 いつものように戻って来たが、口に何かを咥えている。近所の犬が散歩中に変なものを食べたと聞いてからは勝手にものを咥えることは厳しく叱ってきた。物分かりの良いやつだと思っていたが、犬も所詮畜生か。
 雰囲気を察してか、申し訳なさそうに近づいてくる。足元に咥えていたものを落とした。
 紫色のハンカチだ。風に飛ばされて畑の中まで来たのだろう。ジョンのよだれで汚れているが、まだ綺麗で、かすかに柔軟剤の匂いも残っている。
 怒られるとわかっていて、どうしてこんなものを拾って来たのかはわからない。ジョンにはこのハンカチが魅力的に見えたのかもしれない。人でも怒られるとわかっていて変なことにこだわることがある。犬も同じなのだろう。
 ポケットにハンカチをしまい、リードをつけて家に戻った。

「十勝晴れ」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「文学」の人気作品

コメント

コメントを書く