眠れぬ夜の恋詩

与太郎 桂木

吐露の夜

「それで、何があったのか話せる?」
慎二が少し落ち着いたタイミングで、女は問いかける。そこで漸く自分がこれ以上無いほど恥ずかしい事をしたということにきずいた慎二は、物凄くバツの悪そうな顔をして言った。
「あ、ああ...もう大丈夫だ。なんだ、その...悪かったな。」
女はその言葉に少し驚いたような顔をすると、すぐに笑い始めた。
「おい、何が可笑しいんだよ。」
「私の思った通り、優しくて良い子だなぁって。」
そんなことを言われて、慎二はまた恥ずかしくなって目をそらす。

「俺はな......」
暫しの沈黙の後、彼はぽつぽつと今までのことを語り始めた。

いじめの事、親から受けた虐待の事、包み隠さず全て打ち明けた。本来初対面で警戒しなければならない存在のはずなのに、よくもこれだけ話せたものだと話した後に内心びっくりしたものだ。

さて、話を聞いた彼女はと言うと––––––


泣いていた。それはもう大号泣だった。それにも彼はびっくりした。まさか泣くとは思っていなかった。自分のような境遇の者や、もっと酷い境遇の者も居ると思っていたからだ。

「なんで泣いてるんだ?別に俺は過去の話をしただけで、泣ける話をしたわけじゃねーのに。」


「酷い!酷すぎるよぉ!君が何か悪い事をしたわけじゃないのに見た感じ私と同い年くらいの子がこんなめちゃくちゃな人生を送らなきゃいけないだなんて!これで泣かない人なんていたら、それこそおかしいよ!」



不思議なやつだな〜と思った。さっきまで醜い欲の捌け口にしようとして、恨まれてもおかしくは無いというのに、女は恨むどころか彼に同情までしたからだ。


しばらく表情をコロコロ変える女を見ていると、唐突に女は切り出した。


「よし!私の家においでよ!」
























––––––「はぁ?」

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