TS転生は強制的に

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三十五話~ボクとマイク君と誰かさん~

 
「『神の聖域ゴット・サンクチュアリ』」 
 
 勇者はボク達の事を静かにさせて、そして先ほど使った魔法を撃った。 
 あの魔法は、まあ、予想は出来ていたいけれど、物質を突き抜けて波状に広がっていく魔法らしく、ここから使っても効果は出ている様で、小さく「ウグゥ」と言った声が聞こえていたので、倒れているらしい。……あの松崎しげるを超える黒い人型は何だったんだ。 
 
 
「気をつけろ、まだ倒されていない奴がいるかもしれないかr――」 
「ドッゴォォン!!」 
 
 しかし、勇者の魔法では倒し切れていない謎生命体が居たようで、ボク達がいる目の前の建物に光線が放たれ、その建物は一瞬にして破壊されてしまった。 
 奇跡的に、建物の破片はボク達が居る方向へ飛んでくることはなく、誰一人怪我する事は無かった。 
 
「範囲外に居たっぽいね、もう一度撃たないと」 
「違う」 
 
 何時までも勇者が追撃をしないので、少しやさしめに命令、と言うか言ったのだが、どうやら勇者は何かを悩んでいる様だ。 
 ヱヴァンなんちゃらにもそういうシーンがあった気がするけど、何かを悩んでいる様だった……違うとか急に言い出したからただの精神異常者にしか思えない。 
 
「確実にあれは範囲内に居た、だからあれは」 
「『神遺物:矢槍アーティファクト:ゲイ・ボルグ』」 
 
  そして、勇者が何かを言おうとした瞬間、何処かから謎生命体の様な片言と言うか、機械的と言うか、そういう喋り方ではなく、もっと流暢な喋り方で、人間的な声が聞こえた。 
 その人間的な声を認識する前に、上空からは何百もの矢が降り注いでいた。 
 
「危なッ!? 『絶対不可侵域』」 
 
 その何百もの矢を認識したときに、勇者もボク達を守るために、防御用の魔法を使っていたが、本当に魔法が起動したのは矢がボク達に当たりそうになる位ぎりぎりで、下手したら死んでしまうと言う事を、認識した。 
 前、オークキングらしき者と戦った時よりは、勇者などが、いるために、そこまでの死と言う物を実感できていなかった。 
 
「ほう、貴様が勇者か」 
「だ、誰だ! 姿を見せろ!」 
 
 そして、勇者がボク達を守りきると同時に、また人間の様な流暢な喋りをしていた者が勇者に話し掛けている様だったが、勇者渾身の技が効かず、動揺している様で、ボク達が隠れているというのに、何故か姿を見せろと、相手が隠れているような発言をしている。 
 このままだと流石にまずい。 
 
「そうか、そこに居るのか『神遺物:超電磁砲アーティファクト:レールガン』」 
「グハッ!」 
 
 そして、その正体不明声が、何かを放った後、ボクの視界は真っ白になった。 
 その真っ白になった視界が、良く見えるようになると、ボクの目の前には血まみれになったマイク君が倒れていた。 
 
「ま、マイク君? う、嘘だよね?」 
 
 勿論、殺される可能性と言う事は分かっていたけど、本当に殺され掛けているとは思えなかった。と言うか、想像したくなかったの間違いかもしれない。 
 だから、今マイク君が血だらけで横たわっている姿を認識することは到底したくはなかった。 
 
「ふん、外したか、今度は命中させてや――」 
「マイク君を殺しておいて何を言ってんのさ! マイク君を返してよ! 『冥府の――』」 
 
 しかし、ボクはマイク君を失ってしまった絶望と、怒りと、その他もろもろで、無意識に何かを使いそうになったのだが、魔力不足なのか、良く分からないが、ボクは意識を失ってしまった。 
 ……マイク君の事がすごく心配だけれど、勇者が居るから頑張って生きてもらいたい。


~~~~~~~~~~
 

「んぁぁ」 
 
 ボクが目を覚ますと、そこは真っ黒い空間で、その中に少しだけ輝いている人が居て、周りの黒さと相まってすごく強調されており、この世界に転生させられた時にアルテナとあったあの部屋が黒くなったバージョンと言った感じだ。 
 
「ここはどこ!?」 
「あぁ、煩い煩い」 
 
 下手したら、またアルテナの時の様に何処かへ転生させられるかもしれなかったので、不安で叫んでしまった。 
 勿論、今すぐにマイク君を助けたいと言う事もあって不安になっていたのだが、光り輝いている人からは返答は帰って来たものの、質問の答えにはなっていなかった。 
 
「いや、だからボクはここはどこだって、質問をしたんだけど」 
「うるっさいなぁ 、黙ってよ」 
 
 しかしながらその女の人はボクの質問委は答える気が無い様で、ボクはその女の人に睨まれていた。 
  
「いや、そこは黙らないでもらいたかったなぁ」 
「……だったら黙れって言わないでもらえるかな?」 
 
 流石に、初対面の人に睨まれて、そして黙れと言われたらボクは、と言うか普通の人なら黙ると思うのだが、この人はそういう風には思わないらしく、黙ったボクの事を咎め始めた。 
 意味が分からないよ。 
 
「じゃあ、本題を言わせてもらうけど、君は死んだよ」 
「……」 
 
 ボクがその人の言い様に混乱していると、今度はボクが死んだことをすごい軽い感じで、ボクが死んだと言う事を伝えてきた。 
 死んだと言う事は、以前のアルテナが居たような空間と似ている事から予想は出来ていたけど……アルテナよりも質が悪いよ。 
 
「まあ、君は世界の救世主だから死ぬ事は無い、と言うか許されない」 
「……うぇ? 何でボクが救世主って事になってるの?」 
 
 そんな相手の乱雑な態度に少し絶望しながら話を聞いていたのだが、今度は意味不明な事を言いつつも、語気を強めてボクを咎めてきた。 
 
「あれ? アルテナに言われなかったの? 君はこの世界を救うために魂を分割してここに転生したって?」 
 
 しかし、ボクが質問すると、その人はすごく人を馬鹿にしたような、と言うか完全に馬鹿な声を出しながら、逆に質問してきた。 
 
「……その様子だと聞かされてないみたいだね、なら君は何もしなくていいよ」 
「???」 
 
 その人はボクの表情で何も知らされていないと言う事を知ったようで、諦めた表情をしつつも何かを始めようとしていたが、ボクは完全に話に置いてかれ、その人もボクに話を理解させる気もない様だった。 
 
「じゃあ、最後に、君の近くに居たマイク君とやらは死んでしまったけど、君はどうしたかったんだい?」 
「それは……ボクだって助けたかったよ、前世ではいろいろ助けてもらいたかったし」 
 
 そして、その人はマイク君の事について話し始めた。 
 マイク君はもう死んでいるらしかったが、ボクはそれでもあきらめたくないと思ってしまった。勿論、そんなキャラではなかったので、しかも初対面の人にそんな事を言うのは恥ずかしかったが、そこで言わないと言うのは直感で駄目だと思った。 
 
「ふふふん、不屈の精神って事なのかな? 表層的には諦めているつもりでも、深層的には諦めていない、それだから君は救世主になったのかな? まあ、私程度が分かるほど、世界の理は簡単なものではないんだけどね」 
「……そんなに、詳細な評価をしないでよ」 
 
 その勘に従い、ボクは目の前に居る人に力強く行ったのだが、その人からは真面目に評価され、そしてボクの性格を考え始め、世界の理とつなげだしてしまった。 
 流石に、能天気なボクでも恥ずかしいと思いつつも言ったのに、そんな解説を相手にされたら滅茶苦茶恥ずかしいに決まっている。 
 ……初めて勘が外れたよ。 
 
「むふふ、そんな恥ずかしがって、まあ私は行くから……あぁ、そうだ、一日くらいここで待つことになるけど、欲しい物を願うと手に入るから、じゃあね?」 
「……えっ」 
 
 しかし、最後にいい雰囲気で何処かへ行こうとしたが、ここで一日いると言う言葉に本気で絶望し掛けてしまった。 
 だって、何もない真っ黒な空間で一人きりでいるとか、発狂しちゃうよ? 欲しいものがあるとかって言われても……ゲームとかで時間をつぶすかなぁ。 

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