TS転生は強制的に

lime

二十九話~ボクと勇者と勇者の義務~

「じゃあ、俺から自己紹介させてもらう。 
 俺はエリュニス、三年前位に急に勇者にさせられた」 

 そして、ボクがこれ以上勇者に対してツッコんだり、貶したりする合間も無く、勝手に自己紹介を始めてしまっていた。

「へえ、エリュニスって言うんだね、言いにくいよ」

 勿論、こにドM豚野郎には何も隠さずに本心を少しだけオブラートにかけて、常識的に貶した。
 ……一番言いたいことはリア充爆発しろ。と言うことだけなのだが、流石にここで言ったらただの変人だ。
 ボクは一般常識位は持ち合わせてるから。

「うるせぇ、俺はここよりかなり離れた所から来たんだ」

 どうやらこの勇者ことドM豚野郎ことエリュニスは、異邦の勇者であり、ドM豚野郎でもあるらしい。
 それなら言いにくいという事はわかるけれど、それだったら何故この国で勇者になったんだか。
 ……異邦人だと虐げられると思ったのかな? 流石にこの国は迫害とか差別とか、無縁の天国みたいな所だからね。神はロリだけど。

「俺の名前には、正義っていう意味がある」

 そして、ここで何故か勇者は、自分の痛そうな名前の意味を解説し始めた。
 多分、この世界では正義や、英雄の様な名前を付ける事は変なことでは無いのかもしれない。と言うかフルーツの名前を付けられたボクの方が圧倒的におかしいとは思うけど、正義ジャスティスって、痛いよ。

「何故そんな目で俺を見るんだ、お前の名前のほうがぶっ飛んでんだろうが」
「煩いなぁ! 別に可愛らしくて良いじゃないか!」

 しかし、その勇者は何故かボクが考えていて、一番言われたくなかった事を突かれてしまった。
 やはり、この世界でもライムという名前は、かなりおかしいようだった……名前は、改名したいよ。

「じゃあ、お前が自己紹介しろよ」

 ボクが、この勇者を貶そうと思う前に、今度はボクの番に強制的にさせられてしまった。こいつはドM豚野郎な筈なのに、何故ボクが、そんなやつに責められなければいけないんだ。可笑しいよ。
 ボクはこんなやつに下に見られてるのか。

「ボクの名前は言わなくてもいいよね、と言うか貴様には言わせない。
 因みにボクの生き甲斐はマイク君を陥れる事だよ」

 勿論、何も嘘のない真実を言っているけれど、勇者に何も言われないように、ナタリーのような殺気を出しつつ、勇者の事を睨んだ。
 流石にそれだけではあまり意味は無いと思ったので、莫大な量を誇るボクの魔力を放出させながら言った。

「お、おい、どんだけ本気を出して俺に殺気を出してんだよ」
「……ボクの嫌いな事は人に貶されることだよ」

 そんな状態のボクを見て勇者は少しだけ冷や汗を掻きながら、ボクのことを指摘し、マイク君とナタリーに限っては「え、あいつ貶される事が好きでああ言う事をやってんじゃないの?」と言う様な、極めて遺憾な言葉を発していた。

「……こっちはマイク君とナタリー、変人と鬼だから気を付けて」

 流石に、ボクは少しだけ、ほんっっの少しだけMっ気が有るとは思っていたけれど、流石にそこまで言われるほどの筋合いは無い。
 と言うか急に貶してくるのはマイク君の方じゃないか。
 
「なんでお前が説明を始めるんだ」 
「いや、だって早くあのなぞ生命体を討伐したいんでしょ? だったらこういう時間も少しづつ短縮していったほうがいいと思うんだよ」 

 流石に、ボクが言ったことに対、マイク君が反応しないわけもなく、睨まれながらすごい低音で質問された。
 ボクも流石に取り繕わないと、本当にMキャラが付いてしまうと思い、取り繕った。
 勿論、勇者を邪険に扱っているというわけではないのだが、人間を連れ去ったというのなら今すぐにでも作戦を練ったほうがいいと思ったのは本心からだった。……という体だけどね。
 それは勇者にはバレていないようだったが、マイク君は完全にわかっていた。
 
「じゃあまず質問するけど、勇者は何を目的にあの謎生命体を殺そうとしてるの? 殺しても勇者の連れの人たちの人が帰ってくる可能性なんて全くないんだよ?」 
「……はあ、俺は神に外なる世界からの外敵を倒すという風に言われている。だから殺さ菜殺さなければならない」 
 
 流石に、あんな取り繕い方をしたので、勇者の話を聞かないといけなくなってしまったが、しっかりと貶していこう。
 どうやら勇者の目的は、勇者からすれば、と言うか一般的な信徒、教徒ならば普通の考えなのだろうが、ボクのような無神論者や、無宗派の人間にとっては気狂いとしか思いようがない。 
 まあ、実際に神に出会ったことがあるので、もう無神論者を語ることはできないんだけどね。 
 
「じゃあ、その神様が言っている外なる世界からの敵を放置した場合はどうなるのさ? まあ、今現在の状態だと、何十もの都市が崩壊するだろうけど」 
「いつかはこの世界が崩壊するらしい。だから俺はあいつらを見捨てて倒しにいかないと行かないんだ」 
 
 本当に勇者はそういう風に思っているようで、すごく暗い表情になっていたが、そこまで落ち込むのなら世界なんて救わなくてもいいんじゃないか、と言う風に思ってしまうのはボクだけなんだろうけど。 
 
「へえ、そんなものが勇者の義務なんだ」
「そんな物ってなんだ、世界を守るために俺が居るんだぞ?」

 ただ、本当に思っていたことが滑ってしまい、口に出してしまった。
 しかし、勇者はボクのそんな無礼な言葉を聞いても、少しだけ気を悪くしただけで、切れると言う様な事は無かった。
 勇者からは、本当に馬鹿にされているような溜息を吐かれてしまったが。

「でもさぁ、考えてみてよ、世界の守護者が勇者だったら、神は何になるのさ? 世界の管理者? そもそもそんなものは国家と言う体制があるから管理者なんていらないじゃないか」
「……それは」

 本当にこの勇者は神に、と言うかアルテナにお告げ的なものをされただけなのだろう、だからアルテナのあの姿を見ていないからそういえるはずだ。
 アルテナを見たら世界の管理者を騙る幼女にしか思えないよ。

「それだったら、神と言う存在は存在しているのかと言う話になるよね、それはただの教会が勝手に言った事なのかもしれないし、それは勘違いかもしれない」
「……」

 本当に思っていたことをバンバンと言っているのだが、勇者は完全に黙ってしまい、自分の存在意義を考えているのか、もしくは神と言う存在について思考していたりするのかもしれないが、とりあえず、ボクのせいで混乱している事は分かった。

「それならば、勇者と言う存在は何なんだろうね? ただの勘違いで行動している愚か者か、それとも教会や国にいいように利用されている馬鹿ものか、君はそれに当てはまるのかな?」
「……俺は」

 勇者は完全に自分の意義と言う物を失ってしまっているようだった。
 ただ、勇者としてやってきた自尊心の様なものがあり、自分の存在意義がないと言う事は到底認められない事だったのだろう。
 まあ、ボクだって生きている意味がないとか言われたら絶望し掛けるよ。 
 
「俺には本当に存在意義がなかったのか」
「まあ、神みたいなのは実際に居るんだけどね、だから君はそれの雑用的な存在意義はあるよ?」

 勿論、勇者にボクが言った通り、ボクが見たものが幻覚だった可能性もあるし、夢だった可能性もあるし、本当に神を騙った幼女の可能性もあるし、あの天使さんが本当は神な可能性もあるし、だから一応神みたいな物と言う風に明言を避けて言った。

「……ライム少し殴るからこっち来い」
「いや、ちょっと待とうかマイク君! ちょっと殴るってどういう状態なのさ!」

 しかし、ボクが落ち込んでいた勇者に対して、気持ちをポジティブ方向へと上げていくために、慰めるために少しの存在意義を言ってあげたのだが、マイク君にはキレられてしまった。
 意味がわからないよ。

「お前、一応は存在意義があるのならあんなふうに言わなくてもいいだろうが、いま勇者は傷付いてるんだぞ?」
「いや、そう思ってたのは事実だし、それにそんなこと程度で諦めるんだったら、きっといつか諦めてるだろうし」

 本当にこういう時にだけマイク君は弱気になっているが、こういう時には相手の精神力を削りやすいのに……ボクが下種みたいになってるじゃないか。
 ……勿論、カッコつけていってるけど全て虚言だからね。

「いや、本気で殴るか――」
「そうか、ありがとう、少し勇気が出た」
「え」

 しかし、この勇者はポジティブ精神人間だったようで、ボクがするような精神攻撃が全く効かない厄介な相手だった様だ。
 本当に、ボクはポジティブ思考をしている人間と、貶されることを喜ぶ変態とは関わりたくない。
 
「よし、殲滅は明日決行しよう。流石に疲れてるからな。ただ、俺はあの化物には攻撃を与えられなかったりするから、お前が頑張ってくれると嬉しい」 
「うん、まあ、疲れてるって言う事は理解できるんだけどさ、その」 
 
 殲滅作戦は明日に行われることになったが、少し危険だ。主にボクの精神汚染がだけど。
 まあ、勿論、マイク君とナタリーは絶対についてくるだろうからそれも危険だろうけど、マイク君のG並の生命力なら危険は無いだろう。
 まあ、何事も、それは明日の行動次第なのだから、今から悩んでも意味はないだろう。 

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