TS転生は強制的に

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二十八話~ボクと勇者と対談~

 
 勇者に助けられたその後、元々、仲が最悪レベルに近い程に険悪な仲だったボクと勇者が、近い距離に居ると言う事で雰囲気も最低レベルになっていた。
 流石に、この雰囲気の悪さには朴念仁で馬鹿で空気が読めないマイク君でさえ、居心地が悪そうにボクの事を睨んできていた。……原因はボクでもあるけど、勇者でもあるから、ボクだけを睨まれてもねぇ。
 
「なんだよ、そんなに俺がお前らを助けるのがおかしいのか?」

 そんな、マイク君でさえも、口を開こうとしない様な雰囲気の中、何故かここで勇者が何も思っていないように、ボクに質問をしてきた……一番空気が読めないのは勇者だったか。

「……なんだよ、文句があるならサッサと言えばいいだろ」

 勇者の意外といえば意外だけれど、以前喧嘩したときの事からしたらそうなのかもしれない、と言うほんの少し予想していたことが当たってしまい、微妙な顔をしていると、勇者に文句を言われてしまった。
 別にボクは勇者には文句はないんだけど、少し珍しすぎるよ。

「別に文句はないよ」
「あ˝ぁ˝? 俺はそういう事が嫌いなんだ、早く言え」

 しかし、ボクがこの雰囲気の悪い中での会話を切り、そして勇者も文句を言われないと言うwin-winな状態になる、絶対に今の中で一番いい返答だと思っていたのだが、今度は何故かキレられてしまった。いくら何でも理不尽過ぎるし、完全に空気が読めてないよ。

「はぁ、なら言うけど、ボクと勇者は仲が悪かったから、何故急に助けてくれたのが分からなかったし……こんな雰囲気の中で更に質問をしてくるから、空気が読めないやつかなって」

 流石に、そこまで起こるようだったらボクも遠慮することなく言う事にする。と言うかそうしなければ怒られるのだったら絶対にする。
 もう、仕方なく、ではなく本気で相手を沈めに行くくらいの悪口を言う。

「……いや、お前の今の発言も相当空気が読めてないだろ」

 しかし、ボクの回答に勇者は満足していないどころか、先ほど勇者にボクがつたえと事をそのまま返された。
 ……意味が分からない。圧倒的に空気が読めていないのはどちらだと言う話だ。

「まあ、いい、それよりもお前ら、俺の連れを知らないか?」

 そんな風に、今まで会話していた話のをぶった切り、そして会話を変えてきたので、かなり重要な話をするのかと予想し、少しだけ肩に力を入れてしまったのだが、ボク達に質問してきたのは本当にしょうもない事だった。
 
「ご、ごめんね、見てないよ」 

 恋人が居なくなってしまったという事はかなり重大な事だろう。ただ、転生する前も、転生した後も、恋人と言う物が存在したことがないボクから関してみれば、ただの嫌味にしか感じない。
 ボクからしたら、恋人がいない事の方が重大な問題なんだけど。

「そうか、じゃあ、連れを探すのを手伝ってくれないか?」
「……う、うん、ボクは良いと思うけど」

 ボクが、そんな風に顔面偏差値の格差を思い知り、少し動揺しながら勇者を見ていると、今度は手伝えと言われてしまった。
 勿論、ボク的には探してもいいと思うけど、別に恋人くらい良くねって思っちゃうよね? さっさと合コンして来いよと思う。
 別にね、ボクも顔面偏差値は悪くなかったよ、ただ女顔すぎただけでね。……爆発して木っ端みじんになってしまえばいいのにね、リア充なんて死んでしまえッ! 
 
「マイク君とかナタリーはどうなのかな?」
「大丈夫だ、逆にこんな状況で断れるか」
「そうでしょ」

 ボクとしては、マイク君とナタリーには否定的な事を言ってもらい、ボク達が助けないと言う事をしたかったのだけれど、マイク君はこういう時にだけ善人になるし、ナタリーはそもそも無理だと思ってたし、最悪だよ。
 何でボクはこんなリア充と行動しなければいけないんだよ。おかしいよ、理不尽だよ! なんでアルテナはボクを女にしたのさ! と言うか、アルテナも何も干渉していないのに、地球の時は滅茶苦茶女ぽかったのさ?

「……なんでお前は嫌そうな顔をしてるんだよ」
「そりゃね、こんな危険な時に、一般人や要救助者を置いて、恋人を探すとかやばい奴だなって思っただけだよ」
 
 勿論、恋人を失ったせいか、勇者は前に会った時の傲慢な言葉遣いではあったものの、その傲慢な言葉と共に発生していた威厳のある雰囲気はなく、どんよりとした雰囲気があった。
 完全に、ボク達の事を気遣い、いつもの様な傲慢な勇者を気取っているのだろう。

「……」
「……」

 ボクだって、元々、こんなにへこんでいる勇者に暴言の様な発言をしたくはなかったのだが、先ほど、この勇者と言うドМ豚野郎が「隠すのが一番嫌いなんだよ!?」と言う風に、自ら、虐めてくれと懇願していたので、虐めてやった。少し気持ち悪いけど。

「……お前、容赦なく言ってくるな」
「いや、別に本当に言わせてもらうなら、何故今恋人を追うのさ? 君は勇者だ、だから何が何でもこの世界の住民を助けなければいけないはずだよ、それなのに色恋に走って、ふざけているのかな?」

 ボクは今までずっと溜まっていたことを放出することにした。
 勿論、完全に本心で言っている訳ではなく、流石にオブラートに包んで言っている。ボクだって善の心は持ち合わせているんだ。

 
「……ねえ、そういえばさぁ、あの何故生物を勇者は倒せるの?」 
「…………無理だな」 
 
 流石に、このまま勇者の事を貶していると、いつの間にか本心の事を叫びながら勇者をぶん殴っている可能性が高いので、自重して会話を変えることにした。
 ただ、謎生命体を倒せるかと言う事には触れないでおこうかと思ったが、流石に殺せるか、殺せないかの判断もつかないまま行動することは危険なため、聞いたのだが、普通に無理らしい。 
 ただ、無理と言うまでに少しの間があったため、きっと何かを隠しているのだろう。 
 
「まあ、良いよ、ボクはあれを倒せるし」 
「ほ、本当か! どういう手を使ったんだ!?」 
 
 ボクが何も考えずに言った発言が、勇者の何かに引っかかったようで、ボクの肩を揺さぶりながら、目の前で叫び始めてしまった。 
 しかし、ボクの倒す方法と言うのは、深淵魔法なので、あまり口外したくはない。しかも下手したら勇者はこの国の国教の所の勇者だった場合は、ボクまで殺されているので、更に言えない。 
 
「君だって隠しているんだから、ボクだって隠すよ。あまり公言するべき事でもないしね」 
「……そうか、分かった」 
 
 ただ、ボクが教えることを拒否した結果、勇者のテンションがすごく下がり、滅茶苦茶周りに漂う雰囲気も暗くなってしまい、闇と言う言葉で表現できるほど落ち込んでしまったようだ。流石にここまでの反応をされると、ボクが何か悪い事をしたように感じてしまう。 
 
「まあ、戦う時が来るんだからその時にはボクも、勇者も、どっちもばれるんだから仕方がないよ。だからそこまで落ち込まないでよ」 
「……はあ、それで妥協してやるよ」 
 
 勿論、深淵魔法は勇者にはばれたくないと思っていても、使わないわけにはいかないのでそうすると必然的にばれてしまうので、諦めている。 
 それは勇者にもわかったようで、妥協してくれた。……あのまま言及し続けられたら結構きついんだけどね。 
 
「よし、一応詳しい自己紹介をしようじゃないか。こいつの名前もライムと言う事は分かっているが、それ以外は分かっていないがな」 
「……急にテンションが高くなったね」 
 
 そんな風に異常なテンションの復帰に驚きつつも、勇者との会話を進めて行った。 

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