TS転生は強制的に

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十九話~ボクとくそうざい勇者と諦観の姿勢のマイク君~

 ボク達が相変わらず馬鹿話をして歩いていると、前方からラノベで言う、前方から、遠くに居てもすぐにわかるような、派手でキラキラと輝いて見える様な鎧を着て、女の人を侍らせている男の人が通って来た。
 昭和の大スター的な人が転生したのかな? 
 
「やあやあ、そこの可憐なお嬢さんたち、冒険者ギルドを知っているかな?」 

「……」 
 
 そして、その昭和の大スター並みのキラキラとした鎧をつけている人はボク達に話し掛けてきた。
 その昭和の大スター的な人は、意識的にしているのか、無意識的にしているのか、また、故意にしているのか、隣に居るマイク君の事を完全に無視して、女子に話し掛けてきた。
 少しだけ、不審者感がするけどね。……と言うかバブル時代を想像できるような服装で外を出歩いている時点で不審者ではあると思うけどね。ボクは平成生まれだったからバブル時代がどういう物かはよく分からないけど。
 
「今日は冒険者ギルドは開いてないよ」 
「……そうか~、ならどうしようかね」 
 
 勿論、そんな風に不審者の様に思っていても、人は見た目ではないと言うし、それに悪意無く、ただ単にマイク君の事が見えて居なかったという事もありうるから、ここでは明言できないけど少しだけ気持ち悪い。
 マイク君は嫌悪を全く隠さずに顔に出ていたが、ボクは確りとそれを隠しつつ、相手にギルドが締まっているという事を話した。 
 
「じゃあ、お嬢ちゃんはこれから何をするのかな?」 
「……」 
 
 しかし、その昭和の大スター並みに派手な男の人は、何故だか分からないけれどギルドが締まっているという事実を知ったのにもかかわらず、ずっとボク達に会話をし続けた。
 もうこの時点で相当不審人物ではあるが、更に今後のボク達の予定を聞いてきた。これはもう不審者確定なのでは? と言うか完全に不審者とか性犯罪者が吐くようなセリフなんだけど?
 近くに衛兵さんは居ないかな。
 
「俺たちは町の外に出るだけだ、もういいだろ、行かせてもらうからな」 
「お前だけが行けばいいんじゃないか? 俺たちはこのお嬢さん方と会話しているんだから」 
 
 嫌悪感を隠さず、顔に出していたマイク君も、流石にこの人は危ないと言う事を感じたのか、ボク達を守るようにその男からの会話を切ろうとしていた。
 しかし、その男はマイク君の答えにも応じずに、しかもマイク君の事を貶してボク達と会話すると言う風な横暴で、糞みたいな台詞を吐いていた。
 その事を理解したボクは、無意識にブチ切れていた。

「あのさぁ、普通、会話には第一印象が大事だって言う事は分かるよね? それは普遍的な物だろうし、その後いくら取り繕っても第一印象は変わりはしないと思うよ? 上方修正的な意味ではね?  
『破拳』」 
「あぶなっ!?」 
 
 その男の反応にキレてしまい、ボクが一撃であの男を気絶させようと思い放った攻撃は軽々と避けられてしまった。
 ただ、これでボクという人間に警戒を持ち始めたらしく、少しだけ臨戦態勢になっており、軽薄そうな表情からボクを睨むような表情になっていた。
 今すぐに衛兵を誰か呼んできてぇ!!!

「何してんだよ!?」 
「はぁ? 何をしている? それはボクたちの総意でもあるんですよ? 今の状況で何故この街にやって来たのかは知らないけれど、今この街はオークに襲撃されているんだよ。そして現状、推定最強がボク達なんだよ、だから邪魔しないでもらえるかな?」 
 
 しかし、あの男はボク達の抱いている感情を全く理解していないようで、心底疑問そうな表情でこちらを見てきた。
 流石にここまで来ると、嫌悪と思っていた行動が滑稽としか思えなくなってしまう。現にボクはこの男の行動を失笑しながら眺めていた。

「本当に君たちには失望したよ、マイク君の最後通告を侮辱するような形で蹴って、その挙句ボクがキレたら本気でわからないような表情をして」
「な、何を言っているんだ!? お、俺は勇者だぞ!」

 今度は言い訳に走ったらしく、嘘ということは目に見えているような、回答だ。本当に見苦しくて滑稽だ。
 哀れな事にもこの男は言い訳をすることでボク達の怒りを増幅させているという事すらも理解していない様子だった。

「では勇者と言うならばまず、その義務を果たして貰えませんか? 勇者はこの国に現れてから一度も功績を上げていないではないですか。
 権利を押し付ける前に義務を果たしてください」
「分かった、だったら俺が義務を果たした時はお前を連れて行く、わかったな!」
「ふふふ」

 本当にこの男が哀れだ。
 もしかしたら、勇者という役職には望んでついたわけではない、と言う可能性もあるが、引き返せる立場では無くなっている。
 それに引き返すとか言った暁には、それはもう処刑されるだろう。偶像が偶像としての役に立たなかったのだから。

「貴女! いい加減にしなさい! 無礼にもほどがあります」
「そうですか、でも九割方は貴女達が悪いですよ?」

 最後に、取り巻いている女性の一人がボクに向かって捨て台詞を吐いてきたが、そんな事は無視した。
 そして、その場にはボク達三人だけが残った。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ああああああ! 本当にくそウぜぇぇぇぇ!!」
「しかしまあ、ライムはよくあいつを殴れたな、あいつきっと本当の勇者だぞ?」
「え?」

 あの、迷惑極まりない男と女たちが居なくなり、さっきまで思っていたことを爆発させた。
 勿論、マイク君も、ナタリーも清々しい表情になっており思っていたことが共通していたと言う事は考えなくても分かった。
 しかし、マイク君がすごく不安になるような台詞を吐いていた。

「だってそうだろ、この時期に来て、豪奢な鎧を装備している人間なんて応援に来る勇者以外の人間は存在しないと思うが?」
「……ど、どうしよう、勇者殴っちゃったよ?」
「……ライムらしいな」

 本当に、焦ってマイク君に助けを求めたのだが、何故か馬鹿にされてしまった。
 ライムらしいとは言っていても、つまりは、こういう馬鹿な事をする人間=ライム、と言う風に式ができると言う事になってしまう。
 地球のころはカズトの方が圧倒的に学力は低かったのに。まあ、ボクは見知らぬ人に餌付けされてほいほいと付いていきそうになったことは有ったけど。

「それよりもだ、お前大丈夫なのか? 義務を果たしたらお前を連れて行くとか言ってたけど」
「……ボクにとってはそれよりも、で解決できる話じゃないんだけどね。まあ、その連れて行くとかの方は大丈夫だよ」
「いや、だって返事してたじゃないか、まさかそういうのが趣味なのか?」

 ……一瞬、本当に殴ろうと思ってしまったが、寸前のところであきらめた。
 マイク君は本当にカズトと言う事は変わりようのない事実で、本当に心配していても素で相手を馬鹿にしたり貶したりするようなセリフが入ったりしてしまうから、仕方がないのかもしれない。
 まあ、所詮はボクよりも馬鹿なカズトって事だよ。

「別にボクは連れていかれることを認めてないよ?」
「いや、だってお前、ふふふって、挑発的に笑ってただろ」

 マイク君はそう言うと、「こいつ、自分のした行動すら忘れているのか?」と言う様なすごく、ボクの事を下に見た目で疑問に思っていたことを言っていた。
 ……本当にマイク君は下種いけど、やっぱりカズトって事は変わりないね。本当に。

「マイク君? 何言ってんのさ? ボクはただ挑発的に笑ってただけだよ? ボクは一言も、はいとかわかりましたとかって言ってないんだよ?」
「いや、そんな屁理屈は通じないだろ」

 ボクが考えていたことを馬鹿なマイク君にもわかりやすく説明したのだが、頭を抱えながら「お前本当に嫁ぐことになったらどうするんだよ」と言う様な、ボクを本気で心配するような口調で睨んできた。どうやら馬鹿ではあるものの友達想いの様だ。そこに痺れる憧れるぅー!

「本人の合意もないのに、勝手に連れて行ったら、それはただの誘拐だよ? 誘拐って言う事は犯罪なんだよ? それはたとえ勇者にも通用するんだよ? だからね、絶対にボクを連れて行くなんて言う事は無理なんだよ」
「……ああ、そうか、今日俺はお前よりもあいつ勇者の方がうざいと思ってたけど、違うんだな。お前の方がうざすぎて、清々しい程うざいから、もう俺たちが無意識の中であきらめてたんだな」

 やっぱり一度殴った方が良いだろうか?
 そんな風に思いながら、ボクたちは勇者たちが走って行った方向であろう、街の外に、ボク達も移動していった。

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