TS転生は強制的に

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十七話~ボクと転生者ことマイク君と阿修羅ことナタリー~

  オークと、何故か登場したドイツ戦車と戦ったあと、ボク達は止まっていた宿屋に帰ってきていた。 
 
「さあ、少し、状況を整理しないとな」 
「うん、そうだね、じゃあまずマイク君が隠してることから言ってくれるかな?」 

 そんな中、身の周りの片付けをした後にマイク君に呼び出されてしまった。まあ、話の内容は、戦車と言う存在を知っていたかということだろう。
 別に無視してもよかったのだが、そんな事をすると、流石にボクとマイク君の仲が滅茶苦茶悪くなる。 
 
「……鬱陶しいな、まあ、いい、お前も気付いているだろうが俺は転生者だ。日本人だ」 
「……ボクも元日本人だよ」 
 
 やはり予想通り、マイク君も転生者だったようだが特に驚くことは無いだろう。 
 しかし、厄介な事にマイク君は元同郷の人間だ、もし顔を合わせた事が有る人だったら本当に嫌だよ、裸で抱き着いちゃったし。 
 
「どうする? 向こうでのことを合わせた自己紹介でもするか?」 
「したいならすればいいんじゃない?」 
 
 ただ、そんな一度顔を合わせた人間だとしても、顔と名前を憶えている人はそこまでいないだろう。それに、日本人で数億人いるけれど、そのうちの顔を見た事が有ると言うのは数万人くらいにしかならないはずだ。 
 だから、顔見知りなんてことはほぼほぼあり得ない事だ。 
 
「じゃあ、させてもらうぞ、俺は向こうでは中学生だった。名前は木村カズト、よろしく」 
「ぶはっ」 
 
 しかし、その可能性を裏切るかのように、マイク君が言った名前は、中学校に居た同級生の友達の名前だった。 
 ま、まあ、別に同姓同名の同年代の人間位いるだろう。同姓の同世代とか、同名の同世代の人とかを見たことはあるけど、その二つの条件がそろっている人間はあまりいないだろう。 
 可能性位は……あるかな。 
 
「もしかして、もしかしてだけど、友達に女装の服を作らせたカズトではないよねぇ」 
「な、なんでその事を知っているんだっ!? まさか、俺ってそんなに有名だったのか?」 
 
 そんな能天気なマイク君、ことカズトの台詞を聞き、目を伏せてしまった。 
 さっきボクがマイク君に聞いた通り、ボクはカズトに女もののサンタコスを作らされたことがある。まあ、ボク自身楽しく作ってたんだけどね。 
 その女物の服を彼女とかに渡すのかと思ったら、自分で着ていて、そしてもう一枚作らされた方を着させられてしまった。楽しかったけど。 
 
「さ、自己紹介は終わったからあの戦車についての事を話そうか」 
「おいおい、お前の自己紹介が終わってないだろ? 俺が言ったんだからお前も言えよ貧乳痴女」 
 
 そんなとても無礼、まあ裸で抱き着いちゃったから無礼でもなんでもなく事実なんだけど、カズトだけにはボクがライムと言う事はバレたくない。 
 絶対にいろいろと変な事を言われるよ。 
 
「まあ、いいか、じゃあ今年も作って貰おうかな、貧乳痴女ことライム君?」 
「……」 
 
 しかし、ボクがライムと言う事を隠蔽しようといろいろと画策していたのだが、その事は全く意味がなかったようだった。 
 元々、初めからバレていたのか、それとも転生者と言う事から気付いていたのか、単なる勘なのか。まあ、ボクは地球でもこの世界でも名前は同じだしね。 
 それに性格も同じだったらバレるのかもしれないけどね。流石に洞察力がやばいでしょ。 
 
「滅茶苦茶視線を回してるけど、お前マジでバレてないのかと思ったのかよ」 
「だ、だって、他人の空似とかって可能性もあるじゃん。ボクの同世代の同姓同名の人間なんているかもしれないじゃん」 
 
 どうやら、本当にボクの地球での行動を見ている人間ならば、特定が簡単にできるくらい特徴的だったのだろう。そこまで特殊な性格をしていたわけではなかったはずなんだけどね。良く分かんないよ。 
 と言うか、それを知って痴女痴女って、完全に煽られてるって事だよね。完全にムカつくよ。 
 
「何時からわかってたのさ?」 
「いや、流石に確信は今日初めて着いたけど、初めに会った時から予想はしてたよ」 
 
 そんな風に自信満々にボクを見下すようにしながら発言していたことがさらにムカつく、カズトの元の性格は今のマイク君の様な朴念仁ではなく、性格の悪いクソガキみたいな感じの人間だった。 
 口は達者で、性癖も少し歪んでいて、そんな奴が一応は小学一年のころからの腐れ縁と言うやつだ。 
 
「……話は変わるけど、なんで君は朴念仁キャラに進んでんのさ?」 
「いや、朴念仁キャラってかっこいいと思ったからな。どうだ、カッコいいか?」 
 
 しかし、求めたこととは全く違う返答が帰ってきて、しかも最も意味不明な回答だった。 
 しかし、マイク君、と言う体は爽やか系のイケメンと言った感じで、カズトが目指している不思議系ではない気がする。 
 まあ、ボクが二度目の人生でも得られなかったカッコよさと言う物が有ったので、流石に切れそうになった。 
 
「カズトがカズトの時点で君にかっこよさなんて存在しないよ」 
「まあ、そうだろうな、ライムが滅茶苦茶イケメンの奴に変わったとしても、絶対に可愛さが前面に来るだろうね」 
 
 そんな風に言ってはいけないことを言い出したので、マイク君の足を踏み潰した。精一杯、滅茶苦茶力んで。 
 
「いってぇ!? 急に何すんだよ!」 
「くそ下種イケメン野郎に鉄槌を下しただけだよ、性格不細工」 
 
 そして、そんな風に足を踏んだのだから痛がるのは普通なのだが、目を少し潤わせながら睨んでくるマイク君の姿を見て、少し、いや、かなり優越感を感じた。 
 
「ふふ、悪い子猫ちゃんだ。少しお仕置きをしないとダメなようだね」 
「あぇ」 
 
 しかし、急に痛がっていた表情をやめ、急にボクに抱き着きながら耳元で囁き始めた。 
 地球でのカズトだった時ならば、カズトの容姿フツメンと言った感じで、きっと何も感じなかっただろうが、今のマイク君はかっこいい。 
 それにボクは女になって十五年くらいになっているんだ。流石にこんな奴に抱き着かれて、耳でささやかれたら、顔を真っ赤にして固まってしまう。 
 と言うか、以前にもこういう事が有ったが、相変わらずボクには抗体ってのがないんだね。悲しいよ。 
 
「ぷはは!! お前俺の正体がわかっても引っかかってんじゃん」 
「煩いなぁ!! 君だってナタリーに「マイクはかっこいいね、私と付き合わない?」とか言われたらどうせ固まるでしょ!」 
 
 ボクはマイク君が大笑いをするまでずっと顔を赤くしてしまった。 
 勿論、その時点で笑われることは分かってたけれど、流石にここまで笑われると腹が立つ。カズトとかだって滅茶苦茶美人さんに抱き着かれたら固まるでしょ、性格が滅茶苦茶悪いと分かってても。 
 
「むぐぐ、君だってボクの上半身裸の状態を見てて顔を赤くしてたくせに」 
「はっ、お前だと分かった今、何も感じはしないに決まってんだろ」 
「……だったら脱いでやるよ!!」 
 
 流石に、これ位すれば、現在進行形で童貞なマイク君には耐えられないだろうと思って行動したのだが、あまり反応はなかった。 
 
「ほら脱いだよー」 
「……」 
 
 しかし、やはり童貞な事には変わりなかったようで、ボクが上着を脱ぎ棄てた時点で、ボクの来ている下着を穴が開きそうなくらい凝視していた。 
 やっぱりこう言う所はカズトなんだね。くそ下種イケメンエロ餓鬼なのか。 
 
「あれれマイクくぅん? どしたのかなぁ? そんなボクの下着姿を凝視して」 
「……ライム、少し女同士で話をしない?」 
 
 ボクが下着に手をかけ、脱ごうとすると、突然、狙ったかのようなタイミングでナタリーが入ってきた。 
 勿論、ボクが服を脱ぎ、それをマイク君が凝視しているという状況では、確実にいかがわしい事をしているように思われるだろう。と言うかボク達もいかがわしい事をしてるから思われるのは確定なんだけどね。 
 
「じょ、冗談だからね? 別にマイク君に本気でボクの裸を見せようとしたわけじゃないからね?」 
「うん、冗談でもなんでもいいから私の部屋に来ようか?」 
 
 そんな風に威圧されながら言われてしまったので、流石についていかないと、死んでしまうと思った。物理的にではなく、社会的に。 
 そして、そんな状況のボクを見ていたマイク君は、下着を凝視していた目から死んだような目に瞬時に変換させており、いやいや見させられているという様な感じになっていた。 
 本当に糞みたいなやつだね。 
 
「ゆっくりと、丁寧にお話ししようね?」 
「は、はい」 
 
 その優しそうな言葉とは裏腹に、目だけで人間を殺せそうなナタリーに威圧させられ、半ば強制的に事情を吐かされ、そして説教を二時間近くさせられた。 

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