TS転生は強制的に

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十六話~ボクとナタリーと近代兵器~

「『破拳』『破拳』『破拳』『破拳』『破拳』『破拳』『破拳』『破拳』」
「ら、ライム、大丈夫? 目が死んでるわよ?」

 戦い始めて、数分後。
 ボクとナタリーは苦戦もせずにオークを屠って行っていた。
 魔法での遠距離攻撃と、ボクの拳での近距離攻撃が功を奏している様で、まだ一撃も食らっていない。
 ただ、遠距離魔法よりも、近接攻撃に普通は頼る為、ボクは延々と破拳と言う風にとなえる良く言えば作業、悪く言えば苦行が続いていた。

「『爆拳』『爆拳』『爆拳』『爆拳』『爆拳』『爆拳』『爆拳』『爆拳』」
「ほ、本当に大丈夫なのっ!?」

 一体一体殺していくのが面倒になったので、範囲の広い爆拳を使用し始めた。
 爆拳は、読んで字の如く、相手を殴ると爆発するスキルだ。まあ、爆風で敵をボク達から話したり、けがをさせたりして、こっちが有利に戦えるためにやった事だったのだが、結構の句たちにも爆風が来て、辛い。
 と言うか、延々と唱えている方がつらい。

「『爆拳』『爆拳』『爆拳』『爆拳』ちょっと交代」
「『ファイアーボム』『ファイアーボム』『ファイアーボム』『ファイアーボム』『ファイアーボム』」

 流石にこれ以上続けていると、心が病んでしまいそうだったから交代した、と言うか、交代を強制させた。
 勿論、ナタリーも結局は同じような事の繰り返しで、聞いているだけでも気が病んでしまいそうだった。
 ファンタジー世界での戦いって派手なイメージがあったんだけど、同じ言葉を連呼しながら戦わないといけないとか、下手したら地球での戦いよりもつらいよ。

「本当にマイク君には核撃魔法を確りと習得してもらわないとね、普通に病んで精神が先に死んじゃうよ」
「『ファイアーボム』『ファイアーボム』『ファイアーボム』『ファイアーボム』こ、交代」

 しかし、そんな事を考えていたのもつかの間、ナタリーの魔力がなくなりかけている様で、またボクに交代した。
 結局、ボクとナタリーの主戦力は確実にボクなので、ボクはずっと頑張っていないといけない。ずっと、爆拳、……って言っているのは本当につらいよ。

「『爆拳』『爆拳』『爆拳』『爆拳』」 
「ドゴンッ!!!!」

 ボクが、相も変わらず、爆拳を撃ちまくり、周囲にドン、ドン、ドン、と言う様な音を発しながらオークを屠っていると、何処からか、ボクの爆拳をも超えるような爆音を響いた。

「おい! なんだあれは!?」
「あれは、生物、なのか?」

 どうやらやばいものがあるらしいのだが、周りにオークが居る事やボク自身の身長が低いと言う事もあり、みんながざわついている原因の者? 物? を目視できない。
 ただ、生物なのかも無機物なのかもわからない様な物ってなんだよ?

「『爆拳』『爆拳』『爆拳』何があったの?」
「さあ? それよりも先にオークを倒さないと」

 あれは生きものなのか? という質問に対して、もしかしたらボクの戦い方が逝かれ過ぎていて、魔族よりもやばい、悪魔よりも天使よりもやばい存在だと思われたのかと思った。
 ただ、生物なのか? と言うのは少しおかしいから違うと言う事は理解できたけど、普通は「な、なんだあの動きッ!? に、人間なのかッ!?」と言う感じになるだろうから。

「ドゴゥッ!!」
「あ」

 どうやら、その生物かどうかわからない者が、ボク達に向かって攻撃を加えたようだったが、周りにオークが居たおかげで、ボク達には直撃しなかった。
 しかし、その瞬間、オークの壁から見えたのは、近代兵器だった。

「い、今すぐに逃げるよ!」
「はあ? あの鉄の塊が――」
「そんな場合じゃないんだよ!」

 流石に、あれの危機感は分かっているけれど、この世界には近代兵器はおろか、重火器すらも存在していない。
 つまりは、あれ、戦車の恐怖を分からないし、近づいても離れても一瞬にして殺されてしまう。抵抗など無駄なのだ、それこそ逃げられれば勝利なのだ。

「あの筒が向いている方向には行っちゃだめだよ!」
「う、うん」

 どうやら、ボク達が逃げたことから先にボク達以外の人間を狙い始めていた。
 ……そういえば、ボク達を狙っている訳ではないと言う可能性もありえたのだが、やっぱり人間を狙っている様だった。
 だったら誰が操縦してるんだって話だよね。ご丁寧にハーゲンクロイツが書かれてるし。

「このままマイク君のところまで走っていくよ! 流石に核撃魔法を食らえば動かなくなるでしょ」
「……ちょ、ちょっと待って、なんでそんなに走れるの」

 どうやら、本気で走りすぎてナタリーは疲れてしまったようだ。まあ、ボクみたいに普段馬鹿みたいにマイク君と走り合ってるわけではないし、そもそも普通の女子はそんな事をしないから、ボクが異常なだけだろう。
 別に元男だから仕方がないでしょ、サルではないけど。

「じゃあ、ボクは先にマイク君の所に歩いていくけど、出来れば匍匐前進で行ってもらいたいけど、まあ、ゆっくり歩いてたら大丈夫だと思うから」
「わ、分かったわ」

 そのまま、ナタリーを置きマイク君の居るところまで、全力でダッシュした。別れる途中に「ライムって化け物なの?」と言う声が聞こえたが、意図的に無視することにした。
 だって、流石に体力があるだけで化け物扱いとか言わないでもらいたいよ。それなら怒った時の威圧がやばいナタリーの方が化け物だよ。


「ま、マイク君! 戦車! 戦車!」
「は? 何言ってんだ? と言うかこの世界に戦車ってあるのか?」

 マイク君のところへ行き、報告したのだが、滅茶苦茶焦っていたので、戦車と言う風に報告してしまった。この世界には戦車は存在していないはずなので、理解してもらえないはずだ。

「なんか、その、滅茶苦茶やばいのが居るんだよ!!」
「いや、お前の語彙の方がやべえよ」

 しかし、戦車を説明しようとしても、この世界にはその前提条件である火器すら存在しておらず、果ては火薬なども開発されていないので、それも説明しないといけないので、どう説明すれば理解してくれるかが全く分からなかったので、言葉が滅茶苦茶になってしまった。

「いいから! 早く来て!」
「お、おう」

 ナタリーと同じ様に、ボクはマイク君を引っ張り、戦車が見える場所まで連れて行くことにした。まあ、流石にあれは見なければどのくらいの脅威があるのかを理解できないと思う。見た目は鈍重な鉄塊なのだから。

「ほら! あそこ!」
「なっ!? 何故、ティーガーが」

 ボクが引っ張り出し、戦車を見せると、何故かマイク君は名前を言っていた。確かにドイツ戦車の有名な戦車ならティーガーになるだろうけど、何で知ってるんだろうか?
 ……まさか、ボクと同じ、転生者? それは絶対に嫌なんだけど、ボクの裸を見せてしまったのに、前世が殺人鬼とかだったら。

「早く! 核撃魔法を!」
「あ、ああ、分かった。
 森羅万象をつかさどる神、アルテナよ、我に力を『大爆発エクスプロージョン』」

 マイク君が放った核撃魔法は戦車に命中した。
 戦車に命中したときに、周囲に居たオークたちも爆散し、地面をも爆散した。その結果、数百のオークは一瞬にして死亡した。
 そして、標的である戦車は、本体の部分は傷付きはしているものの、内部が露呈しているような部分はなかったが、砲身部分は真っ二つに折れ曲がっており、球を打つことは困難になっていた。

「マイク君! 早くナタリーのところへ行って逃げるよ!」
「ほかの人達は……って、流石に戦車が出てきたら生き残ってはいないだろう」

 そのまま突っ立って、何かを考えているマイク君の耳元で大声で叫び、現実に意識を戻した。
 マイク君の言う通り、ほかの人達は生きている可能性は少ない。まあ、完全に死んでいるかの確認はしていないが、見知らぬ人のために命を賭ける行為をすることは愚行にしか思えない。
 そんな蛮勇はボクは持ってないんだよ。

「ナタリーは途中に居るから、急ごう」
「分かった」

 ボク達は途中でナタリーと合流し、ボク達は走りながらエルンストへ戻って行った。



~~~~~~~~~~



「も、もうボクたち以外の先発隊の人達がやられちゃったよ」
「なっ!? ……わかった、お前たちは帰って休んでろ」

 ボク達は、エルンストの外円部に集中して配備されていた冒険者、もしくはエルンストの常備兵、そして、戦える全員が居る、最終防衛線に居た、指揮官的な人に先発隊の状況を報告した。
 幸いなことに、この指揮官の人は旧日本帝国軍の軍人の様な思考回路は持っていない様で、「味方が死力を尽くしたというのに、なぜ貴様はのこのこと帰ってこられるんだ!!」と言う様な事は言わずに、ボク達の事を心配してくれた。

「よし、流石に今日は帰ろう、もう俺は魔力がつきかけてる」
「ボクはもう精神的につらいしね」

 ボクとマイク君は一緒に弱音と言うか、同じような事を言っていたが、マイク君の目線からは「話を聞かせてもらうぞ」と言う様な目線があり、何かを企んでいるような目だった。

「はあ、分かったよ」

 そんな風に答えた。

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