TS転生は強制的に

lime

導入~理不尽なロリ神と性犯罪者予備軍の天使さん~



 ボクが目を覚ますと、そこには何も話してもいないのに、怒っている幼女が居た。

「おい、だから私は幼女ではないと言っているだろうが! お前には耳がついていないのか!」

 ……ボクが目を覚ますと、そこには怒り狂ったロリが居た。

「それはただ単に言い方を変えただけだろうが! 私がお前よりも数千倍も長く生きているんだぞ!」

 …………ボクが目を覚ますと、そこには顔を真っ赤にしながら怒っている、自称約一万歳のロリババアが居た。

「だからロリは、いらない! 婆もいらないよ!」
「……いつまでこのやり取りを続けるんですか? 流石に四、五回も続けると飽きて来ますよ? もう少し他の事を」
「お前のせいだろうがぁぁ!!」

 今日最大の叫びが聞こえた。
 人生には分からないことがたくさんある。それを共有することがいかに難しいか、それさえも理解する人間は少ないだろう。と言う言葉をどこかで聞いた事が有るので、こんな状況になるまでの状況を説明しようと思う。
 勿論、拒否権と言う物は存在しない。



~~~~~~~~~~



 ボクの名前はライム、普通の中学生だ。
 特に病弱な体質でもないし、健康過ぎて運動神経が良いという体質でもなく、少し平均以下のだけれど、一番の悩みは、歳を重ねていくごとに女顔になっていく事だ。
 それは普通の事だろ? と言う人もいるかもしれない。ボクも名前もライムと言う名前だから仕方がないかもしれないが、ボクは男だ。れっきとした男の子だ。男の娘ではない。
 もしかしたら、君たちの一部分には「リアル男の娘とか……最高だぜ!」と言う風に思っている野郎が居るかもしれないが、考えてみてほしい、周りの男子が男っぽくなっていく中で、ただ一人自分だけが可愛くなっていくと言う事を。

 それだけなら別に良くね? と言う奇人が居るかもしれないので言っておくが、その男子たちは男っぽくなっていくに連なって性欲も出てくる。……ボクにもあるけど。
 その結果どうなるか、もうわかる人が出て来ているかもしれないけれど、一部の男子変態から性欲解消のネタとされている。所謂オカズ。

 別にボクは同性愛者を否定するわけでは無いんだけど、流石に同性のやつにそういう事をされるのは気持ち悪い、生理的嫌悪がする。

 君たちが思っている事は分かっているよ。それのどこが普通なんだって。
 でもね、ボクだって普通って思いたいんだよ。それに人間には現実逃避をしなければ自殺しそうになる位の事が有る。ボクの場合はこれがその事柄だ。

 そして、夏試験が終わり、もうすぐ水泳の授業が始まると言う季節。普通の男子にとっては、好きなあの娘、もしくはエロいあの娘の水着を見れる! と言う風にはしゃぎだすのだろうが、ボクの場合は全く違う。
 むしろ逆だ。
 だって考えてみてよ。ボクと同じ性別の奴から下心満載の目で見られて、少しだけ痴漢する奴まで現れるし……本当に地獄だ。死にたくなる。

 まあ、全員がそんな阿呆みたいなやつではなく、ボクの親友であるカズトなどはボクの事を守ってくれる。だから精神的に病む事は無くなっている。

 そんな感じのボクだけれど、遊びから帰る途中に、電車を待っていると、突然ナイフを刺されて意識を失ってしまった。そして目覚めた所がここと言うわけだ。



~~~~~~~~~~



「なにお前は回想をしているんだ」
「なんでもないよ。えっと、それで君はどこの子かな? 名前を教えてくれないかな?」

 ボク自身もここが何処なのか、そしてなぜ目の前に幼女が居るのか、それも分からないが、自分の事を心配するよりも、幼女を先に心配してあげないと人としてどうかと思う。

「私を子ども扱いするな! 私は神だ! 嫉妬と慈愛の女神、アルテナ様だ~!」
「アルテナ様!? 大丈夫ですか!?」

 善意からの発言をしたのに、良く分かんないけど文句を言われ、しかも、羽をはやした、天使っぽい美女まで出てきた。
 アルテナ様、と言っていたから、まさか本当にあの幼女が神なのか?

「おい! そこの貴様! アルテナ様を幼子幼子と貶して! そんなうらや……そんな無礼な事は看過できないぞ!」
「え、いまちょっと、うらやましいって言いかけていなかっ――」
「黙れ! これだから男は嫌いなんだ!」

 ……この人たちは本当に何なんだ。
 一人は幼女っぽい見た目なのに、幼女ではないと言い張るし。
 ……まあ、これは小人病とかそんな病気もあるので、そういう可能性があって、ボクが滅茶苦茶失礼な事を言っているのかもしれないが、目の前の天使は一体何がしたいんだ。
 コスプレしてるし、羨ましいとか言ってたので、指摘したら逆ギレしたし、ボクもう怒っていいかな?

「ふんっ! じゃあ落ち着いたから私から話をしてやる」
「なんでそんなに威張ってるのさ?」

 そんな風に威圧されたり、理不尽に罵倒されたり睨まれたり逆ギレしたりと言ったことをされて、黙ったボクに今度は仰々しく、そして偉そうにボクに向かって話してきた。
 急に偉そうに喋りだしたので質問したのだが、やっぱり睨まれた。……ボクは何も話すなってことなのかな? 横暴すぎるよ。

「……おめでとう! 君は一億人に一人の可能性に当選したよ! だから異世界に行ってね!」
「いや、ちょっと処か少しも理解できないんですけど!」
「ああ、安心して、拒否権は――――実験動物の様な立ち位置の今の君には存在しないよ」

 ……拒否権があるのかと思ったけれど、ないんだね。それのどこに安心する要素があるかは知らないけど、ボクにとっては不安になる要因しかないよ。

「じゃあ、説明するよ。
 まず、君がこちらの世界、いや星と言った方が良いか、まあ、そこは今異世界の軍勢によって脅かされようとしている。勿論、私なら対処できるのだけど、それじゃあ意味がない。私だって対応できない場合があるかもしれないし。
 だから君を、と言うか異星人を使うと言う事だ。こういう風に言えばゴブリン並みな知能の君でも分かるだろう?」

 分かりやすかったよ? とても分かりやすかった。まるで教師の話を聞いているように分かりやすかったよ? でもボクはゴブリン並みの知能ではないからね? ……もしかしたらゴブリンが高等な知能を持っていたらそれは間違いではないけど、これは絶対に貶されている。それだけは分かる。

「だから君の望む能力や望む容姿を与えたかったんだけど、君は私を怒らせた。だから君は女として向こうに行ってもらうよ」
「え、ちょっと待ってよ! 何で今でも女っぽいのに、女にならないといけないのさ! 理不尽だよ! 神だからって許されないよ!」

 そんな風に文句を言っていたのだが、やがてボクの意識が薄くなり、そして遂に意識が途絶えてしまった。
 そんな中、一瞬見えたのはアルテナの嘲笑とそれをほほえましく見る天使の微笑だった。

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