TS転生は強制的に

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十三話~ボクと白虎と覗き野郎~


 ボクが目を覚ますと、何故か目の前に、十代後半の美少女がボクに向かって土下座していると言う本当に意味不明な状況になっていた。…
 確か、ボクは猫ちゃんに何かをされて気を失ったはずなんだけど……猫ちゃんはどこへ行ったのさ?
 と言うかこの人は一体誰なの、あとボク服脱いだままだったから滅茶苦茶恥ずかしいんだけど。

「先ほどの無礼千万をお許しくださいっ!」
「いやいや、あの、先ず誰?」

 しかし、そんな疑問を知っていて、ボクの事を混乱させようとしているのか、もしくは知らずにただ単に不審者、もしくは天然か何かなのだろう。その時点でだいぶやばいけど。
 それに、パンツ一枚しか着衣していないボクなんかに土下座とか、ボクの方が圧倒的に無礼千万な人間なんだけどね。だから滅茶苦茶居心地がと言うか、ギャップがすごいと言うか。

「妾は白虎と言う」
「あの、すみません、ここら辺に居た猫ちゃん知りませんか?」
「……はあ、だから妾は猫ではないと言っておるだろうが」

 ……この人は何が言いたいんだろうか、やっぱりボクを混乱させたいだけなのかな、それとも自分の事を猫だと言う風に勘違いしているような精神異常者か。
 まあ、どちらにしても不審者って言う事には変わりがないんだけどね。

「本当に誰なんですか? 憲兵の人を呼んできますよ?」
「……ああ、そうか、こうすれば流石にわかるか、『変身解除』」

 その美少女がそんな風に唱えると、瞬時にして、いつの間にかいなくなってしまった猫ちゃんが現れた。
 そして、その猫ちゃんは自信満々に「これで流石に貴様にもわかっただろう。どうだ、我が神秘は」と言う風な事を言っていたのだが、変身した事以上に、猫の姿で言葉を発している事の方が、よっぽど神秘に近いと思う。

「ああ、君が猫ちゃんだったの」
「……猫ではないし、何故そこまで反応が薄いんだ」

 いや、まあ、変身位だったらね、ハリ―うんちゃらにもあったし、大抵の戦隊ものとかヒーローが活躍するアニメとかでもあったしね。
 猫がしゃべるってのはあんまりないしね。異世界とか、そういう謎の生命体が話すこととかはあるけどね。「訳が分からないよ」とかね。

「それよりも貴様には言わなければいけない事が有る。
 実は、貴様が気を失っている時間が想定以上でな、あの、その、もう日が暮れかかっている」
「はあ!? ちょ、ちょっと待ってよ! そんな長い時間ここに籠ってたってなったら、もっと悪魔のイメージがついちゃうじゃん!」

 その事を猫ちゃんを抱きながら叫んだのだが、猫ちゃん、もとい白虎からは「何言ってんだ? そんなこと程度で焦る必要がないだろ、うるせえな」と言う様な目線や雰囲気を感じ取ったが、ボクにとっては大問題だ。
 だってこういうファンタジー世界には独善者が居ると言うのがお決まりだから、そういう人らに退治されちゃうじゃん。
 と言うか冒険者ギルドが、冒険者ギルドって言うボクの事を信仰する宗教の本部的なものになっちゃうんだけど。

「それよりもだ、貴様は子供の皮をかぶっているが、帰らなくてもいいのか?」
「子供の皮って何さ、まあ、帰らなくちゃいけないことは間違いないけど」

 本当に何なんだこいつは、これが黙っていればかわいい系の女子? って言うやつなのだろうか? いや、それはきっと一番ボクが当てはまるだろうけど、きっとこれも同類だろう。
 と言うか子供の皮をかぶったってなんなのさ、もしかしてボクが転生したって事がバレたのかな? 今までだと二十五年くらい生きてるけど。

「おい、ライム! 大丈夫か!」
「ふぇ」
「あっ」

 そして、その事を白虎に問い詰めようと顔を近づけた瞬間に、扉から何故か血相を変えたマイク君が飛び出してきた。
 レディの、と言うよりは人が居る部屋に入るときはノックをするのが当たり前なんじゃないの? と言うか何故マイク君は血相を変えてるの?
 まさか、マイク君までボクの事を悪魔様とか言い出さないよね? それはそれで滑稽で面白いけど。

「何しに来たのさ?」
「いや、その、えっと、お前をここの部屋に連れて行ったとか、表の連中が言ってたから、心配してきたんだが、その」

 何やらどもりながら言っていたので、聞き取り辛かったが何とか聞き取れた。
 と言うか、顔も真っ赤にしながら言っていたけど、そこまでボクの事を心配することが恥ずかしいのかな、まあ、朴念仁のマイク君の柄ではないよね、人の心配って。

「ふっふ~ん、じゃあマイク君はボクの事を心配してくれたって事なんだね? 嬉しいねぇ、朴念仁野郎と思ってたマイク君がここまで優しいとは」
「ちょ、その、近づくな、そ、それと、馬鹿にするな」

 ボクがすごいにやけた表情でマイク君に近づきながら馬鹿にしたセリフを言うと、何故か更に顔を赤くしながら、何時もの様に文句を言い始めた。
 勿論、それはそれで安心したのだが、こんなこと程度でたじたじになってしまうとは、朴念仁だからなのだろうか、それとも照れ性なのかな。

「ふふふ、ありがと~」
「ちょ、本当に抱き着くな! いい加減にしろ!」

 凄く顔を真っ赤にしながら怒鳴り声をあげていたが、こんな状況で怒鳴り声など効果は全くない。それよりかギャップの様なものを感じてほほえましく思えてしまう。
 そんな状態で追撃を掛けない様なボクではないので、普通にマイク君へ抱き着いた。

「にゃぁ」
「あれ、何して……」

 しかし、今まで一度も鳴きもしなかった白虎が、鳴いたためそちらを見ると、ボクの脱ぎ捨てた服の上で鳴いていた。
 ……あれ、ボクが脱ぎ捨てた服って? ボクの今の服装は?

「まままm、マイク君、いま、ボクってまさかだけど裸じゃ……」
「裸だよ。やっと気づいたか、良いから早く服をきて来いよ」

 どうやら、ボクは裸でマイク君に抱き着いていたようだった。
 マイク君も、貧乳になんか何も感じないとか言っていても、実際に貧乳のボクの裸体をみて、顔を真っ赤にしてたんだから、滅茶苦茶反応してるじゃないかって話だよね。
 朴念仁だと思ってもやっぱり思春期の男子と言う事なんだね。

「ああ、そうだった」
「……お前、なんでそこまで反応が薄いんだ? 羞恥心が確立されていないわけはないし、……そういう趣味なのか?」

 別にそういう趣味ではないよ。
 ただ、今からどんなに恥じようとマイク君と白虎を殺さないと、この痴態を無に帰すことは無理なのだから、諦めているんだよ。これを四文字で表すと現実逃避って奴になるんだよ。
 と言うか、ボクはここまで馬鹿だったっけ? 流石に服を着るくらいはできてたと思うけど。

「……」
「べ、別に、人はそれぞれの趣味があってもいいだろうし、お、俺から何か言うって言う事はしないからな、だから我慢しなくてもいいんだぞ?」
「ボクは別にそういう趣味を持っている事ではないよ」

 マイク君は一体何に遠慮をして、いったい何を心配しているんだ。
 まあ、ボクはもともと男子だから羞恥心が薄いって言う事が有るだろうけど、露出狂とか痴女とか、そういう類の人種にはなってないから。

「ただ単にボクは服を着忘れてただけだよ」
「…………じゃあ、何故恥ずかしがらなかったんだ? 慣れてるのか?」
「慣れてるわけではないよ。現実逃避をしてるんだよ。君だってナタリーのあれを嗅いでいるのを見つかった時に現実逃避していたじゃないか」

 マイク君の返答するまでの時間に有った沈黙は、言外に馬鹿だと指摘されている様で居心地が悪かった。と言うか今でも居心地が悪い。なんというか、形容し難いね。
 いっそこの状況ですらリラックスしている白虎を殺したくなるよ。と言うか殺したら少しは状況が良くなるんじゃ。

「……わかった、この話はもうしないから、俺にまで被害を負わせないでくれ!」
「……」
「そんだけ睨んでも、俺の記憶からは消え去らねえよ!」

 やはりだめか。
 今まで、前世も併せて二十年以上生きていて、初めて自殺したいと思ったよ。これもあのオークのせいだよ。もうやだなぁ、魔石を売って宿屋に引きこもろうかな。

「お~い、白虎~、一緒に行こう」
「に˝ゃ˝ぁ˝っ!?」

 この辛さを抑えるためにはこの、外見だけは可愛い、人間状態でも可愛かったけど猫状態の癒されるような可愛さで癒されるしかないね。
 アニマルセラピーって奴だよ。
 それに白虎がボクの事を長時間気絶させなければ、こんなことも起きなかったかもしれないんだから、責任を問わせないとね、罰はボクの永遠の抱き枕兼ぬいぐるみ化だから。

「その猫滅茶苦茶逃げようとしてるけど」
「あはは、マイク君、この猫ちゃんのどこがボクから逃げy「フシャァァ!」……仕置きが必要か」

 マイク君が途中で白虎を捕獲したボクに話し掛けてきたのだが、そのせいで白虎にわずかな希望を与えてしまったようだ。
 僅かな希望に縋るのは分かるけど、それに縋っても最終的には心がむなしくなるだけだもん。マイク君は結構鬼畜なのかな?
 まあ、そんな事よりも、白虎のお仕置きを考えておかないと。

「ライム、その猫を俺に渡せ、それで報告に行ってこい」
「まあ良いけど、逃がすとかはしないでね?」
「ああ、約束する」

 流石にボクも千手観音像とかではないので、両腕で白虎を抱きながら報告すると言う事は出来ない。なのでマイク君に任せることにした。
 そもそも、白虎を逃がしてもあまり意味はないのだ、その純白の毛色を見ればすぐにわかってしまう。それに、あんな特殊な猫は白虎しかいないから分かるだろう。

「どうも、こんにちは、今日の依頼はゴブリンの討伐でしたよね、なので今すぐに出て行ってもらえませんか? 危険人物さん」
「なんでボクが危険人物なのさ? 絶対に報酬だけは受け取るからね」

 受付へ向かうと、すぐ様に受付嬢の人にそんな事を言われてしまった。
 別にボクは危険な人間ではないだろう、ただ、一般人だったボクを襲おうとしている冒険者を懲らしめただけだし、ただ単に威圧しただけだもん。
 今までで危険行為をしたことは、今日の服を着ることを忘れてマイク君に抱き着いてしまった事以外ないもん。

「……はい、報酬の五百セルです」
「最初っからそうしてればいいじゃん」

 オークの魔石も出そうとしたが、またまた文句を言われ、時間を取られそうだったのでオークの魔石は明日とかに違う人に見せてみよう。白虎と触れ合いたいし。
 昼間に居た信仰宗教の人達に見せて渡せばお金とかを普段の二倍くらい貰えそうだしね。それをしたらボクの印象がさらに悪くなっていくだろうけど。

「よ~し! じゃあ帰ろう! 白虎!」
「い、いい加減にしてくれ、妾も限界だ」

 冒険者たちの足元に隠れていた白虎に飛びつくと、流石に疲れている様で、猫の鳴き声から人間の言語を話しだしていた。
 勿論、そこまで白虎を疲労させるつもりはない。疲労させて明日ふれあえ無かったら元も子もないしね。それにこんなんだけど神獣らしいしね。

「はあ、じゃあ行こうか」

 ボクは昼に来た時と同じように、白虎を頭の上に乗せ、家に帰って行った。

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