子連れプログラマーVRRPG脱出計画
第11話 ゴブリンハンター
ゴブリン。
諸説は色々有るが、精霊だったり、小人だったり、子鬼だったり。
俺と沙羅の思想がベースとなっているRPGなら小人だろう。
緑色の皮膚に尖った耳、体の割に大きく裂けた口。
低級のゴブリンは知能が低く、弱い。
ただ、群れを作ることがあり油断は禁物。
人形の敵の一番最初のテストケースと言える。
やはり、虫や動物に比べると少しハードルは上がる。
個人的には犬も猫も好きだし、動物好きな方なのでどうぶつを攻撃するのは好きではないし、虫に至っては嫌いすぎてできれば近づきたくないが、そこよりも高いハードルが立ちはだかるのが、VRにおける人形キャラへの攻撃だろう。
ゴブリンは洞窟に住んでいる。
5階層のまぁまぁな規模の洞窟をねぐらにして日夜繁殖に励んでおり、その数は町の人間の退治にも限らずに減る気配を見せない。
ゴブリンは安産多産、さらに生まれればすぐに雑食でなんでも力強く成長の糧とするために、すぐに成人しまた繁殖する側にも食料調達係にもなる。
まさにねずみ算式に増えていくので、その巣が近くにできた街はその対応に追われることになる。
小さなな村なら滅んでもおかしくない。
簡単な武器も扱ってきて、それなりに長い巣になると弓や、場合によっては魔法まで使用してくる。
さらに一定以上の能力を持つゴブリンは進化しホブゴブリンとなり、結構な知恵と力を手に入れる。
一部のホブゴブリンは支配層となりゴブリン達を指揮し、より強固な集団と化していく。
「以上、モンスターガイドブックより」
「それぞれのモンスターにこれだけの設定を……やはりアイツは恐ろしい……」
「結構ピックアップして読んだので実際はもっと……」
自分で確かめるとぎっしと詰まったテキスト量に軽くドン引きだ。
ゴブリンにはらまされた人間の女性が生むのはゴブリンだとかいう知識はいらない。
逆の場合は子をなさないとかの設定はもっといらない。
どういう層にこのゲームをやらせたいのだアイツは……
ナユタと二人で街道を歩きながらウキウキだったテンションがなんだか微妙に落ち着いてきてしまった。
もう少し言った先に森への入口がある。
そこからはゴブリンのエリアだ。
森の最深部には洞窟があり、その最下層にはゴブリンを統べるホブゴブリン達がいる。
もちろん今回は森で適当なはぐれゴブリンを狩ればいいだけで、無理してそんな大冒険はしない。
「なぁナユタ、もし今のオレがゴブリンの洞窟に入って制覇できるの?」
「えーっと、ステータス的には圧倒的ですが、多対一の戦いの場合殲滅力不足は否めないかと……」
「いずれはゴブリンの波に飲まれてお陀仏……それは不味いな」
「それにスキル上げも兼ねていますし、今後も考えて『内政にどっぷりはまるよりは』しっかりと戦闘経験を積んだほうが良いと思います」
我が子の言葉に棘がある……
「……なんにせよ、森に入ると視界は悪くなるし、いくらナユタがいてくれるとは言っても、気合を入れないとな」
「突然近くに魔物が発生する可能性もあるので、あまりに過度な信頼はしないようにしてくださいパパ」
所謂横湧きってやつだね。
基本シンボルエンカウント気味なシステムだけど、発生はランダムか……
ある程度はプレイヤーキャラからの距離を設定して沸かせないと狭いところだと戦闘にならない可能性もあるなぁ……
いつものように気がついたことをテキストと片手間のようにプログラムの草案をバシバシ書き上げていく。
「このテキストシステムは冒険日記とか書く人も多そうだし、なるべく多様化してカスタマイズしやすいようにしたいなぁ……」
考えれば考えるほど楽しくなってくる。
全身没入型VRという全く新しい時代の到来。
思考によるコントロール、これは既に仮想世界の中に完全に自分が入っている。
その仮想世界で本気でRPGゲームをやる。
これに心躍らないゲーマーはいない。いないはずだ。
出来得る限りゲーマー達のドキドキを裏切らないように、でも、予想を上回る裏切りもいれつつこういうゲームを作りたい。
俺は心の何処かでそれをずっと夢見ていた。
奇しくも実験中の事故でそれが半分現実化している。
どうせならこの状況を最大限に利用してやろう。
「パパ、正面に敵集団、数は6」
「了解」
俺は息を潜めて気配を抑えるように気を使う。
こういった行動の一つ一つがスキルへの経験値になっていく。
集団を自分の目で確認する。
あまり警戒しているわけでもなくゾロゾロと歩いている。
不意打ちで3体ぐらいは仕留められそうだ。
「この剣で、敵を斬る」
ゲームの中であるという確固たる確信がある俺でも、少し気合を入れる。
ナユタを肩から降ろして、戦闘に突入する。
背後の草むらから一気に躍り出て最後尾の2匹をなで斬りにする。
あまり肉がないゴブリンの斬り心地は、ゴッゴッっという感じだ。
力任せ、ステータス差を利用してのぶった切りだが、何の変哲もないショートソードがゴブリンを真っ二つにする。
ゲーム的なエフェクトを発生しながら二匹は消えていく。
突然のことに対応できていない残り4匹のウチ、一番近い一匹をそのまま袈裟斬りにする。
ここに来て、ようやく襲われていることに気が付き3匹が必死の抵抗を見せてくる。
木を切り出しただけの粗雑な棍棒をめちゃくちゃに振り回してくる。
しかし、俺には当たらない、ステータス差によって、敵の攻撃はまるでスローモーションのようにゆったりと迫ってくるからだ。
ココらへんの処置もすべて那由多が行っているらしい、リアルタイムにそれぞれのキャラクターにステータス差を考慮した反映を行える。
攻撃時もそうなんだけど、別に剣術の覚えがあるわけでもないので俺は当たりそうなところのに斬りつけている。
戦士スキルの剣術が上がればそこにもシステム補正が入って、素人の俺でも歴戦の侍のような華麗な刀捌きなどもできるようになるそうなので楽しみだ。
「っと、問題なしだな。
クエストアイテムを回収して次にいこう」
幸先よく6匹を倒せた。
圧倒的な力の差があるから乱暴な戦闘をしているが、実際はもっと緊張しながら慎重に行動しなければいけないだろう。
いつの日か、きちんと最初から始めたいものだ。
なんにせよ、こうして俺のゴブリン狩りは最高のスタートを切ることが出来た。
諸説は色々有るが、精霊だったり、小人だったり、子鬼だったり。
俺と沙羅の思想がベースとなっているRPGなら小人だろう。
緑色の皮膚に尖った耳、体の割に大きく裂けた口。
低級のゴブリンは知能が低く、弱い。
ただ、群れを作ることがあり油断は禁物。
人形の敵の一番最初のテストケースと言える。
やはり、虫や動物に比べると少しハードルは上がる。
個人的には犬も猫も好きだし、動物好きな方なのでどうぶつを攻撃するのは好きではないし、虫に至っては嫌いすぎてできれば近づきたくないが、そこよりも高いハードルが立ちはだかるのが、VRにおける人形キャラへの攻撃だろう。
ゴブリンは洞窟に住んでいる。
5階層のまぁまぁな規模の洞窟をねぐらにして日夜繁殖に励んでおり、その数は町の人間の退治にも限らずに減る気配を見せない。
ゴブリンは安産多産、さらに生まれればすぐに雑食でなんでも力強く成長の糧とするために、すぐに成人しまた繁殖する側にも食料調達係にもなる。
まさにねずみ算式に増えていくので、その巣が近くにできた街はその対応に追われることになる。
小さなな村なら滅んでもおかしくない。
簡単な武器も扱ってきて、それなりに長い巣になると弓や、場合によっては魔法まで使用してくる。
さらに一定以上の能力を持つゴブリンは進化しホブゴブリンとなり、結構な知恵と力を手に入れる。
一部のホブゴブリンは支配層となりゴブリン達を指揮し、より強固な集団と化していく。
「以上、モンスターガイドブックより」
「それぞれのモンスターにこれだけの設定を……やはりアイツは恐ろしい……」
「結構ピックアップして読んだので実際はもっと……」
自分で確かめるとぎっしと詰まったテキスト量に軽くドン引きだ。
ゴブリンにはらまされた人間の女性が生むのはゴブリンだとかいう知識はいらない。
逆の場合は子をなさないとかの設定はもっといらない。
どういう層にこのゲームをやらせたいのだアイツは……
ナユタと二人で街道を歩きながらウキウキだったテンションがなんだか微妙に落ち着いてきてしまった。
もう少し言った先に森への入口がある。
そこからはゴブリンのエリアだ。
森の最深部には洞窟があり、その最下層にはゴブリンを統べるホブゴブリン達がいる。
もちろん今回は森で適当なはぐれゴブリンを狩ればいいだけで、無理してそんな大冒険はしない。
「なぁナユタ、もし今のオレがゴブリンの洞窟に入って制覇できるの?」
「えーっと、ステータス的には圧倒的ですが、多対一の戦いの場合殲滅力不足は否めないかと……」
「いずれはゴブリンの波に飲まれてお陀仏……それは不味いな」
「それにスキル上げも兼ねていますし、今後も考えて『内政にどっぷりはまるよりは』しっかりと戦闘経験を積んだほうが良いと思います」
我が子の言葉に棘がある……
「……なんにせよ、森に入ると視界は悪くなるし、いくらナユタがいてくれるとは言っても、気合を入れないとな」
「突然近くに魔物が発生する可能性もあるので、あまりに過度な信頼はしないようにしてくださいパパ」
所謂横湧きってやつだね。
基本シンボルエンカウント気味なシステムだけど、発生はランダムか……
ある程度はプレイヤーキャラからの距離を設定して沸かせないと狭いところだと戦闘にならない可能性もあるなぁ……
いつものように気がついたことをテキストと片手間のようにプログラムの草案をバシバシ書き上げていく。
「このテキストシステムは冒険日記とか書く人も多そうだし、なるべく多様化してカスタマイズしやすいようにしたいなぁ……」
考えれば考えるほど楽しくなってくる。
全身没入型VRという全く新しい時代の到来。
思考によるコントロール、これは既に仮想世界の中に完全に自分が入っている。
その仮想世界で本気でRPGゲームをやる。
これに心躍らないゲーマーはいない。いないはずだ。
出来得る限りゲーマー達のドキドキを裏切らないように、でも、予想を上回る裏切りもいれつつこういうゲームを作りたい。
俺は心の何処かでそれをずっと夢見ていた。
奇しくも実験中の事故でそれが半分現実化している。
どうせならこの状況を最大限に利用してやろう。
「パパ、正面に敵集団、数は6」
「了解」
俺は息を潜めて気配を抑えるように気を使う。
こういった行動の一つ一つがスキルへの経験値になっていく。
集団を自分の目で確認する。
あまり警戒しているわけでもなくゾロゾロと歩いている。
不意打ちで3体ぐらいは仕留められそうだ。
「この剣で、敵を斬る」
ゲームの中であるという確固たる確信がある俺でも、少し気合を入れる。
ナユタを肩から降ろして、戦闘に突入する。
背後の草むらから一気に躍り出て最後尾の2匹をなで斬りにする。
あまり肉がないゴブリンの斬り心地は、ゴッゴッっという感じだ。
力任せ、ステータス差を利用してのぶった切りだが、何の変哲もないショートソードがゴブリンを真っ二つにする。
ゲーム的なエフェクトを発生しながら二匹は消えていく。
突然のことに対応できていない残り4匹のウチ、一番近い一匹をそのまま袈裟斬りにする。
ここに来て、ようやく襲われていることに気が付き3匹が必死の抵抗を見せてくる。
木を切り出しただけの粗雑な棍棒をめちゃくちゃに振り回してくる。
しかし、俺には当たらない、ステータス差によって、敵の攻撃はまるでスローモーションのようにゆったりと迫ってくるからだ。
ココらへんの処置もすべて那由多が行っているらしい、リアルタイムにそれぞれのキャラクターにステータス差を考慮した反映を行える。
攻撃時もそうなんだけど、別に剣術の覚えがあるわけでもないので俺は当たりそうなところのに斬りつけている。
戦士スキルの剣術が上がればそこにもシステム補正が入って、素人の俺でも歴戦の侍のような華麗な刀捌きなどもできるようになるそうなので楽しみだ。
「っと、問題なしだな。
クエストアイテムを回収して次にいこう」
幸先よく6匹を倒せた。
圧倒的な力の差があるから乱暴な戦闘をしているが、実際はもっと緊張しながら慎重に行動しなければいけないだろう。
いつの日か、きちんと最初から始めたいものだ。
なんにせよ、こうして俺のゴブリン狩りは最高のスタートを切ることが出来た。
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