子連れプログラマーVRRPG脱出計画
第13話 コブリンズアニバーサリー
街で生活していた時間よりも、この洞窟にこもっている方が長い。
そう、俺は街で言われているらしい。
だいたい事実だ。
スキルの成長が撃破した敵の数に影響を受けるから、この洞窟の湧き率との相性が良すぎた。
もちろん、強い敵のほうがポイントが多いのだが、多分序盤と思われるこの位置にあるダンジョンでこの効率は俺を引き止めて離さなかった。
「俺が悪いんじゃないんだ、このバランスにした沙羅が悪い……」
「サイテーだねパパ」
最近、子供の俺を見る目が冷たい。
「ウインドステップ!」
幾度となく潜ったこの洞窟の道、もう目を閉じても進めるかもしれない。
初級魔法で明かりをともしながら、風魔法と盗賊のスキルの組み合わせた技術で一番奥へとひた走る。
今日もゴブリン狩りをしたら子供との会話がなくなりギスギスした空間に耐えられそうにない。
様々なスキルを豊富すぎるSPとMPで常時展開しての探検は、ふつうの人、と言う言い方もあれだが、普通のプレイヤーでは不可能な速度で洞窟探検を終わらせることが出来る。
あっという間にこの洞窟の最深部であるゴブリンリーダーの部屋に到達する。
今までは何度も見逃してきたけど……今日は……倒させてもらう……
「パパ、なんでさっきから扉開けるの躊躇してるの?
まさか、ここまで来てもったいないなぁとか思ってないよね?」
心を覗いてくるのは止めてほしいと思うんだよね俺は。
いつまでもウジウジとしていても仕方がない、あまりに楽しくて忘れがちになるけど、制限時間がすぎれば俺は死ぬんだ。
脱出した後にまたゲームとして愉しめばいい。
っておもうんだが、今回の騒動を考えると、外に出たらそうそうゲームをしている時間なんて手に入らなくなると思うんだよなぁ……外に出るのが気が重い……
諦めて扉に手をかける。
木製の薄汚れた扉が立て付けの悪い音を立てながら開いていく。
篝火のたかれた薄暗いゴブリンの居住区、さらにその一番奥のこの洞窟の主の部屋は薄っすらと香というほど香りのいいものではないが、悪臭を放つ他のゴブリンの部屋とは雰囲気が異なる。
部屋の一番奥にある主の空間からメスのゴブリンをめんどくさそうに押しのけて一際巨大な生物が立ち上がる。
ゴブリンの上位種ホブゴブリン、さらにそれのリーダーと呼ばれるエリート種だ。
「また会ったな」
「ガガガガガガガガ」
醜悪な顔を歪ませて、そのリーダーは多分笑い声を上げる。
俺は何回かここに来ている。
そのたびに適当に戦闘をしては撤退しているので、向こうからすればまた腰抜けがやってきたぞ。と言った感じなんだろう。
俺も悲しいよ、君のねぐらは最高の稼ぎ場所だったのに……
リーダーの背後から5匹のホブゴブリンが現れる。
こいつらが旨いんだ。
5匹倒せばまた召喚されるし、外ではレアなホブゴブリンだし、戦士系、盗賊系、魔道士系とバランスもいい。
スキルポイント、経験値稼ぎに最適だ。
リーダーは無視して取り巻きだけを永遠に狩っていれば、超効率を叩き出せる。
もちろんプログラム改善メモにはきっちりと書いてある。
『取り巻きのスキル、経験値は無い方がいい』と。
ま、αテストのバグ的な要素ってやつで。
「長い間……お世話になりました」
覚えたての二刀流。これもすべて彼らのお陰だ。
敵との間合いを一瞬で詰める歩法、これも先生たちのおかげだ。
突然のことに大太刀を振り下ろすことしか出来ないリーダー、その攻撃は俺の残像を真っ二つにしたが、既に俺はそこにいない。
リーダーの背後から両刀にて首を刎ねる……
「ありがとう、先生……」
リーダーが絶命したことで取り巻きやダンジョン内のゴブリンも消滅していく。
今まで積み重ねていたものの結果、最後の戦闘は驚くほどあっさりと終わる。
そもそも自力が違いすぎる上に無駄にレベル上げを繰り返している。
こうなることは予想の範囲内だった。
それでも、俺は彼らに敬意を忘れない。
「さっさと奥の宝箱開けて帰りますよ、なんでこれだけのことに半年も……」
子供の機嫌は一向に良くならない……悲しい、父の背中から何かを学んでほしいんだが……
「早くしてください」
「はい」
ゴブリンが貯め込んでいた(設定)の財宝を回収して洞窟を後にする。
街へと戻り、洞窟の主を退治したことを伝えるとギルド内が色めきだつ。
「やはりゴブリンスレイヤーがやってくれたぞ!」
「彼こそ真のゴブリンスレイヤーだ!」
ゴブリンスレイヤーと言うのは新人に対する蔑称だったりもするんだが、彼らの賞賛はそんなものは混じっていないだろう。
こうして大きめな功績を上げた俺はレア鋼クラスへと昇進を遂げられた。
ギルドに集まった冒険者たちは俺の功績をたたえて皆で祝ってくれた。
はじめはゴブリン相手に何をしているんだと笑っていた先輩たちも、今では俺に一目を置いてくれる。
新人冒険者たちにも初心忘れるべからず。このギルドでは語り継がれていくであろう。
新たに受けられるようになったクエストに、北の山のオーガ退治と言うものがあった。
おっ、とそのクエストに興味を持った瞬間、今まで聞いたこともないような冷たい声が耳元に這う。
「いいかげんにしようか、パパ?」
その声を聞いた俺は、テロンの街から海を渡る船を全速力で探すことになる。
船のチケットはギルドで手配してくれました。
そう、俺は街で言われているらしい。
だいたい事実だ。
スキルの成長が撃破した敵の数に影響を受けるから、この洞窟の湧き率との相性が良すぎた。
もちろん、強い敵のほうがポイントが多いのだが、多分序盤と思われるこの位置にあるダンジョンでこの効率は俺を引き止めて離さなかった。
「俺が悪いんじゃないんだ、このバランスにした沙羅が悪い……」
「サイテーだねパパ」
最近、子供の俺を見る目が冷たい。
「ウインドステップ!」
幾度となく潜ったこの洞窟の道、もう目を閉じても進めるかもしれない。
初級魔法で明かりをともしながら、風魔法と盗賊のスキルの組み合わせた技術で一番奥へとひた走る。
今日もゴブリン狩りをしたら子供との会話がなくなりギスギスした空間に耐えられそうにない。
様々なスキルを豊富すぎるSPとMPで常時展開しての探検は、ふつうの人、と言う言い方もあれだが、普通のプレイヤーでは不可能な速度で洞窟探検を終わらせることが出来る。
あっという間にこの洞窟の最深部であるゴブリンリーダーの部屋に到達する。
今までは何度も見逃してきたけど……今日は……倒させてもらう……
「パパ、なんでさっきから扉開けるの躊躇してるの?
まさか、ここまで来てもったいないなぁとか思ってないよね?」
心を覗いてくるのは止めてほしいと思うんだよね俺は。
いつまでもウジウジとしていても仕方がない、あまりに楽しくて忘れがちになるけど、制限時間がすぎれば俺は死ぬんだ。
脱出した後にまたゲームとして愉しめばいい。
っておもうんだが、今回の騒動を考えると、外に出たらそうそうゲームをしている時間なんて手に入らなくなると思うんだよなぁ……外に出るのが気が重い……
諦めて扉に手をかける。
木製の薄汚れた扉が立て付けの悪い音を立てながら開いていく。
篝火のたかれた薄暗いゴブリンの居住区、さらにその一番奥のこの洞窟の主の部屋は薄っすらと香というほど香りのいいものではないが、悪臭を放つ他のゴブリンの部屋とは雰囲気が異なる。
部屋の一番奥にある主の空間からメスのゴブリンをめんどくさそうに押しのけて一際巨大な生物が立ち上がる。
ゴブリンの上位種ホブゴブリン、さらにそれのリーダーと呼ばれるエリート種だ。
「また会ったな」
「ガガガガガガガガ」
醜悪な顔を歪ませて、そのリーダーは多分笑い声を上げる。
俺は何回かここに来ている。
そのたびに適当に戦闘をしては撤退しているので、向こうからすればまた腰抜けがやってきたぞ。と言った感じなんだろう。
俺も悲しいよ、君のねぐらは最高の稼ぎ場所だったのに……
リーダーの背後から5匹のホブゴブリンが現れる。
こいつらが旨いんだ。
5匹倒せばまた召喚されるし、外ではレアなホブゴブリンだし、戦士系、盗賊系、魔道士系とバランスもいい。
スキルポイント、経験値稼ぎに最適だ。
リーダーは無視して取り巻きだけを永遠に狩っていれば、超効率を叩き出せる。
もちろんプログラム改善メモにはきっちりと書いてある。
『取り巻きのスキル、経験値は無い方がいい』と。
ま、αテストのバグ的な要素ってやつで。
「長い間……お世話になりました」
覚えたての二刀流。これもすべて彼らのお陰だ。
敵との間合いを一瞬で詰める歩法、これも先生たちのおかげだ。
突然のことに大太刀を振り下ろすことしか出来ないリーダー、その攻撃は俺の残像を真っ二つにしたが、既に俺はそこにいない。
リーダーの背後から両刀にて首を刎ねる……
「ありがとう、先生……」
リーダーが絶命したことで取り巻きやダンジョン内のゴブリンも消滅していく。
今まで積み重ねていたものの結果、最後の戦闘は驚くほどあっさりと終わる。
そもそも自力が違いすぎる上に無駄にレベル上げを繰り返している。
こうなることは予想の範囲内だった。
それでも、俺は彼らに敬意を忘れない。
「さっさと奥の宝箱開けて帰りますよ、なんでこれだけのことに半年も……」
子供の機嫌は一向に良くならない……悲しい、父の背中から何かを学んでほしいんだが……
「早くしてください」
「はい」
ゴブリンが貯め込んでいた(設定)の財宝を回収して洞窟を後にする。
街へと戻り、洞窟の主を退治したことを伝えるとギルド内が色めきだつ。
「やはりゴブリンスレイヤーがやってくれたぞ!」
「彼こそ真のゴブリンスレイヤーだ!」
ゴブリンスレイヤーと言うのは新人に対する蔑称だったりもするんだが、彼らの賞賛はそんなものは混じっていないだろう。
こうして大きめな功績を上げた俺はレア鋼クラスへと昇進を遂げられた。
ギルドに集まった冒険者たちは俺の功績をたたえて皆で祝ってくれた。
はじめはゴブリン相手に何をしているんだと笑っていた先輩たちも、今では俺に一目を置いてくれる。
新人冒険者たちにも初心忘れるべからず。このギルドでは語り継がれていくであろう。
新たに受けられるようになったクエストに、北の山のオーガ退治と言うものがあった。
おっ、とそのクエストに興味を持った瞬間、今まで聞いたこともないような冷たい声が耳元に這う。
「いいかげんにしようか、パパ?」
その声を聞いた俺は、テロンの街から海を渡る船を全速力で探すことになる。
船のチケットはギルドで手配してくれました。
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