子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第15話 ミーラ村への道

 これから同じクエストを受けるのでお互いに自己紹介をする。
 パーティ名『悠々自適』の5名。
 リーダーはムキムキマッチョの戦士ガイアさん。
 なんとコモン銀クラス!
 冒険者としてはベテランでこのメンバーと一緒に色んな場所を自由に冒険しているそうだ。
 とてもおおらかな性格で、他のメンバーが彼を信頼していることもよく分かる。
 盗賊風のスラッとした男性がシャレン。24歳。
 レンジャーとしてパーティの下支えをしている少し控えめな男性だ。
 細かなところに気が回って、さっきからお茶がなくなるたびに飲むか? と持ってきてくれてオナカガタプタプだ。
 36歳僧侶のエタさん。ガイアさんとは結構長く旅をしているそうで、突っ走り気味なガイアさんを抑える役目に回っている、パーティーの知恵袋的な立場のようだ。
 そして、ナユタと遊んでくれているのが魔術師のペルナさんとハンターのウードさん。
 ペルナさんはシャレンさんの彼女さんで知的で明るい素敵な女性だ。
 ウードさんは、エルフ。年齢はにこやかに微笑まれた。聞いてはいけないこともある。

 今は村への途中でのキャンプを張って、夜飯を終えたあとの談笑している。
 馬車は二台、食事を終えたら交代で周囲の警戒に当たる事になる。
 当然といえば当然だが、男性4人で持ち回る。
 ペルナさんが敵警戒の魔法陣なんかも敷いてくれるのでだいぶ楽だそうだ。
 まぁ……敵が来たらナユタが教えてくれるが、それは伏せておく。

「最近街道にも魔物が増えてきてな……昔はそんなことも珍しかったんだが、やはり王都の北に突然現れたダンジョンの影響かもしれんな……」

 ガイアさん達と情報交換しておく。
 魔王の情報なんかも得られれば嬉しい。
 今の情報は怪しいね。

「急にですか……ダンジョンって突然発生するもんなんですか?」

「……いや、珍しい。聞いたことは無い。
 地下にあって何かの拍子に地上に露出するということはあっても、今回みたいに建物ごと現れるなんて言うのは前代未聞だ」

 喋る時は結構話すシャレンさん。

「噂では強大な力を持った魔人が住んだなどと言われている」

 ……ますます怪しい。

 周囲は日が隠れ始めて急速に暗くなる。

「さて、それでは順に休むようにしよう。リョウさん先に休んでくれ」

「わかりました。何かあれば叩き起こしてください」

「パパ寝るの? 僕も寝るー」

「えー、ナユタくんはおねーさん達の馬車で寝よーよー」

 な、なんという羨ましい……

「パパが寂しがるので一緒に居てあげるのです」

「キャー、ナユタくん優しー! いい子ですね! リョウさん!」

「ええ、自慢の子供ですよ」

 笑顔で女性陣にお休みの挨拶をする。
 男性用の馬車で身体を休める。

「……と、言うわけでどうやら王都の北に最近異変が起きてるらしい」

「怪しいですね。イベントログまで全部を見てませんが、そんな派手なイベントは……無かったはずです」

「多少目標が出来たな。ナユタ、悪いけど警戒はよろしくね」

「任せてくださいパパ」

 冒険者らしいこういう生活も、ドキドキしてしまう。
 そして、今日は何と言ってもエルフさんとお話してしまった。
 真っ白な透明な肌に美しいエメラルドグリーンの瞳。
 スラーっと美しい肢体に輝く金色の髪。
 うん。素晴らしい。ディスイズザエルフ!

 他の二名も順に馬車に乗り込み寝息を立て始める。
 こういう寝付きの良さも冒険者として必要な技能なんだろう。
 かくいう私も分割睡眠は得意でね。
 ほんの少しの合間でも寝るのは特技の一つ。

 そんなことを考えながら意識を眠りの中に落としていく。

「……パパ。敵が来ます」

 ナユタの囁きで目を覚ます。
 多分体感的に一時間半くらいは寝たかな。
 静かに馬車の外に出る。

 ナユタの検知するギリギリなのでまだ100mくらいは離れているが、こちらに敵意を向けているようだ。
 戦闘は避けられない。

「あれ? どうしたんだいリョウさん?」

「いや、ちょっと用を足しに行こうかなと」

「ああ、そうかそうか、水辺で足を滑らせんようにな!」

 ガイアさんもまだ異変には気が付かない。
 敵は5匹。
 こっそりと暗視と遠視の魔法を使う。
 狼みたいだけど、目が魔法の光で光っている。
 魔狼と呼ばれる魔物らしい。

「ささっとやっつけてくるか」

「はいパパ」

 ガイアさんが向こうへ行ったのを確認して、いつものように肩車をして走り出す。
 少し離れたら魔法も併用して風のような速度で一気に敵に接近する。
 盗賊の隠匿スニークも併用しているので肉眼でも見える距離に入っても敵の警戒度は上がっていない。
 俺は静かにすれ違いざま剣を抜き、切り抜ける。
 先頭に立っていた一回り大きい魔狼の身体がずれて地面に落ちる前に、残りの4匹の首も胴体と分離しておいた。
 風が俺達に追いついて人の香りを連れてくるが、既に事は終わっている。
 俺達の存在に気がつくこともなく、魔石とドロップアイテムへと姿を変える。

「さて、戻ろっか」

「はい、パパ」

 結局夜間にこれを含めて3度魔獣の来襲があった。
 すべて事前にナユタから教わって闇夜に紛れて始末しておいた。
 3回目の襲撃には魔猪も混ざっていて、上質の猪肉が手に入った。ラッキー。
 魔獣化してもドロップアイテムは普通に食材だった。

 当番的に最後の朝方だったので、そのイノシシ肉を使って鍋を仕込んでみた。
 香草と根菜をたっぷり使って少し濃い目な味付けをする。
 イノシシ肉は独特の風味があるが、一級品は脂の旨味と肉の風味が絶妙に絡み合う絶品だ。

 じっくりとアクを取って丁寧に仕上げた料理は、鑑定すると極上品とのこと。
 起きてきた皆が目を丸くして喜んでくれた。

「猪肉自体も高級品だが、この肉は今まで食べたことがない……なんという旨味、生命を頂いているようだ……」

「そう言えばウードさんお肉も平気なんですね」

「森の民は狩猟も得意だからね、得物は必ずしっかりと利用する。
 それでも、これほどの一品は食べたことがないわ……」

「リョウさんは料理の天才ですね……」

 個人的には味噌が欲しかった……
 システムの手助けがあるとはいっても、自分で作ったものを皆がこんなに喜んでくれるのはいいものだった。


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