子連れプログラマーVRRPG脱出計画
第19話 罰
説教を終える頃山の裾野には日が登りかけてきた。
サラが言うように早く村へと戻らなければいけない。
俺はいつものようにナユタを肩車する。
「サラは依頼が終わって解散してそれぞれ王都へ向かうようになったら合流するように。
それまでここで正座してろ」
「そ、そんな! ど、どうやってそれを知ればいいんですか?」
「ナユタから聞いたぞ、さっきの端末、もう使いこなしてるんだろ?
俺達との連絡やマップ、アイテムボックス一切合切使えるんだろ?」
「ナユタ……恨むわよ」
「ごめんなさいママ、パパの命令には逆らえません」
「キャラを自分の都合でリ・クリエイトするなんて非道の罰だ。甘んじて受けろ」
「……それを言われると……反省します」
「うむ」
沙羅はゲームを愛している。
だから、こう言えばきちんと反省する。
今目の前にいるのはAIのサラだが、姿や言い回しも沙羅そのものだ。
正直、ほんの少しホッとしている自分もいる。
それが少し恥ずかしくて、整理するまで距離を取りたい。
「それでは、またな……サラ」
急いで村へと文字通り飛ぶように走る。
下り道をスキルと魔法全開で進む。
超高速で景色が飛んでいくが、ところどころスローモーションになって危険を回避していく。
今まで経験したことがないようなアクションにまたも俺の心は高鳴ってしまう。
あっという間に村へとたどり着き、窓から素早く音もなく部屋に戻る。
数時間は眠れるだろう。
ナユタを降ろし急いで寝る準備をして布団に飛び込む。
「おやすみ、ナユタ」
「おやすみなさいパパ」
目を閉じる。いつものように一瞬で眠りの緞帳が降りていく。
戸を叩く音がする。
「リョウさん、そろそろいい時間だぜ」
声の主はガイアさんだな。
「ああ、済まない。思ったよりも身体は疲れていたみたいだ……すぐに準備して行く」
「待ってるぜー」
窓から差す光がすでに日が天頂に近いことを教えてくれる。
「みなさんものんびりだったので起こさずにいましたが、駄目でしたか?」
ナユタが申し訳なさそうにしている。俺はその頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
「いや、よく眠れたよ。ありがとうナユタ」
体を伸ばすと、関節がピキピキと音を立てる。
結構無茶なことをしたからな。
それでも痛むようなことはない、筋肉はステータスを反映して力強く動くし、ほんの一伸ばしするだけで身体は思い通りに動く。
そのまま軽く準備を整えて皆が待つ場へと降りていく。
「おはよう、と言うには随分な時間だね」
「リョウ殿、昨日は顔色一使えていませんでしたが、流石にあの量は効いたようでね」
「ははは、そういうことですね」
すでにラークさんや悠々自適のメンバーは食事を終え談笑に移っていた。
「リョウ殿、食べられますか?」
村長がわざわざ俺の食事を残しておいてくれたようだ。
素朴な味わいのパンと野菜を煮込んだスープ、うん、二日酔い対策なメニューになっている。
「リョウ殿はこの後どうされますか?」
「ええっと、ナユタと一緒に王都へと行こうと思っています」
「……リョウ殿、一つ相談なのですが、この村に起こっている怪奇の原因を一緒に探りませんか?」
僧侶のエタさんが真面目な顔で提案してくる。
これはどうするべきかね……
「パパ、村の人も困ってるみたいだし……」
「……分かりました。お力に成れるかわかりませんが微力ながらお手伝いしましょう」
「おお! それは百人力、さっそく落ち着いたら山を探索……」
ガイアさんがそう言いかけると同時に村長の家の扉が荒々しく開け放たれる。
何事かと全員の視線が開かれた扉に集中する。
「そ、村長、そ、獣、いや、山の、逢いたいって」
はぁはぁ、と、息も絶え絶えな青年が事を伝えようとするが、荒れた呼吸でうまく話せない。
「お兄さん落ち着いて。はいお水」
ナユタが木製のコップに入った水を手渡すと一気に飲み干して一息をつく。
「ぷはーーーー! そ、村長! や、山の聖獣の使いが村長に会いたいって外に!」
「な、なんだって!?」
それから大騒ぎになったが、悠々自適のメンバーと俺が警護という形で村長と聖獣の使いと会うことになった。
「こ、こちらが聖獣の使いの方だそうです」
思わずかわいーと声に出しそうになった。
そこにはちっこい小虎がちょこんと座っていた。
ビャッコと同じ真っ白の子だ。
ウードさんは漏れ出すようにカワイーって言ってて激しく萌えた。
『お主が村長か?』
子虎は軽く俺の方を見て他の人が気が付かないレベルで頭を下げて話し始める。
「は、はい」
『此度の村の異変、大変迷惑をかけた。
我らが主は悪しきものの性で身動きが取れずに居たが、ようやく自由を得た。
これからはこの山中で勝手はさせないとのことだ。
安心されるがいい』
姿と声のギャップがまたかわいい。
「ははぁ、し、しかし、聖獣様のお話などはるか昔に祖母に伺ったきり……」
『うむ、ほんの少し居眠りをしてる間に不覚を取った。
これからは安心して暮らすがいいとのことだ。
たまに気が向いたら山頂の祠にこの村のブドーウを、たまにでいいんだが、ほんとにたまにでいいからお供えしてくれてもいいぞ。とのことだ。では、伝えたぞ』
いうが早いかくるりと向き直しパタパタと走り去っていく。
見た目の壮絶な可愛い走り方と、速度が釣り合わない程の速さで風のように去っていった。
「……な、なんだったんだ……」
村長さんも状況がつかめずに混乱気味だ。
「もともと聖獣の言い伝えでもあったんですか?」
「あ、ああ、ええ。私も大昔、子守唄に聞いたような話ですが……
こうして、本当に使いがいらしたのなら……事実なのでしょう……」
それから村人が集められ、周囲の情報収集を行い、明らかに魔獣たちの姿が見られないことで、聖獣の話の裏付けが取られたことになった。
村には安堵と、聖獣に守られていることへの感謝の気持ちで包まれることになった。
サラが言うように早く村へと戻らなければいけない。
俺はいつものようにナユタを肩車する。
「サラは依頼が終わって解散してそれぞれ王都へ向かうようになったら合流するように。
それまでここで正座してろ」
「そ、そんな! ど、どうやってそれを知ればいいんですか?」
「ナユタから聞いたぞ、さっきの端末、もう使いこなしてるんだろ?
俺達との連絡やマップ、アイテムボックス一切合切使えるんだろ?」
「ナユタ……恨むわよ」
「ごめんなさいママ、パパの命令には逆らえません」
「キャラを自分の都合でリ・クリエイトするなんて非道の罰だ。甘んじて受けろ」
「……それを言われると……反省します」
「うむ」
沙羅はゲームを愛している。
だから、こう言えばきちんと反省する。
今目の前にいるのはAIのサラだが、姿や言い回しも沙羅そのものだ。
正直、ほんの少しホッとしている自分もいる。
それが少し恥ずかしくて、整理するまで距離を取りたい。
「それでは、またな……サラ」
急いで村へと文字通り飛ぶように走る。
下り道をスキルと魔法全開で進む。
超高速で景色が飛んでいくが、ところどころスローモーションになって危険を回避していく。
今まで経験したことがないようなアクションにまたも俺の心は高鳴ってしまう。
あっという間に村へとたどり着き、窓から素早く音もなく部屋に戻る。
数時間は眠れるだろう。
ナユタを降ろし急いで寝る準備をして布団に飛び込む。
「おやすみ、ナユタ」
「おやすみなさいパパ」
目を閉じる。いつものように一瞬で眠りの緞帳が降りていく。
戸を叩く音がする。
「リョウさん、そろそろいい時間だぜ」
声の主はガイアさんだな。
「ああ、済まない。思ったよりも身体は疲れていたみたいだ……すぐに準備して行く」
「待ってるぜー」
窓から差す光がすでに日が天頂に近いことを教えてくれる。
「みなさんものんびりだったので起こさずにいましたが、駄目でしたか?」
ナユタが申し訳なさそうにしている。俺はその頭をくしゃくしゃと撫でてやる。
「いや、よく眠れたよ。ありがとうナユタ」
体を伸ばすと、関節がピキピキと音を立てる。
結構無茶なことをしたからな。
それでも痛むようなことはない、筋肉はステータスを反映して力強く動くし、ほんの一伸ばしするだけで身体は思い通りに動く。
そのまま軽く準備を整えて皆が待つ場へと降りていく。
「おはよう、と言うには随分な時間だね」
「リョウ殿、昨日は顔色一使えていませんでしたが、流石にあの量は効いたようでね」
「ははは、そういうことですね」
すでにラークさんや悠々自適のメンバーは食事を終え談笑に移っていた。
「リョウ殿、食べられますか?」
村長がわざわざ俺の食事を残しておいてくれたようだ。
素朴な味わいのパンと野菜を煮込んだスープ、うん、二日酔い対策なメニューになっている。
「リョウ殿はこの後どうされますか?」
「ええっと、ナユタと一緒に王都へと行こうと思っています」
「……リョウ殿、一つ相談なのですが、この村に起こっている怪奇の原因を一緒に探りませんか?」
僧侶のエタさんが真面目な顔で提案してくる。
これはどうするべきかね……
「パパ、村の人も困ってるみたいだし……」
「……分かりました。お力に成れるかわかりませんが微力ながらお手伝いしましょう」
「おお! それは百人力、さっそく落ち着いたら山を探索……」
ガイアさんがそう言いかけると同時に村長の家の扉が荒々しく開け放たれる。
何事かと全員の視線が開かれた扉に集中する。
「そ、村長、そ、獣、いや、山の、逢いたいって」
はぁはぁ、と、息も絶え絶えな青年が事を伝えようとするが、荒れた呼吸でうまく話せない。
「お兄さん落ち着いて。はいお水」
ナユタが木製のコップに入った水を手渡すと一気に飲み干して一息をつく。
「ぷはーーーー! そ、村長! や、山の聖獣の使いが村長に会いたいって外に!」
「な、なんだって!?」
それから大騒ぎになったが、悠々自適のメンバーと俺が警護という形で村長と聖獣の使いと会うことになった。
「こ、こちらが聖獣の使いの方だそうです」
思わずかわいーと声に出しそうになった。
そこにはちっこい小虎がちょこんと座っていた。
ビャッコと同じ真っ白の子だ。
ウードさんは漏れ出すようにカワイーって言ってて激しく萌えた。
『お主が村長か?』
子虎は軽く俺の方を見て他の人が気が付かないレベルで頭を下げて話し始める。
「は、はい」
『此度の村の異変、大変迷惑をかけた。
我らが主は悪しきものの性で身動きが取れずに居たが、ようやく自由を得た。
これからはこの山中で勝手はさせないとのことだ。
安心されるがいい』
姿と声のギャップがまたかわいい。
「ははぁ、し、しかし、聖獣様のお話などはるか昔に祖母に伺ったきり……」
『うむ、ほんの少し居眠りをしてる間に不覚を取った。
これからは安心して暮らすがいいとのことだ。
たまに気が向いたら山頂の祠にこの村のブドーウを、たまにでいいんだが、ほんとにたまにでいいからお供えしてくれてもいいぞ。とのことだ。では、伝えたぞ』
いうが早いかくるりと向き直しパタパタと走り去っていく。
見た目の壮絶な可愛い走り方と、速度が釣り合わない程の速さで風のように去っていった。
「……な、なんだったんだ……」
村長さんも状況がつかめずに混乱気味だ。
「もともと聖獣の言い伝えでもあったんですか?」
「あ、ああ、ええ。私も大昔、子守唄に聞いたような話ですが……
こうして、本当に使いがいらしたのなら……事実なのでしょう……」
それから村人が集められ、周囲の情報収集を行い、明らかに魔獣たちの姿が見られないことで、聖獣の話の裏付けが取られたことになった。
村には安堵と、聖獣に守られていることへの感謝の気持ちで包まれることになった。
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