子連れプログラマーVRRPG脱出計画
第24話 穴
「ここですね、この周囲は不安定な感じがしますし、間違いないかと」
魔物を倒しながら王都の北に位置する山岳地帯に不自然にぽっかりと開いた穴の前までやってきた。
外は真っ暗だが、暗視魔法を使っているので昼と変わらない。
突然の閃光もガードしてくれる昨日もついているので急に明るくなっても見え方は変わらない優れものだ。
「やっとスッキリした。全くあの兵隊覚えておきなさいよ!」
屁をかけられたイライラを魔物討伐にぶつけるのは止めて欲しい。
前線に俺がいるのにお構いなしに攻撃魔法をデタラメに唱えてきて大変だった。
もちろん何か言えば機嫌を損ねるだけなので、そっとしておくに限る。
「此処から先が暗視でも見えないってのはどういうことなんだろう?」
「たぶん別フィールド扱いのダンジョン化しているんだと思います」
「そうすると気をつけないとね。入った瞬間モンスターハウスだ!! ババンなんてことも……」
「でも、避ける方法もないんだろ? 行くしかない」
「何が出ても対応できるように準備はしっかりと」
「御武運をパパ、ママ」
「よし! 行くぞ!」
思い切って黒い穴へと突入する。
一瞬で場面が切り替わり、洞窟の内部に降り立つ、背後にも同じような黒い穴。
「閉じ込められたりはしないみたいだな……」
「それじゃぁクソゲーじゃん、そんなゲームにしないよ!」
「魔王関連はママの意図通りになってないかもしれないですけどね」
「何にせよ、気をつけて進もう」
実ははじめてのダンジョン探索でワクワクしているのは内緒だ。
周囲に気を配りながら慎重に進んでいく。
「一応マップはボクが自動で作ってますから」
「ナユタはいい子だねぇ!」
「えへへ」
巨乳とショタか……人気が出そうだ。
「リョウ、今最低なこと考えなかった?」
「いや、カンガエテナイヨ」
「パパ、最低です」
何故わかった。エスパーか?
「パパ、ボソボソ声が出てますよ。あと敵です。
その道の角すぐです」
「何体くらい?」
「5体以上、密集しててわかりにくいです」
「それじゃぁ俺が不意打ちで注意惹きつけるから、サラが魔法で片付けよう」
「了解」
気配を消して曲道を曲がる。
なるほど敵が密集している、犬のような獣人が何やらよくわからない言語で会話をしている。
ローブを着た魔法使い風の獣人に狙いを定める。
「シャドーザッパー」
スニーク状態から背後への斬りつけで確率即死を与える技だ。
攻撃のおかげか即死が発生したのか一撃で敵を葬る。
突然のことに集団は混乱するが、サラたちと反対側に立った俺に敵意を剥き出しだ。
あとは背後からサラの豪華が敵の集団を包み込んでジエンドだ。
「実際の戦いは不意打ちからの一気の掃討じゃないと、こっちのリスクが怖いよなー。
死ねないってのは困ったもんだ」
「死ねない状態でそれだけガンガン突っ込めるパパが凄いと思いますよ」
「この人は狂ってるのよ、ゲームだから特にね。
自分自身でさえロールプレイを徹底してるの」
うん、否定できない。
それでも俺にだって現実世界に未練はある。と言うかできた。
沙羅のが本当か確かめないと。
ゴス
サラの杖が深々と後頭部に突き刺さる。
俺の冒険は終わってしまった。
「いててててて……」
「パパ、その癖直さないと敵じゃなくてママに殺されるよ?」
「全くもう、ほんとに男って……でも、リョウも私の事気になって……ブツブツ」
気をつけよう。どうやら独り言を言うくせがあるようだ。
基本一人で作業するから誰からも指摘されなかったな。
……ん? 今の考えは少し悲しくないか?
気にしたら負けだな。
サラが可哀想なものを見るような、悲しい目でこっちを見ているけど……
ダンジョン内の敵は外とは比べ物にならないほどに多かった。
スニークからの奇襲は笑えるほどに上手くいくので、一方的なワンサイドゲームだったが、まともに戦えばかなりハードなダンジョンだろう。
「ちょっとこのバランスは考えないとな……」
「魔王のダンジョンだから敵頻度はいいとして、スニーク対策は必須だね」
「あんまり簡単に戦闘が進むと興ざめだからね、きつさとやりがいのバランスを考えてね」
サラといると気がつくとゲーム談義になってしまう。
調子に乗ってると夢中で話し続けて疲れるから、これも気をつけよう。
サラと話していると楽しいことは事実だが、今は魔王戦に集中力を傾けないと。
ダンジョンは入り組んでいたが、進むだけならそこまで大変ではなかった。
ダンジョン探索を長引かせる理由は、俺とサラの性格的な問題だ。
「ナユタ、全てのマップ埋まったか?」
「いえ……最初の道の反対の道側が……」
「戻るぞ」「戻るわよ」
「……はい」
最初はかなり反対された。
しかし、マップを埋めずに次の階層に行くなんて、そんなことは出来ない!
サラもゲーマーとしてそれは許せない。
ここは、二人の統一見解だった。
そのせいで、探索に思った以上に時間がかかってしまった。
「パパ、ママ、わかってると思うけど、普通の考え方なら、魔王はエリアボスクラスのはず。
つまり、この大陸でのラストダンジョンくらいの規模があると思う」
「ああ」
「このペースじゃ絶対に夜明けまでにはクリアできない」
「ああ」
「どうするの?」
「仕方ないんだ、こればっかりは、生き方みたいなものなんだ……」
「まぁ、数日なら問題ないだろうけど、このダンジョンが巨大だった場合……
今回みたいなやり方は難しいと思います」
「ナユタの言うとおりだと思う。今回は少し、迂闊だった。
俺も反省している」
階層が進むと敵の数は増してくる。
未だにスニークからの奇襲が有効というガバガバなのでなんとかなっているが、二人で突入するような規模のダンジョンでないことははっきりと感じている。
「一回……引くか……」
反省点がおおすぎた。
はじめての魔王ダンジョンアタックは、苦渋の撤退という選択になった……
魔物を倒しながら王都の北に位置する山岳地帯に不自然にぽっかりと開いた穴の前までやってきた。
外は真っ暗だが、暗視魔法を使っているので昼と変わらない。
突然の閃光もガードしてくれる昨日もついているので急に明るくなっても見え方は変わらない優れものだ。
「やっとスッキリした。全くあの兵隊覚えておきなさいよ!」
屁をかけられたイライラを魔物討伐にぶつけるのは止めて欲しい。
前線に俺がいるのにお構いなしに攻撃魔法をデタラメに唱えてきて大変だった。
もちろん何か言えば機嫌を損ねるだけなので、そっとしておくに限る。
「此処から先が暗視でも見えないってのはどういうことなんだろう?」
「たぶん別フィールド扱いのダンジョン化しているんだと思います」
「そうすると気をつけないとね。入った瞬間モンスターハウスだ!! ババンなんてことも……」
「でも、避ける方法もないんだろ? 行くしかない」
「何が出ても対応できるように準備はしっかりと」
「御武運をパパ、ママ」
「よし! 行くぞ!」
思い切って黒い穴へと突入する。
一瞬で場面が切り替わり、洞窟の内部に降り立つ、背後にも同じような黒い穴。
「閉じ込められたりはしないみたいだな……」
「それじゃぁクソゲーじゃん、そんなゲームにしないよ!」
「魔王関連はママの意図通りになってないかもしれないですけどね」
「何にせよ、気をつけて進もう」
実ははじめてのダンジョン探索でワクワクしているのは内緒だ。
周囲に気を配りながら慎重に進んでいく。
「一応マップはボクが自動で作ってますから」
「ナユタはいい子だねぇ!」
「えへへ」
巨乳とショタか……人気が出そうだ。
「リョウ、今最低なこと考えなかった?」
「いや、カンガエテナイヨ」
「パパ、最低です」
何故わかった。エスパーか?
「パパ、ボソボソ声が出てますよ。あと敵です。
その道の角すぐです」
「何体くらい?」
「5体以上、密集しててわかりにくいです」
「それじゃぁ俺が不意打ちで注意惹きつけるから、サラが魔法で片付けよう」
「了解」
気配を消して曲道を曲がる。
なるほど敵が密集している、犬のような獣人が何やらよくわからない言語で会話をしている。
ローブを着た魔法使い風の獣人に狙いを定める。
「シャドーザッパー」
スニーク状態から背後への斬りつけで確率即死を与える技だ。
攻撃のおかげか即死が発生したのか一撃で敵を葬る。
突然のことに集団は混乱するが、サラたちと反対側に立った俺に敵意を剥き出しだ。
あとは背後からサラの豪華が敵の集団を包み込んでジエンドだ。
「実際の戦いは不意打ちからの一気の掃討じゃないと、こっちのリスクが怖いよなー。
死ねないってのは困ったもんだ」
「死ねない状態でそれだけガンガン突っ込めるパパが凄いと思いますよ」
「この人は狂ってるのよ、ゲームだから特にね。
自分自身でさえロールプレイを徹底してるの」
うん、否定できない。
それでも俺にだって現実世界に未練はある。と言うかできた。
沙羅のが本当か確かめないと。
ゴス
サラの杖が深々と後頭部に突き刺さる。
俺の冒険は終わってしまった。
「いててててて……」
「パパ、その癖直さないと敵じゃなくてママに殺されるよ?」
「全くもう、ほんとに男って……でも、リョウも私の事気になって……ブツブツ」
気をつけよう。どうやら独り言を言うくせがあるようだ。
基本一人で作業するから誰からも指摘されなかったな。
……ん? 今の考えは少し悲しくないか?
気にしたら負けだな。
サラが可哀想なものを見るような、悲しい目でこっちを見ているけど……
ダンジョン内の敵は外とは比べ物にならないほどに多かった。
スニークからの奇襲は笑えるほどに上手くいくので、一方的なワンサイドゲームだったが、まともに戦えばかなりハードなダンジョンだろう。
「ちょっとこのバランスは考えないとな……」
「魔王のダンジョンだから敵頻度はいいとして、スニーク対策は必須だね」
「あんまり簡単に戦闘が進むと興ざめだからね、きつさとやりがいのバランスを考えてね」
サラといると気がつくとゲーム談義になってしまう。
調子に乗ってると夢中で話し続けて疲れるから、これも気をつけよう。
サラと話していると楽しいことは事実だが、今は魔王戦に集中力を傾けないと。
ダンジョンは入り組んでいたが、進むだけならそこまで大変ではなかった。
ダンジョン探索を長引かせる理由は、俺とサラの性格的な問題だ。
「ナユタ、全てのマップ埋まったか?」
「いえ……最初の道の反対の道側が……」
「戻るぞ」「戻るわよ」
「……はい」
最初はかなり反対された。
しかし、マップを埋めずに次の階層に行くなんて、そんなことは出来ない!
サラもゲーマーとしてそれは許せない。
ここは、二人の統一見解だった。
そのせいで、探索に思った以上に時間がかかってしまった。
「パパ、ママ、わかってると思うけど、普通の考え方なら、魔王はエリアボスクラスのはず。
つまり、この大陸でのラストダンジョンくらいの規模があると思う」
「ああ」
「このペースじゃ絶対に夜明けまでにはクリアできない」
「ああ」
「どうするの?」
「仕方ないんだ、こればっかりは、生き方みたいなものなんだ……」
「まぁ、数日なら問題ないだろうけど、このダンジョンが巨大だった場合……
今回みたいなやり方は難しいと思います」
「ナユタの言うとおりだと思う。今回は少し、迂闊だった。
俺も反省している」
階層が進むと敵の数は増してくる。
未だにスニークからの奇襲が有効というガバガバなのでなんとかなっているが、二人で突入するような規模のダンジョンでないことははっきりと感じている。
「一回……引くか……」
反省点がおおすぎた。
はじめての魔王ダンジョンアタックは、苦渋の撤退という選択になった……
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
4503
-
-
125
-
-
23252
-
-
314
-
-
52
-
-
549
-
-
29
-
-
1
-
-
93
コメント