子連れプログラマーVRRPG脱出計画

穴の空いた靴下

第25話 反省会

「一旦解散、一眠りしたら……反省会をします」

「はい。お疲れ様でした」

 俺とサラは一旦別れて仮眠をとる。
 多分3時間も寝ればスッキリするだろう。
 ダンジョンから撤退して街へ戻り、王都に侵入した。
 警備はこれでいいのだろうかと言うぐらい不可視魔法でするっと抜けられた。
 まぁ、魔物はそんな手段は取らないだろう。

 とりあえず。色々考えることはあるが、仮眠をとる。

 ストンと深い睡眠に落ちてくれたので、スッキリとして目が覚める。
 顔を洗い、ナユタにサラの様子を見てきてもらう。
 意外なことにサラも既に起きていた。

「おはようリョウ」

 室内着のサラは、ちょっとドキッとしてしまった。

「おはようサラ。スッキリしたか?」

「うん、大丈夫。ゲームのことだから少し悔しくてね」

「俺もだ。気が合うな」

「まあね」

 そのまま俺の部屋で反省会と、今後の作戦会議を行う。
 基本的に戦闘は問題ない、というかゲームの仕組みに問題ありだ。
 そっちの議論を始めるとたぶん収集がつかないので今は止めておく。
 既にサラも俺も改善案はいくつかある。
 この世界から帰れたら考えればいい。

「パパ、ママまずは探索時間について考えたほうがいいと思います」

「ああ、はっきり言えることが一つある。
 一晩、夜中だけで攻略しようとしてた俺が馬鹿だ」

「……それは私も同じ。少し舐めていた」

「全マップ踏破は決して譲らないパパとママに感心するよ……」

「それはゲーマーの生き様だ許せナユタ」

「ごめんねナユタ」

 行かなかった一角に宝箱でもあったらと想像するだけでゾットする。
 無理だ……俺には……出来ない……。

「きちんと手続きを踏んでダンジョン探索をするのが最善だと思う」

「そうしたら冒険者ギルドへ相談したほうが良さそうだね」

「それにダンジョンで手に入れた素材もあったな……」

「よし、とりあえず行ってみよう」

 王都内の混雑は未だ継続中だ。
 お昼時ということもあって、飲食店は軒並み混雑している。
 幸か不幸かその分冒険者ギルド内の混雑は落ち着いていた。

「えーっと、まずはモンスターの素材納品系クエストチェックして……
 お、色々行けるなサラのランクも上がるといいなぁ」

 手持ちの大量のモンスター素材と照らし合わせてクエストを受注していく。
 このあたりの表示も自動で選べたり出来ると便利だけど……あんまりやりすぎるとゲーム感が出すぎる……難しいところだ。

「すみません、こちらのクエストをパーティで報告したいです」

「はいはーい。えっと……こんなに?」

 この間の話し好きのおっさんじゃなくて綺麗なおねえさんが受付だ。

「一つ一つ素材出していきますね、まずは……」

 結局ギルドの職員3人がかりで確認と処理を行ってもらうはめになる。

「ご、ご苦労様でした。す、凄いですね……」

 無事にサラはランクアップだ。

「そういえば、北のダンジョン疑いの場所の探索は依頼とか無いのですか?」

「えーっと、今のところ依頼としては来ていないわね。
 国の方も今は防衛が忙しいみたいで……冒険者が何名か向かったはずなんだけど……戻ってきていないの……」

「探索自体は許可とかは要らないんですか?」

「ダンジョン疑いである以上届け出はしていってね。
 いずれ難易度などを設定しないといけないから、ただ、あなた達のランクだとちょっと無謀だと思うわよ」

「うーん。近くまで様子を見に行って来たいので、届け出だけさせてもらってもいいですか?」

「……無茶しないでね? 王都周囲にも魔物が出るようになって冒険者の仕事も増えてるから」

「ありがとうございます。十分気をつけます」

 どうやら探索自体はそんなに手続きとかは必要ないみたいで、探索願い的な届け出だけで門の外への通行は許可された。
 こんなことなら最初から正規の手続きをすればよかった。

「よかったよかった。それにランクアップおめでとう」

「実感ないなぁ……」

「パパとママも異常なほどモンスター倒してること自覚した方がいいですよ」

「そうだよなぁ……」

 ステータスは見ないぞ。

「ダンジョン内で夜を越すことになりそうだから、それを見越した準備をしないとな」

「流石にリョウの家を出すわけにもいかないからねぇ……」

「一般的なテントや寝具を揃えたほうがいいですよパパママ」

「よし、キャンプ道具買いに行くぞ!」

「おー!」

 アウトドア感覚だ。
 異空間に道具をしまえるアウトドア……ぜひ現実でもやってみたい。
 普段機械に囲まれて仕事しているので、突然自然の中で一晩過ごしたい。そんな欲求にかられることはよくあった。なかなかそんな時間は作れないので、もっぱらネットでアウトドア商品のカタログを見て、自然の写真や映像を見て妄想していた。
 この世界で一番心躍っていた点はそこかもしれない。
 現実と見まごう自然の中にいる。
 自然を感じられる。
 俺の心は自然を求めていたようだ。

 サラもナユタもはしゃいでいろんな道具を買い込んだ。
 今後の長い旅を考えれば、大きな都市である王都で買い込むのは悪いことではない。
 そう、無理やり正当化して買い物欲求を満たすのである。

「食料も大量に仕入れた。道具も万全、装備やら魔道具などもさらに仕込んだ」

「ギルドの許可も得たし、リベンジだね!」

「よし! さあ行かん魔王の待つダンジョンへ!」

 宿屋にもきちんと事情を話して前払いで一月分の宿代を渡しておく。
 準備は万全だ。
 俺達は再び魔王のダンジョンへと今度はきちんと城門から出発する。

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