度重契約により最強の聖剣技を

初歩心

第十二話 終演と再会

 (······また強くなりましねぇ
ハアァ♪ 会えるのが楽しみで楽しみで仕方ないですぅ♪
でもぉその為には、君がもっと強くならなきゃいけませんねぇ)

( 俺の力が足りないとでも言いたいのか!! )
 
(はぁい。 今の君の実力がぁどの程度なのかぁ、きっとあの子と戦えばぁわかりますよぉ ―――)

それを最後に魔王との対話は途切れた。

目を開くと、俺がいる地点を中心として扇状に地面がえぐれていた。 
空には、快晴の青空がひろがり、空気中には暖かな風が吹きだしている。
周りの降り積もった雪もすっかりなくなっている。
これで聖都の寒冷被害も収まったはずだ。
 いつの間にか炎神の加護もきれていた。

「今度こそやったね瞬ちゃん、やっと一息つけるよ。
お姉ちゃん少しだけ疲れちゃったな」
 
どうやら姉は先に気がついていたらしい。
爆発が起こる直前、ドーム状の聖術保護を咄嗟にかけたので俺と姉は無傷なわけである。
    
    「············」

 先ほどの対話が本当なら強大な魔力を持つ銀竜は魔王のほんの一部の魔力で作り出した物だという事になる。
そう考えると魔王の力はとてつもなく大きく、悔しいが今の俺の力じゃ復讐すら果たせない。
それどころか魔王にたどり着く前に力尽きてしまう可能もあるわけだ。
 それに、対話中に言っていたあの子とは誰の事なのかも気がかりでならないが。

「学園に帰ったら肩揉みでも頼んじゃおうかな。もちろん二人きりで、ね。
瞬ちゃん? 聞いてる?? 」

「……いや何でもない。お疲れ様、姉ちゃん」
 
 「あ、やっぱり聞いてなかったでしょう!……弟に無視されるなんて……お姉ちゃんもう死にたい」

 姉は、聖剣を自らの腹に向け構えながら暗い表情でそう言った。
本気でやりかねない勢いだなこのヤンデレが!!

「分かった分かった。
わざと無視して悪かった、肩もみぐらいはするからさ早まるな!! 」

「え、本当に?! 」

「二人きりは断じてお断りだが」

「……しょうがない我慢するよ。今は姉として」

パァと、姉の表情が明るくなる。
 我慢するもなにも姉弟の垣根を越えて一体何をしでかそうとしていたんだ……容易に想像できるがまさかな。
姉が弟をなんて事は考えただけで寒気がはしる。
さすがにそこまで病んでないはずだ。

「あ、そうだ。言っておくとね、私と瞬ちゃんは本当の姉弟じゃないんだよ」

 また始まったか姉の悪い癖が。
はいはい、本当の姉弟じゃない……

「は?」

 「だから本当の姉弟じゃないんだよ。私は、聖剣士協会から父さんと母さんに引き取られた養子なの」

「……はぁ?! いやいや悪い冗談だろ、証拠がないしな」

 「じゃあ瞬ちゃん、私と……してみる? 子供ができれば姉弟じゃないかどうか分かると思んだよ」

「断る!! そんなことする前に調べればいいだろうが。なんでそんな発想に至るんだよ……」

「そっか!! 考えてみればそうだね。じゃあ、アテナさんに頼んでみよう」

「……そうだな」

 俺は頭を抱えながらそう答え返した。
 その発言はわざとなのか素なのか?
もう姉?の考えがまったく分からない。
ただ、たとえ血の繋がりがなかろうと俺にとって姉であることには変わりなくそんな関係になるのはまっぴらごめんだ。
 真実かどうか定かではないがとんでもない発言をいまいち飲み込めない自分へ、肯定しようと心の内にそう言い聞かせる。

 「おーい」
 「やりましたねマスター、瞬」

 そんな突然の告白を受けたさなかツクヨミがアマテラスをおぶった状態で駆け寄ってきた。

そうか、誰かを忘れていると思っていたがアマテラスだったか。

「すまんアマテラス」

「私、瞬に何かされましたか?」

 ツクヨミの右横からひょこっと顔をのぞかせる。

「······そういう訳じゃないんだが、なんかすまない」

今まですっかり忘れてたなんて言ったらどんなに傷つくだろうか。
ここは言わずに心のうちに止めておくべきだろう。
気の毒に弱体化していることだしな。

「? まぁ、いいですけど。
瞬、なんか顔色がすごく悪いですよ」

「大丈夫だ。気にしないでくれ」

「そうですか? そこまで言うなら契約者たる女神として追求しませんが」

「あぁ、そうしてくれるとありがたい。
ところでさっきはお陰で助かったぞツクヨミ。
お前の加護がなかったら、今頃どうなってたか」

「礼なんていい、私は必然な事をしただけだから」

「うんうん、さすがツクヨミちゃん」

 「マス······ター······苦しいです」
 「私も······いるん······ですけど」

姉に抱きつかれた二人は息を上げている。
あの豊満な胸が、それを引き起こしているらしい。
少し苦しそうなあの様子から、軽い呼吸困難といったところだろうか。


 「おっと、ごめんごめん」

 思わず抱き締めていた姉は、二人から慌てて離れる。

「そろそろ降ろしてください」
「分かった」

いつまでもおんぶされたままでいるわけにいかないとようやく気付いたらしい。

「しかし、そうしてるとお前たち姉妹みたいだな。
どちらかというとツクヨミがお姉ちゃんか? 」

「姉妹……姉!! 」

俺は、率直に思っていた事を言っただけだ、だがそれがツクヨミに悪い影響を与えたらしい。
額に若干、汗を浮かべアマテラスを降ろそうとしていたツクヨミは動作を途中でやめるとそのままアマテラスをおぶり直す。

「ちょっとなんで降ろしてくれないんですか?」
「今だけは私が、お姉ちゃんだから」

今もなお額に若干汗を浮かべ、嬉しいそうに口元に笑みをこぼしながら必死に、ずり落ちそうなアマテラスを抱え直す姿はなんかかわいらしかった。

「私は、別にどっちでもいいんです。お・と・なですから」

 その口調は、子供が意地をはる時のそれだと思うが。
俺の横に立つ姉は、いつの間にか口に手を当て微笑ましそうに見ていた。

「でも降ろしてくれないと困ります!! 瞬、なんとかしてください」

「そうだな、重いなら無理しないほうがいいんじゃないか。そのあれだ、姉として」

「め、女神に対して重いなんて、なんて事を言うんですか!! それでも私の契約主なんですか」

「……確かに重い。うん、姉としてよしとく」

   「?!」

 アマテラスは地面に腰から落ちたのであった。
痛みを和らげようと強打した部分をさすっている。
そんなアマテラスはさておき。

「そういえば、リナたちはどうしたんだ? 姿が見えないが」 

「私も、それが気になってたんだよ」

「マスター、私は分かりません。加護を行使するだけで精一杯だったので」

「グランディーネの治癒の為に、先ほど学長と一緒に帰還しましたよ。
治癒が終わりしだい私たちも帰還させるそうです」

ツクヨミが首をかしげる最中、俺の問いに尻餅をついたままのアマテラスが答え、立ち上がるとスカートを叩いた。
 
 そんな会話を終えた直後だった。
辺りが静まりかえり身体中がゾワッとするような殺気だった空気に変わった。
 


「へぇ、もう少しだけ早ければ聖王であるアテナと会えたんだね。それは残念だな」

 俺たち四人以外、誰もいないはずのこの場で不意に誰かの声が響き、途端に何かが俺に向け飛んできた。

 聖剣で弾き返すとそれは、甲高い音と共にきた方向へと回転し地面に突き立つ。
 禍々しい濃紫色のオーラを放つ、刀身から持ち手まで漆黒色の西洋剣だ。
 その刀身は左右それぞれ内側に湾曲しており剣先がより鋭くなるような変わった形をしている。
 
「相変わらずさすがだね、瞬。
僕が、隙をついて投てきした聖剣をいとも容易く弾くなんて」
 
 その聖剣の傍らにいる声の主は、黒い鎧を全身に身に纏い、右腕から手先のみ、ゴツゴツした鱗で覆われそれは、まるで竜の腕のようだ。
黒いマントをひるがえし聖剣を引き抜くとこちらへ歩みよってきた。

見間違うはずもないその顔、その声に俺と姉は覚えがあった。

 「······優汰なのか」

 「そうだよ瞬。僕は正真正銘、君の親友だった優汰だ」
 

―――魔王が、言っていたあの子とはもっとも親しく、救うという約束を果たせなかったあの親友だったのだ。
 
 

  


 

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