劣等魔術師の下剋上 普通科の異端児は魔術科の魔術競技大会に殴り込むようです

山外大河

6 1-Cのやべー奴

「なるほど……あの力の正体はやはり魔術ではなかったのか」

「そうだな。魔術じゃねえんだよ残念ながら」

 納得するように言った黒田に対し、少しは残念そうに赤坂はそう言葉を返す。
 あの力とは昨日赤坂が中之条との決闘で振るった力の事だ。
 思い返してみれば昨日の決闘で赤坂が使った力が一体なんだったのかという事は、中之条を含め誰も知らず終いになっていた。
 態々説明するタイミングもなければ必要性もなかったし、その辺り周りも凄い勢いで聞いてきそうな報道部は結局取材出来ず終い。
 だから多分普通科、魔術科問わずあの力の事が気になっている生徒は多いはずで、黒田もまたその一人だった訳だ。

 だから教えた。

 正直誰にも知られていない謎の力の原理というのは、対策を組まれない為にも黙っておくべきなのかもしれない。
 だけど力の原理を認知されたからといって何かが変わるとは思えないし、知られていない事のアドバンテージを保持するにはその力で何が出来かという事を隠すほうが重要に思える。
 だからまあ、昨日決闘で力を振るった時点で隠すメリットが無くなってしまったわけだ。

 そして残念がる赤坂に少し同情するように黒田が言う。

「残念ながら、か。まあ術式器官が壊れてでも魔術を使おうとした奴だ。せめてそれが魔術と呼べる物だったらよかったというのはよく分かるよ。つまりお前はアレだろう。多分魔術職にでも就きたかったんじゃないのか?」

「良くわかったな」

 鋭い指摘をされて思わずそう返す。
 完全に正解だった。

「そこまで執着を見せるという事は、それ相応の目的があると考えるべきだ。そう考えれば割と簡単に辿りつく答えだな。一番可能性が高いのは魔術職に就きたいからとなるのは当然の事だ」

「すげえなお前、探偵かよ」

「ははは、この程度で探偵と呼ばれてしまっては探偵の格ご落ちる」

 笑いながらそう言った黒田は一拍明けてから赤坂に問う。

「で、お前は何になりたかった」

「魔捜官だよ魔捜官」

「なるほど。確かに魔術科を出ていないとなれない職業だな」

「まあ基本的にはな」

「……というと何か裏技でもあると」

「あって欲しいなとは思ってる」

 赤坂がそう言うと、黒田は少し考えるような素振りを見せてから答える。

「なるほど、魔戦に出るのはその為か。魔戦の全国大会には各魔術職のスカウトが見に来るというからな。魔術科の生徒に協力を頼むことさえできれば何かを変える事は出来るかもしれん」

「……」

「どうした、何か見当違いな事でも言っているか?」

「いや、全部当てられてるから軽くビビってんだよ。なんだよお前、マジで探偵かよ」

「だから違うし目指してもいない。ただ武芸に携わる者として洞察力は鍛えてきたつもりだ」

「鍛えられ過ぎて怖いよ。なんだよお前の所の流派」

 ……まあそれはともかく。

「まあできればこの話他言無用な。一応表向きでは数合わせで参加するわけだし、その理由が原因で失格にでもなったらキツい」

「ならないだろう、別に」

 黒田は言う。

「難癖を付けてくる輩はいるかもしれんが、それでもルール上なんの問題もないだろう。それにその頼みを受けた魔術科の生徒……朝の話を聞くと篠宮の従姉妹か。その生徒も参加する以上自分なりの志があって参加するはずだ。だからお前がどんな野望を持とうと何の問題もないさ」

「……なあ、お前実は俺達の会話どこかで聞いてたりしない? 軽くこれまでのあらすじ感出てるんだけど。正解しすぎてもうマジで怖いんだけど」

「人をストーカーみたいに言うな。まあ黒田一心流を持ってすれば気配を消した隠密行動もやろうと思えば出来るが」

「すげえ、忍者かよ」

「探偵にストーカーに忍者とは中々に忙しい奴だな。全部違うしなるつもりもない……まあ忍術は少しかじってはいるが」

「かじってんのかよ! 黒田お前マジで何者なんだよ」

「何者も何もどこにでもいる普通の高校生だよ」

「お前みたいなどこにでもいる普通の高校生がいてたまるか!」

「世界中探しても使い手が一人もいないような特殊技能の使い手に言われたくはない」

「悔しいけど一理ある……あるのか?」

 あったとしても、それでもどう考えたって普通じゃない。
 千年に一人の天才魔術師に特殊技能使い。そんな自分達に勝るとも劣らない程に普通じゃない。

(……もしかしたら1-C変なキャラ大集合してたりするんじゃねえのか?)

 なんというか日刊やべー奴という風に毎日毎日誰かしら普通じゃない個性を出してくる予感がする。
  まあそれならそれで楽しそうではあるので別にいいが。

「まあ一理あるかどうかはともかくだ」

 黒田が大幅に脱線した話の軌道を戻す様に言う。

「確か魔戦の校内予選は来週からだったな」

「ああ、そうだな」

「赤坂の目的を果たすには全国大会に出場しなければならないんだ。だからとにかく全力で頑張れ。応援してる」

「おう、応援頼むわ。それに答える様頑張るからよ」

「うむ、その粋だ」

 そう言って黒田が頷く。
 そしていいことを思い付いたと言う風に、手のひらに拳をポンと置く。

「そうだ赤坂、放課後空いてるか?」

「ん? ああ悪い、空いてねえや」

 放課後は美月と共に渚から稽古を受ける約束になっている。
 だから空けようと思えば空けられるかもしれないけど、ひとまずは埋まっている。

「そうか。ならまたの機会だな」

「ちなみに聞いておくけど、なんか放課後にやるのか?」

「うむ。俺でよければ少し力になってやろうと思ってな」

「……?」

「昨日の決闘、俺は観客席で観戦していたのだが……まあ、気になる点がいくつかあってな」

「気になる点?」

 なんだろうかと考えるがいまいち答えが出てこない。
 立ち回りがいけなかったのだろうか? 渚に言わせてみれば初手で決めなかった逃れ失策との事だが、同じような指摘だろうか?
 そう考えたが、黒田の指摘は渚とはまた違う角度の指摘。

「あくまで主観ではあるが、近接格闘の動きに少々無駄があるように思えたのでな。色々とアドバイスができると思ってな」

 古武術の道場の息子だからこそできる指摘。

「無駄があるって……あの決闘少し見ただけで分かったのか?」

「まあ本格的な指導をしようと思えばもっとじっくりと見なければならないと思うが、それでも長年武道に携わってきたものからすれば気になる点位は見つけられる」

「……すげえな」

「なに、この程度の域なら誰でも簡単に到達できるさ」

「それ典型的な、実際その域に達したから言えるような事だろ」

「かもしれんな。案外簡単ではないのかもしれん」

 そう言って黒田は笑みを浮かべる。
 そんな黒田に赤坂は言う。

「まあ今日はちょっと無理だけどさ、今度頼んでもいいか?」

「ああいいぞ。俺も修行中の身であるが故、師範の様にうまく教えられるかは分からんが」

 黒田は謙遜するようにそう言うが、それでもそれはあくまでその師範と比べればという事だろう。

「……多分それ、本当に師範と比べたら、だろ? なんかもう今までの言動から言って、師範が免許皆伝だとすれば六段々とか七段とか師範一歩手前まで行ってるような気がするんだけど」

 半分冗談の様にそう聞くと、黒田はメガネをクイっと上げてから言う。

「それは買い被りすぎだぞ赤坂」

 そう言って軽く咳払いした後黒田は言う。

「五段だ」

「お前の所の古武術よく知らねえけど、それ無茶苦茶強いんじゃねえの!?」

 よく分からないが段とか持ってる時点で無茶苦茶強いのだと思う。
 赤坂の記憶が正しければ剣道とかだと5段とかはそう簡単に取れる様な物では無かったと思う。
 ……つまりはもう、無茶苦茶強い印象しかない。

「まあ無茶苦茶かどうかは分からないが、それなりに強い自身はあるぞ。魔術無しの徒手空拳ならこの学園の誰にも負ける気がしないい」

「おお!」

「当然、篠宮にもな」

「いやそりゃそうだろ。魔術なきゃ普通の小柄で華奢で小柄な女子だからな!? お前それ殴り合いの喧嘩なら女子に負けねぇって言ってるみたいなもんだからな!?」

「ふむ、確かに言われてみれば。どうも篠宮=無茶苦茶強いというイメージが先行しててだな……」

「まあ気持ちは分かるけども」

 渚は魔術ありなら冗談みたいな強さだが、それでも魔術無しならただの運動神経が無茶苦茶良いだけの普通の女子な訳で、勝てないほうがおかしい。

「……ところで何故小柄二度言った」

「いや、一回じゃ若干足りねえかなって思って」

「それ本人の前で言えるか?」

「言えるけど怒られるぞ」

「……仲がいいんだな、お前ら」

「まあそれなりにな」

「それなり……か。端から見ればそれなりという距離でもない気がするが」

 そう言った黒田は一拍明けてから言う。

「本当は昨日決闘が終わった後、お前に声を掛けようと思ったのだがな……既に篠宮と篠宮の……従妹でいいのか。二人がいたから止めて帰ったんだ」

「え、声掛けてくれればよかったのに」

「あの輪に突然入れる程無神経になったつもりはない。少なくとも篠宮渚ともほぼ話した事はないし、従妹の方は初めてみたわけだからな。三分の二がほぼ初対面ではあの輪には入れんよ」

「……そ、そうだな」

 全員と初対面という状況であの輪の中に物凄いハイテンションで入って来た人が二名ほどいる訳だけど、あれはまあ特殊な人達なのだろうと結論を付ける。
 そしてそんな結論を付けた赤坂に黒田は問う。

「で、どっち狙いだ?」

「……え、あ、いや、別にそういう感じじゃねえし」

 最初何を言いたいのか分からなかったが、すぐに理解して慌てた様にそんな反応を取る。

「べ、別にそんな感じで見てねーし! ただの幼馴染とその従妹って感じで……まあ友達みたいなもんだから。だからそういう感じじゃねえし!」

「……中学生みたいな反応するなお前」

 もっとも少し前まで中学生である。
 とまあそんなやり取りを交わしながら学食へと向かった。

 ……そこでとんでもない事実が待ち受けているとも知らずに。

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