劣等魔術師の下剋上 普通科の異端児は魔術科の魔術競技大会に殴り込むようです

山外大河

23 対峙

 暁の位置情報を捉えた。
 ……だとすればもう魔力の放出は使わないし使えない。
 あの力の大きなデメリットは使えるタイミングが限られる事以上に、あまりに燃費が悪いからだ。
 生産量に限りのある魔力を放出し続ける。それは言ってしまえばガソリンのタンクに穴が空いた状態で車を走らせ続ける様な物だ。
 ……当然使い続ければ枯渇する。
 故に此処からは魔術弾を見ての自力の回避だ。

「……大丈夫だ」

 自分を鼓舞する様に赤坂はそう呟く。
 二発目の魔術弾を見る限り、今の身体能力や動体視力が増した状態で躱せない速度ではない。
 正確に体を射抜いてきた限り射出後に軌道の調整を行っているのは間違いないが、それでも急に90度曲がったりするような事は考えにくい。
 だとすれば。

「……ッ」

 その狙撃ポイント。及び魔術弾が見えていれば辛うじての回避が可能だ。

(……そこを動くなよ)

 全速力で暁のいるポイントに目掛けて走りながら、赤坂は心中でそう願う。
 移動されれば再び位置情報を失う。そうすれば確実に分かっている暁の位置情報が、ある程度考察で導きだした不明確なものになってしまう。
 そうなれば再びポイントを割り出す必要が出てくる。
 だからこそ、まだそこにいてくれなければ困るのだ。

 そういう意味では暁が遠距離からのスナイプをメイン戦術としていなくてよかったと思う。
 躱され近づかれたら近づかれたで、射撃位置を移動せず迎え撃ってくれる可能性が高いのだから。

 ……そして。

(……止まったか)

 もう一発放たれた魔術弾を躱した所で狙撃が止んだ。
 どうやらあの狙撃では落とせないと判断したらしい。
 そして視界の先では微かに高速で何かが動きだしたのが見えた。
 やがて互いに接近し合う様な形になり、その姿が強化された視力によって映し出される。

 日本刀のデバイスを手に急接近してくる暁隼人。
 これから接近戦で戦わなければならない世界四位の男。

 そして、先手を打ったのは暁だった。

 500メートル程先でビルから飛び降り、滑るように着地する暁はそのままその手のデバイスを振るうと、デバイスから赤い斬撃が放たれる。
 速度は高速。当たればおそらく一撃必殺。
 だけどこれも躱せる。

 躱して次の一歩を踏み出せる。
 当然だ。この位は躱せなければ話にならない。
 この位は躱せなければ目の前の男とは勝負にならないし、そして……そんなものも躱せないのなら篠宮渚が付き合ってくれた特訓は何の意味も成していないという事になる。
 これまでずっと、渚の特訓を受け続けてきた。特訓の過程で何度も理不尽な攻撃を食らい、そのいくつもを理不尽でなくしてきた。
 だから躱せる。此処から先も躱し続ける。

 その攻撃が理不尽だったのはもう随分過去の話なのだから。

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