元、チート魔王が頼りない件。
魔王様『前編』
季節は秋。少し寒いなと思いつつ手袋を付けて帰る。
いつも通り普通の高校生活を送っていたはずが――
俺の名前は桐生 壮一。
成績は優秀だったが近くの偏差値そこそこの高校に通い田舎で暮らしいてる。
ちなみに俺は成績が優秀ということの他には運動神経抜群で一見カッコイイやつだと思われがちだが顔だけは微妙。
そんな、パッとしてそうでパッとしていないスペックを持っている。
そんな俺が何故こんな怪奇体験をしているんだ?
「ふはははは! 助けてくれありがとな!」
脳内に声が響く。
だらんとした日常を送りすぎた俺に対する神様の天罰なのか!?
何故俺はこのような出来事に遭遇してしまったのだろうか。
――時は二時間前に遡る。
「――ってことで私は用事があるから……よろしくねっ!」
そう言いながら両手で持っていたモップを俺の胸に無理矢理押し付け後ろを振り返り、壁に立てかけてあった鞄を持ちダッシュで帰っていった。
今、俺に掃除道具を全て押し付け帰っていったのが幼馴染の白石 胡桃。長髪ロングの黒髪。成績はそこそこ。人付き合いも良し。身長は少し低めの152cm(だった気がする)。美人で男子からは人気がある(俺はいいと思わないけど)。他の皆の前では何でも頑張ってやる感じを演じているのかもしれないが俺に対してだけは人遣いが荒い。
そんな高校生なのだが……
――中学三年くらいから理由は知らないがいつも早く帰る。
……じゃなくて! ふざっけんなよ!
俺は「放課後体育館に来て……」と、言われて来たはずだ。
それが何だ? 体育館の掃除って! 自分が悪いことをして受けた罰なんだから自分で受けろよ!
多少、イライラしながらモップをしっかりと手に持ち握りしめた。
嫌々だが……何もしないのでは意味が無い。と一通りモップをかけるために端っこから始める。
そして一人でぶつくさ文句を言いながらも持ち前の体力を使用しせっせと進めていく。
昔から俺はこうなのだ。
途中でサボって逃げても俺のせいじゃない。と思いつつも何だかんだしてしまう。
『責任感が強いのか』『単純にバカなのか』未だに分からない。が、頼まれたことは何でもしてしまう無茶苦茶なやつとも言えるだろう。
「終わったー!」
モップかけに床の水拭き窓拭きなど様々な仕事を程良く容量良く終わらせた頃には既に一時間半くらい経っていた。
俺はため息をつく。
玄関から帰ろうとすると部活をしている生徒の活発なな声が耳に入ってくる。だが、そんな事は気にせず学校を後にする。
ここから家まではだいたい十分。
自転車で通うことも出来るのだが、あえて健康のために歩いて通っている。
少し高い坂を下り三方向へ続く十字路の真っ直ぐ。何も無い一本道を歩き始める。
ここから右に曲がれば駅があったりスーパーがあったり何も無いところに比べれば、まだ発展している。
左も小さいながら住宅街が出来ており少しは活発だ。
だが、この真っ直ぐな一本道。ここだけは家がポツンポツンと置いてある以外は一面田んぼ! 田んぼ! 田んぼ! だ。
俺はそんな真っ直ぐな道。小さい車なら二台通れそうな道。白線が引いてあるだけの歩道を一人で前を向きただ歩く。ひたすら進む。それだけだ。
そんな時、少し遠くに一台の軽トラが見えた。
……いつもこの時間帯にみるじいちゃんかな。
「あぁきはちりりんとすずむしがぁあなくぅ」
酷い雑音(歌声)を出しながら近づいてくる。どんだけ大きな声を出したらここまで聞こえるだよ……。
そんな事を思っていると一匹の犬が田んぼの方から飛び出してきた。
「クゥン。ワンワン!」
その犬は首元が気になるように前足で何度も何度も首をいじっていた。
いじり終えたのか足を元に戻す。
そして顔を左右に振りながら、諦めたかのように向こうへ走っていった。
そう。向こうへ……向こう側へ……車が近づく向こうの路地へ……!
「おい! おま……」
俺の体は咄嗟に反応してしまった。こんな所でまた無駄な正義感を……!
車との距離を見た感じ今更戻っても逆に危ないだけだ。自分でもビックリするくらいの全速力で走り犬を捕まえ胸に抱える。
だが時、既に遅し。
俺の体には車が当たったのだ。
犬を守るようにぎゅっと抱きしめそのまま前に飛ばされる。
意識が飛び朦朧とする。
ビシャッ
俺の飛び込んだ所はどうやら田んぼの中だったようで水しぶきが舞う。まだ考えるだけの力はあるみたいだ。
ここで死ぬのかな……そう思いながら目を閉じ上を向く。
あれ……感覚が普通にあるな。
よく分からないけど右足だけが痛い。
どうやら車に右足を軽く轢かれただけみたいだ。腫れたとかその程度のことだろ。
いやぁ。思い込みって怖いな!
実際に怖いのはこっちの方だ。下敷きになってしまった稲。狩る直前というくらいに成長しているのに……それがぐしゃぐしゃに潰れているんだもんなぁ。ここの農家になんて謝ればいいんだろう。
すると色々考えながら田んぼに浸かっている俺に対してじいちゃんが話しかけてくる。
「あぶないぜぇえ」
と、ビールを持ちながら話す。
「黙っておきますが飲酒運転は辞めましょうね……」
「助かるぜぇえ。これでも使っとけぇ……」
と、自分の肩にかかっていたタオルを歩道に投げた。
ここから出た後に拭きたいのは山々なんですが……あなたの汗、たっぷりの様に見えるタオルは使いたくないんですけど……。
俺はそう思いつつもとりあえず田んぼから出る。
田んぼから出ると何かが聞こえた気がし辺りを見渡すが誰もいない。
何だったんだ……?
すると……今度はしっかりとした声が聞こえる。
『ふはははは! 助けてくれてありがとな!』
誰だよ。意味わかんないことを言ってるやつは。
だが辺りを見渡しても誰もいない。
おいおい。なんか冷や汗出てきた。怖すぎんだろ……! 幻聴だよな。そう幻聴だ! 頭を打ち付けてそれで!
『おーい! 聞いてるかー!』
再び、脳内に響くような声で話しかけられる。
なんだよ。この怪奇現象! アニメとかじゃないんだから辞めろよ。
でも……童話とかだったら話しかけてきているのは犬だよな。
そう思い、俺はその犬の頭を撫でてやる。
『だーかーら! ここだって言ってんだろ! 犬の頭の上!』
一回しか言われてないし何なんだよ! 気持ち悪がりながらも犬の頭に顔を近づけじっくりと見る。
そこには小人か何かは分からないが角が頭に生えていて尻尾があり、貴族のような服装をした頭にパーマをかけた男がいた。
「……って、ええっ!?」
『そりゃあ驚くか……っと。俺は魔界の王……ヴァイスだ。宜しくな』
――俺はどうやら怪奇現象に巻き込まれてしまったらしい。
いつも通り普通の高校生活を送っていたはずが――
俺の名前は桐生 壮一。
成績は優秀だったが近くの偏差値そこそこの高校に通い田舎で暮らしいてる。
ちなみに俺は成績が優秀ということの他には運動神経抜群で一見カッコイイやつだと思われがちだが顔だけは微妙。
そんな、パッとしてそうでパッとしていないスペックを持っている。
そんな俺が何故こんな怪奇体験をしているんだ?
「ふはははは! 助けてくれありがとな!」
脳内に声が響く。
だらんとした日常を送りすぎた俺に対する神様の天罰なのか!?
何故俺はこのような出来事に遭遇してしまったのだろうか。
――時は二時間前に遡る。
「――ってことで私は用事があるから……よろしくねっ!」
そう言いながら両手で持っていたモップを俺の胸に無理矢理押し付け後ろを振り返り、壁に立てかけてあった鞄を持ちダッシュで帰っていった。
今、俺に掃除道具を全て押し付け帰っていったのが幼馴染の白石 胡桃。長髪ロングの黒髪。成績はそこそこ。人付き合いも良し。身長は少し低めの152cm(だった気がする)。美人で男子からは人気がある(俺はいいと思わないけど)。他の皆の前では何でも頑張ってやる感じを演じているのかもしれないが俺に対してだけは人遣いが荒い。
そんな高校生なのだが……
――中学三年くらいから理由は知らないがいつも早く帰る。
……じゃなくて! ふざっけんなよ!
俺は「放課後体育館に来て……」と、言われて来たはずだ。
それが何だ? 体育館の掃除って! 自分が悪いことをして受けた罰なんだから自分で受けろよ!
多少、イライラしながらモップをしっかりと手に持ち握りしめた。
嫌々だが……何もしないのでは意味が無い。と一通りモップをかけるために端っこから始める。
そして一人でぶつくさ文句を言いながらも持ち前の体力を使用しせっせと進めていく。
昔から俺はこうなのだ。
途中でサボって逃げても俺のせいじゃない。と思いつつも何だかんだしてしまう。
『責任感が強いのか』『単純にバカなのか』未だに分からない。が、頼まれたことは何でもしてしまう無茶苦茶なやつとも言えるだろう。
「終わったー!」
モップかけに床の水拭き窓拭きなど様々な仕事を程良く容量良く終わらせた頃には既に一時間半くらい経っていた。
俺はため息をつく。
玄関から帰ろうとすると部活をしている生徒の活発なな声が耳に入ってくる。だが、そんな事は気にせず学校を後にする。
ここから家まではだいたい十分。
自転車で通うことも出来るのだが、あえて健康のために歩いて通っている。
少し高い坂を下り三方向へ続く十字路の真っ直ぐ。何も無い一本道を歩き始める。
ここから右に曲がれば駅があったりスーパーがあったり何も無いところに比べれば、まだ発展している。
左も小さいながら住宅街が出来ており少しは活発だ。
だが、この真っ直ぐな一本道。ここだけは家がポツンポツンと置いてある以外は一面田んぼ! 田んぼ! 田んぼ! だ。
俺はそんな真っ直ぐな道。小さい車なら二台通れそうな道。白線が引いてあるだけの歩道を一人で前を向きただ歩く。ひたすら進む。それだけだ。
そんな時、少し遠くに一台の軽トラが見えた。
……いつもこの時間帯にみるじいちゃんかな。
「あぁきはちりりんとすずむしがぁあなくぅ」
酷い雑音(歌声)を出しながら近づいてくる。どんだけ大きな声を出したらここまで聞こえるだよ……。
そんな事を思っていると一匹の犬が田んぼの方から飛び出してきた。
「クゥン。ワンワン!」
その犬は首元が気になるように前足で何度も何度も首をいじっていた。
いじり終えたのか足を元に戻す。
そして顔を左右に振りながら、諦めたかのように向こうへ走っていった。
そう。向こうへ……向こう側へ……車が近づく向こうの路地へ……!
「おい! おま……」
俺の体は咄嗟に反応してしまった。こんな所でまた無駄な正義感を……!
車との距離を見た感じ今更戻っても逆に危ないだけだ。自分でもビックリするくらいの全速力で走り犬を捕まえ胸に抱える。
だが時、既に遅し。
俺の体には車が当たったのだ。
犬を守るようにぎゅっと抱きしめそのまま前に飛ばされる。
意識が飛び朦朧とする。
ビシャッ
俺の飛び込んだ所はどうやら田んぼの中だったようで水しぶきが舞う。まだ考えるだけの力はあるみたいだ。
ここで死ぬのかな……そう思いながら目を閉じ上を向く。
あれ……感覚が普通にあるな。
よく分からないけど右足だけが痛い。
どうやら車に右足を軽く轢かれただけみたいだ。腫れたとかその程度のことだろ。
いやぁ。思い込みって怖いな!
実際に怖いのはこっちの方だ。下敷きになってしまった稲。狩る直前というくらいに成長しているのに……それがぐしゃぐしゃに潰れているんだもんなぁ。ここの農家になんて謝ればいいんだろう。
すると色々考えながら田んぼに浸かっている俺に対してじいちゃんが話しかけてくる。
「あぶないぜぇえ」
と、ビールを持ちながら話す。
「黙っておきますが飲酒運転は辞めましょうね……」
「助かるぜぇえ。これでも使っとけぇ……」
と、自分の肩にかかっていたタオルを歩道に投げた。
ここから出た後に拭きたいのは山々なんですが……あなたの汗、たっぷりの様に見えるタオルは使いたくないんですけど……。
俺はそう思いつつもとりあえず田んぼから出る。
田んぼから出ると何かが聞こえた気がし辺りを見渡すが誰もいない。
何だったんだ……?
すると……今度はしっかりとした声が聞こえる。
『ふはははは! 助けてくれてありがとな!』
誰だよ。意味わかんないことを言ってるやつは。
だが辺りを見渡しても誰もいない。
おいおい。なんか冷や汗出てきた。怖すぎんだろ……! 幻聴だよな。そう幻聴だ! 頭を打ち付けてそれで!
『おーい! 聞いてるかー!』
再び、脳内に響くような声で話しかけられる。
なんだよ。この怪奇現象! アニメとかじゃないんだから辞めろよ。
でも……童話とかだったら話しかけてきているのは犬だよな。
そう思い、俺はその犬の頭を撫でてやる。
『だーかーら! ここだって言ってんだろ! 犬の頭の上!』
一回しか言われてないし何なんだよ! 気持ち悪がりながらも犬の頭に顔を近づけじっくりと見る。
そこには小人か何かは分からないが角が頭に生えていて尻尾があり、貴族のような服装をした頭にパーマをかけた男がいた。
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