元、チート魔王が頼りない件。

雪見だいふく

正夢

「じゃあ、行ってくる」

 そう言うと、何か魔法の詠唱のようなことをして、姿が消える。

「マジか……。本当に魔力が回復してるんだな」

 しばらく、ゲームでもしてるか……。
 ゲームを始めて、数十分すると、急に壁へ貼られた、ヘンテコな魔方陣から魔王が出てくる。

「買ってきたぜー」
「一つ聞くぞ。俺の幼馴染と接触したか……?」
「あっ」
「馬鹿なのか!?」
「せ、接触してくる……」

 それから、更に数分後。
 魔王様は帰ってきた。

「接触してきたぜー!」
「そっか。おかえり。ところで、何故買ったものを置いていかなかったんだ?」
「それはー……ははっ! あと、財布返すよ!」

 それを俺の胸に投げてくる。
 投げた反動で財布が開く。

 ……。少なくとも二千円は入ってたよな。

「……! 何を買いやがったァ!!」
「えーっと……」

 俺が叱ると、魔王様はポツポツと食べ物を出す。
 右から、ポテチ。ポテチ。ポテチ。ポテチ……。

「お前は自宅警備員か!」
「だって……。一人でいる時、寂しくって」
「それで、ポテチってどういう発想だ!」
「ま、まぁ、接触したんだしいいだろ?!」
「もういいよ……。で、場所が何処なのかは分かったか?」
「それがな。多分、お前の読み違いだと思うぞ。そんなものは存在しなかった」
「え?」

 なら、あの男達を倒したのは胡桃じゃないってことか……?

「そ、そっか。なら、地道に探すしかないな。砦の勇者と契約している人を」
「あぁ。そうだな……。と、言いたいが任せるしかないからな」
「ほとんどは俺に任せろ。でも、魔王様も少しは頼むぜ」
「分かってるって」
「それじゃあ、俺はそろそろ飯だから」
「いいなぁ!」
「魔王様は、そこの大量にあるポテチでも食べててください」
「うわぁぁぁ」

 そして、飯を食い、考え事をした後、すぐに寝た。


 ――――――
 ――――
 ――


『さぁ! 本日もやってまいりました!』

 ふぁあ。昨日と同じ夢か? 夢なのに、凄く感覚がある。
 面白い夢だ。
 すると……。昨日と同じように、もやもやした部分から人影が現れる。

「……? ここはどこなんだよぉ!」

 弱音を吐いている男は、昨日のチャラい集団の一人だった。

『赤コーナー! 私達にとって都合の悪い男! 桐生 壮一! 青コーナー! くたばれ、チキン! 馬場ばば 諭吉ゆきち! ……ファイト!』

「えっ? えっ? どういう事だ!?」

 相手は動揺している。夢だし、色々試してみるか……。

「ウォーター!」

 手から、ホースのジェットモードで出るような水が勢いよく出る。
 相手の口や鼻に入り、苦しそうにしている。
 だが、その手を止めること無く、打ち続け……。相手がぶっ倒れる。

『試合終了!! 勝者は桐生選手です!』

「今回も報酬を――」

 プルルルルルルルル

 目覚ましが大きな音で鳴る。
 また、ここでか……。

 そう思いながらも、準備を済ませ、学校へ向かう。

 とりあえず、次のターゲットを考えてみるか。
 胡桃では無いってことは……。街にいる人間なのか? でも、街にはゲートが無いから、この田舎で多くの時間を過ごしている奴のはずなんだけどな。

「おっはよー」
「おはよ」

 こいつじゃ、無いのか……。大変になるのは分かっているが、少しだけホッとする。

 いつも通り、話していると学校に着く。

 ロッカーに道具を置き、椅子に座る。
 すると、肩をトンと叩かれる。

「なぁなぁ。これ『知ってるか?』」

 そう言い、スマホを開くとT〇itterの画面が映されていた。

「ちょっと待てよ……。そうそう。これ」

 そう言って、見せられた画面は男が橋のど真ん中で川を見つめて、立ち尽くしている動画だった。

「? これがどうしたんだよ」
「まぁ、ここからがヤバいから。オカルト関係か何かかもしんねー」


 その動画は自殺を辞めようとしない男に対して、止めようとする男を野次馬が呑気にも撮っている動画だった。

「おい! 諭吉、止めろ!」
「近づくな……。怖い、怖い、怖い」

 その後に続く、『怖い』は怨念のような感じだった。

 バシッ

 と、止める男が『諭吉』とかいう男の腕を掴む。

「やめろ! どけ……。怖い、怖い、怖い」

 すると、掴んでいた腕を振り払い、男の脇腹を殴り、その場に倒れる。
 そして、それを心配したのか動画はそこで止まっていた。


「これだけでも充分やばいけどよ……この男」
「この男……?」

『結局、止められず自殺したんだってよ』

「溺れたってことか……?」
「そうだな」


 ……この名前。この死因。あの夢。色々と共通点がありすぎる……。
 だとしたら、殺したのは俺だ。

 ヤバい……。気持ち悪くなってきた。

「た、確かに怖いな。ごめん。気持ち悪くなったから、トイレ行ってくるわ」
「何だよ。ビビりだなー!」


 ……なんて、笑ってたけど、人が死んでるんだぞ? しかも、その犯人が俺かもしれないんだ……。

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