とある学園生活は制限付き能力とともに
約束を果たす時
「はは…ははは…はははははははは……まさかわたしが負けるなんて…ここまで楽しめたのは白雪姫以来…いや、白雪姫より楽しめたかも…ああ、すごく楽しかったよ。またやろうね…」
雷帝、いか先輩は僕にそう言い残して立ち去って行った。
「ふう、疲れた〜」
先程の戦いはバーチャルリアリティ空間で行われていたので実際の体にはなんの負担もないはずなのだがどっと体が重力で押しつぶされそうになる。それほどギリギリの戦いだった。
「行かないとな…」
僕はそう呟きながら部屋を出る。僕を信じてくれていた僕の大切な人のもとへ行くために…
「晴樹…待っててくれてたの…ありがとう…」
僕といか先輩の試合が終わった後、解説役としての仕事をしていたゆき姉をずっと待っていた僕にゆき姉が言う。
「ゆき姉、勝ったよ…」
「うん。知ってる。信じてた。晴樹が勝つって…お疲れ様、本当にありがとう」
ゆき姉は僕にそう言い僕に抱きつく。
「えっ、ゆき姉…」
「じっとして…もう少しだけこうさせて……」
ゆき姉にそう言われて無理矢理離れるのもアレだろう…僕はその後しばらくゆき姉に抱きしめられていた。
「ゆき姉、約束の返事なんだけど…」
僕がそこまで言うとゆき姉は僕の口を両手で塞いだ。
「やっぱり返事は私を倒してからにして…」
「ふう、いつになるかわからないけどいいの?」
「うん。晴樹はすぐに私を超えてくれる。そう信じて待つよ…」
ゆき姉を超えるって…つまり総合ランキングで1位になれとでもいうのか?
「本当に今聞かなくていいの?」
「うん。晴樹が私を倒してくれる時が来るまで楽しみに待ってるね」
ゆき姉は微笑みながらそう言った。なんかすごいプレッシャーをかけられたような気がする。
「さて、じゃあご飯食べに行きましょう。私が奢ってあげる。何が食べたい?」
「うーん、なんでもいい…」
「なんでもいいって一番困るんだけど…」
ゆき姉が本当に困ったような表情をして僕に言う。
「焼肉でいい?てか、焼肉に行くわよ」
ゆき姉がそう言いながら僕の手を掴み僕を引っ張って行く。ゆき姉の手は能力の性質上かわからないけど冷たかった。でも今の僕には暖かく感じた。
「せっかくだしダイナちゃんと花実ちゃんも呼ぼうか」
ゆき姉はそう言いながら花実に電話をかける。
「2人ともすぐに来るって、ちょうど近くのデパートで買い物してたみたい。先に行って待ってよ」
ゆき姉は僕の手を決して離さずに言う。そして僕達は手を繋ぎながら焼肉屋に向かった。
「お待たせしました」
「お待たせ〜」
ダイナと花実が大量の荷物を抱えてやってくる。
「晴樹、よく勝ったわね。おめでとう」
「おめでとうございます。すごかったですよ晴樹さん」
「ありがとう、それより何をそんなに買い込んだの…」
2人の荷物が気になった僕が2人に尋ねる。
「何って来週の旅行の準備よ」
「晴樹さん、もしかしてまだしてないんですか?」
「旅行?」
「あれ、聞いてないの?ゴールデンウィークに第11番基地のみんなで旅行に行くって…ほら、この前過去でいろいろやったじゃない、その慰安旅行ってことでアビリティアが用意してくれたの…」
最後の方はゆき姉に聞こえないように花実が言う。後で詳しく聞いたのだが来週のゴールデンウィークにアビリティアが2泊3日の温泉旅行を用意してくれたらしい。参加は自由だが僕以外のみんなは行くらしい、もちろんミカさんとティナちゃんも…僕達がいない3日間は特別に第11番基地を閉めるらしい。普段は年中無休だが今回だけ特別らしい…
「まだ準備してないならはやくしときなさいよ…」
「ああ、わかった」
「温泉か〜いいな〜」
ゆき姉が呟く。ゆき姉は第11番基地のメンバーじゃないのでもちろん一緒に来ることはできない。
「まあ、今は焼肉を楽しみましょう。私のおごりだから好きなだけ食べてね」
ゆき姉の言葉を聞き花実が嬉しそうに焼肉屋に入って行く。今日もゆき姉と花実は大量に肉を食べていた。
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