とある学園生活は制限付き能力とともに

りゅう

賭けの結果














「じゃあ、始めようか…最高に楽しい時間を!」

雷帝はそう言いながら一瞬で僕の真横に現れた。雷帝が僕に電気を纏った拳を放つが僕は難なくそれを躱し雷帝にカウンターをいれようと拳を放つ。僕の攻撃を悟った雷帝は僕から距離を置く。この間約0.5秒…

「はやい……」

「えーと、はやすぎて何が起こったのか理解できませんね…」

解説席にいたゆき姉と聞き手の人が呟く。周りにいた観客も何が起こったのかは理解できていなかった。ゆき姉や爆裂姫たちを除いては…

「今の一瞬で雷帝の攻撃を晴樹が躱してカウンターを入れようとした直後に雷帝が離れました」

「よく見えましたね…カメラでもぶれた状態でしか撮影できてないのに…」

解説役らしく解説したゆき姉の言葉を聞き会場にいた人間のほとんどが驚いた。ゆき姉の動体視力や僕と雷帝の一瞬の攻防に…

「なんかイマイチ上手く動けないな…」

急に身体能力が上がり上手く体を動かすことができず上手いこと攻撃に踏み込めなかったが次は決めてみせる。と思いながら僕は再び雷帝に迫る。

再び僕と雷帝の攻防が始まった。お互いの攻撃はカスリもせずに終わりお互い無傷のまま3分経過した。僕が能力を使えるのはあと6分、僕は再び雷帝と同じ能力を発動して雷帝との攻防を繰り返す。

どうすれば雷帝に勝てるか…その答えは簡単だが難しい…僕が雷帝に勝つ方法、それは相手の制限を特定する。雷帝の攻撃を躱し、ところどころでカウンターを入れながら僕は考えた。僕が勝つ方法を…

一向に答えは見つからない…少しずつ時間が経過していく。すでに能力は残り4分…過去でもらった指輪がなければ僕は負けていたな…そんなことを考えている間も時間は過ぎていく。少しずつ追い詰められていく感じがしてとてもまともに考えられる状態じゃない…

残り3分と30秒…残り3分…じわじわと敗北へのカウントダウンが迫る。

「私のために戦って私のために勝て!」

試合開始前にゆき姉が僕に向けて言った言葉を思い出す。あの、冷静でクールでちょっとおっちょこちょいで意外と恥ずかしがり屋なゆき姉が僕にそう言ってくれた。全く、人の試合で勝手に賭けをしやがって…やるなら自分の試合でやれよ…と言ってやりたいがゆき姉が僕を信じて僕に賭けてくれたのはすごく嬉しかった。

「ああ、やっぱり負けられないよな…」

ゆき姉の他にも花実やダイナ、第11番基地の仲間も応援してくれている。試合開始前にみんなが僕宛に応援メッセージを送ってくれたことを思い出した。

「うん。絶対負けられない」

「さっきから何ぶつぶつ言ってんの〜よかったら教えてよ〜」

雷帝が僕にそんなことを言うが無視

「考えろ…勝つために…ゆき姉のために…」

すでに能力が使えるのは残り1分と30秒、もう時間がない。頭を回転させる。敵の弱点を探すために…

「何でこんな簡単なことに気づかなかったんだ……」

僕は雷帝の攻撃を躱しながらそう呟いた。最初から答えへのヒントはあちこちにあった。雷帝は電気を身に纏える。なのになんで楓先輩に負けたんだ。自身の劣化版でしかないと言い切った楓先輩に雷帝が負けた理由、簡単だ。

雷帝は自身の能力で産み出された電気しか身に纏えない…

これなら楓先輩が雷帝に勝った理由にも頷けるし雷帝が僕の攻撃を絶対に受けないようにしているのにも納得がいく。先程の攻防で僕は一度も雷帝に触れていない、そして雷帝が僕に攻撃する時には必ず僕より多くの電気を身に纏っていた。

なるほど、僕は攻撃されても雷帝の電気による痛みはなかった。おそらく雷帝の制限が自身の能力で産み出された電気しか体は耐えられないという類のものだろう。本来なら全ての電気に耐えられたはずの能力にこの制限がかけられた。つまり僕には雷帝の電気は効かないが雷帝には僕の電気は効く。

ぶっちゃけこの予想が外れてたら僕の負けだ。だが、この予想に全てを賭けるしか選択肢はない。残り1分、十分な時間だ。

僕は雷帝の攻撃を躱して雷帝の腕を掴みそのまま雷帝の背中に引っ付いた。

「ちっ…気付きやがったか…」

雷帝は慌てて僕から離れようとするがもう遅い、僕は体から大量の電気を放出した。




「晴樹……」

決着がついた会場を見ながらゆき姉は涙を流した。

「ありがとう…晴樹…お疲れ様…すごくかっこよかった…やっぱり私、晴樹のことが好き…」

誰にも聞こえないようにゆき姉はその場で呟いた。

「波乱の決着でしたね。完全なる模倣の使い手が雷帝を破りました」

ゆき姉が解説席でそう言うと会場中が活気に包まれた。


















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