とある学園生活は制限付き能力とともに
英雄達
………どうすればいいのだろう…アシュリーの後を追いかけるかそれとも……いや、答えはもう決まっているのだろう…だからここに来た。別れを告げるために…
「ミカさん来ませんね……」
僕達が未来に戻る日の朝、僕達はずっとミカさんを待っていた。志穂先輩はずっと落ち着かない様子でずっと楓先輩の手を握っていた。
「……大丈夫、ですよね?」
花実が不安そうな顔で呟く。
「大丈夫に決まってるでしょ…ミカさんならきっと大丈夫…」
楓先輩は花実にそう言うがとても不安そうだった。時刻は9時、あと1時間ほどしたら僕達は未来に戻る。
「楓…志穂…みんな…ティナも一緒に行っていい?」
みんなが黙り込んでいる中ずっと楓先輩の膝の上にいたティナちゃんが僕達に尋ねる。
「ティナね、ずっと楓や志穂…みんなと一緒にいたい。だからティナも一緒に連れてって…」
「……ティナちゃん…」
志穂先輩は少し困ったような顔をしていた。もし、ティナちゃんを一緒に連れて行ったとしても僕達がずっとティナちゃんの面倒を見てあげられるかわからないからだ。
「いいんじゃないですか、一緒に行きましょう」
ティナちゃんに真っ先に答えたのは杏奈先生だった。
「杏奈先生…でも……」
「志穂さんが心配してるのはティナちゃんの今後でしょう?大丈夫ですよ。第11番基地には空き部屋がたくさんありますから…それにティナちゃんの面倒を見てくれそうな人もいますしね…それにティナちゃんは私達について来なかったとしたらどこかの孤児院に預けられるでしょう。だったら未来で私達と暮らした方が楽しいかもしれませんよ」
「杏奈先生…ティナちゃん、本当に私達と一緒に来たいの?」
志穂先輩がティナちゃんと目を合わせて尋ねる。
「うん。ティナずっとみんなと一緒にいたい」
「そう…じゃあ一緒に行きましょう」
志穂先輩はそう言いながらティナちゃんを強く抱きしめた。
「あの…私もご一緒させてください…」
「「ミカさん」」
突然部屋に現れた声に志穂先輩と楓先輩は反応する。2人ともすごく嬉しそうだ。
「さて、全員揃ったことですし行きましょうか…」
杏奈先生がそう言いながら立ち上がる。杏奈先生にはこうなることまで全部わかっていたみたいだった。
「もう行ってしまわれるのですね…」
ミカさんをこの部屋まで案内してくれたテレシアさんが僕達に言う。
「未来へ戻る前に一度顔を見せて欲しいとビスタ様がおっしゃっておりました。申し訳ありませんがご同行していただけますでしょうか?」
もちろん僕達は断らずテレシアさんとともにビスタさんの部屋に向かった。
「お待ちしておりました英雄達よ…」
僕達が部屋に入るとビスタさんが椅子から立ち上がり出迎えてくれた。部屋にはハンスさんやヴィンセントさんなどのアビリティアのお偉いさん達が集まっていた。
「さて、さっそくですが要件を伝えさせていただきます。まず、晴樹殿…こちらへ…」
名前を呼ばれた僕はビスタさんの前に行く。
「こちらを受け取ってください」
「これは?」
僕はビスタさんから渡された指輪のようなものを見ながらたずねる。
「晴樹殿にかけられた制限を暖和できる指輪です。晴樹殿の制限のプログラムはアビリティア内に似たようなデータがありましたので急いで作らせました。是非お礼として受け取ってください。その指輪をつけていれば1日に11分能力を使えるでしょう」
まじですか…すごく助かる。いつもギリギリだったからすごく嬉しい。そしてビスタさんは僕以外のみんなには別の物を渡していた。みんなが何を受け取ったかは箱に入っていたためわからないが能力とは一切関係ないものらしい。
「そしてミカ様とティナちゃんにはこれを…」
ビスタさんはミカさんに指輪をティナちゃんにはネックレスを渡した。
「それを身につけていれば2人は今まで通り能力を使えます。能力が使えるのが当たり前の未来で能力を使えないのは不便でしょうから…」
「ありがとうございます」
「ありがと〜」
ミカさんとティナちゃんはビスタさんからの贈り物をありがたく受け取りさっそく身につけていた。
「では、そろそろ失礼させていただきます」
「そうですね。皆様の未来が明るいものになることを願います」
「ビスタ様…私の分までこの世界をよろしくお願いします」
杏奈先生がそう言いながら頭を下げる。杏奈先生は僕達とともに未来で生きると決めた。だから、この世界を頼むと…
「ええ、わかってます。あなた方英雄達の意思を引き継ぎこの世界は私達がきちんと導きましょう」
「………よろしくお願いします」
杏奈先生はそう言いながら能力を発動させた。
英雄の意思は引き継がれる。
過去でも…
現在でも…
未来でも…
長き時を経て終戦を迎えた戦争、それを終わらせた英雄達の話はいつまでも語り継がれるだろう。
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