とある学園生活は制限付き能力とともに

りゅう

希望の光








「一昨日、この街にレヴナントの軍隊が攻め込んで来たの…」

「レヴナント?レヴナントってたしか…」

「能力を使って世界中に戦争の種をばら撒いた組織…よね…」

私と志穂は少女の口から発せられた聞いたことのある言葉に反応する。レヴナントについては高校生なら誰もが知っている。かつて世界大戦の引き金になった組織だ。

「どういうこと…レヴナントって世界大戦で滅んだはず…」

私には少女が言っていることがわけわからなかった。

「お姉ちゃん達何言ってるの?レヴナントが滅ぶわけないじゃない…世界最強の軍隊が…」

「もしかして…ねえ、今西暦何年かわかる?」

志穂がキョトンとしていた少女に尋ねる。

「うん。2107年だよ…」

「2107年、それってたしか…」

「ええ、世界大戦が終了した年…だけどどういうこと?」

「それについては私から説明いたしましょう」

「「⁉︎」」

私と志穂は突然現れた声に驚く。志穂は慌てて少女を守る様に抱きしめて私はとっさに能力を発動させた。

「驚かせてしまったみたいですね。申し訳ありません。そう警戒なさらないでください」

腰に剣の様な物をぶら下げたおじいさんが私達に言う。たしかに敵意はないみたいだ。

「あなたは?」

少女を抱きしめている志穂の前に立つ私がおじいさんに尋ねる。

「申し遅れました。私、アビリティア3番隊隊長ヴィンセントと申します。あなた方をこの時代に呼び出した者の仲間です」

「じゃあ、ここはやっぱり…」

「はい。あなた方からすれば過去ということになります。私の仲間の能力であなた方をこの時代に呼び出させていただきました」

「私達の他にこの時代に来てる人はいるの?」

「ええ、あなた方がいた建物の中にいた方々は全員この時代に来ておりますが、こちらの能力者のミスで全員バラバラの位置に移動させてしましました。一応、皆様この街の中にいるみたいなので現在アビリティアで捜索中です」

「みんなもこの時代に…」

「ええ、既に何人かはアビリティアで保護させていただいてます。あなた方にもご同行願います」

「どうする、志穂…」

「みんながいるなら合流するのが優先だと思うわ…行きましょう」

志穂が少女を抱えたまま立ち上がる。

「あなたも一緒に来てくれる?」

志穂は少女をそっと地面に置いて尋ねる。志穂の言葉を聞いた少女は震えながら首を横にふる。

「嫌だ…行きたくない…嫌だ…」

「だけど、こんなところにいたら危険よ。大丈夫、何かあっても私と楓ちゃんが守ってあげるから」

「嫌だ…行きたくない…それに…こんな世界で生きていても無駄…だから死にたい…」

「何を…言ってるの?」

「お母さんもお父さんもいない…みんな私から離れていく….こんな戦いだらけの世界も嫌…だから死にたい…」 

少女は震えながらそう呟く。

「なるほど、その子が報告にあった子ですか…」

「ヴィンセントさん、この子のことを何か知ってるんですか?」

志穂がヴィンセントさんにそう言うとヴィンセントさんは頷いた。

「先日、レヴナントの一軍が1人の少女によって全滅させられたとの報告がありました。目撃者によると目の前で姉を殺された少女が能力を暴走させレヴナントの一軍や周りの人達を皆殺しにした…と…」

「なるほど、その時にご両親も…」

ヴィンセントさんの話を聞いた志穂がどうすればいいのかわからないとでも言うかのような表情で少女を見つめる。たしかに軍隊の襲撃が原因で両親を殺めてしまった少女に軍隊について行くから一緒に来てとは言えない。だからといって少女をここに置いて行くわけにもいかない…

「ねえ、そういえばあなたの名前、まだ、聞いてなかったわね。名前、教えてくれる?」

私は少女に優しく尋ねる。

「ティナ…ティナ・フェルエ…」

「ティナちゃんって言うんだ。いい名前ね。私は楓、こっちは志穂」

「楓…志穂…」

「ええ、そうよ。今まで大変だったわね。1人で2日も過ごすなんて寂しかったでしょ…それに、家族を失った悲しみまで1人で背負って…でもね、希望だけは捨てないで…」

「希望?」

ティナは私の方を見つめる。

「ええ、希望よ。私もね、何も見えずに、何も感じずに、何も考えずに…ただひたすら力を振るっていたことがあったわ。でも、真っ暗だった私の心に希望の光が差し込んだ。私の大切な友達が私を助けてくれたの、あなたにもいつか希望の光が差し込む日が来るわ…だから希望だけは捨てないで…」

「希望の光…」

「ええ、まだ難しかったかな?」

「ううん。楓の言いたいことはわかった…」

「そう、なら良かったわ。で、私と志穂はアビリティアに行くけどティナはどうする?」

「私…私も行く。希望の光…捨てたくないから…」

「そう。じゃあ一緒に行くわよ。ヴィンセントさん、この子も連れてって良いですか?」

「もちろん、構いませんよ。ではさっそく案内しますのでついてきてください」

ヴィンセントさんはそう言い歩き出す。私と志穂、ティナちゃんもヴィンセントさんに続く。

「楓ちゃん、さっきの嬉しかったわ」

志穂が私に言う。

「え?なんのこと…」

「さっきティナちゃんに言ってたことよ…私のこと、大切な友達って…」

「なんだ、そんなことか〜」

「そんなことって、大事なことでしょう…」

「まあ、大事なことだけど…」

「もしかして楓ちゃん、照れてる?」

「照れてないわよ」

私達はそんなやりとりをしながらヴィンセントさんについて行っていた。

私達が歩き始めて少し経ったころ私達の近くで爆音が鳴り響く。












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