とある学園生活は制限付き能力とともに
到着
「何…この音…」
ティナちゃんが少し震えながら呟く。
「志穂様、楓様、少々お待ちください。私が様子を見て参ります。皆はここに残って客人の護衛を」
ヴィンセントさんが部下の人達にそう言い残して飛び出していく。
「私も行くわ!」
「楓ちゃん、行っちゃダメ、何が起こるかわからないんだから今はヴィンセントさんの指示に従おう」
「そうね…」
志穂に止まるように言われ私はヴィンセントさんの指示通りこの場に残ることにした。
ヴィンセントさんが1人で飛び出して行ってから数分後…
私達がいた場所の左右にあった建物が崩壊した。
左の建物からは銃を持った人が吹き飛んできて右の建物からは銃を持った人を片手で持ち上げる謎の怪物が現れた。
「なんなの…あれ…」
「志穂はティナちゃんを守って、あいつの相手は私がする」
私は志穂にそう言い能力を発動させる。
「あれ、楓先輩に志穂先輩ですか?よかったやっと合流できた…」
謎の怪物の後ろからひょこっと巫女が現れる。
「巫女…その怪物は何…?」
私は巫女の前に立つ謎の怪物を指差して言う。
「怪物じゃありませんよ。この子は私の能力で召喚した式神です」
「なんかすごいあんたに似合う能力ね…」
「私も能力を得た時はびっくりしましたよ。まさかSランクの能力を手に入れれるなんて思いませんでしたからね…」
「えっ?あんたの能力Sランクなの?」
「あっはい。でも制限のせいで本来の力が全く発揮できないみたいですけど…」
「ちなみに制限ってどんなのなの?」
「えっとですね。まず、私の能力は数十体の式神を自由に召喚できるって能力なんですけど制限で5体までしか召喚できないんです。それに式神を1体出す度に五感が1つずつ使えなくなります。使えなくなる五感は私が選択できますが…」
「まあ、視覚とかは失えないわね…」
「はい。だから結構使い方が難しいんですよ…」
「そういえばあっちのやつもあんたが式神で倒したの?」
私は巫女がやって来た方向とは別の方向から吹っ飛んで来た武装兵を指差す。
「いえ、私が倒したのはこちらの方と向こう側で寝てる方々だけですけど…」
巫女が自分がやって来た方向を指差して言う。
「じゃあこいつは…」
「あっ、楓先輩、志穂先輩、巫女ちゃん、よかったやっと会えた」
武装兵が吹っ飛んで来た方向から緑が現れた。後ろには百合子もいるみたいだった。
「なるほど、百合子の仕業だったのね」
「えっ…何が…ですか…?」
「こいつ倒したの百合子でしょ」
「えっ…違い…ます…」
「え?」
「そいつを倒したのは私なのかしら…」
百合子と緑の後ろからヴィオラが現れる。
「ヴィオラちゃんの仕業だったのね….まあ、とりあえず合流できてよかったわ…とりあえず、今何が起こっているのか私の知ってることを話すわね」
志穂がみんなに今、何が起こっているのか説明するとみんなかなり驚いているみたいだった。無理もない突然過去の世界に呼び出されたと聞かされて驚かない人なんているわけない。………いや、少し訂正しよう。杏奈先生なら驚かずにすぐにこの世界に適応してしまうだろう……
「とりあえず私達はアビリティアに向かえばいいってことなのかしら?」
志穂の話を聞いたヴィオラが私達に尋ねる。
「ええ、もう何人かはアビリティアにいるみたいだしまずはみんな合流するのが一番だと思うわ」
志穂がヴィオラにそういうとヴィオラもそれが一番いいと考えたのか黙って頷く。
「皆様、ただ今ヴィンセント様から連絡がありまして先に皆様をアビリティアにご案内するように言われました。ここからは私がヴィンセント様に代わり皆様をご案内させていただきます」
黒髪の青年が、私達にそう言い歩きだす。私達もその青年の後に続く。
「あの、ヴィンセントさんは今何処に?」
志穂がヴィンセントさんを心配しているような感じで尋ねる。
「ヴィンセント様は先程、あなた方の仲間2名と遭遇したようで、そちらの方々をアビリティアに案内するとのことです」
「私達の仲間…えっと…名前とかってわかりますか?」
「申し訳ありません。お仲間を発見したとしか聞いておりませんので…」
「そうですか。ありがとうございます」
「お役に立てず申し訳ありません。あっ、もうすぐアビリティアに到着しますよ」
青年はそういうがそれらしき建物は見つからない。アビリティアと言えばかなり巨大な建物だったはずだが…私は昔教科書でみたことのあるアビリティアを思い出しながらあたりを見渡すがやはりそれらしきものはない。
「あなた方の時代だとアビリティアは地上にあるみたいですね」
青年はあたりを見渡す私を見てそう言う。
「この時代だとアビリティアは地下にあるんです。この建物に入り口があります。どうぞ中に…」
青年に案内され私達は崩壊したデパートのような場所に入る。青年はエレベーターを作動させて地下行きのボタンを押す。
「到着しました。ここがこの時代のアビリティアです」
私達がエレベーターから降りると目の前には私が教科書で見たことのある建物が地下に聳え立っていた。
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