とある学園生活は制限付き能力とともに

りゅう

逃亡










「あっ、信一君、信二君、大丈夫でしたか?怪我とかしてませんか?」

僕達がいた部屋に入って来た信一先輩と信二先輩の元に杏奈先生が駆け寄り尋ねる。

「あっ、はい。大丈夫です。御心配おかけしました」

信二先輩が杏奈先生にそう言いながら頭を下げる。

「全員揃ったみたいですね。ではさっそく話をしたいのですがよろしいでしょうか?」

テレシアさんがそう言いながら部屋に入って来る。

「わかりました。みなさん、良いですね?」

杏奈先生がみんなに確認を取るとみんなは黙って頷いた。僕は当夜先輩の方をチラッと見たが当夜先輩はいつも通りというような感じだった。

「では、みなさん別室に移動していただきます」

テレシアさんがそう言い僕達を別室に案内してくれた。

「では、みなさん座ってお待ちください。間も無くアビリティア本部長が参りますので…」

テレシアさんの言う通り僕達は椅子に腰をかけてアビリティアのお偉いさんを待つ。




「皆様、お待たせ致しました。待たせてしまい申し訳ない…」

一人の青年男性がそう言いながら部屋に入ってくるとテレシアさんとヴィンセントさんが立ち上がり一礼した。どうやらこの人がアビリティアの本部長みたいだ。短い赤髪のクールそうな青年だった。

「私がアビリティア本部長のビスタです。お初にお目にかかります」

ビスタさんがそう言いながら一礼する。僕達も立ち上がり軽く一礼した。

「はじめまして、ガーディアンズ第11番基地、基地長杏奈と申します」

杏奈先生がビスタさんの前に移動して言う。杏奈先生がビスタさんの前に移動するとビスタさんは杏奈先生に向けて手を伸ばした。杏奈先生は黙ってビスタさんの手を取る。

「この度はあなた方を巻き込んでしまい申し訳ない…勝手ながら我々に力を貸して欲しい」

杏奈先生と握手をしながらビスタさんが言う。

「わかりました。私達はアビリティアに協力しようと思います」

「なら良かった」

杏奈先生の言葉を聞きビスタさんが笑みを浮かべて言う。

「あの〜」

当夜先輩が勝手に話を進める2人を見て手をあげる。

「当夜君、どうかしましたか?」

杏奈先生が当夜先輩に尋ねると当夜先輩が杏奈先生の前に立つ。

「避けないでくださいね。杏奈先生」

当夜先輩はそう言い杏奈先生に触れる。

「何を……」

「茶番はもういいって言うことですよ杏奈先生…」

当夜先輩が悲しそうに杏奈先生に言う。

「ちょっ、当夜!何やってるの?」
「当夜さん、急にどうしたんですか?」

楓先輩と志穂先輩が急に立ち上がりわけのわからないことを言い始めた当夜先輩に言う。

「やっぱり貴方だったのですね…杏奈先生…僕達をこの時代に連れて来たのは…」

「「え?……」」

当夜先輩の言葉を聞き楓先輩や志穂先輩だけではなくその場にいた全員が驚いた。

「当夜…何を言って…」

「バレてしまいましたか…なら仕方ありませんね…」

楓先輩の声を杏奈先生が遮る。

「どういうことですか?当夜先輩?」

緑先輩が当夜先輩が何を言いたいのかわからずに尋ねる。

「まだ、気づかないんですね….まあ、当夜君にはバレてしまいましたしもう隠す必要はありませんね。当夜君の言う通り貴方達をこの時代に連れて来たのは私です。私の能力でみなさんをこの時代に連れて来ました…」

「そんな……」
「嘘…ですよね?」

花実とダイナがとても信じられないと言うかのような表情をしていたが僕、花実、ダイナ、巫女さん以外はみんな杏奈先生の言葉を信じたみたいだ。

「悪いけど間違いないよ…僕の能力で確認したから…」

「当夜先輩の…能力…?」

「ああ、僕は触れた人の隠し事を見抜くことができるんだ…僕の能力で確認しただから間違いないよ…」

当夜先輩がはっきりと断言した。僕達をこの時代に連れて来た犯人は杏奈先生だと…

「そんな…」

ダイナが驚きを隠しきれずにいた。無理もない、僕や花実や先輩達だって驚いているのだから……

「ふむ…バレてしまったか…仕方ない…君達には無理矢理協力してもらうとしよう…杏奈…」

「わかりました…ごめんね…みんな…全兵に告ぐ、一旦みなさんを逃がさないように拘束してください。ただし怪我などをさせないようにしてください」

杏奈先生の指示を聞きその場にいた兵士達が僕達を囲む。

「そんな…杏奈先生……」

「花実、一旦逃げるぞ…」

僕は花実の腕を引っ張り僕の近くに引き寄せて言う。

「みんな、一箇所に集まるんだ!」

当夜先輩が僕が花実に言った言葉を聞き全員で逃げられるようにするために全員に指示を出す。

「志穂!ティナ!こっちに来て!」

楓先輩が近くにいた志穂先輩とティナちゃんを呼びつける。楓先輩と2人が合流すると楓先輩は能力を発動させる。

「ちょっと痛いけど死なないように加減してあげるから感謝しなさい」

楓先輩はそう言いながら自身の足元からアビリティアの兵士達の足元に電気を流す。
楓先輩の電気をくらい兵士達が気絶した隙に楓先輩達は当夜先輩のもとに向かう。

「百合子ちゃん、こっちに来て、テレポートで当夜先輩達のところに行くから…」

緑先輩の声を聞いた百合子先輩はわかったと頷き能力を発動させた。

「とりあえず…どいて….」

百合子先輩が地面を思いっきり踏みつける。何度も何度も…兵士達は何をしているのかわからず黙って見つめていた。数秒後…兵士達の足元に謎の衝撃が加わり兵士達が吹き飛ぶ。

「緑ちゃん…お願い…」

「わかってる」

緑先輩がテレポートを発動させて当夜先輩達と合流した。

「顕れよ、守護の式神…反射の式神…我が嗅覚と味覚と引き換えに顕現せよ」

巫女は嗅覚と味覚を失う代わりに2体の式神を召喚した。嗅覚と味覚を失うといっても式神召喚を解除すれば嗅覚と味覚は戻るらしい。

巫女に近づいてくる兵士達を反射の式神が全て弾き返す。守護の式神は反射されて吹き飛ばされた兵士が怪我をしないようにしていた。

ちょ…巫女さんの式神、かなり強くないか?ダイナ、信一先輩、信二先輩と合流した僕は巫女さんの近くにテレポートで移動して花実、ダイナ、巫女さん、信一先輩、信二先輩とともに当夜先輩と合流する。

「みんな、手を繋いで!」

当夜先輩の指示に従いみんなが手を繋ぐ。巫女さんとティナちゃんはよくわからないといった表情をしていたがみんなに流されて手を繋ぐ。

みんなが手を繋ぐまでの間、反射の式神が僕達のもとへ来ようとする兵士達を弾いていた。

「みんな、行くよ!」

みんなが手を繋いだのを確認し、僕はテレポートを発動した。場所は3キロメートル程離れた場所に設定した。














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