異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。

N通-

女神様再びっ!

「ふう……。やっぱり紅茶はいいですねー、心が落ち着きます」

 女神様の対面に座らされて、紅茶をごちそうになっているが僕の心は荒れ模様だった。ちっとも落ち着かない。

「あの――」

「まあまあ、一先ずはリラックスしてください」

「はあ」

 一体何の用事があって呼び出したのか、さっぱり解らないがここは言うことを聞くしかなさそうだった。暖かい紅茶を改めて味わってみると、身体の芯まで染み透るようにじんわりと温もりが広がっていく。

「……ふふ」

 僕が紅茶を飲んだのを見届けると、何故か女神様はほくそ笑んで自分のティーカップをソーサーに置いた。

「さて、マサヤさん。あなたに来てもらったのはほかでもありません。聖剣の聖約についてです」

「それって、ルーラン帝国から預かった聖剣レジェリアの事ですよね?」

「そうです。その聖剣、実は欠陥品なんですよー」

「えっ!?」

 女神様が欠陥品と言わしめる聖剣。僕の今の身体には着いてきていなかったが、宿屋の部屋には立てかけてある。

「あれ、人間の悪意をドンドン吸い取っていって、最終的にナマクラになるんですけど」

「何でそんな使えないモノを作ったんだ!? 誰ですか作ったの!」

「人間に与えたの、実は私でーす。てへっ」

 何となくそんな予感はしていたが、女神様はコツンッと自分の頭に拳を当てる真似をして誤魔化そうとしている。僕はガツンと行きたかったが、流石に(彼女の実力行使が)恐れ多いので出来ない。

「……それで、わざわざ使い物にならなくなる剣の事を伝えるために僕を呼んだんですか?」

「まさか! 今あなた方が向かっている、ルイア国でしたっけ? そこにあるはずの大剣も聖剣なんです。もちろん私が人間に与えたんですけどね! それで、その剣にも聖約があるんですよー」

 揃いも揃ってポンコツ聖剣を人間に授けて、この女神様は一体何がしたいんだろうか? うろんな瞳で見つめていると、女神様は弁解するように早口でまくし立てた。

「わ、私も未完成品を与えるのは避けたかったんですよ!? でも当時の状況がそれを許してくれなくて、仕方なしに人間に渡したんです。だから、あなた方にお願いが一つありまして」

「何でしょう?」

 何だかんだと言いながらも、僕は女神様に相当助けられている。……元々この世界に来る羽目になった原因でもあるが、自分の世界も危機になるなら致し方なしと受け入れたのだ。だからある程度の無茶は聞くつもりでいた。

「人間に与えた聖剣は四振り、竜族に与えた聖剣が一振りあります。それを回収して欲しいんです」

 真面目な顔でこちらを真っ直ぐに見つめる女神様。その位なら構わない……のだろうか。一応リアとも相談する事になるが、彼女は女神様の言うことを絶対だと思っているようだからなあ、一言で了承しそうだ。

「回収した聖剣はどうするんですか?」

「来るべき決戦の日の為に、万全な状態に仕上げて再びあなた方、選ばれし勇者達に与えることになります」

「勇者達……? 僕とリア以外にも勇者がいるんですか?」

 初耳だったので問いかけると、女神様はぽかんとした。

「えっ」

「えっ?」

 二人の間を気まずい沈黙が落ちる。僕の目はドンドンと剣呑になっていき、反対に女神様はダラダラと汗をかいていた。

「あのー。こんな事を聞いては失礼かもしれないですけど。神託を授け忘れてるなんてことないですよね?」

「あ、あはは。わ、私は女神ですよ? そんな、忘れるなんてことあるわけががが……」

 震えてる震えてる、メッチャ机がガタガタ言っとる。

「ケイコとマナブ……」

「なんのことかしらねー?」

 ちっ、外したか。なら……。

「僕とリア、それとモモ」

「……っ!?」

 反応あり、っと。これで確定か。

「女神様、僕達の事出歯亀して楽しんでいる間に忘れてましたね?」

 すると女神様は逆ギレしたように叫んだ。

「だって! あんな青春ラブラブストーリーなんて見逃せるはずないじゃない! 何よ、一つのベッドにみんなで寝るとか! 嬉し恥ずかしイベント起こしちゃってさ!」

「あれ見てたんですか!? ちょっと止めてくださいよ、僕らのプライバシーとかどうなってんですか! 人権問題ですよ!」

「異世界にそんなもんないんですよ!!」

「威張って言うことじゃない!?」

 ぜいぜいと肩で息をしながら、不毛な言い合いが一旦落ち着いた。二人してお互いを睨み合っていたが、疲れからからどちらともなく再び席に着いた。

「結局、引き受けてくださるということでいいんですよね?」

「……大変遺憾ながら、決戦に必要と言われれば受けざるを得ませんね」

「良かったです、快く引き受けてくださって!」

 やっぱり神様は違うなあ、僕のジト目を見ながら笑顔で図々しくも言ってのけるのだから。

「でも、他の勇者達への周知はちゃんとやってくださいよ? 本当にお願いしますよ?」

「わ、わかってますよぅ。そんなに念押ししなくてもいいじゃないですかあ」

 ほんとに解ってんのかなこの女神様は。まあいい、これで目的も達成したわけだし、下界に戻れるだろう。

「それじゃ僕はこの辺で」

「あら? まだ用事は終わってませんよ?」

「え」

 女神様は満面の笑みでニコニコとしている。これは非常に嫌な予感しかしない。

「いや、でもほら、リアとかが気付いたら騒ぎになりますから!」

「大丈夫、大丈夫。あの宿の人間全員眠らせてありますから!」

 おいぃ! 宿の人達まで巻き込むのかっ!?

「ちょっと、女神様それはあんまりでは……」

「まあ話を聞きなさいな」

 そこまで言われて、僕は浮かしかけていた腰を三度みたび下ろす。ぶすっとしながらも女神様の言葉を待っていると、女神様は仰天するような事を言った。

「もうすぐあなたの妹が来るから、お世話お願いね」

「――はあああああああああああああ!?」

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