異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
不思議な女の子
いや、どうするもこうするもない。とりあえず警戒は解かないままに、僕は謎の女の子に問いただした。
「僕らは冒険者だ。君は一体誰なんだ?」
ちょっと尖った声音になってしまったが、こんなダンジョンにいる女の子なんて怪しすぎる。リアも同じ考えなのか、大剣を保持したままいつでも斬りかかれるように待機していた。女の子は、長いピンク色のぼさぼさの髪をゆらゆらと揺らして考え込む。よく見ると服装もまるで奴隷が着ているようなボロ布で、そもそも丈が全くあってなくて肩からずり落ちそうになっている。その背中には大きなカゴを背負っていた。
「ぼーけんしゃ? お兄さんたちは外の人なのです?」
「外の人……? 君はこのダンジョンの事を知っているの?」
「うー? うーん。モモには良くわからないのです!」
うんうん唸って悩んでいる様子を観る限り、どうやら嘘はついてなさそうだ。
「モモっていうのか。僕はマサヤだよ。こっちはリア」
「ちょ、ちょっとマサヤ! 大丈夫なの……?」
勝手に自己紹介した僕を、リアが不安そうに遮ってきた。
「とりあえず話を聞いてみないことにはわからないだろう?」
なので、リアの不安を解消するためにもここは友好的な態度で臨んだほうがいいかもしれない。
「モモ、君はどこから来たの?」
「モモはモモとおとーさんのお家から来たのです!」
「お家……? ダンジョンの中に家があるの?」
「ダンジョンは良くわからないけど家ならすぐそこなのです。おとーさんが待ってるのです、早く食べ物を取って帰らないと!」
モモは思い出したようにハッとして、てててと走って手近な木に登り始めた。それを何をするでもなく見守る僕ら。モモは器用に手足を使って(彼女は裸足だった)するすると木を登ると、ガサガサと枝を揺らし始める。すると、それを見上げていた僕の目の前に何かが降ってきたので思わずキャッチしてしまう。どうやら果実のように見えるが、こんな怪しい場所に生えている果物等、正直言って食べたくはなかった。
「あー! それはモモのなのです!」
モモが木の上から僕を指差して抗議してくる。僕は苦笑しながらも彼女の誤解を解いた。
「君のものを取ったりしないよ、だから安心して」
「そうなのです? お兄さんはいい人なのです! でもそっちの人はモモの物食べてるのです!」
彼女の声にぎょっとなって振り返ると、リアが何の警戒もしないままに落ちてきた果実をしゃくしゃくと食べていた。
「案外いけるわね!」
「こ、こらリア! 勝手に食べたりしたらダメだろう!」
ちょっとは怪しがれよ! どんな実か解らないんだぞ!?
「こんなにいっぱい落ちてきたんだし一個ぐらいいいでしょ!」
確かに、モモが食べるには多すぎる量の実がそこかしこにおちている。
「モモはそんなに食べないのです。おとーさんがいっぱい食べるのです!」
ぱっと木の上から飛び降りて華麗に着地したモモが、リアに向かってぷりぷりと怒りながら周辺の実をせっせと拾っていた。
「君はそのお父さんと二人で暮らしてるの?」
「そうなのです! おとーさんは最近病気だから、あんまり動けないのです。だからモモが食べ物を取ってきてるのです!」
……怪しすぎる。何故わざわざこんなダンジョンの中に住んでいるのか、これはちょっとそのお父さんとやらに話を聞く必要がありそうだ。
「ねえ、モモ。僕達実は迷子になっちゃったんだ」
「まいご? なのです?」
「そうそう。だからちょっと君のお父さんに道を聞きたいんだけどいいかな?」
「マサヤ?」
怪訝そうなリアを後ろ手に制して、ここは僕に任せて欲しいと目で訴える。するとリアは素直に引いてくれた。
「うーん? うーん? うーん。うん! きっと大丈夫なのです! おとーさんも久しぶりのお客さんにきっと喜ぶと思うのです!」
少々悩んだ後に、モモは了承してくれた。何だか子どもを騙しているようで若干良心が痛むが、僕達も必死なのだ。解って欲しい。
「それじゃあ実もいっぱい拾えたし、モモについてくるのです」
そう言ってモモは道を歩き始めた。僕達は頷きあうと、モモの後を追う。しばらくは鬱蒼とした森が広がるばかりだったが、歩いて10分程したら、僕達が最初にいたような洞穴が見えてきた。
「あそこがモモとおとーさんのお家なのです!」
「ねえ、マサヤ。私嫌な予感がするんだけど」
「偶然だね、リア。僕も凄く嫌な予感がするよ」
リアと囁き合ってる間にモモは洞穴の中にさっさと入っていってしまった。
「おとーさん! 今日もいっぱい食べ物取ってきたのです! それと、お客さんが来たのです!」
『済まないな、モモ。しかし……客?』
腹の底から震えるような声がして、洞穴の中に入るのにかなりの勇気がいった。しかしここは入るしか無い。祈るような気持ちでリアと洞穴の中に足を踏み入れ、固まったしまった。
『おや、本当に人間が来たのか。珍しいのう』
そこにいたのは、圧倒的存在感放つ怪物。神話の生物にして最強の代名詞。
ドラゴンだった。
「僕らは冒険者だ。君は一体誰なんだ?」
ちょっと尖った声音になってしまったが、こんなダンジョンにいる女の子なんて怪しすぎる。リアも同じ考えなのか、大剣を保持したままいつでも斬りかかれるように待機していた。女の子は、長いピンク色のぼさぼさの髪をゆらゆらと揺らして考え込む。よく見ると服装もまるで奴隷が着ているようなボロ布で、そもそも丈が全くあってなくて肩からずり落ちそうになっている。その背中には大きなカゴを背負っていた。
「ぼーけんしゃ? お兄さんたちは外の人なのです?」
「外の人……? 君はこのダンジョンの事を知っているの?」
「うー? うーん。モモには良くわからないのです!」
うんうん唸って悩んでいる様子を観る限り、どうやら嘘はついてなさそうだ。
「モモっていうのか。僕はマサヤだよ。こっちはリア」
「ちょ、ちょっとマサヤ! 大丈夫なの……?」
勝手に自己紹介した僕を、リアが不安そうに遮ってきた。
「とりあえず話を聞いてみないことにはわからないだろう?」
なので、リアの不安を解消するためにもここは友好的な態度で臨んだほうがいいかもしれない。
「モモ、君はどこから来たの?」
「モモはモモとおとーさんのお家から来たのです!」
「お家……? ダンジョンの中に家があるの?」
「ダンジョンは良くわからないけど家ならすぐそこなのです。おとーさんが待ってるのです、早く食べ物を取って帰らないと!」
モモは思い出したようにハッとして、てててと走って手近な木に登り始めた。それを何をするでもなく見守る僕ら。モモは器用に手足を使って(彼女は裸足だった)するすると木を登ると、ガサガサと枝を揺らし始める。すると、それを見上げていた僕の目の前に何かが降ってきたので思わずキャッチしてしまう。どうやら果実のように見えるが、こんな怪しい場所に生えている果物等、正直言って食べたくはなかった。
「あー! それはモモのなのです!」
モモが木の上から僕を指差して抗議してくる。僕は苦笑しながらも彼女の誤解を解いた。
「君のものを取ったりしないよ、だから安心して」
「そうなのです? お兄さんはいい人なのです! でもそっちの人はモモの物食べてるのです!」
彼女の声にぎょっとなって振り返ると、リアが何の警戒もしないままに落ちてきた果実をしゃくしゃくと食べていた。
「案外いけるわね!」
「こ、こらリア! 勝手に食べたりしたらダメだろう!」
ちょっとは怪しがれよ! どんな実か解らないんだぞ!?
「こんなにいっぱい落ちてきたんだし一個ぐらいいいでしょ!」
確かに、モモが食べるには多すぎる量の実がそこかしこにおちている。
「モモはそんなに食べないのです。おとーさんがいっぱい食べるのです!」
ぱっと木の上から飛び降りて華麗に着地したモモが、リアに向かってぷりぷりと怒りながら周辺の実をせっせと拾っていた。
「君はそのお父さんと二人で暮らしてるの?」
「そうなのです! おとーさんは最近病気だから、あんまり動けないのです。だからモモが食べ物を取ってきてるのです!」
……怪しすぎる。何故わざわざこんなダンジョンの中に住んでいるのか、これはちょっとそのお父さんとやらに話を聞く必要がありそうだ。
「ねえ、モモ。僕達実は迷子になっちゃったんだ」
「まいご? なのです?」
「そうそう。だからちょっと君のお父さんに道を聞きたいんだけどいいかな?」
「マサヤ?」
怪訝そうなリアを後ろ手に制して、ここは僕に任せて欲しいと目で訴える。するとリアは素直に引いてくれた。
「うーん? うーん? うーん。うん! きっと大丈夫なのです! おとーさんも久しぶりのお客さんにきっと喜ぶと思うのです!」
少々悩んだ後に、モモは了承してくれた。何だか子どもを騙しているようで若干良心が痛むが、僕達も必死なのだ。解って欲しい。
「それじゃあ実もいっぱい拾えたし、モモについてくるのです」
そう言ってモモは道を歩き始めた。僕達は頷きあうと、モモの後を追う。しばらくは鬱蒼とした森が広がるばかりだったが、歩いて10分程したら、僕達が最初にいたような洞穴が見えてきた。
「あそこがモモとおとーさんのお家なのです!」
「ねえ、マサヤ。私嫌な予感がするんだけど」
「偶然だね、リア。僕も凄く嫌な予感がするよ」
リアと囁き合ってる間にモモは洞穴の中にさっさと入っていってしまった。
「おとーさん! 今日もいっぱい食べ物取ってきたのです! それと、お客さんが来たのです!」
『済まないな、モモ。しかし……客?』
腹の底から震えるような声がして、洞穴の中に入るのにかなりの勇気がいった。しかしここは入るしか無い。祈るような気持ちでリアと洞穴の中に足を踏み入れ、固まったしまった。
『おや、本当に人間が来たのか。珍しいのう』
そこにいたのは、圧倒的存在感放つ怪物。神話の生物にして最強の代名詞。
ドラゴンだった。
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