異世界は割とどうでも良かったけど地球もピンチらしいので行ってきます。但し相棒のおかげで胃がマッハです。
純情娘、悪戯お姉さん
「そ、それでは説明の続きを……その前に代筆されますか?」
「……お願いします」
恥ずかしいが仕方ない。というか、この世界そんなに識字率高いの? そこは普通地球の中世レベルで読み書き出来ない人の方が多いとかないの? そこんとこどうなのお姉さん。
「あの、この世界ってみんな読み書き出来るんですか?」
「国によりますね。特にこのテレシー王国は教育に力を入れてますので、奴隷でも読み書きが出来たりもしますね」
「奴隷がいるんですか……」
「何かおかしいですか?」
「いえ、何でもありません」
奴隷、と聞いていい気分がしないのは自分が現代日本に住んでいたからであって、この世界の人にとっては普通の事なのだろう。でも正直に言って見たくはない。
「それで、性別は男性、お年は?」
「あ、16になります」
「はい。ではお名前をどうぞ」
ここは恐らく西洋風に名乗った方がいいのだろう。
「マサヤ カガリですね」
「家名をお持ちとは、勇者様は貴族の方なのですか?」
なるほど、そういう解釈になるのか。
「いえ、自分の住んでいた国では家名を全国民が名乗っておりましたので、僕は言わば平民ですね」
「そうなんですね……異世界とは面白いものですねー」
そんな風に雑談しながらもスラスラと僕には読めない文字で次々に項目を埋めてくれるお姉さん。
「そう言えばお姉さんは何というお名前なんですか?」
「あ、申し遅れました。私はアルノといいます」
「アルノさんですね、今後もお世話になると思いますから、よろしくお願いします」
「まあ。ご丁寧にありがとうございます。流石勇者様は礼儀正しいですね」
「いえ、そんな事は」
等と和気あいあいと接しているように見せているが、内心いっぱいいっぱいであった。こんな美人とゆっくり話したことなんて無いよ! もっと人生経験を積んでおけば良かったと痛烈に思っている僕を、ぐいぐいと引っ張る手があった。
「どうしたんだよ、リア」
「ね、ねえ。貴方家名がマサヤじゃないの?」
え? 今更?
「さっきの話を聞いての通り、家名はカガリだけど……どうしたんだよ」
すると、リアの顔がみるみるウチに赤くなっていき、しまいにはその赤い髪色に近くなるほどだった。
「わ、私……男の子と名前で呼び合っていたのね」
「ええっ!? それそんなに恥ずかしがる所!?」
周囲からやだ、王女様可愛い! だの、萌える! だのヤジがだだ漏れて聞こえてきていたが、そんな事気にならない程僕も段々と恥ずかしくなってきた。顔が熱い。
「なんでえなんでえ、このケツが痒くなるような状態はよう!」
「初々しくていいじゃない、あー、私にもあんな純真な頃があったのよねえ」
「おい赤面勇者! 見てる方が恥ずかしいから早く止めろ!」
「男のやっかみってみっともなーい」
「何だと!」
何かあずかり知らぬ所でいさかいが発生しているようだが、さっきの赤面勇者はかなり心に来た。なので数回深呼吸、スーハースーハー。うん、何とか落ち着いた。
「リア、今まで勘違いしてたの?」
「う、うん……ていうかお父様も勘違いしてると思う」
「ああ……」
そういや王様にも普通に名乗ってしまったな。そうか、勘違いしてたのか……。
「あ、あのー?」
そこへ、遠慮がちなアルノさんの声がかかってきて、そういえば登録してもらってる途中であったことを思い出した。
「ああ、すみません。登録の続きをお願いします」
アルノさんはいいのかな? という顔をしながらもそのまま説明を続けてくれた。
「はい、では記入項目は以上です。次は冒険者のランクに関してですね。基本的に冒険者ランクはFランクから始まりまして、依頼――クエストの達成によって与えられるポイントを溜める事によってランクアップしていくシステムになっております」
「ふむふむ」
「ここでご注意して頂きたいのは、FランクからBランクまではポイントのみでランクアップが可能ですが、その先のAランク、Sランクは各自ランクアップのための試験を受けて頂く必要があります」
「どのような試験ですか?」
「試験内容は時期や年によって変わりますので、詳細を申し上げる事は出来ないのですが……参考までに過去の試験は剣術、魔法、筆記試験、面接等の統合力を量ったり、あるいは特定モンスターの討伐クエスト等であったりしますね。まあ、Aランク冒険者は年に多くても2桁、Sランク冒険者は年に数人といったところなので、滅多に受かるものではないのですが」
「ランクを上げるメリットはあるのですか?」
「はい、ランクアップして頂くと受けられるクエストの幅が広がる他、国が管理している制限付きダンジョンに入れるようになったりします。クエスト達成報酬ももちろん高ランクの方がより良い収入を得られますので、是非ランクアップを目指してがんばってください」
ニッコリとアルノさんに微笑まれて、思わず頬が緩む僕。するとドスンと脇に肘鉄を食らった。大した痛みはないが、何をするんだと抗議の視線を食らわせてきた相手――リアに送ると、リアは何故か不機嫌そうに顔をそむける。
「何するんだよ」
「別に。たかが受付嬢のおあいそにデレデレしてたら私のパートナーとして沽券に関わるから気付かせて上げただけだから!」
「デレデレなんて――してたけど、アルノさん美人だししょうがないじゃん」
「えっ普通認めるのここで!?」
リアが驚愕した表情でまじまじと僕を見詰める。横目にアルノさんの様子をうかがうと、ストレートに美人だと言ってしまったのが効いたのか、照れたように笑っていた。やっぱり美人だ。
「もう! もう! マ、マサヤは私のパートナーでしょう! 女に騙されたりしたら恥なのよ、恥!」
「正規のギルドの受付嬢が何を騙すっていうんだよ、ねえアルノさん」
すると、アルノさんは悪戯っぽい微笑みを浮かべておちゃめな事を言いだした。
「解りませんよー。もしかしたらモンスターの討伐証明をピンはねしてお金をちょろまかしたりしちゃうかもしれませんよ?」
「またまたー、そんな事する気ないクセに冗談ばっかりなんですからー」
「えへ」
ちろっと舌を出したアルノさんは激烈に可愛かった。もうこの人にならホントに騙されてもいいや、何て事まで思ってしまう。そしてますます不機嫌になっていくリア。
「ごめんなさい、ちょっと悪戯が過ぎましたね」
「そうよ! さっさと私の分のギルドカードも作りなさいよね!」
「はい、ではこちらにご記入をお願いします」
アルノさんが差し出した用紙を引ったくるように奪ったリアは、その怒りを叩きつけるようにガリガリガリっと一気に書き上げてアルノさんに突き返した。
「はい、これでいいでしょう!?」
「確かに受け付けました。少々お待ち下さい、只今カードの作成をしますから」
そういうと、アルマさんは受付の横に備え付けてある箱型のプリンターのような機械? に受付用紙を挿入していく。
「ねえ、リア。あれって何?」
「ギルドカードの作成用魔道具よ。前に冒険者がやってもらってるのを見たことがあるわ」
「魔道具?」
僕はそれすら知らなかったので問い返した。すると、リアはさっきまでのイライラはどこへやら、僕に物を教えるのが余程嬉しいのか喜々として説明を始める。
「魔力で動く道具の総称よ。単純なモノだったら家の明かりとか、調理用のコンロとか。古代文明の遺産級の物になると遠くにいる人間と話ができるものもあるっていう噂ね」
「へー、そういう道具って高いの?」
「モノによるんじゃないかしら。今でも生産出来るような品はそこそこのお値段だけど、遺産級はかなりの高額らしいわね。お城の宝物庫にもいくつか転がってたはずだけど、興味なかったから良く知らないのよね」
「なるほどね」
リアと雑談を交わしている間に、どうやら準備が完了したようで、アルノさんに呼ばれる。
「はい、おまたせいたしました。初回は無料での作成ですが、無くされて再発行となりますと銀貨二枚かかりますのでお気をつけくださいね」
と言われても、この辺の経済事情にはさっぱりな僕には高いのかどうなのかも解らない。ちょっとシャクだが、ここもリアに頼るしかないようだ。
「ねえ、銀貨二枚って高いの?」
「はした金でしょ?」
その発言に慌てたのはアルノさんだった。
「リア様にとってはそうかもしれませんが、銀貨二枚あれば一月は食べて行けますからね!?」
ダメだこりゃ。全く頼りにならない。これはもう恥をしのんで、貨幣価値についてもアルノさんに聞いた方が良さげだな。
「……お願いします」
恥ずかしいが仕方ない。というか、この世界そんなに識字率高いの? そこは普通地球の中世レベルで読み書き出来ない人の方が多いとかないの? そこんとこどうなのお姉さん。
「あの、この世界ってみんな読み書き出来るんですか?」
「国によりますね。特にこのテレシー王国は教育に力を入れてますので、奴隷でも読み書きが出来たりもしますね」
「奴隷がいるんですか……」
「何かおかしいですか?」
「いえ、何でもありません」
奴隷、と聞いていい気分がしないのは自分が現代日本に住んでいたからであって、この世界の人にとっては普通の事なのだろう。でも正直に言って見たくはない。
「それで、性別は男性、お年は?」
「あ、16になります」
「はい。ではお名前をどうぞ」
ここは恐らく西洋風に名乗った方がいいのだろう。
「マサヤ カガリですね」
「家名をお持ちとは、勇者様は貴族の方なのですか?」
なるほど、そういう解釈になるのか。
「いえ、自分の住んでいた国では家名を全国民が名乗っておりましたので、僕は言わば平民ですね」
「そうなんですね……異世界とは面白いものですねー」
そんな風に雑談しながらもスラスラと僕には読めない文字で次々に項目を埋めてくれるお姉さん。
「そう言えばお姉さんは何というお名前なんですか?」
「あ、申し遅れました。私はアルノといいます」
「アルノさんですね、今後もお世話になると思いますから、よろしくお願いします」
「まあ。ご丁寧にありがとうございます。流石勇者様は礼儀正しいですね」
「いえ、そんな事は」
等と和気あいあいと接しているように見せているが、内心いっぱいいっぱいであった。こんな美人とゆっくり話したことなんて無いよ! もっと人生経験を積んでおけば良かったと痛烈に思っている僕を、ぐいぐいと引っ張る手があった。
「どうしたんだよ、リア」
「ね、ねえ。貴方家名がマサヤじゃないの?」
え? 今更?
「さっきの話を聞いての通り、家名はカガリだけど……どうしたんだよ」
すると、リアの顔がみるみるウチに赤くなっていき、しまいにはその赤い髪色に近くなるほどだった。
「わ、私……男の子と名前で呼び合っていたのね」
「ええっ!? それそんなに恥ずかしがる所!?」
周囲からやだ、王女様可愛い! だの、萌える! だのヤジがだだ漏れて聞こえてきていたが、そんな事気にならない程僕も段々と恥ずかしくなってきた。顔が熱い。
「なんでえなんでえ、このケツが痒くなるような状態はよう!」
「初々しくていいじゃない、あー、私にもあんな純真な頃があったのよねえ」
「おい赤面勇者! 見てる方が恥ずかしいから早く止めろ!」
「男のやっかみってみっともなーい」
「何だと!」
何かあずかり知らぬ所でいさかいが発生しているようだが、さっきの赤面勇者はかなり心に来た。なので数回深呼吸、スーハースーハー。うん、何とか落ち着いた。
「リア、今まで勘違いしてたの?」
「う、うん……ていうかお父様も勘違いしてると思う」
「ああ……」
そういや王様にも普通に名乗ってしまったな。そうか、勘違いしてたのか……。
「あ、あのー?」
そこへ、遠慮がちなアルノさんの声がかかってきて、そういえば登録してもらってる途中であったことを思い出した。
「ああ、すみません。登録の続きをお願いします」
アルノさんはいいのかな? という顔をしながらもそのまま説明を続けてくれた。
「はい、では記入項目は以上です。次は冒険者のランクに関してですね。基本的に冒険者ランクはFランクから始まりまして、依頼――クエストの達成によって与えられるポイントを溜める事によってランクアップしていくシステムになっております」
「ふむふむ」
「ここでご注意して頂きたいのは、FランクからBランクまではポイントのみでランクアップが可能ですが、その先のAランク、Sランクは各自ランクアップのための試験を受けて頂く必要があります」
「どのような試験ですか?」
「試験内容は時期や年によって変わりますので、詳細を申し上げる事は出来ないのですが……参考までに過去の試験は剣術、魔法、筆記試験、面接等の統合力を量ったり、あるいは特定モンスターの討伐クエスト等であったりしますね。まあ、Aランク冒険者は年に多くても2桁、Sランク冒険者は年に数人といったところなので、滅多に受かるものではないのですが」
「ランクを上げるメリットはあるのですか?」
「はい、ランクアップして頂くと受けられるクエストの幅が広がる他、国が管理している制限付きダンジョンに入れるようになったりします。クエスト達成報酬ももちろん高ランクの方がより良い収入を得られますので、是非ランクアップを目指してがんばってください」
ニッコリとアルノさんに微笑まれて、思わず頬が緩む僕。するとドスンと脇に肘鉄を食らった。大した痛みはないが、何をするんだと抗議の視線を食らわせてきた相手――リアに送ると、リアは何故か不機嫌そうに顔をそむける。
「何するんだよ」
「別に。たかが受付嬢のおあいそにデレデレしてたら私のパートナーとして沽券に関わるから気付かせて上げただけだから!」
「デレデレなんて――してたけど、アルノさん美人だししょうがないじゃん」
「えっ普通認めるのここで!?」
リアが驚愕した表情でまじまじと僕を見詰める。横目にアルノさんの様子をうかがうと、ストレートに美人だと言ってしまったのが効いたのか、照れたように笑っていた。やっぱり美人だ。
「もう! もう! マ、マサヤは私のパートナーでしょう! 女に騙されたりしたら恥なのよ、恥!」
「正規のギルドの受付嬢が何を騙すっていうんだよ、ねえアルノさん」
すると、アルノさんは悪戯っぽい微笑みを浮かべておちゃめな事を言いだした。
「解りませんよー。もしかしたらモンスターの討伐証明をピンはねしてお金をちょろまかしたりしちゃうかもしれませんよ?」
「またまたー、そんな事する気ないクセに冗談ばっかりなんですからー」
「えへ」
ちろっと舌を出したアルノさんは激烈に可愛かった。もうこの人にならホントに騙されてもいいや、何て事まで思ってしまう。そしてますます不機嫌になっていくリア。
「ごめんなさい、ちょっと悪戯が過ぎましたね」
「そうよ! さっさと私の分のギルドカードも作りなさいよね!」
「はい、ではこちらにご記入をお願いします」
アルノさんが差し出した用紙を引ったくるように奪ったリアは、その怒りを叩きつけるようにガリガリガリっと一気に書き上げてアルノさんに突き返した。
「はい、これでいいでしょう!?」
「確かに受け付けました。少々お待ち下さい、只今カードの作成をしますから」
そういうと、アルマさんは受付の横に備え付けてある箱型のプリンターのような機械? に受付用紙を挿入していく。
「ねえ、リア。あれって何?」
「ギルドカードの作成用魔道具よ。前に冒険者がやってもらってるのを見たことがあるわ」
「魔道具?」
僕はそれすら知らなかったので問い返した。すると、リアはさっきまでのイライラはどこへやら、僕に物を教えるのが余程嬉しいのか喜々として説明を始める。
「魔力で動く道具の総称よ。単純なモノだったら家の明かりとか、調理用のコンロとか。古代文明の遺産級の物になると遠くにいる人間と話ができるものもあるっていう噂ね」
「へー、そういう道具って高いの?」
「モノによるんじゃないかしら。今でも生産出来るような品はそこそこのお値段だけど、遺産級はかなりの高額らしいわね。お城の宝物庫にもいくつか転がってたはずだけど、興味なかったから良く知らないのよね」
「なるほどね」
リアと雑談を交わしている間に、どうやら準備が完了したようで、アルノさんに呼ばれる。
「はい、おまたせいたしました。初回は無料での作成ですが、無くされて再発行となりますと銀貨二枚かかりますのでお気をつけくださいね」
と言われても、この辺の経済事情にはさっぱりな僕には高いのかどうなのかも解らない。ちょっとシャクだが、ここもリアに頼るしかないようだ。
「ねえ、銀貨二枚って高いの?」
「はした金でしょ?」
その発言に慌てたのはアルノさんだった。
「リア様にとってはそうかもしれませんが、銀貨二枚あれば一月は食べて行けますからね!?」
ダメだこりゃ。全く頼りにならない。これはもう恥をしのんで、貨幣価値についてもアルノさんに聞いた方が良さげだな。
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