お姉ちゃんが欲しいと思っていたら、俺がお姉ちゃんになったので理想の姉を目指す。

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37話 遂にやってきた運動会!

「これより第○○回、大運動会を開催致します!」

 いえー!遂に始まりました、運、動、会!!

 学校生活における大イベント!血気盛んな生徒からすれば一番のイベントとさえなってしまう運動会がやって参りました!

 前世の私は超~ダウナー系だったので「運動会?何でもいいや。腹減った」ぐらいしか考えて無かったよね。しかし、社会人を経験してからというもの、運動が如何に素晴らしく、また楽しいのかというのを思い知りましたよ!気付くのが遅過ぎたね!だって当時の私がそこまで考えて行動してるわけないじゃん!ちゅーか本来の12歳がそんなことに気付くのはそうそうないことだと思う。あるとしたら楽しい!わはー!ぐらいだよね。

「始まったな……運動会が……」
「うん、そうだね」

 運動会の並び順は、例によっては身長順なので私は前から4番目。そしてその隣にいるのが真である。真も中学1年生の段階では身長が低く、私とどっこいだ。3年生の辺りから身長が伸びていき、最終的には175くらいまでは伸びるんだよね。まぁ、女の子に比べて男の子の成長は遅いからねぇ。まだ私の方がちょっと、ほんのちょっとだけ大きいよ!見栄じゃないよ!

 そんな真だけれど、真はやたら気取った顔で運動会の始まりを口にする。なんかやたら気取ってというか、そこまでかっこつける必要があるのだろうか。まるで「始まったな……世界を救う戦いが……」みたいな風に言うんだもんね。私はそんな真に対してそうだね、としか答えられなかったけど。まぁ彼は将来有望な中二病患者だからね。今からその片鱗を見せ始めているということなのだろう。悲しか。

 さて、開幕の挨拶も程々に私たちは自らの指定場所に戻る。情報委員だから運営席に行くのではと思われると思うのだけれど、運動会の司会進行などは執行部のお仕事なので、この場では私もただのパンピーである。将来的にはこの司会進行やアナウンスも情報委員の仕事として巻き取るつもりだけれど、あくまで私はまだ情報委員でも末端の末端。そこまでの権力はありもしない。一応顧問の竹野内先生にはチロッと話をしてはいるんだけれど難色を示していたからねぇ。その辺は私が委員長になった際にでも上手く進めていこうかなとは思っている。

 私は自身の椅子に座りタオルで汗を拭く。

 いやぁ熱いのなんの。前世では運動会と言えば雨か雨か曇りか雨だったから、ここまで晴天というのはある意味初めてな気がする。まぁね、雨になって濡れながらやるとか、最悪延期からの中止になるよりは何倍もマシなんだけれど、こうも熱いと大変だよね。ザ・運動会って感じで私は好きだけど。

 額に巻いていた白いハチマキを手に取る。

 こいつもなんともまぁ懐かしい。ハチマキ付けるのなんて何年ぶりだろ。軽く10年くらいは付けてない気がするよね。……今年齢のこと考えたやつ校舎裏な。女性のねんれーを気にする輩はもてないぞ♡

 本来ハチマキとは額に巻くものである。

 額に巻き気合を入れるために使われるものだ。

 だけどそう。学生のうちってそこをあんまり意識しないじゃん?であればどうするかというと……。

 私はおもむろに白のハチマキを首にかけそのまま結んでいく。結ぶって言っても蝶結びとかではないよ。所謂ネクタイ結びだ。もっと言ってしまえばプレーンノット。社会人生活の際は最もお世話になった結び方だ。

「ん、いい感じ」

 首元は緩めに結んだそれはちょっとしたアクセサリーのようだ。本当なら赤の方が映えるんだけれど、こればっかりは選べないからね、仕方ない。まぁこっそり紅組に寝返ればできなくはないでしょうが、私はクラスメイト大事だからね。仲間は裏切れないの……。

 さて、ではなぜこんなことをしているかだけれど……。

 可愛いじゃん。

 運動会と言えばみんな体操着。そこにオシャレも何もあったもんではない。そんでもってうちの学校の体操着っていうかジャージってすっっっっっっっ……ごいダサいんだよね。スカイブルーになんかよくわからない緑のライン。更にはズボンの方は大根足っていうの?足首のところにゴムが入っていて絞られているのね。

 うん、ダサいの。すごーくダサいの。ディスリ以外出てこないぐらいにダサいのよホント。他の中学校と比べるにしても、比べること自体が間違いなくらいには酷い。このデザインしたやつ誰だよ。まだ私がデザインした方が全然いいもの作れるからな!

 ま、というわけで、必然とみんなそんなジャージ姿を良くしようとするわけだ。具体的にはズボンは履かずにハーフパンツ。寒くても我慢してハーフパンツ。そして女子に至っては私のようにネクタイを作り、それをワンポイントアクセントとするのだ。

「あー琴ちゃんそれいいね!どうやるのー!」

 みーちゃんが私の胸元を見て言う。くっふふ!可愛いだろう!可愛いは正義なのだ!みーちゃんも可愛いから更に可愛くしてやろうではないかふへへ。

「こうやるんだよー」

 一度ネクタイを解き、もう一度やって見せる。その際にみーちゃんにも真似をしてもらえるようにゆっくりと結ぶ。

「できたー!どう、どう?」
「ん、可愛い!」

 私とみーちゃんが互いのネクタイを見せ合いっこしながらキャッキャしてると真がやってきた。

「何が可愛いんだ?」

 はぁーっ!

 これだから男子は!

 このワンポイントの良さがわからんのかね!可愛いじゃん!十分可愛いよ!

「えぇー可愛いよー?」
「すまん、俺にはわからん」

 みーちゃんが私の心を代弁するかのように答えるが、真にはどうやら伝わらなかったようだ。この可愛さがわからんとはダメダメですよ!そんなんじゃモテないぞ!

『これよりラジオ体操を始めます。生徒はグラウンドに集まってください』

 そうこうしていると、早速最初の種目の招集がかかった。種目とは言ってもポイントに関係はあまりないのだけれど、これも後の種目で怪我をしないように準備運動だ。

 みな口々にめんどくせーとか言いながら列を作りグラウンドに向か、いました。

ちゃーんちゃーんちゃらっちゃらっちゃ ちゃーんちゃーんちゃらっちゃらちゃ
ちゃちゃらちゃ ちゃちゃちゃちゃらららら~ん たらっ♪

 うわー懐かしい。

 ラジオ体操の音楽とか久しく(いつも通り)聞いてない私にとって、この音楽もまた過去を思い出させノスタルジックな気持ちになるよ。まぁ!今は当事者なんですけどね!

『腕を大きく伸ばして背伸びの運動~』

 いっち に さん しっと、腕を大きく伸ばして深呼吸をしていく。その際にちらちらと周りの生徒を見ているのだけれど……。

 ……うん。発育のいい子は本当にいいんだね。こう、深呼吸をする際にお胸様が健康的に強調されているというか。

 そこで私は視線を落として自身の胸部を見てみる。

 うん、そこにはなだらかな平原があるだけだったよ……。ちょっと頑張って上体を反らしてみれば多少は小山ができるけれど……くっ!これが格差社会というものかっ!いいもん!まだ成長期来てないだけだもん!ちゃんと背もおっきくなるしここも育つもん!

「……」

 ふと隣が気になり隣を見てみる。何故気になるって、視線がね、飛んできてる気がするんですよ。自意識過剰と言われればその通りなのかもしれないけれど、どうも女の子になってからは人の視線に敏感になったのよね。なのでこれはまず間違いなく視線のはず。すると真がこっちを見ているではないか。視線はワシの胸部、と……。

「スケベ」
「……っ!なんでだよ!」

 私が小声でボソッと言うと、真も小声で反論してきた。しかし顔を真っ赤に必死で反論しても説得力がないというもの。

 真ってばこんなむっつりだったかしら?まぁ男性は下半身でものを考えるというし、思春期真っただ中のこのぐらいの年の子なら興味がいっても仕方がないというものか。私も元男だしね、その辺のところは理解のある女子だと思いますよ。ただ、そーゆー視線に晒されるのが許されるのかというと話は別だ。私だってそーゆー視線で見られるのは嫌だし何より気持ち悪いもの。それが例え前世での親友と言えど、だ。少しくらいは許してやれよとは思うけれど……こう時間が経つ程にそーゆーのに敏感になるというか、過剰反応になるというか……これも私の精神が肉体に順応してきているからなのだろうか。

 ま、些細なことはほっといてだ。

 折角の運動会の始まりである!

 こりゃ楽しむしかねぇーっしょ!

『足を開いて斜め下、体を斜め下に曲げる運動、柔らかく二度曲げて正面で胸そらし。ごぉ、ろく――』

 体を反らした時にまたもや視線を感じたので隣をチラッ。

 視線の犯人は光の速度で視線を逸らすがバレバレである。

 私は小声で「ムッツリ」と言いジト目で睨んでやった。

 犯人君の顔が赤かったのは太陽の光のせいではないのは確かだろう。

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