異世界でニートは英雄になる
第一三話 幻術からの脱出
ひたすら走る。一人でもまともな人を見つけるために。だが周りはゾンビらしき者ばかり。【クリアガービル】で斬っていくも、再生されて追われる。それでも人間を見つけるために走り続ける。だが、魔法をバンバン使って尚且つ走り続けてきたタイガの速度が落ちる。
物陰に隠れ、体力を回復させる。そして町中に潜むゾンビの打開策を練っていた。
――斬っても斬ってもきりがない……何かヒントがあれば良いんだが。
物陰からゾンビを見る。気付かれていないタイガはこれを機に、頭脳をフル回転させていた。ジッと見ていると、タイガは何かに気付いた。
――こいつ等、火を避けている?
タイガは高台に行って、街を見渡す。すると所々火の海の中に人が焼け死んでいた。
――ただの人間が焼け死んだのもあるが、もし、俺の推理が正しかったら……
タイガは高台から降りて、ゾンビを寄せ付ける。一か八かの賭けに出た。
気付けば周りはゾンビだらけ。今だ、と思った時、新しい魔法の言葉を唱えた。
「【ペトラ・ビースト】!!」
剣に炎を纏い、タイガは時計回りに一回転して、その炎を飛ばした。するとあっという間に周りは炎に包まれた。ゾンビを見ると、効果があるみたいで動きが鈍くなる。そして高い跳躍力で火の嵐から抜け出し、止めをさした。
「知ってるか? 風は火を強くさせるんだぜ。【ルカ】!」
両手を前に出して、風の魔法を唱えた。先程の炎は威力を上げ、ゾンビを焼いていく。そしてその場に倒れ、再起不能となった。動かなくなったゾンビを確認したタイガは先に進む。だが、ふと足を止めた。
――待てよ。ここは日本だ。俺はただの日本人だ。異世界に行くまでは……異世界では魔法が使えて、身体能力も上がった。もし、ここが俺のいた日本なら、なぜ魔法が使える? 身体能力が上がってる……?
その時、ペルとの会話を思い出した。
『そいつの幻術にかかればそこでおしまい。一生出られないし、そのまま殺られかねない』
――あの男、ウリドラの目を見た瞬間意識が朦朧とした。そして気付けば日本。突然ゾンビ化した母さん。母さんに殺された親父。刃物を振り回してきた顔見知り達。そして魔法……成程。これがウリドラの幻術か。
全て納得したタイガは更に考える。
――ここが幻術世界ということが分かった。だが、どうやってここから抜け出すかだ。恐らく、俺の本体はびくともしない状態だ。それにここでの意識があるという事は、まだ生きている筈だ。早く戻らないとカリンが殺される。早くどうにかしないと……!
タイガは焦りに焦って、考えがまとまらなかった。時間だけが刻々と過ぎていく。
――外からペルかカリンが解いてくれれば話は早い。だがその状況ではない。なら内側の俺がやるしかない……ん? 内側?
その言葉で、タイガは昔、自分が読んでいた漫画を思い出す。思い出した途端、一つ答えが浮かんだ。それと同時に、手が震え始める。成功確率は――戻るか死ぬかの――五分五分だ。
震える手で剣を首に向ける
――ここで全て決まる。痛みで現実に戻されるか、そのまま死ぬか。もう、やるしかない!
決心したタイガは勢いに任せ、首を刺した。
すると意識が変わり、更地に戻って来た。だが視界に入ったのは剣をタイガに振りかざしてきたウリドラの姿だった。
「っのやろ!!」
タイガは寝ながら身体を回転させ、間一髪で避けた。
「タイガ!」
「お、お前! 一体どうやって!」
タイガの姿を見たカリンはホッとしたような表情を浮かべ、ウリドラは驚いていた。
「まさか本当に上手くいくとはな……漫画の知識も案外役に立つな」
その漫画に感謝しつつ、少しバカにしていた事を心の中で謝罪した。
「な、何故私の幻術が……破られるなど……ありえない!!」
ウリドラは獣の咆哮のような叫び声をあげる。
タイガは申鎮の剣を持ち直し、ウリドラに刃を向ける。
「さぁ、第二ラウンドと行こうぜ」
物陰に隠れ、体力を回復させる。そして町中に潜むゾンビの打開策を練っていた。
――斬っても斬ってもきりがない……何かヒントがあれば良いんだが。
物陰からゾンビを見る。気付かれていないタイガはこれを機に、頭脳をフル回転させていた。ジッと見ていると、タイガは何かに気付いた。
――こいつ等、火を避けている?
タイガは高台に行って、街を見渡す。すると所々火の海の中に人が焼け死んでいた。
――ただの人間が焼け死んだのもあるが、もし、俺の推理が正しかったら……
タイガは高台から降りて、ゾンビを寄せ付ける。一か八かの賭けに出た。
気付けば周りはゾンビだらけ。今だ、と思った時、新しい魔法の言葉を唱えた。
「【ペトラ・ビースト】!!」
剣に炎を纏い、タイガは時計回りに一回転して、その炎を飛ばした。するとあっという間に周りは炎に包まれた。ゾンビを見ると、効果があるみたいで動きが鈍くなる。そして高い跳躍力で火の嵐から抜け出し、止めをさした。
「知ってるか? 風は火を強くさせるんだぜ。【ルカ】!」
両手を前に出して、風の魔法を唱えた。先程の炎は威力を上げ、ゾンビを焼いていく。そしてその場に倒れ、再起不能となった。動かなくなったゾンビを確認したタイガは先に進む。だが、ふと足を止めた。
――待てよ。ここは日本だ。俺はただの日本人だ。異世界に行くまでは……異世界では魔法が使えて、身体能力も上がった。もし、ここが俺のいた日本なら、なぜ魔法が使える? 身体能力が上がってる……?
その時、ペルとの会話を思い出した。
『そいつの幻術にかかればそこでおしまい。一生出られないし、そのまま殺られかねない』
――あの男、ウリドラの目を見た瞬間意識が朦朧とした。そして気付けば日本。突然ゾンビ化した母さん。母さんに殺された親父。刃物を振り回してきた顔見知り達。そして魔法……成程。これがウリドラの幻術か。
全て納得したタイガは更に考える。
――ここが幻術世界ということが分かった。だが、どうやってここから抜け出すかだ。恐らく、俺の本体はびくともしない状態だ。それにここでの意識があるという事は、まだ生きている筈だ。早く戻らないとカリンが殺される。早くどうにかしないと……!
タイガは焦りに焦って、考えがまとまらなかった。時間だけが刻々と過ぎていく。
――外からペルかカリンが解いてくれれば話は早い。だがその状況ではない。なら内側の俺がやるしかない……ん? 内側?
その言葉で、タイガは昔、自分が読んでいた漫画を思い出す。思い出した途端、一つ答えが浮かんだ。それと同時に、手が震え始める。成功確率は――戻るか死ぬかの――五分五分だ。
震える手で剣を首に向ける
――ここで全て決まる。痛みで現実に戻されるか、そのまま死ぬか。もう、やるしかない!
決心したタイガは勢いに任せ、首を刺した。
すると意識が変わり、更地に戻って来た。だが視界に入ったのは剣をタイガに振りかざしてきたウリドラの姿だった。
「っのやろ!!」
タイガは寝ながら身体を回転させ、間一髪で避けた。
「タイガ!」
「お、お前! 一体どうやって!」
タイガの姿を見たカリンはホッとしたような表情を浮かべ、ウリドラは驚いていた。
「まさか本当に上手くいくとはな……漫画の知識も案外役に立つな」
その漫画に感謝しつつ、少しバカにしていた事を心の中で謝罪した。
「な、何故私の幻術が……破られるなど……ありえない!!」
ウリドラは獣の咆哮のような叫び声をあげる。
タイガは申鎮の剣を持ち直し、ウリドラに刃を向ける。
「さぁ、第二ラウンドと行こうぜ」
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