猫好き高校生と人間になった三匹の美人三姉妹

チャンドラ

9話

 騎馬の選手は、まず一組を狙いに定めた。
(やってやろうじゃねえかよ、この野郎!!)

 気合を入れ、一組の選手に手を伸ばした。騎手の選手が巻いている鉢巻を相手に取られた時点で失格となる。
 相手も手を伸ばし、貴正の鉢巻を奪い取ろうとしてきた。
 ヒョイヒョイと難なく相手の攻撃を交わした。貴正は、ひたすら相手の攻撃を手で防御するか、交わして凌いだ。傍から見れば劣勢のように見える。

「大丈夫かな、貴正くん……」
 不安そうに美香子が呟いた。すると、隣にいた佐江が、美香子に微笑みかけた。
「貴正くんなら、あれくらい余裕だよ。」

 そうあんなの貴正ならなんていうことはないと佐江は思った。数々の素早いバスケットの選手と対決している貴正なら勝てると佐江は信じていた。
 一組の選手の攻撃を交わし続けたところで、相手は疲れていると貴正は、確信した。
「すまん、少し近づいてくれ!」
 貴正は、騎馬に指示をだし、相手に近づいた。
 シュッと手を伸ばし、相手が防御をする間もなく、赤色の鉢巻を奪い去った。

 まさに瞬殺であった。
「すごーい! 貴正は、鉢巻を取るのが得意なフレンズなんだね!」
 彩香の声援のようなものが聞こえてきた。

 おお、あいつけ○のフレンズまで、知ってるのか! やはり気が合いそうだなと貴正は思いつつ、騎馬に指示をだした。
「向こうが乱戦状態になってる。近くの四組を後ろから攻めよう。」
「分かった。」
 五十嵐が答えた。五十嵐も騎馬戦の選手である。彼は、あんまり運動神経はよくなかったが、一人人種目の義務があるため、しょうがなく騎馬戦に出ることになった。

 早く帰ってエロゲーをプレイしたい、そう思っていたが、貴正の指示通り、四組の方にゆっくりと向かった。
 四組と六組が激しい戦闘を繰り広げていた。貴正の作戦は、六組に夢中になっているところを後ろから、攻める、バックアタック作戦である。

「いまだ、速度を上げて、四組に近づいてくれ!」
 騎馬が、貴正の合図を受けて、スピードを上げて四組に急接近した。
 四組の観客は、後ろ後ろ! と選手たちに伝えようとしたものの、気づいていない。
「え?」 
 そう声を上げると四組の騎手は、いつの間にか鉢巻を奪われていた。
 息もつく間もなく、先ほどまで、四組と戦っていた、六組が迫ってきた。
 六組の相手は、ディフェンスに定評のあるサッカー部の井上であった。
 貴正は、積極的に鉢巻を奪いにいくが、井上は、的確に指示をだし、華麗に交わしていく。さすがは、ディフェンスに定評のある井上といったところか。おそらくは、貴正が、一組と戦ったときと、同じ作戦をしようとしているのだろう。
 貴正は、考えた。自分がやってきたゲームやバスケの試合の経験をもとに作戦を考え出そうとした。

そしてどうしてもいい作戦が思い浮かばなかったので、貴正は、考えるのをやめた――
 というのは、冗談で作戦を思いついたので、騎馬に指示を出した。

「すまん、五十嵐、ちょっと六組から距離を取ってくれ。」
「分かった」
 相棒? の五十嵐に指示をだし、貴正は、六組と距離と取らせた。
「よし、正面から近づいてくれ!」
 再度、六組に迫っていった。井上は、どんな攻撃が来ても、絶対に防いでやる、そう生きこんでいた。
(絶対に防いでやる。数々のシュートを防いできたこのゴッドハンドで!)
 そうはりきってる井上相手に、貴正は、ある行動を取った。
 バン!
 貴正は、猫だましを使った。井上は、一瞬気を取られた。その一瞬を見逃さず、井上の鉢巻を奪い去った。 
「あれ、猫だましだよな。暗○教室でみたことがあるぞ。」
 彩香がまたも、漫画の知識を披露した。
「その漫画、読んだことないから分からないけど、私は相撲の技って聞いたことあるわ。」
 隣に立っていた磨衣子が反応した。
 猫だましとは、相撲で、立ち合いなどに相手の顔面で両手を打ち、ひるませて自分優位の方に入る戦法である。
 また、ポ○モンでも愛用されることの多い技でもある。主に、ノーマルタイプに覚えさせることが多い。

「試合終了―!」
 試合終了の合図がなった。六組の鉢巻を貴正が奪い終わった後、残りのチームは騎手が騎馬から落ちて脱落となった。
 騎馬戦の一位は、貴正のクラスが獲得した。

「それでは、これよりお昼休みとなります。午後の部は一時からスタートします。大縄跳びの選手は、五分前に準備をお願いします。」

 アナウンスが終わり、お昼休みの時間になった。
 貴正は、弁当を持って適当な場所に移動し、昼ご飯を食べ始めた。

 例によって、三姉妹が近くにやってきた。
「騎馬戦お疲れ様、貴正くん。」
「騎馬くん、かっこよかったよ! これどうぞ。」
 美賀子が、蜂蜜のレモン漬けを渡してきた。
「ああ、ありがとう。」
「いや、すごかったな、あの猫だまし。相手、ひるんでうごけなかったぞ。さすが位置ターン相手を行動させない技だぜ!」
 何を言ってるんだ、こいつはと貴正は思った。まぁ、言いたいことは貴正は大体理解できたのだが。

 四人で、昼ご飯を食べていたら、佐江がやってきた。
「みんな、私も一緒にご飯いいかな……?」
「ええ、もちろん。」
 美賀子は快く承諾した。部活の時は、事務的なやりとりしかしていないようであったが、どうやら百メートルで、だいぶ打ち解けたようである。
 昨日の敵は、今日の友って古い大人は言うけど、以下略。これ以上は、著作権の関係が関わるので、やめておこう。

「貴正くん、騎馬戦すごかったね! 一位おめでとう。」
「ありがとう、佐江。ところで佐江は、午後は、何の種目にでるんだ?」
「えーと、大縄跳びとリレー走にでるよ。」
「あら、佐江ちゃんも、私もよ。」
 磨衣子が、佐江と貴正の会話に割り込んできた。そう、この爆乳の持ち主の磨衣子も大縄跳びに出場するのである。おそらく、会場はとてつもなく盛り上がることだろう。男子限定であるが。
「そうなんだ、あの磨衣子さん、大縄跳びの時は、長袖来た方がいいよ。」
「あら、どうして? 薄着のほうが動きやすいじゃない?」
「まぁ、そうなんだけど……」

 どうやら磨衣子は佐江の警告の意味を理解できてないようである。
 正直なところ、貴正は、おめぇよぉ、余計なこと言ってんじゃねえぞと貴正は思ってしまった。というか他の男子が聞いたら、同じことを思うだろう。

「磨衣子は、胸が大きいから、男子たちが変な目で見られるから。」
 美賀子は、超ド直球に伝えた。さすが、姉妹である。
「磨衣子、おっぱいがでかいからなー。あんまり貴正もジロジロ見るなよ?」
 彩香は貴正に対しておちょくるように言ってきた。
「当たり前だ! 人聞き悪いこと言うな!」
「あら、ちなみに貴正くんは、胸の大きい子は好き?」
 さりげなくとんでもないことを、磨衣子が訊いてきた。
「べ、別にそういうわけでは……」
 美賀子と佐江からなんだが、禍々しい気のようなものが感じられた。
「それじゃあ、貧乳派か?」
 彩香も何気にものすごいことをサラッと訊いてきた。

「そういうわけでもないわ! もういいだろこの話題は!」
 貴正は、無理やり巨乳派か貧乳派の話題を打ち切った。
「ちょっとトイレに行ってくる。」
 心臓に悪い質問を受けたため、貴正はトイレに逃亡した。
(全く、とんだ災難だったな。)
 美賀子たちが、転校する前、貴正はクラスに仲が良い友人は、ほとんどいなかった。強いて言うなら隣の席だったオタク気質の五十嵐くらいである。漫画やアニメの話で盛り上がることが多少はあったものの、エロゲーの話がメインであまりついていけないことが多かった。
 彼女たちが転校してきて、部活以外の時間が充実したように感じた。
(全く――面白い姉妹がやってきたもんだ。)
 貴正はトイレから戻り、四人のマネージャーと再び合流した。

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