チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記
第四十七話 ガイラー村
「フー大老、お客人が来てると聞いたが……おお、ヒトとは……よく爺様が話してくれたが、この目で見ることになるとは……おとぎ話ではなかったんじゃなぁ……」
フーの家に村の人々が集まってくる。
話に聞いていた通り、皆年老いた寅人達だった。
皆、外からの人が来たと聞いて少ない蓄えから食べ物を持ってきてくれていた。
「フォッフォッフォ、こちらの御方らにこの村の萎びた食料は逆に失礼になってしまうよ」
「いえ、そんなことはありませんが。お気持ちだけ頂きます。
私たちは皆さんを助けるために来たのです。
どうかこのメリウスの余計なお世話を受け取ってください」
それから運んできた物資を広げていく。
見たこともないような新鮮な果実や野菜、肉類などに村の皆から歓喜の声が上がる。
一番若いファンは溢れ出る唾液を抑えられない。
「シャロン、プリテこっちは任せるよ。カイン、いつもどおり少し村を整えよう」
すでにこの村のまとめ役であるフーに相談して村人からの承諾を得ている。
ボロボロの外柵や各家の老朽化対策を二人でどんどんと進めていく。
フーはその様子に大層驚きながらも興味深くその仕事っぷりを見学している。
「その武器、斧にも刀にもなるとは、なんとも怪奇な……」
「これは神より与えられたこの世界を救う力です。
それに、友の魂も宿っております……」
「そうでしたか……」
「ところでフー大老、一つお聞きしたいのですが、あの熊の赤目との戦いの際、腕にまとっていたものはなんですか?」
「……メリウス殿には『視える』、ということですか?」
「カインも見えています、というかうちの4人は皆……魔力による身体能力の強化とは違いますよね、あれは体の外部に纏うなんて出来ない……」
「カーッカッカッカ、おとぎ話のヒトという物はコレがお視えになるか!
長く生きるものだ! 我が村で誰ひとりとして身につかず、我が身をもって絶えると思っていました。
もう少しだけ老体に鞭打つ理由ができました!」
上機嫌で大笑いするフー、その顔は子供のようにキラキラと輝いていた。
「この力は『闘気』、寅人に伝わりし秘伝。
儂の闘気を暴くあなた方なら、容易に身につけるでしょう」
フーは右腕の袖を捲し上げ天を突く、メリウスとカインはその腕を包み込む透明な波のような物を捉えている。
「闘気……魔力とは異なる、力の波動……?」
「魔力とは違う場所を流れて身体を巡っている……ヘソの辺りが発生源……?」
「なんとまぁ……神が遣わしたと言うのは間違いない。
視認し、さらには流れを理解する……天才と言われた儂でも15年かかったと言うのに……
では……触れてみますか。荒療治ですが、それできっかけになるでしょう」
透明な波が薄く光るオーラに変化する。
広げられた手のひらに球状にそのオーラが溜まっていく。
「失礼する」
メリウスとカインはその光球のオーラへと手を伸ばす。
「ちょっとパチっとするぞ」
二人がそのオーラに触れるとビクンと身体を震わせて膝から崩れ落ちる。
そのまま仰向けに倒れてしまう。
「ぐ……が……」
「今全身を駆け巡った熱がどこを走ったのか、そしてそれが自身からも出ているのがわかるじゃろ?」
二人の乱れていた呼吸が整えられていく、自分の体の中に意識を集中している様子だ。
「そのままその流れを血潮のように全身に巡らせれば、開くじゃろう」
「……大老……」
「おっ、もう話せるのか、流石じゃな!」
「どこがパチッですか……心の臓が止まるほどの衝撃でしたよ……」
ゆっくりと身体を起こす二人。
フーはため息を漏らす。
「なんという力強い……師匠……いや、全盛期の儂並……いやいや、世界は広い……
カッカッカ!!」
あとで聞いたが、この方法はかなりの危険を伴い、そのまま死ぬこともあるそうだ。
その話を聞いた時、二人の背中には冷たいものが走った。
「もうわかるじゃろ? あとはその手から、慣れれば手に持つ物を覆うことも出来る。
闘気を練って濃度を高めればそれだけ強き力になる。
それこそ妖魔の強大な一撃を素手で受けるほどにな!」
それからいくつか『闘気』についての話を聞く。
なかなかに困難な修行の道だが、手に入れれば強力な力になることは間違いない。
村の整備と並行して今後もフーに教えを請うことになる。
村に戻るととてもいい匂いがしている。
プリテとシャロンが持ち込んだ食材で村の皆に振る舞う料理を作っていた。
メリウスもいつも通り木材をサクサクと加工して皆で食事を出来る会場をあっという間に作っていく。
その間にカインは崩れかけてボロボロの外柵を全て外壁へとアップデートさせていく。
村の中の至る場所に篝火を焚いて炎の明かりと温かさが村を包む。
秋の気配が漂う季節なので、日が沈むとうっすらと寒くなってくる最近、この炎は村人の心に安心を与えてくれた。
恒例の食事会の準備が終わる頃には会場に新たに作られたテーブルと椅子が並び、周囲の外壁はしっかりとしたものに変わり、そのテーブルには所狭しと料理と酒、飲み物が並ぶ。
あまりのことにメリウス達を神と崇め始める村人も現れた。
フーもあまりのことに呆れ気味だ。
余談だが、『闘気』の件をプリテに話したらその場で闘気を発現させ、シャロンとじゃれ合って遊びながら教えていたらシャロンも見事に発現させた。死にそうになった二人は呆れるしかなかった。
こうしてフーの村、ガイラー村のはじめての夜が訪れる。
彼らの生活で一度もなかったような明るく温かい夜が訪れるのだった。
フーの家に村の人々が集まってくる。
話に聞いていた通り、皆年老いた寅人達だった。
皆、外からの人が来たと聞いて少ない蓄えから食べ物を持ってきてくれていた。
「フォッフォッフォ、こちらの御方らにこの村の萎びた食料は逆に失礼になってしまうよ」
「いえ、そんなことはありませんが。お気持ちだけ頂きます。
私たちは皆さんを助けるために来たのです。
どうかこのメリウスの余計なお世話を受け取ってください」
それから運んできた物資を広げていく。
見たこともないような新鮮な果実や野菜、肉類などに村の皆から歓喜の声が上がる。
一番若いファンは溢れ出る唾液を抑えられない。
「シャロン、プリテこっちは任せるよ。カイン、いつもどおり少し村を整えよう」
すでにこの村のまとめ役であるフーに相談して村人からの承諾を得ている。
ボロボロの外柵や各家の老朽化対策を二人でどんどんと進めていく。
フーはその様子に大層驚きながらも興味深くその仕事っぷりを見学している。
「その武器、斧にも刀にもなるとは、なんとも怪奇な……」
「これは神より与えられたこの世界を救う力です。
それに、友の魂も宿っております……」
「そうでしたか……」
「ところでフー大老、一つお聞きしたいのですが、あの熊の赤目との戦いの際、腕にまとっていたものはなんですか?」
「……メリウス殿には『視える』、ということですか?」
「カインも見えています、というかうちの4人は皆……魔力による身体能力の強化とは違いますよね、あれは体の外部に纏うなんて出来ない……」
「カーッカッカッカ、おとぎ話のヒトという物はコレがお視えになるか!
長く生きるものだ! 我が村で誰ひとりとして身につかず、我が身をもって絶えると思っていました。
もう少しだけ老体に鞭打つ理由ができました!」
上機嫌で大笑いするフー、その顔は子供のようにキラキラと輝いていた。
「この力は『闘気』、寅人に伝わりし秘伝。
儂の闘気を暴くあなた方なら、容易に身につけるでしょう」
フーは右腕の袖を捲し上げ天を突く、メリウスとカインはその腕を包み込む透明な波のような物を捉えている。
「闘気……魔力とは異なる、力の波動……?」
「魔力とは違う場所を流れて身体を巡っている……ヘソの辺りが発生源……?」
「なんとまぁ……神が遣わしたと言うのは間違いない。
視認し、さらには流れを理解する……天才と言われた儂でも15年かかったと言うのに……
では……触れてみますか。荒療治ですが、それできっかけになるでしょう」
透明な波が薄く光るオーラに変化する。
広げられた手のひらに球状にそのオーラが溜まっていく。
「失礼する」
メリウスとカインはその光球のオーラへと手を伸ばす。
「ちょっとパチっとするぞ」
二人がそのオーラに触れるとビクンと身体を震わせて膝から崩れ落ちる。
そのまま仰向けに倒れてしまう。
「ぐ……が……」
「今全身を駆け巡った熱がどこを走ったのか、そしてそれが自身からも出ているのがわかるじゃろ?」
二人の乱れていた呼吸が整えられていく、自分の体の中に意識を集中している様子だ。
「そのままその流れを血潮のように全身に巡らせれば、開くじゃろう」
「……大老……」
「おっ、もう話せるのか、流石じゃな!」
「どこがパチッですか……心の臓が止まるほどの衝撃でしたよ……」
ゆっくりと身体を起こす二人。
フーはため息を漏らす。
「なんという力強い……師匠……いや、全盛期の儂並……いやいや、世界は広い……
カッカッカ!!」
あとで聞いたが、この方法はかなりの危険を伴い、そのまま死ぬこともあるそうだ。
その話を聞いた時、二人の背中には冷たいものが走った。
「もうわかるじゃろ? あとはその手から、慣れれば手に持つ物を覆うことも出来る。
闘気を練って濃度を高めればそれだけ強き力になる。
それこそ妖魔の強大な一撃を素手で受けるほどにな!」
それからいくつか『闘気』についての話を聞く。
なかなかに困難な修行の道だが、手に入れれば強力な力になることは間違いない。
村の整備と並行して今後もフーに教えを請うことになる。
村に戻るととてもいい匂いがしている。
プリテとシャロンが持ち込んだ食材で村の皆に振る舞う料理を作っていた。
メリウスもいつも通り木材をサクサクと加工して皆で食事を出来る会場をあっという間に作っていく。
その間にカインは崩れかけてボロボロの外柵を全て外壁へとアップデートさせていく。
村の中の至る場所に篝火を焚いて炎の明かりと温かさが村を包む。
秋の気配が漂う季節なので、日が沈むとうっすらと寒くなってくる最近、この炎は村人の心に安心を与えてくれた。
恒例の食事会の準備が終わる頃には会場に新たに作られたテーブルと椅子が並び、周囲の外壁はしっかりとしたものに変わり、そのテーブルには所狭しと料理と酒、飲み物が並ぶ。
あまりのことにメリウス達を神と崇め始める村人も現れた。
フーもあまりのことに呆れ気味だ。
余談だが、『闘気』の件をプリテに話したらその場で闘気を発現させ、シャロンとじゃれ合って遊びながら教えていたらシャロンも見事に発現させた。死にそうになった二人は呆れるしかなかった。
こうしてフーの村、ガイラー村のはじめての夜が訪れる。
彼らの生活で一度もなかったような明るく温かい夜が訪れるのだった。
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