チート仮面と世界を救え、元英雄の異世界サバイバル救国記
第五十五話 激闘
「わが村の救い主メリウス殿にかんぱーい!!」
「「「「「かんぱーい!」」」」
村に戻ると、狼煙と先行してビッグマウスで帰った村人の伝達で祝勝会の準備がされていた。
巨大な武闘場を囲うように宴会の場が作られており、その武闘場で戦うのはもちろんメリウスとフーだ。
たくさんの豪華な料理と酒、それに世紀の一戦を見られるとあって会場の盛り上がりは凄まじかった。
「御神像は、以前からこの村を守っていた祠へ納めさせてもらうぞ」
闘技場はその祠の正面に作られていて、この戦いが御神像への奉納を兼ねているようだった。
太古の昔から村を守ってきた祠は、村人の手で立派に生まれ変わっており、フーの手によってその祠に御神像が置かれる。
そして、乾杯の音頭をフーが取った。
「さて、やるかのメリウス殿」
「そうですね」
杯を一気に飲み干し、二人は戦いの準備へとかかる。
メリウスは片手剣、逆の手は無手だ。
フーは無手、グローブのようなものを着けているが、お互いにむしろやりすぎないための装備だ。
(小細工はしない……俺の力をフー大老に、いや、フーにぶつけてみよう!)
(……メリウスのことじゃ、真正面から向かってくるはず。
変にいなさず正面から受けてやらねばな、老体よ、持ってくれよ……)
二人はお互いのことをよく理解していたし、信頼していた。
闘技場に二人が立つと会場の興奮は最高潮に達する。
村人たちは二人の戦いから何かを得ようとして必死にその戦いを目に焼き付けようとしている。
「それではメリウス様、フー大老。お互い準備はよろしいですね」
「ああ、胸を借ります。フー大老、いや、フー」
「おう! メリウス! 儂の全てをぶつけてやる!」
二人が構えるだけで場の空気が凍りつく。
ごくり。観客の生唾を飲む音さえも響き合う。
ロングソード、刀身1m程の剣を正中中段で両手持ちの状態で構えるメリウス。
腰を深く落とし、半身をメリウスに向ける体勢で微動だにしないフー。
二人の間では静かな戦闘が始まっていた。
二人の頭のなかでは数多の攻撃と防御の姿が生まれては消え、生まれては消えている。
今のところ彼らのやり取りの殆どはメリウスがフーに触れることもなく叩きのめされている。
「ふっ!」
そして、実際の戦闘の開始は驚くほどに静かに始まる。
メリウスが数歩、間合いを詰めて驚くほど基本通りな縦振り。
あまりにも当たり前で基本通りな動き。
様々な奇策を想定していたフーは逆にその動きに対応できずに、最も当たり前に距離を取って躱した。
「ほう……」
実際には、周囲の人間で今のやり取りをしっかりと視認できたものは少ない。
突然メリウスがフーのいた場所へ移動していて、フーがいつの間にか距離を取っていた。
周りにはそうとしか映らない。
カイン、プリテ、シャロン、それに有望な若者の一部はその恐ろしく迷いのない動きを捕らえていた。
「メリウスもわかってきてるようじゃの、全ては基本が大事。
基本があればどんな応用も効く」
「ええ……フーの技術。そこに至る恐ろしいほどの基礎の反復は身をもって知りました」
「メリウスもなかなかじゃぞ、さすがは神に選ばれし者」
再び二人が対峙する。
今度は長い沈黙はないお互いが、基本的な、至って普通な立ち回りを繰り返す。
ただ、超高速で……
「ふんっ!!」
フーの強烈な中段づきを剣で受けて距離が離れる。
周囲の観衆は息をするのも忘れて、一旦の間合いを取った隙にぶはーっと呼吸する。
「次ですね」「つぎね」
お互いが基礎に則った攻撃を繰り返しても大きく戦局が動かないことはわかった。
ならばお互いが己の持てる力を激しくぶつけるしかない。
「行きます」
「おうよ」
メリウスは中段に構えていた剣を上段に構え直す。
短く息を吐き、大きく息を吸い込み、フーに向かって飛び出す。
メリウスの恵体が凄まじい速度でフーに迫るがフーは微動だにしない、どのような攻撃に対しても対応ができるように一切ブレることはない。
「セェイ!」
メリウスは上段から一気に剣を振り下ろす。
フーは太刀筋を読み、違和感を覚える。
(この一撃、向かってこない、虚撃か?)
その一撃はフーの横をかすめ地面に向かっていく、フーはその経験の多さからついその一撃を見送ってしまった。メリウスの思惑を正確に読めなかった。
ドガン!とメリウスの一撃は大地に当たり、そのまま地面を抉った。
「しまっ……!」
メリウスはフーの強力な一撃は大地を穿つ震脚より生まれる事を理解していた。
その大本を断ったのだ。
既に剣は大地を穿った事でへし折れ役目を終えていた。
メリウスは迷うこと無く剣を手放し、大地が裂けるほど踏みしめ、その反動のすべてを載せた一撃、背撃による渾身の一撃を宙に浮いたフーに叩き込む。
「チィっ!」
宙に浮く闘技場の僅かな足場の破片、その破片を利用し、フーも『剄』による一撃を放つ、達人によってのみ可能な極技だ。
だが、万全な大地に踏みしめた力を遺憾なくその肉体に秘めたパワーに乗せた一撃、曲技によって羽化された状態から放った一撃では、勝敗はメリウスに上がった。
ぶつかりあった力が反発しあい、お試合に勝利したメリウスの打撃のエネルギーがフーの身体に叩きつけられた。
石畳を砕き砂煙を上げながら、フーが場外まで吹き飛ばされていく。
「そこまで!! 勝者メリウス!!」
カインが勝者を称えると会場は歓声に包み込まれる。
すぐにシャロンとプリテがフーの元へ駆けつける。
「ああ、儂は大丈夫じゃ……いちちちち……全く、老体に容赦ないの……肋骨が数本逝ったかの……」
「おじーちゃん頑丈~」
「フー様、一応傷薬をお使いください」
「すまんな、ちょっとまってくれ、ふ~~~~~ふん!」
大きく息を吸い込むとピシピシと乾いた音がする。
「ま、これでずれたのも綺麗サッパリじゃ。いやいや、不覚をとったわい」
折れた肋骨を綺麗に元の位置に戻してしまった。
「フー、ようやく一本取れたな……」
闘技場からメリウスが降りてくる。
「ふふん、メリウスもやせ我慢が上手じゃの。効いたじゃろ?」
「ええ、本当は倒れそうだ。だけど、一応は勝者だからな」
「あの一撃を内に留められれば、それが『剄』じゃ。もう一歩じゃな」
「俺の覚悟が中途半端なら死んでたんだが?」
「儂だって本気を出さねばこんなもんじゃ済んどらん。お互い様じゃ」
メリウスとフーががっしりと手と手をつなぎ合う。
メリウスの額の宝石は優しく輝き、その光は二人を祝福するように輝きながら御神像へと吸い込まれていった。
ここに、縁は結ばれたのだ。
「「「「「かんぱーい!」」」」
村に戻ると、狼煙と先行してビッグマウスで帰った村人の伝達で祝勝会の準備がされていた。
巨大な武闘場を囲うように宴会の場が作られており、その武闘場で戦うのはもちろんメリウスとフーだ。
たくさんの豪華な料理と酒、それに世紀の一戦を見られるとあって会場の盛り上がりは凄まじかった。
「御神像は、以前からこの村を守っていた祠へ納めさせてもらうぞ」
闘技場はその祠の正面に作られていて、この戦いが御神像への奉納を兼ねているようだった。
太古の昔から村を守ってきた祠は、村人の手で立派に生まれ変わっており、フーの手によってその祠に御神像が置かれる。
そして、乾杯の音頭をフーが取った。
「さて、やるかのメリウス殿」
「そうですね」
杯を一気に飲み干し、二人は戦いの準備へとかかる。
メリウスは片手剣、逆の手は無手だ。
フーは無手、グローブのようなものを着けているが、お互いにむしろやりすぎないための装備だ。
(小細工はしない……俺の力をフー大老に、いや、フーにぶつけてみよう!)
(……メリウスのことじゃ、真正面から向かってくるはず。
変にいなさず正面から受けてやらねばな、老体よ、持ってくれよ……)
二人はお互いのことをよく理解していたし、信頼していた。
闘技場に二人が立つと会場の興奮は最高潮に達する。
村人たちは二人の戦いから何かを得ようとして必死にその戦いを目に焼き付けようとしている。
「それではメリウス様、フー大老。お互い準備はよろしいですね」
「ああ、胸を借ります。フー大老、いや、フー」
「おう! メリウス! 儂の全てをぶつけてやる!」
二人が構えるだけで場の空気が凍りつく。
ごくり。観客の生唾を飲む音さえも響き合う。
ロングソード、刀身1m程の剣を正中中段で両手持ちの状態で構えるメリウス。
腰を深く落とし、半身をメリウスに向ける体勢で微動だにしないフー。
二人の間では静かな戦闘が始まっていた。
二人の頭のなかでは数多の攻撃と防御の姿が生まれては消え、生まれては消えている。
今のところ彼らのやり取りの殆どはメリウスがフーに触れることもなく叩きのめされている。
「ふっ!」
そして、実際の戦闘の開始は驚くほどに静かに始まる。
メリウスが数歩、間合いを詰めて驚くほど基本通りな縦振り。
あまりにも当たり前で基本通りな動き。
様々な奇策を想定していたフーは逆にその動きに対応できずに、最も当たり前に距離を取って躱した。
「ほう……」
実際には、周囲の人間で今のやり取りをしっかりと視認できたものは少ない。
突然メリウスがフーのいた場所へ移動していて、フーがいつの間にか距離を取っていた。
周りにはそうとしか映らない。
カイン、プリテ、シャロン、それに有望な若者の一部はその恐ろしく迷いのない動きを捕らえていた。
「メリウスもわかってきてるようじゃの、全ては基本が大事。
基本があればどんな応用も効く」
「ええ……フーの技術。そこに至る恐ろしいほどの基礎の反復は身をもって知りました」
「メリウスもなかなかじゃぞ、さすがは神に選ばれし者」
再び二人が対峙する。
今度は長い沈黙はないお互いが、基本的な、至って普通な立ち回りを繰り返す。
ただ、超高速で……
「ふんっ!!」
フーの強烈な中段づきを剣で受けて距離が離れる。
周囲の観衆は息をするのも忘れて、一旦の間合いを取った隙にぶはーっと呼吸する。
「次ですね」「つぎね」
お互いが基礎に則った攻撃を繰り返しても大きく戦局が動かないことはわかった。
ならばお互いが己の持てる力を激しくぶつけるしかない。
「行きます」
「おうよ」
メリウスは中段に構えていた剣を上段に構え直す。
短く息を吐き、大きく息を吸い込み、フーに向かって飛び出す。
メリウスの恵体が凄まじい速度でフーに迫るがフーは微動だにしない、どのような攻撃に対しても対応ができるように一切ブレることはない。
「セェイ!」
メリウスは上段から一気に剣を振り下ろす。
フーは太刀筋を読み、違和感を覚える。
(この一撃、向かってこない、虚撃か?)
その一撃はフーの横をかすめ地面に向かっていく、フーはその経験の多さからついその一撃を見送ってしまった。メリウスの思惑を正確に読めなかった。
ドガン!とメリウスの一撃は大地に当たり、そのまま地面を抉った。
「しまっ……!」
メリウスはフーの強力な一撃は大地を穿つ震脚より生まれる事を理解していた。
その大本を断ったのだ。
既に剣は大地を穿った事でへし折れ役目を終えていた。
メリウスは迷うこと無く剣を手放し、大地が裂けるほど踏みしめ、その反動のすべてを載せた一撃、背撃による渾身の一撃を宙に浮いたフーに叩き込む。
「チィっ!」
宙に浮く闘技場の僅かな足場の破片、その破片を利用し、フーも『剄』による一撃を放つ、達人によってのみ可能な極技だ。
だが、万全な大地に踏みしめた力を遺憾なくその肉体に秘めたパワーに乗せた一撃、曲技によって羽化された状態から放った一撃では、勝敗はメリウスに上がった。
ぶつかりあった力が反発しあい、お試合に勝利したメリウスの打撃のエネルギーがフーの身体に叩きつけられた。
石畳を砕き砂煙を上げながら、フーが場外まで吹き飛ばされていく。
「そこまで!! 勝者メリウス!!」
カインが勝者を称えると会場は歓声に包み込まれる。
すぐにシャロンとプリテがフーの元へ駆けつける。
「ああ、儂は大丈夫じゃ……いちちちち……全く、老体に容赦ないの……肋骨が数本逝ったかの……」
「おじーちゃん頑丈~」
「フー様、一応傷薬をお使いください」
「すまんな、ちょっとまってくれ、ふ~~~~~ふん!」
大きく息を吸い込むとピシピシと乾いた音がする。
「ま、これでずれたのも綺麗サッパリじゃ。いやいや、不覚をとったわい」
折れた肋骨を綺麗に元の位置に戻してしまった。
「フー、ようやく一本取れたな……」
闘技場からメリウスが降りてくる。
「ふふん、メリウスもやせ我慢が上手じゃの。効いたじゃろ?」
「ええ、本当は倒れそうだ。だけど、一応は勝者だからな」
「あの一撃を内に留められれば、それが『剄』じゃ。もう一歩じゃな」
「俺の覚悟が中途半端なら死んでたんだが?」
「儂だって本気を出さねばこんなもんじゃ済んどらん。お互い様じゃ」
メリウスとフーががっしりと手と手をつなぎ合う。
メリウスの額の宝石は優しく輝き、その光は二人を祝福するように輝きながら御神像へと吸い込まれていった。
ここに、縁は結ばれたのだ。
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