シスコン&ブラコンの天才兄妹は異世界でもその天賦の才を振るいます
事情聴取
前回同様2階へと続く階段を上がり、メーヤの待つ執務室へと向かう。
その間、メーヤが俺達を呼ぶ理由について考えてみるが、正直な所心当たりしかない。
最近俺達がやらかした事件といえば十中八九、先の山の爆発の件に違いない。
まあ、最近といっても、つい今朝の出来事なんだけれどな。
そんな、ほぼ正解に近いであろう推測を終えると同時に執務室の扉の前に辿り着く。
俺は一応の礼儀として扉を2回ノックをする。
「お兄ちゃん、それだとトイレの回数。普通は3回以上が正しい」
「えっ、そうなの?」
雫からの訂正に衝撃を受ける。
知らなかった…それじゃあ俺は地球に住んでたときに仕事で国際連合本部の会議室に入室する際にトイレと同じ作法で入ってたってこと?とんだ無礼者である。
「少し待っていろ、今鍵を開ける」
自身の常識が覆ったことに衝撃を受けていると、部屋の内部からメーヤが扉に近づいてくる音が聞こえる。
──ガチャン
その音の主が扉の前で立ち止まると扉に取り付けられている鍵が解除される音が鳴る。
この仕掛けは便利だよなぁ。
俺達も家を建てたら取り付けたいものだ。
今は宿屋で寝泊まりしているが、如何せん設備施設が整っていない。
地球の自宅では地下に俺専用の射撃場や工房、他には雫専用の研究施設が備え付けられていたので自宅で事足りたのだ。
えっ?日本では銃の携帯は違法?
はっはっはっ!政府公認の人間兵器である俺にそんな法律が適応されるとでも?
俺達の自宅なんて日本に在りながら、日本の法律を受けていなかったからな。
俺達の家の敷地内は一種の治外法権なので合法なのである。
此方の世界ではそうはいかない。
当然、家を建てる場合は地球の技術をフル活用した設備の設置を計画している。
しかし、地球の技術を目撃されるのはデメリットでしかない。
注目を浴びることで俺達の自堕落な生活を邪魔されるのだけは御免葬りたいのだ。
その為周囲に人気のない立地に一軒家でも建てて、俺達専用の自宅にする計画を密かに立てていたりする。
まあ、流石に家一軒を建てるほどの資金は貯まっていないので、未だ未だ先の事になりそうだ。
ドアノブを捻って室内に入っていく。
「待っていたぞ二人とも。ほら、そこに腰掛けてくれ」
俺達はそうメーヤに促されるままソファーに腰を下ろす。
今日は以前と違いシスティラが居ないので、メーヤが紅茶をカップに注ぎ、俺達の目の前のテーブルに置く──のだが、今はそんな事どうでもいい。
「…………」
メーヤの笑顔が怖い。
何か怒りを含んだような笑顔で此方を見ていらっしゃる。
もしかしたらこの紅茶に毒を!?などと疑ってしまうほどの表情だ。
「えーと、どうかしたのか、メーヤ?」
「ん?何がだ?」
「いや、だってめっちゃ笑顔でさ…」
「別に怒ってはいないさ。何処かの誰かさんが郊外の山を消し飛ばした事を隠蔽するために、これから私の書類の量が増えるからって怒ってはいないよ」
ニコニコした表情で圧力を飛ばしてくるメーヤ。
めっちゃくちゃお怒りですやん…。
というかやっぱり勘づくかれていたのか。
だがしかし、まだ俺は悪足掻きをさせて頂こうか!男には負けられない戦いがあるのだよ。決して山を消し飛ばした結果、失ったであろう山に埋まっていた資源の賠償金を払いたくないとか女々しい理由ではない。
「俺には身に覚えが…」
「システィラからお前達が件の山の近くの草原に依頼で向かったと訊いたんだがな」
「もしかして魔物が…」
「私も仮にはSランク冒険者だぞ。山を消し去るほどの脅威の魔物の気配を察知出来ないとでも?」
「じゃあ、噴火とか…」
「あの山は活火山ではないが?」
「………」
はい、スリーアウトチェンジ!
メーヤの的確な回答に何も返せなくなってしまう情けない俺。
『ご主人様は情けないですね』
遂には叡羅にも呆れられてしまった。
何か叡羅さん、最初の頃と違って饒舌になっていません?
「お兄ちゃん、此処は雫が」
項垂れていると雫がそんな提案をしてくる。
そうだよな!適材適所が一番だよな!
べっ、別に悲しくなんて無いんだからねっ!だから今、目から流しているのは涙ではない。そう汗だ。
雫が出てきたことでメーヤの雰囲気も変わる。
以前、雫に言い負かされた事を忘れてはいないようだ。
「流石に今回はお前も言い訳が出来る状況ではないのではないか?」
「言い訳?ふっ、これだから子供は」
「なにっ、お前だって幼児体型じゃないか!」
「雫はまだ12歳、希望がある。けど貴方は500歳の年増。一緒にしないで欲しい」
「年増じゃないし!ハイエルフの中ではまだ比較的若い方だからな!」
雫とメーヤの天に唾を吐くような言い争いに呆れてしまう。
このままだと話が脱線し続けそうなので、何とか話を戻さなくては。
「まぁまぁ二人とも、不毛な争いはまた後でいいだろう」
「ノンノン、お兄ちゃん。これは白黒はっきりさせなければいけないこと」
「今ばかりは、神代妹に同意だ」
そう言うと二人は徐に立ち上がり、背中同士をくっ付け合って身長を比べ始める。
「ほらほら、雫の方が2ミリ大きい」
「なっ、そんなモノ誤差だ誤差!今日はちょっと履いてきた靴が低いだけだし!」
「ふっ」
「あっ!今、鼻で笑っただろ!」
二人は身長を比べ終わると、ギャーギャーと言い争いを始めてしまう。
『どっちもどっちですよね…』
『叡羅、それ以上は言ってはいけない』
そんな叡羅の問題発言を遮った俺は結局、二人の言い争いが終わるまでの10分ほど、空を眺めていたのだった。
◇
「ハァハァハァ…往生際が悪い」
「そちらこそ、自分の負けを認めたらどうだ…」
その後10分間絶え間なく言い合っていた二人は、脳内の酸素が少なくなったのか息が荒くなっていた。
息が上がっている幼女二人と男が同じ空間に居る現場を押さえられれば、俺の社会的地位が大暴落である。
俺の脳内で幼女趣味罪で衛兵さんに連行されていく未来が容易に想像される。
「…そろそろ終わったか?」
「ふっ、今日は此処で身を引いたあげる。感謝すること」
「負け惜しみを…」
体力が持たなくなったのか、最後の反論を述べた合った二人は揃ってソファーの上にドサッと腰を下ろす。
「ふー、それで話は戻すが、あの爆発はお前達が引き起こしたので間違いはないのだな」
「その通り、あれは雫達が原因」
えっ、認めちゃうの!?
メーヤからの問い掛けにあっさりと容疑を認めてしまう雫。
「ん、あっさり認めるとは…何が狙いだ?」
雫の予想外の返答に怪訝な表情を浮かべるメーヤ。
「狙いだなんて心外。ただ雫は何もしない、布石はもう既に打ってあるから」
「…どういうことだ?」
雫の発言に対してメーヤは目を細めて疑問の声を洩らす。
「もう以前の契約を忘れたとは言わせない。雫達が交わした契約はこう──雫達の情報の一切の漏洩を防ぐ。つまりは雫達が表舞台には出ることは出来るだけ防ぐ必要がある」
「それには一理あるな。悪目立ちでも目をつけられれば、お前達の実力が明るみになるからな。それは契約の規約に触れる事になる」
「…バカではないようで助かった。例えば今回の山の件、資源の賠償金を雫達が払ったら、当然その事実はこの国の記録に残る。山一つ分の金額が動くとなれば当然。しかしそれは雫達との契約に違反する行為。つまりメーヤ達冒険者ギルドが雫達の代わりに金を払う、これで万事解決」
「いやいや!なんでそうなる!?」
「何を当然の事を。一個人の冒険者がそれほどの大金を払えば怪しまれるが、冒険者ギルドが肩代わりすれば話は別。国にも匹敵するほどの財を所有するギルドが払えば誰も怪しまない、どう?」
雫はやれやれと首を振り、是非を言わせないような論弁でメーヤを追い詰めていく。
──雫の才能『軌跡予知』
その名の通り、未来へと続く道筋、軌跡を完全に読みきる能力。
未来予知にも等しい思考計算能力により、相手の行動、思考を完全に掌握し布石を打つことで相手を手玉に取るようにもて弄ぶ。
賭け事において、雫に戦場という名の盤上で右に出るものは存在しない。
全てを見据えた雫にとって相手は雫の引いた軌跡をなぞるだけの哀れな道化でしかない。
これはスキルではなく、雫が生まれつき持っている才能。
今回の件において冒険者ギルドほど都合のいい身代わりは存在しないだろう。
冒険者ギルドは、いわば民間の事業だ。
国が管理している国営とは違う。
つまり冒険者ギルドの資金がいくら動こうが、国が知るよしもないということだ。
…相変わらず、エグい手口を使うな雫は。
『全く同意です。こういう心理戦は人工知能の出番ではないですから…』
叡羅が悔しそうに頭の中で呟く。
まぁ、そこが唯一人類が人工知能に勝っていると宣言できる能力だからな。
雫の狙いが理解できたのか、メーヤは激しく狼狽し始める。
「なっ!ま、まさか、最初からこれが狙い…!」
「目の前の欲望に目を眩ませて、遠くの財宝に対して盲目になるのは能無しのすること」
雫はまるで用意していた回答を述べるように淡々とメーヤの反論を論破していく。
人間、未知の世界に突然放り込まれたら先ず一番に何を手に入れようとするだろうか。
答えは金だ。
人間とは基本的に睡眠欲、食欲、性欲の三大欲求を糧として生きている。金銭とはそれら全ての欲求を満たすことができる。
金を支払えば宿で安眠、食事処では料理、女に金を払えばヤることだってできる。
よって人間はいの一番に金を求める習性があるのだ。
雫の考えはそれに異なる。
雫が最も優先したのは金ではなく、人脈だ。
金など稼ごうと思えば幾らでも方法など道端に転がっている。それこそ異世界では魔物を倒せば換金もできる。
だが、人脈は違う。
真に信用性出来る人間は数少ない。
何時でも手に入る金とは違うのだ。
それに人脈を手に入れる事が出来ればそれは金、時には命を助けるモノに繋がっていく可能性があるのだ。
それに恐らく、メーヤが雫の提案に対して食って掛かってくるのも予想の範疇なのだろう。
メーヤは雫との力量の差を理解したのか鋭く睨んでいた目を一度閉じ、再び俺達を見据える。
「はぁ…分かった、今回の件は冒険者ギルドが肩代わりしよう。幸いあの山には大した資源は埋っていないようだったからな」
「始めからそう言えばいい」
「減らず口を叩く奴め…」
メーヤは悪態を吐くが雫は気に留めた様子は無く、勝ち誇った顔で満足げに頷く。
…それに対して終始、二人の言葉の応酬を端から眺めているだけだった俺。
空振り三振し、即座に雫にバトンタッチした俺にはハイレベルな駆け引きは理解できませんでした。
「用事はそれだけか?」
話し合いも終わったようなので、早く家に帰って依頼の疲れを癒したい。
「まあ待て、もう一つ別件でお前達に依頼…というか提案を持ってきているんだ」
そう言うとメーヤは徐に立ち上がり、自身の仕事用机に向かい引き出しから一枚の紙を取り出し、ソファー前の卓上に広げる。
「実は丁度一週間後に“五大国家武術大会”の予選が開かれる事になっているんだ。お前達にはそれに出場して欲しい」
「五大国家武術大会…?」
「…もしかしたらだがお前達、この大会を知らないのか?」
「あぁ」
俺の返答が想定外のモノだったのか、メーヤは有り得ないものを見るような表情をする。
「エルフの私でも知っている大会だぞ…何で人間のお前達が知らないんだよ。」
「…興味ないからな」
と、お茶を濁しておくが、異世界に来てまだ一週間ちょいしか経っていないんだ、とは口が裂けても言えない。
いや、でも異世界人じゃなくても俺達の様なコミュ症には到底縁がない催しか。
「はぁ…分かった、先ずは説明からするとしよう。この大会はだな──」
メーヤは呆れながらも、大会について事細かに説明をしてくれた。
メーヤの説明を要約するとこうだ。
この世界には五つの人族が治める国が存在している。
一つ目は、今俺達が滞在している国でもある『フォルネイヤ王国』
二つ目は、五ヵ国の中でも魔法士の育成に最も力を注いでいるとされており、魔法主義で魔法の才を持たないものは蔑まれるという魔法国家『アルンベイル王国』
三つ目は、女神カリスの信仰が根強いとされる宗教国家『神聖イヴィリス王国』
四つ目は、軍事力の増強に最も力を注いでおり、他国と違い国王ではなく皇帝が国を治めている『カルヴァン帝国』
そして五つ目は、都市が海に面しており、水産業が盛んで水の都と称されている商業国『オケネアス王国』
この五つの国が主にこの世界にはおける、人族の王が治める代表的な国となっている。
その五つの国が20年に一度、互いの国から開催国を決めて各国で予選を勝ち抜いた代表選手同士でしのぎを削り合う、それがこの“五大国家武術大会”である。
ただし、毎20年を周期にきっちり開催されているかというと、戦争や災害による飢饉などの問題が起こった際は流石に自国を立て直すのが優先されるので開催されていないようだ。
そしてその大会の予選でもあるフォルネイヤ王国代表を決める選抜選が一週間後にある、ということらしい。
「それに俺達が出て欲しい、ということか?」
「あぁ、大会の運営の方から、見込みのありそうな奴を誘っといてくれと言われていてな」
「お前が出てればいいじゃないか。仮にもSランク冒険者だろ」
メーヤや登録上はSランクと称しているが、ステータス的にはSSランクに匹敵するほどの実力を兼ね備えている。
出場したのなら優勝候補間違いなしだろう。
「それは無理だな。ギルドマスターは大会の運営にまわる決まりになっているんだ。仮に出場者が違反行為をした場合、取り締まれるのは少なくともSランク以上の実力が必要ということらしい」
「それで俺達に白羽の矢が立ったということか…」
「まぁ、そう言うことだ。本音を言えば、山を消し去るほど力が有り余っているのなら有益に使ってくれ、というのが狙いだがな」
「それについては、申し訳ないと思っているよ…」
ちょくちょく嫌味を挟んでくるな、メーヤは。
「これを聞けばお前らも大会に出場したくなること間違いなしだ!なんと…優勝者には豪華景品が贈呈されるのだっ!」
「へぇ…」
「反応薄っ!?ここはもっと驚くところでないだろうか…?」
そんな事を言われても、この世界の知識を知らないのに豪華景品と言われても、いまいちピント来ないのが本音だしなぁ。
予想道理の反応をして貰えず落ち込むメーヤの姿を尻目に、俺は腕を胸の前で組んで提案について思案する。
正直な所、俺自身はこの話に乗ってもいいと考えている。
俺達がこの世界に来た理由は他でもない、刺激に飢えていたからだ。
確かにこの世界に来て叡羅や魔法に出会った事で、少なからず前の世界よりは刺激的な生活を送っていると言えるだろう。
だが、力を持っていても使わなければたからの持ち腐れだ。
今の所、叡羅の使い道といったら無差別破壊ぐらいしかないのが現状である。
勿論そんな事はしない。…多分だけど。
そんな時に今回の大会の件が舞い込んできたのだ。
叡羅を使って戦ってみたいと思ってしまうのも無理はないだろう。
「…………」
隣では雫が顎に手を当てて神妙な顔つきで考え込んでいた。
俺個人の考えとしては出場してみたいというのが本音だが、俺は基本的に雫の意見を尊重するつもりでいる。雫が断るのなら、俺には何も異論はない。
「…分かった。出場してあげる」
「ほ、本当か!?また油断させて、私を騙すつもりじゃ…」
「人聞きの悪いことを。雫はただ、ここで恩を売っておくのも悪くないと思っただけ」
「お前から恩を買うのは怖いんだが…」
「当然。けれど、もし雫達が優勝すれば貴方にもそれなりの報酬があるはず」
「な、何故それを…!」
「単なる推測」
雫は鎌をかけただけのようだったが、見事に当たっていたらしい。
「それで、お前達二人とも出場してくれるのか?」
「違う。出場するのはお兄ちゃんだけ。雫はサポート要員」
「まぁ、お前から感じ取れる魔力は微弱だったからそうだとは思っていたが…」
「魔力を感じ取れるのか?」
「ん?あぁ、我々エルフは魔力の操作、感知においては特に他種族と比べても秀でているからな。それぐらい造作もない事だよ」
メーヤは自慢げに胸を張りながら説明してくれるが、やはりこの世界でも漫画のようにエルフは魔法が得意な種族のようだ。
「ちなみにどれぐらいの範囲感知できるんだ?」
「そうだな…私の場合は半径70mぐらいかな。どうだ凄いだろう、尊敬してもいいんだぞ」
「すごいすごーい」
「…何故棒読みなんだ」
ジト目でメーヤに睨まれてしまうが、仕方がないだろう。俺は半径100m近くまで感知できるんだから。
…何て言ったらメーヤのプライドが傷つきそうなので言わないでおこう。
「逆に神代のように魔力を全く感じないのも不気味だがな。どうせ魔力を抑えているのだろう?」
「ご明察。よく分かったな」
「エルフを舐めるなよ。それぐらいの判別はつく」
メーヤの推察通り、俺は身体に流れる魔力の外部への放出を抑えている。
以前、俺の魔力保有量が膨大すぎて魔力量の低い雫が体調不良を訴えたことがあったからな。それ以来、戦闘時以外は極力抑えることにしているのさ。
それにしても雫がこの提案を受けるのは正直以外だった。
こういう催しは嫌いだと思っていたんだがな。
疑問に思った俺は叡羅の通信機能を使って雫に直接訊いてみることにする。
『…けどいいのか?目立つかもしれないだろ?』
『問題ない。丁度、叡羅の対人戦闘のデータが欲しいと思っていた頃だったから、試運転にはもってこいの場』
『ふふん、遂に私の出番ですね!』
叡羅は活躍できるの場が出来たのが嬉しいのか、大きく息巻いていた。
成る程ね。そういう事なら俺も好き勝手やっても構わないということだな。
俺もこの世界の人間の戦闘力は気になっていたので、大いに試させて貰おうか。
「…それにお兄ちゃんには、変装して貰うから」
「ん?何か言ったか?」
「別に」
雫の最後の呟きは考え事をしている最中だったので、聞き逃してしまったが雫の様子から察するに大したことではないだろう。
大会の詳細な説明を受けた俺達はメーヤと別れた後、一階に戻りシスティラからスライム討伐の報酬を受け取って帰路についた。
その間、メーヤが俺達を呼ぶ理由について考えてみるが、正直な所心当たりしかない。
最近俺達がやらかした事件といえば十中八九、先の山の爆発の件に違いない。
まあ、最近といっても、つい今朝の出来事なんだけれどな。
そんな、ほぼ正解に近いであろう推測を終えると同時に執務室の扉の前に辿り着く。
俺は一応の礼儀として扉を2回ノックをする。
「お兄ちゃん、それだとトイレの回数。普通は3回以上が正しい」
「えっ、そうなの?」
雫からの訂正に衝撃を受ける。
知らなかった…それじゃあ俺は地球に住んでたときに仕事で国際連合本部の会議室に入室する際にトイレと同じ作法で入ってたってこと?とんだ無礼者である。
「少し待っていろ、今鍵を開ける」
自身の常識が覆ったことに衝撃を受けていると、部屋の内部からメーヤが扉に近づいてくる音が聞こえる。
──ガチャン
その音の主が扉の前で立ち止まると扉に取り付けられている鍵が解除される音が鳴る。
この仕掛けは便利だよなぁ。
俺達も家を建てたら取り付けたいものだ。
今は宿屋で寝泊まりしているが、如何せん設備施設が整っていない。
地球の自宅では地下に俺専用の射撃場や工房、他には雫専用の研究施設が備え付けられていたので自宅で事足りたのだ。
えっ?日本では銃の携帯は違法?
はっはっはっ!政府公認の人間兵器である俺にそんな法律が適応されるとでも?
俺達の自宅なんて日本に在りながら、日本の法律を受けていなかったからな。
俺達の家の敷地内は一種の治外法権なので合法なのである。
此方の世界ではそうはいかない。
当然、家を建てる場合は地球の技術をフル活用した設備の設置を計画している。
しかし、地球の技術を目撃されるのはデメリットでしかない。
注目を浴びることで俺達の自堕落な生活を邪魔されるのだけは御免葬りたいのだ。
その為周囲に人気のない立地に一軒家でも建てて、俺達専用の自宅にする計画を密かに立てていたりする。
まあ、流石に家一軒を建てるほどの資金は貯まっていないので、未だ未だ先の事になりそうだ。
ドアノブを捻って室内に入っていく。
「待っていたぞ二人とも。ほら、そこに腰掛けてくれ」
俺達はそうメーヤに促されるままソファーに腰を下ろす。
今日は以前と違いシスティラが居ないので、メーヤが紅茶をカップに注ぎ、俺達の目の前のテーブルに置く──のだが、今はそんな事どうでもいい。
「…………」
メーヤの笑顔が怖い。
何か怒りを含んだような笑顔で此方を見ていらっしゃる。
もしかしたらこの紅茶に毒を!?などと疑ってしまうほどの表情だ。
「えーと、どうかしたのか、メーヤ?」
「ん?何がだ?」
「いや、だってめっちゃ笑顔でさ…」
「別に怒ってはいないさ。何処かの誰かさんが郊外の山を消し飛ばした事を隠蔽するために、これから私の書類の量が増えるからって怒ってはいないよ」
ニコニコした表情で圧力を飛ばしてくるメーヤ。
めっちゃくちゃお怒りですやん…。
というかやっぱり勘づくかれていたのか。
だがしかし、まだ俺は悪足掻きをさせて頂こうか!男には負けられない戦いがあるのだよ。決して山を消し飛ばした結果、失ったであろう山に埋まっていた資源の賠償金を払いたくないとか女々しい理由ではない。
「俺には身に覚えが…」
「システィラからお前達が件の山の近くの草原に依頼で向かったと訊いたんだがな」
「もしかして魔物が…」
「私も仮にはSランク冒険者だぞ。山を消し去るほどの脅威の魔物の気配を察知出来ないとでも?」
「じゃあ、噴火とか…」
「あの山は活火山ではないが?」
「………」
はい、スリーアウトチェンジ!
メーヤの的確な回答に何も返せなくなってしまう情けない俺。
『ご主人様は情けないですね』
遂には叡羅にも呆れられてしまった。
何か叡羅さん、最初の頃と違って饒舌になっていません?
「お兄ちゃん、此処は雫が」
項垂れていると雫がそんな提案をしてくる。
そうだよな!適材適所が一番だよな!
べっ、別に悲しくなんて無いんだからねっ!だから今、目から流しているのは涙ではない。そう汗だ。
雫が出てきたことでメーヤの雰囲気も変わる。
以前、雫に言い負かされた事を忘れてはいないようだ。
「流石に今回はお前も言い訳が出来る状況ではないのではないか?」
「言い訳?ふっ、これだから子供は」
「なにっ、お前だって幼児体型じゃないか!」
「雫はまだ12歳、希望がある。けど貴方は500歳の年増。一緒にしないで欲しい」
「年増じゃないし!ハイエルフの中ではまだ比較的若い方だからな!」
雫とメーヤの天に唾を吐くような言い争いに呆れてしまう。
このままだと話が脱線し続けそうなので、何とか話を戻さなくては。
「まぁまぁ二人とも、不毛な争いはまた後でいいだろう」
「ノンノン、お兄ちゃん。これは白黒はっきりさせなければいけないこと」
「今ばかりは、神代妹に同意だ」
そう言うと二人は徐に立ち上がり、背中同士をくっ付け合って身長を比べ始める。
「ほらほら、雫の方が2ミリ大きい」
「なっ、そんなモノ誤差だ誤差!今日はちょっと履いてきた靴が低いだけだし!」
「ふっ」
「あっ!今、鼻で笑っただろ!」
二人は身長を比べ終わると、ギャーギャーと言い争いを始めてしまう。
『どっちもどっちですよね…』
『叡羅、それ以上は言ってはいけない』
そんな叡羅の問題発言を遮った俺は結局、二人の言い争いが終わるまでの10分ほど、空を眺めていたのだった。
◇
「ハァハァハァ…往生際が悪い」
「そちらこそ、自分の負けを認めたらどうだ…」
その後10分間絶え間なく言い合っていた二人は、脳内の酸素が少なくなったのか息が荒くなっていた。
息が上がっている幼女二人と男が同じ空間に居る現場を押さえられれば、俺の社会的地位が大暴落である。
俺の脳内で幼女趣味罪で衛兵さんに連行されていく未来が容易に想像される。
「…そろそろ終わったか?」
「ふっ、今日は此処で身を引いたあげる。感謝すること」
「負け惜しみを…」
体力が持たなくなったのか、最後の反論を述べた合った二人は揃ってソファーの上にドサッと腰を下ろす。
「ふー、それで話は戻すが、あの爆発はお前達が引き起こしたので間違いはないのだな」
「その通り、あれは雫達が原因」
えっ、認めちゃうの!?
メーヤからの問い掛けにあっさりと容疑を認めてしまう雫。
「ん、あっさり認めるとは…何が狙いだ?」
雫の予想外の返答に怪訝な表情を浮かべるメーヤ。
「狙いだなんて心外。ただ雫は何もしない、布石はもう既に打ってあるから」
「…どういうことだ?」
雫の発言に対してメーヤは目を細めて疑問の声を洩らす。
「もう以前の契約を忘れたとは言わせない。雫達が交わした契約はこう──雫達の情報の一切の漏洩を防ぐ。つまりは雫達が表舞台には出ることは出来るだけ防ぐ必要がある」
「それには一理あるな。悪目立ちでも目をつけられれば、お前達の実力が明るみになるからな。それは契約の規約に触れる事になる」
「…バカではないようで助かった。例えば今回の山の件、資源の賠償金を雫達が払ったら、当然その事実はこの国の記録に残る。山一つ分の金額が動くとなれば当然。しかしそれは雫達との契約に違反する行為。つまりメーヤ達冒険者ギルドが雫達の代わりに金を払う、これで万事解決」
「いやいや!なんでそうなる!?」
「何を当然の事を。一個人の冒険者がそれほどの大金を払えば怪しまれるが、冒険者ギルドが肩代わりすれば話は別。国にも匹敵するほどの財を所有するギルドが払えば誰も怪しまない、どう?」
雫はやれやれと首を振り、是非を言わせないような論弁でメーヤを追い詰めていく。
──雫の才能『軌跡予知』
その名の通り、未来へと続く道筋、軌跡を完全に読みきる能力。
未来予知にも等しい思考計算能力により、相手の行動、思考を完全に掌握し布石を打つことで相手を手玉に取るようにもて弄ぶ。
賭け事において、雫に戦場という名の盤上で右に出るものは存在しない。
全てを見据えた雫にとって相手は雫の引いた軌跡をなぞるだけの哀れな道化でしかない。
これはスキルではなく、雫が生まれつき持っている才能。
今回の件において冒険者ギルドほど都合のいい身代わりは存在しないだろう。
冒険者ギルドは、いわば民間の事業だ。
国が管理している国営とは違う。
つまり冒険者ギルドの資金がいくら動こうが、国が知るよしもないということだ。
…相変わらず、エグい手口を使うな雫は。
『全く同意です。こういう心理戦は人工知能の出番ではないですから…』
叡羅が悔しそうに頭の中で呟く。
まぁ、そこが唯一人類が人工知能に勝っていると宣言できる能力だからな。
雫の狙いが理解できたのか、メーヤは激しく狼狽し始める。
「なっ!ま、まさか、最初からこれが狙い…!」
「目の前の欲望に目を眩ませて、遠くの財宝に対して盲目になるのは能無しのすること」
雫はまるで用意していた回答を述べるように淡々とメーヤの反論を論破していく。
人間、未知の世界に突然放り込まれたら先ず一番に何を手に入れようとするだろうか。
答えは金だ。
人間とは基本的に睡眠欲、食欲、性欲の三大欲求を糧として生きている。金銭とはそれら全ての欲求を満たすことができる。
金を支払えば宿で安眠、食事処では料理、女に金を払えばヤることだってできる。
よって人間はいの一番に金を求める習性があるのだ。
雫の考えはそれに異なる。
雫が最も優先したのは金ではなく、人脈だ。
金など稼ごうと思えば幾らでも方法など道端に転がっている。それこそ異世界では魔物を倒せば換金もできる。
だが、人脈は違う。
真に信用性出来る人間は数少ない。
何時でも手に入る金とは違うのだ。
それに人脈を手に入れる事が出来ればそれは金、時には命を助けるモノに繋がっていく可能性があるのだ。
それに恐らく、メーヤが雫の提案に対して食って掛かってくるのも予想の範疇なのだろう。
メーヤは雫との力量の差を理解したのか鋭く睨んでいた目を一度閉じ、再び俺達を見据える。
「はぁ…分かった、今回の件は冒険者ギルドが肩代わりしよう。幸いあの山には大した資源は埋っていないようだったからな」
「始めからそう言えばいい」
「減らず口を叩く奴め…」
メーヤは悪態を吐くが雫は気に留めた様子は無く、勝ち誇った顔で満足げに頷く。
…それに対して終始、二人の言葉の応酬を端から眺めているだけだった俺。
空振り三振し、即座に雫にバトンタッチした俺にはハイレベルな駆け引きは理解できませんでした。
「用事はそれだけか?」
話し合いも終わったようなので、早く家に帰って依頼の疲れを癒したい。
「まあ待て、もう一つ別件でお前達に依頼…というか提案を持ってきているんだ」
そう言うとメーヤは徐に立ち上がり、自身の仕事用机に向かい引き出しから一枚の紙を取り出し、ソファー前の卓上に広げる。
「実は丁度一週間後に“五大国家武術大会”の予選が開かれる事になっているんだ。お前達にはそれに出場して欲しい」
「五大国家武術大会…?」
「…もしかしたらだがお前達、この大会を知らないのか?」
「あぁ」
俺の返答が想定外のモノだったのか、メーヤは有り得ないものを見るような表情をする。
「エルフの私でも知っている大会だぞ…何で人間のお前達が知らないんだよ。」
「…興味ないからな」
と、お茶を濁しておくが、異世界に来てまだ一週間ちょいしか経っていないんだ、とは口が裂けても言えない。
いや、でも異世界人じゃなくても俺達の様なコミュ症には到底縁がない催しか。
「はぁ…分かった、先ずは説明からするとしよう。この大会はだな──」
メーヤは呆れながらも、大会について事細かに説明をしてくれた。
メーヤの説明を要約するとこうだ。
この世界には五つの人族が治める国が存在している。
一つ目は、今俺達が滞在している国でもある『フォルネイヤ王国』
二つ目は、五ヵ国の中でも魔法士の育成に最も力を注いでいるとされており、魔法主義で魔法の才を持たないものは蔑まれるという魔法国家『アルンベイル王国』
三つ目は、女神カリスの信仰が根強いとされる宗教国家『神聖イヴィリス王国』
四つ目は、軍事力の増強に最も力を注いでおり、他国と違い国王ではなく皇帝が国を治めている『カルヴァン帝国』
そして五つ目は、都市が海に面しており、水産業が盛んで水の都と称されている商業国『オケネアス王国』
この五つの国が主にこの世界にはおける、人族の王が治める代表的な国となっている。
その五つの国が20年に一度、互いの国から開催国を決めて各国で予選を勝ち抜いた代表選手同士でしのぎを削り合う、それがこの“五大国家武術大会”である。
ただし、毎20年を周期にきっちり開催されているかというと、戦争や災害による飢饉などの問題が起こった際は流石に自国を立て直すのが優先されるので開催されていないようだ。
そしてその大会の予選でもあるフォルネイヤ王国代表を決める選抜選が一週間後にある、ということらしい。
「それに俺達が出て欲しい、ということか?」
「あぁ、大会の運営の方から、見込みのありそうな奴を誘っといてくれと言われていてな」
「お前が出てればいいじゃないか。仮にもSランク冒険者だろ」
メーヤや登録上はSランクと称しているが、ステータス的にはSSランクに匹敵するほどの実力を兼ね備えている。
出場したのなら優勝候補間違いなしだろう。
「それは無理だな。ギルドマスターは大会の運営にまわる決まりになっているんだ。仮に出場者が違反行為をした場合、取り締まれるのは少なくともSランク以上の実力が必要ということらしい」
「それで俺達に白羽の矢が立ったということか…」
「まぁ、そう言うことだ。本音を言えば、山を消し去るほど力が有り余っているのなら有益に使ってくれ、というのが狙いだがな」
「それについては、申し訳ないと思っているよ…」
ちょくちょく嫌味を挟んでくるな、メーヤは。
「これを聞けばお前らも大会に出場したくなること間違いなしだ!なんと…優勝者には豪華景品が贈呈されるのだっ!」
「へぇ…」
「反応薄っ!?ここはもっと驚くところでないだろうか…?」
そんな事を言われても、この世界の知識を知らないのに豪華景品と言われても、いまいちピント来ないのが本音だしなぁ。
予想道理の反応をして貰えず落ち込むメーヤの姿を尻目に、俺は腕を胸の前で組んで提案について思案する。
正直な所、俺自身はこの話に乗ってもいいと考えている。
俺達がこの世界に来た理由は他でもない、刺激に飢えていたからだ。
確かにこの世界に来て叡羅や魔法に出会った事で、少なからず前の世界よりは刺激的な生活を送っていると言えるだろう。
だが、力を持っていても使わなければたからの持ち腐れだ。
今の所、叡羅の使い道といったら無差別破壊ぐらいしかないのが現状である。
勿論そんな事はしない。…多分だけど。
そんな時に今回の大会の件が舞い込んできたのだ。
叡羅を使って戦ってみたいと思ってしまうのも無理はないだろう。
「…………」
隣では雫が顎に手を当てて神妙な顔つきで考え込んでいた。
俺個人の考えとしては出場してみたいというのが本音だが、俺は基本的に雫の意見を尊重するつもりでいる。雫が断るのなら、俺には何も異論はない。
「…分かった。出場してあげる」
「ほ、本当か!?また油断させて、私を騙すつもりじゃ…」
「人聞きの悪いことを。雫はただ、ここで恩を売っておくのも悪くないと思っただけ」
「お前から恩を買うのは怖いんだが…」
「当然。けれど、もし雫達が優勝すれば貴方にもそれなりの報酬があるはず」
「な、何故それを…!」
「単なる推測」
雫は鎌をかけただけのようだったが、見事に当たっていたらしい。
「それで、お前達二人とも出場してくれるのか?」
「違う。出場するのはお兄ちゃんだけ。雫はサポート要員」
「まぁ、お前から感じ取れる魔力は微弱だったからそうだとは思っていたが…」
「魔力を感じ取れるのか?」
「ん?あぁ、我々エルフは魔力の操作、感知においては特に他種族と比べても秀でているからな。それぐらい造作もない事だよ」
メーヤは自慢げに胸を張りながら説明してくれるが、やはりこの世界でも漫画のようにエルフは魔法が得意な種族のようだ。
「ちなみにどれぐらいの範囲感知できるんだ?」
「そうだな…私の場合は半径70mぐらいかな。どうだ凄いだろう、尊敬してもいいんだぞ」
「すごいすごーい」
「…何故棒読みなんだ」
ジト目でメーヤに睨まれてしまうが、仕方がないだろう。俺は半径100m近くまで感知できるんだから。
…何て言ったらメーヤのプライドが傷つきそうなので言わないでおこう。
「逆に神代のように魔力を全く感じないのも不気味だがな。どうせ魔力を抑えているのだろう?」
「ご明察。よく分かったな」
「エルフを舐めるなよ。それぐらいの判別はつく」
メーヤの推察通り、俺は身体に流れる魔力の外部への放出を抑えている。
以前、俺の魔力保有量が膨大すぎて魔力量の低い雫が体調不良を訴えたことがあったからな。それ以来、戦闘時以外は極力抑えることにしているのさ。
それにしても雫がこの提案を受けるのは正直以外だった。
こういう催しは嫌いだと思っていたんだがな。
疑問に思った俺は叡羅の通信機能を使って雫に直接訊いてみることにする。
『…けどいいのか?目立つかもしれないだろ?』
『問題ない。丁度、叡羅の対人戦闘のデータが欲しいと思っていた頃だったから、試運転にはもってこいの場』
『ふふん、遂に私の出番ですね!』
叡羅は活躍できるの場が出来たのが嬉しいのか、大きく息巻いていた。
成る程ね。そういう事なら俺も好き勝手やっても構わないということだな。
俺もこの世界の人間の戦闘力は気になっていたので、大いに試させて貰おうか。
「…それにお兄ちゃんには、変装して貰うから」
「ん?何か言ったか?」
「別に」
雫の最後の呟きは考え事をしている最中だったので、聞き逃してしまったが雫の様子から察するに大したことではないだろう。
大会の詳細な説明を受けた俺達はメーヤと別れた後、一階に戻りシスティラからスライム討伐の報酬を受け取って帰路についた。
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