シスコン&ブラコンの天才兄妹は異世界でもその天賦の才を振るいます

蒼山 響

人工知能

その後も宝の数々を物色していると、ミスリルだけでなくオリハルコン、アダマンタインなどの貴重な鉱石が見つけることが出来た。

もしかしたら俺達の探索したあの迷宮ダンジョンは、ボーナスステージのような貴重レアな迷宮だったのかもしれない。
ただ、ボスキャラがS級なので、普通の冒険者からしたら少々難易度が高過ぎるのだろう。

材料も揃ったので早速、武器の製作に取り掛かり始めることにする。
自分の武器というだけあり、スマホの画面には午後7時と表示されてるが、俺のやる気は最高潮だ。
引きこもりからしたら、まだまだお昼だぜ。

ちなみにこの世界の時間の基準は地球と余り変わらず午前と午後に分かれており、1日=24時間も変わらないようだ。

「よし、雫。俺は何をすればいい?」

「先ずは剣本体に書き込む魔法式を構築する必要がある。だからお兄ちゃんは少し静かにしててね」

「あ、はい…」

開始早々、出鼻を挫かれてしまった気分だ。
いや、確かに雫と比較すると俺はバカかもしれないけれど…俺だって何かの役に立ちたいんだよ…!

年甲斐もなく涙目になり、部屋の隅で体操座りで雫がタブレットに何か打ち込んでいるのを見ているしかない惨めな俺を笑ってくれ…。

その後、気を取り直した俺は愚図っていても仕方がないので、時間を有効に使うためにデザートイーグルの整備メンテを行うことにした。
整備に使用する油やブラシは、先程の買い物のついでに購入しておいたのを魔法収納から取り出して、ベットに腰を下ろして作業することにする。
追記するのなら、このブラシは馬の尾の毛で出来ているらしく中々良い値段がした。
ベットの上だと不安定で、作業台としては些か不便だが文句は言っていられない。

この世界に来てから一度もコイツは使用してないので必要ないと思われるかもしれないが、最低でも通常整備クリーニングを定期的に行わなければ、銃が機嫌を損ねるからな。

本来なら、こういう分野は雫の方が得意なのだが、武器は自分の命を預ける相棒に等しい、通常整備ぐらいなら自分自身で行いたい
その相棒との整備コミュニケーションを欠かすようでは、いつ不発裏切りに会っても可笑しくはない。

俺はデザートイーグルのゴミカーボンを掃除し、簡易的な通常整備を行う。
地球あっちの自宅にある設備なら完全分解整備オーバーホールも可能なのだが、今は我慢するしかあるまい。
いつか家でも買って、そこに拳銃の整備用の工房でも作るのも悪くないかもな。
そんな計画を立てながらも俺は念入りに相棒デザートイーグルの整備を進めていった。







俺が愛情を込めて銃を整備、雫が俺の武器の製作、各々の作業をしており、ふと部屋に備え付けられている格子から外を見ると、空を覆っていた暗闇が無くなっており、太陽が空に昇っているところだった。
日光を遮るカーテンが無いのが大変憎ましい事態である。

ちなみにこの世界のガラスは透明度が悪く、外の景色もぼんやりとしか見通せない程だ。
恐らくガラスの製造過程で不純物質が多く混入してしまうのが理由だろう。
それでもこの世界では貴重品らしく、備え付けられているのは貴族や王族の建物だけらしい。

俺は外から射し込む太陽の光りに眉を顰める。

…気付いたら夜が明けていた。

地球あっちに居た頃にも何度も有ったことなんだが、どうも俺達兄妹は集中し過ぎると、時間の経過を忘れてしまうようだ。

俺の集中力はまだ軽症なほうだ。
雫は放っておくと一週間ほどお菓子ジャンクフードのみの食生活、更には不眠不休の生活リズムで過ごす事もあるのだ。
以前にもそのお陰で栄養失調に陥ったこともあるので、俺が見張っていないと心配でしょうがない。

「雫、もう朝だぞ」

「ん?…本当だ」

俺の呼び掛けに答えた雫は、手に持っていたタブレットで時刻を確認すると作業を中断して此方に向き直る。目の下に隈を作った状態で。
因みに作業中の雫に呼び掛けて反応してくれるのは俺だけだ。
自宅の付近で火災や交通事故が起こった際にも、その騒音を気にも止めないで作業に没頭していた。

「どうだ?そっちの進行状況は」

「んー…プログラムは組み終えたから、後は素材で刀剣を錬成で造り出して、組み終えたプログラムを魔石にインプットするだけかな」

そう言うと雫は、俺がぶちまけて置いておいた魔石やミスリルなどの素材の近くに歩み寄って行き、素材の塊に向かって手を翳す。

素材の扱いが雑なんじゃないかだって?
俺達引きこもりにとっての掃除は部屋の片隅に追いやったらそれで掃除完了なのさ。

「【錬成れんせい】」

雫がスキル発動を唱えると素材の集合体が部屋全体を覆い尽くすほどの目映い光に包まれていく。

──数秒が経っただろうか。
光が消えた事をうっすらと目を開いて確認した俺は、雫の眼下にあるものに目を向ける。

「…剣だな」

「真っ黒」

雫が錬成で造り出した剣は漆黒に染められた刀身を持っており、その表面は黒の光沢なのだが嫌に光を反射しずに妖艶な輝きを放っている。十字形をのように付けられているガードの真ん中には、剣本体の漆黒の色に呑まれることもなく、その神々しい輝きを誇示するような金色の魔石が嵌め込まれていた。
さながらその姿形は、魔王が振るうような武具を彷彿とさせる見た目をしている。
剣自体の形としては片手剣と同じぐらいで、刀身は少し細身で両刃付の刀に近いだろうか。実に中二病心を擽るデザインとなっている。

「でも、これで完成じゃないんだろ?」

「うん。後は構築ストラクチャーで魔石本体に先程組んだシステムをインプットするだけ」

雫が自慢気に俺の質問に対して説明をしてくれるが、さっぱり分からん。

「まぁ、聞くより見た方が早い。【構築ストラクチャー】」

雫は目を瞑ると、構築を発動させる。
漆黒の剣の周りには魔方陣が展開され、様々な魔法式が現れては魔方陣石の中に消えていき、また新しい魔法式が創られる。その繰り返しだ。

どのぐらいの時間が経過しただろうか。
俺が魔法式の構築という神秘的な光景に目を奪われていると、魔方陣が終息していき、雫の目が開かれる。

「ふー、これで完成。流石に魔法と科学の混成ハイブリッドを両立させられるプログラムを組むのは精神的疲労が大きい」

小さく息を吐く雫の額には汗が流れており、構築の使用における疲労が伺えた。
天才的な頭脳を持つ雫でさえもこれほどの苦労を強いいられるのだ、他の人間がこのレベルの構築を組み立てるとなると、脳が負荷に耐えきれなくなり、神経が焼き切れる事だろう。

「それで、どんな機能を構築したんだ?」

「ふっ、教えてしんぜよう」

何その喋り方。

雫は口調を侍のようなモノに変えて咳払いをし、一呼吸置いてから説明を始める。

「ごほんっ。なんと、この剣には人工知能がインプットされているのです!」

「…人工知能?それって、あのスマホとかに搭載されている人工知能?」

「その通り。人工知能について説明すると──」

雫の膨大な知識による説明を要約するとこういう事だ。

人工知能、または英訳でartificial intelligence。通称AI。人間の知的能力をコンピュータ上で実現する、様々な技術・ソフトウェア・コンピューターシステム。記憶や学習、推論、判断など高度な作業に必要不可欠となる人間の知能をコンピューター上で人工的に構築し、これまで人間が脳内で行ってきた作業を再現する仕組みや研究のことである。

我々の身近なモノだと、スマホに搭載されているGoogleやSiri等が例として挙げられるだろう。

「でも、剣に人工知能なんか搭載しても何か意味があるのか?戦闘中にインターネットを使うわけでもないだろうし」

まずこの世界ではインターネット環境が無い。
GoogleやSiriを搭載したところでスマホの二番煎じにしかなり得ないだろう。

「ちっちっち、雫の組んだ人工知能をそこらいらの物と一緒にされちゃぁ、困りますぜぇ」

雫は人差し指を立てながら、自慢気にの疑問を否定する。
その前にその口調はなんとかなら無いのか。

「説明するより試して見た方が早い。まず、剣の柄の部分を握ってみて欲しい」

そう雫に促された俺は、漆黒色に包まれた剣の柄を恐る恐る握ってみる。

──シーン……

何が起こるのか身構えていた俺だったが、柄を握った後にあったのは只の沈黙だった。

「…何も起きないけど」

「そりゃあ、電源を点けてないから、当然」

ずこっ!いやいや、今の口振りから何かが起こると思うじゃん!?

雫の当然でしょ?と言わんばかりの口調に思わず、ずっこけそうになってしまった。

「じゃ、じゃあ、どうすればいいんだ?」

「柄を握った状態で《起動アクティブ》と唱えるだけでいい」

「成る程。それでは、ごほんっ。《起動アクティブ》」

──次の瞬間、剣の漆黒の刀身の部分に幾何学的な紅い紋章が浮かび上がり始める。

『──ご主人様マスターの声紋認証、指紋認証を確認。此れより初期設定に従い、当機の稼働を開始します』

突如、剣の鍔の部分に埋め込まれていた金色の魔石が光ると同時に、女性よりの機械音声が発せられる。

「し、雫、これは…?」

「ふふぅん!驚いたでしょ。その剣には雫の知的能力や思考回路、その他にも性格や知識、計算予測能力を元に作られている。つまりは、第2の雫みたいな物」

雫は、どやぁ、という効果音が聴こえてきそうな程、胸を張りながら自慢気に解説をする。

──す、すげぇぇぇ!!!

何それっ!つまりは雫の未来視にも等しいような行動予測や物理計算などの超能力的な知能が備わった武器って事だろ。
そんなの最強チート以外の何物でもない。

そんな俺の驚愕を他所に、雫は解説を続ける。

「しかも人工知能。即ち、その剣には自己学習能力が備わっている。その意味が分かる?」

「うーん…意味?意味と言われても……あっ、もしかして!」

「その通り。つまりその武器は成長する!」

皆さんが人工知能と聞いて思い浮かべるものは何だろうか。
まず、真っ先に思い浮かべるのがロボットだろう。
だが、ロボットと人工知能は決定的な違いが存在する。

それは、人工知能とロボットの一番の違いは自律的成長の可否だ。

人工知能は予め定められたルールや条件をもとに、自ら考え、決断することができる。また、それらの行動によって発生した結果を学習材料にしてより良い結果を手に入れられるように修正していくこともできる。

それに対し、ロボットは与えられた作業を確実にこなすことを最大の目的としており、自ら考え、決断するということはできない。しかし、管理者にとって予想外の挙動を起こすことは少ないため、人工知能よりもコントロールしやすい存在であるといえるだろう。

だが、それでは意味がない。
俺達という天才、いや神にも近き存在と共に歩む武器なのだ。ただ命令に従っているロボットなど糞くらえだ。

自分の道は自分で決める。
それが俺達兄妹の生き方だ。
恐らくだが、雫もそんな思いを剣にも託して作り出したのだろう。

「そ、それで、他にはどんな機能が?」

「フッフッフ、それは──と、言いたいところだけど、出来るのなら実戦で説明したいところ。よって今から依頼クエストを受けに行く。」

恐らく雫も早く武器の性能を実験したくて、うずうずしているのだろう。

「よし!行くぞっ!」

「おーーーっ!!!」

そんな掛け声を合図に俺達は、最低限の身支度を終えて冒険者ギルドに依頼を受けに走り出した。

さながら今の俺達は、新しい玩具を与えられた子供のようだろう。
その表情には徹夜明けの疲れなど微塵も感じさせないように見えた。

天才を越える兄妹も好奇心には勝てないのだった。

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