ハガルの雨
鳩羽とナニカ
 ナニカが僕を支配した
 ただいま
 玄関に響いた自分の声
 ひどく寂しそうだ
 過去に犯した罪はナニカとして
 突如、僕の正面から 背後から 内側から現れて襲いかかろうとするんだ
 それは獰猛な気高き獣のように
 僕の心を引き裂き
 忍び寄る暗黒の殺人者のように
 僕の心を奪い去り
 死体に湧いた大量の虫のように
 僕の心を内側から蝕んでゆく
 おかえり
 ただその声がその言葉が聞きたいだけなのに
 あの時、なんて言えばよかった?
 なんて言えば間に合ったんだろう?
 ほら、次はナニカが僕の視界をも奪おうと
 僕の内側で暴れ回ってる
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