日常品使いの御祓い師
第4話
(まあ、確かに戦おうと思えば戦える状態にはなったが・・・・)
彼は、情報秘匿の為に敢えて気絶させたにとりを米俵を担ぐが如く肩で担いだ。よくある、緊急時にケガ人や自力での移動が不可能な人を移動させる時に使うやり方である。
この学校の構造は、コの字形の校舎を、横に一文字に渡り廊下と通路が貫いた仕様になっている。吹き抜けになっている中央部は、池のある中庭になっている。
にとりや桜のいる教室は、この貫いた廊下の直ぐ前に直結しており、彼がいるのは正に空中に浮いた廊下の一角だった。
「掛かって・・・来なよ」
彼は静かに挑発を悪魔にした。悪魔は、禍々しく金色に光るその四つの複眼をギラつかせ、今にもこちらに飛びかかろうとしていた。まあ、当然であろう。中級の場合、唯一の武器である鋭い爪には強力な毒がある。斬りつけられようものなら、イノセンスの浄化機能が無ければ、一瞬で死んでしまうだろう。
そうこう考えているうちに、中級悪魔はこちらにジリジリにじり寄っていた。挑発した相手が待ってくれるほど悠長ではないのは分かっている。
(やっぱりここは・・・)
にじり寄って来る悪魔に対し、少しずつ遠ざかる彼。まるでしびれを切らしたように彼は教室とは反対側に飛び出した。
ダッシュ─────。逃げるが勝ちだ、と彼は考えていた。だが、瞬間的な瞬発力は人間である彼より悪魔のほうが上で、かつ、こちらは気絶させたにとりを抱えており、それが障害となり確実に距離を縮められつつあった。それでも廊下を凄まじいスピードで駆け抜けていく二つの影。
(やっべ、追いつかれ────)
ガシャラッ!
彼はすんでのところで、一階部分につながる階段の、非常扉に隣接していたロッカーを倒した。中からは、掃除用具一式(ぞうきんの入ったバケツ、箒、ブラシ、モップ)が撒き散らされた。
「!!」
悪魔は急に襲撃してきた掃除用具をよけきれず、太いモップの柄に激突した。
いくら人間を卓越した筋力や瞬発力があっても、中級悪魔にはそれに追随する頭脳が無かったのである。証拠として現に、避けられるような自分より高いところからの落下物も避けられていない。所詮中級なのだ。
授業中であり静まり返っている校舎内を、にとりを抱えたまま駆け抜けた。走りながらも、彼は考えていた。
(どうやって倒すかな・・・・)
そう。要点はそれである。彼にはイノセンス以外に得物がない。最悪、これを拳に巻きつけてあの中級悪魔を直接殴れば良いのだが、ゴリラの如きその長い腕は、こちらのリーチに入る前に文字通り鋭い一撃を食らわせているだろう。
(クソ・・・さっきのロッカーからなんかくすねてくりゃ良かったかな)
確かに、それなりにリーチのある得物があれば、かつ、通電する性質があれば、イノセンスは対悪魔兵器として機能するだろう。当然、真剣やら実銃やらは武器化出来ないが。
(通電・・・!イノセンスの通電だ!)
彼はイノセンスのエネルギーは、電気と全く同じ性質を持っている───────それを思い出した。
(バケツが必要になるな)
肩から落ちそうになったにとりを抱え直し、コの字形の校舎の貫かれた廊下部分を再ダッシュした。
(保健室!やっとついた!校舎がいちいち広すぎんだよチクショォ)
仕方なかろうて。人口400万人のうちその半数が学生であるこの都市には、何故かここしか学校が無いのだから。広くなければ2万人もの生徒を収容出来ないだろう。保健室はここ二階には一つしか無いが。
(とにかく辿り着いたぜ・・・・あった!)
対フノホコリ用・空気清浄機。この装置には、機体冷却機能用の冷却水が用意されている。この水は、超純水が使用されており、浸透圧は非常に高く悪魔に対し効果抜群だろう。当然、水だから、それなりに通電する筈である。
しかし。
(うっわマジかよおい)
何と空気清浄機は壁に埋まっていた。恐らく、破損しにくくするためであろう。超純水は、その純度の高さ故、人体にとってはたった3リットル程度で死に至る。生徒が誤って摂取して死亡事故に、何てなったら目も当てられない。かといって作動させなければフノホコリの作用で生徒が死んでしまっては本末転倒である。
だが、これでは水が出せない。やることは一つである。だが、もう少し後ろには、全速力で走ってくる中級悪魔の影が。
「やべー、仕方ねぇからぶち壊すしかねぇ・・・!」
彼は、空気清浄機の、ごうごうと清潔な空気を射出している射出口に手を突っ込み、その手に万力のような力を込め、壁から装置を引き剥がそうとした。案の定、
(硬いなチクショォ!)
壁に埋め込まれているのは、防犯処置としてでもある。人一人頑張ったところでどうこうなるようなヤワな作りにはなってない。彼が何回も突っ込んだ手を最大出力で引いたがピクリとも動かなかった。
「クソが!」
中級悪魔の背後からの銃弾のような威力の爪での一撃を、彼はすんでのところで躱した。
否、敢えてそうした。
敢えて、ギリギリで躱した。
何故なら。
「おーら、雑魚がよ。どうだい、超純水の味は」
「? ?」
そう。彼は、自分の力では破壊出来なかった空気清浄機を、標的となる中級悪魔に壊して貰ったのだ。
溢れ、凄まじく濃いシミを木のフローリングに描いていく超純水。唖然とする中級悪魔。知能はサル以下の中級悪魔だからかは分からないが、超純水が掛かった体の部分をしげしげと見つめたり、辺りをキョロキョロしている。
「あばよ」
バチバチバチバチバチバチ!凄まじい純白の雷光が、彼の右手に巻き付けたイノセンスから奔出した。
「!!」
悪魔は急にこちらを睨むように視線を移し、がこんと音を立てて破壊された装置から鋭い爪を抜いた。
もう既に、悪魔の体は超純水が染み渡っていた。先ほどより濃い紫色になっていた悪魔は、自分の身に何が起きていたのか分かっていなかった。
体色を変えるほど濃く染みこんだ超純水。それは、軽くイノセンスのエネルギーを流せば悪魔の肉に甚大なる被害を与えるだろう。
紫色の弾丸と化し彼に飛びかかってくる悪魔に、彼は幼稚園の先生が幼児に手を添えるような優しさで手を当てた。
「───────!!!!!!!!」
中級悪魔の体、爪の先は彼の拳の巻き付けてあるイノセンスに触れた瞬間に純白の雷光に染め上がった。
悪魔は文字通り声にならない悲鳴を上げた。
そう。彼ら悪魔に、悲鳴を上げることは出来ない。悪魔に発声器官は無い。
「やっつけたか?」
黒焦げになった悪魔は、支えを失った砂細工のような動作でフローリングに潰れた。
体の各所、特に超純水がよく染みこんだ両腕や顔面は肉が焼けてかすかな硝煙が上がっていた。さらには、悪魔の本体である深紅の
珠のような 『核』が露出していた。
本来なら、肉をそいでから本体を破壊するのが普通だが、例え本体が生きていても損傷のこんなに酷い肉では動かせないだろう。
(しっかし、なんで悪魔が学校に?空気清浄機あるから入りたくても入れないだろうに)
悪魔は本来、清浄な空気に満たされた空間に立ち入る事が出来ない。空気清浄機があるだけでも悪魔に対しては十分な効果が出るはず。
「さて。保健室に入るか────────!?」
彼はにとりを抱えた左肩とは反対の右手で保健室の扉を開けようとした。
しかし、彼は自らの視界に映った光景を疑った。
「生きて────っ!!?」
筋繊維はズタズタ、視覚情報はゼロ、もう既に動ける筈が無い、紫色の悪魔が死にかけの小鳥の最期の一羽ばたきのように彼とその肩に担がれていたにとりに躍りかかり爪を向けた。
(ヤバイ、リーチは向こうの方が上、何より委員長が・・・・!)
彼は何より巻き込まれただけのにとりを庇うため、そして自らの命を守るために脳内でひたすらに対策を築いていた。
イノセンスが悪魔にヒットした時には既にこちらには風穴が開いているだろう。ましてやにとりにも被害があろうものなら、それは許された結果では無い。
必死に、必死にポケットを弄り発見したそれを、現実に降りてきた一本のクモの糸だと彼は確信した。
「クッソ!仕方ないなっ!」
彼の、新居の鍵。まだ滞在して一週間もたっていなかったが、この非常事態にわちゃわちゃ言ってる暇はない。
───────イノセンスは通電する。
「イノセンス電荷!!!!!」
彼の新居の鍵を、イノセンスを巻き付けた右手で思い切り握りしめた。
さらには、一気に振りかぶる。その露出した赤色の本体に向けて。
パッキィーン!
その一撃は、正確に核を貫いていた。今度こそ、悪魔は支えを失った砂細工のような動作でフローリングに叩き潰れた。
☆
「───────。ん・・・・?」
「おっ、目が覚めたな」
褐色の肌に、少し長めの髪。サクランボのブローチの付いた髪留めで(何で桜のを持っているのかはおいといて)留められ、ポニーテールになっていた。
男なのか女なのか、ましてやどちらでも無いのか。それは分からなかったが、制服で男子だと分かった。
そんな彼は、私の顔をちょうど覗き込むような感じで目を合わせていた。
何だか私は急に顔が熱くなった。
「ッッッ~~~~~!」
「?おっと、悪いな」
彼は、申し訳無さそうな表情で、ゆっくりと顔を遠ざけた。
私は、二秒くらい前から気になっていたことを彼に尋ねた。
「ここは?保健室?」
彼は、こちらに眠そうに視線を向けて、
「ふぁ~ぁ、ん、そうだよ」
そう答えた。まるで黒いネコのような仕草だ。ちょうど、走り回って疲れたみたいなそんな感じがする。体育は四時間目なのに。
「体調は?」
「大丈夫だよ。何時もの貧血かな?だったら良いんだけど」
「ん~~~~?あー」
またしても彼は申し訳無さそうな表情を浮かべた。何だろうか。
そして彼は何かを隠し通そうとするかのように、
「ごめん!疲れた!ひと寝入りするわ」
すぅすぅ、と寝息を立てて備え付けの布団にくるまり寝てしまった。
・・・・何かあったのかな?
彼は、情報秘匿の為に敢えて気絶させたにとりを米俵を担ぐが如く肩で担いだ。よくある、緊急時にケガ人や自力での移動が不可能な人を移動させる時に使うやり方である。
この学校の構造は、コの字形の校舎を、横に一文字に渡り廊下と通路が貫いた仕様になっている。吹き抜けになっている中央部は、池のある中庭になっている。
にとりや桜のいる教室は、この貫いた廊下の直ぐ前に直結しており、彼がいるのは正に空中に浮いた廊下の一角だった。
「掛かって・・・来なよ」
彼は静かに挑発を悪魔にした。悪魔は、禍々しく金色に光るその四つの複眼をギラつかせ、今にもこちらに飛びかかろうとしていた。まあ、当然であろう。中級の場合、唯一の武器である鋭い爪には強力な毒がある。斬りつけられようものなら、イノセンスの浄化機能が無ければ、一瞬で死んでしまうだろう。
そうこう考えているうちに、中級悪魔はこちらにジリジリにじり寄っていた。挑発した相手が待ってくれるほど悠長ではないのは分かっている。
(やっぱりここは・・・)
にじり寄って来る悪魔に対し、少しずつ遠ざかる彼。まるでしびれを切らしたように彼は教室とは反対側に飛び出した。
ダッシュ─────。逃げるが勝ちだ、と彼は考えていた。だが、瞬間的な瞬発力は人間である彼より悪魔のほうが上で、かつ、こちらは気絶させたにとりを抱えており、それが障害となり確実に距離を縮められつつあった。それでも廊下を凄まじいスピードで駆け抜けていく二つの影。
(やっべ、追いつかれ────)
ガシャラッ!
彼はすんでのところで、一階部分につながる階段の、非常扉に隣接していたロッカーを倒した。中からは、掃除用具一式(ぞうきんの入ったバケツ、箒、ブラシ、モップ)が撒き散らされた。
「!!」
悪魔は急に襲撃してきた掃除用具をよけきれず、太いモップの柄に激突した。
いくら人間を卓越した筋力や瞬発力があっても、中級悪魔にはそれに追随する頭脳が無かったのである。証拠として現に、避けられるような自分より高いところからの落下物も避けられていない。所詮中級なのだ。
授業中であり静まり返っている校舎内を、にとりを抱えたまま駆け抜けた。走りながらも、彼は考えていた。
(どうやって倒すかな・・・・)
そう。要点はそれである。彼にはイノセンス以外に得物がない。最悪、これを拳に巻きつけてあの中級悪魔を直接殴れば良いのだが、ゴリラの如きその長い腕は、こちらのリーチに入る前に文字通り鋭い一撃を食らわせているだろう。
(クソ・・・さっきのロッカーからなんかくすねてくりゃ良かったかな)
確かに、それなりにリーチのある得物があれば、かつ、通電する性質があれば、イノセンスは対悪魔兵器として機能するだろう。当然、真剣やら実銃やらは武器化出来ないが。
(通電・・・!イノセンスの通電だ!)
彼はイノセンスのエネルギーは、電気と全く同じ性質を持っている───────それを思い出した。
(バケツが必要になるな)
肩から落ちそうになったにとりを抱え直し、コの字形の校舎の貫かれた廊下部分を再ダッシュした。
(保健室!やっとついた!校舎がいちいち広すぎんだよチクショォ)
仕方なかろうて。人口400万人のうちその半数が学生であるこの都市には、何故かここしか学校が無いのだから。広くなければ2万人もの生徒を収容出来ないだろう。保健室はここ二階には一つしか無いが。
(とにかく辿り着いたぜ・・・・あった!)
対フノホコリ用・空気清浄機。この装置には、機体冷却機能用の冷却水が用意されている。この水は、超純水が使用されており、浸透圧は非常に高く悪魔に対し効果抜群だろう。当然、水だから、それなりに通電する筈である。
しかし。
(うっわマジかよおい)
何と空気清浄機は壁に埋まっていた。恐らく、破損しにくくするためであろう。超純水は、その純度の高さ故、人体にとってはたった3リットル程度で死に至る。生徒が誤って摂取して死亡事故に、何てなったら目も当てられない。かといって作動させなければフノホコリの作用で生徒が死んでしまっては本末転倒である。
だが、これでは水が出せない。やることは一つである。だが、もう少し後ろには、全速力で走ってくる中級悪魔の影が。
「やべー、仕方ねぇからぶち壊すしかねぇ・・・!」
彼は、空気清浄機の、ごうごうと清潔な空気を射出している射出口に手を突っ込み、その手に万力のような力を込め、壁から装置を引き剥がそうとした。案の定、
(硬いなチクショォ!)
壁に埋め込まれているのは、防犯処置としてでもある。人一人頑張ったところでどうこうなるようなヤワな作りにはなってない。彼が何回も突っ込んだ手を最大出力で引いたがピクリとも動かなかった。
「クソが!」
中級悪魔の背後からの銃弾のような威力の爪での一撃を、彼はすんでのところで躱した。
否、敢えてそうした。
敢えて、ギリギリで躱した。
何故なら。
「おーら、雑魚がよ。どうだい、超純水の味は」
「? ?」
そう。彼は、自分の力では破壊出来なかった空気清浄機を、標的となる中級悪魔に壊して貰ったのだ。
溢れ、凄まじく濃いシミを木のフローリングに描いていく超純水。唖然とする中級悪魔。知能はサル以下の中級悪魔だからかは分からないが、超純水が掛かった体の部分をしげしげと見つめたり、辺りをキョロキョロしている。
「あばよ」
バチバチバチバチバチバチ!凄まじい純白の雷光が、彼の右手に巻き付けたイノセンスから奔出した。
「!!」
悪魔は急にこちらを睨むように視線を移し、がこんと音を立てて破壊された装置から鋭い爪を抜いた。
もう既に、悪魔の体は超純水が染み渡っていた。先ほどより濃い紫色になっていた悪魔は、自分の身に何が起きていたのか分かっていなかった。
体色を変えるほど濃く染みこんだ超純水。それは、軽くイノセンスのエネルギーを流せば悪魔の肉に甚大なる被害を与えるだろう。
紫色の弾丸と化し彼に飛びかかってくる悪魔に、彼は幼稚園の先生が幼児に手を添えるような優しさで手を当てた。
「───────!!!!!!!!」
中級悪魔の体、爪の先は彼の拳の巻き付けてあるイノセンスに触れた瞬間に純白の雷光に染め上がった。
悪魔は文字通り声にならない悲鳴を上げた。
そう。彼ら悪魔に、悲鳴を上げることは出来ない。悪魔に発声器官は無い。
「やっつけたか?」
黒焦げになった悪魔は、支えを失った砂細工のような動作でフローリングに潰れた。
体の各所、特に超純水がよく染みこんだ両腕や顔面は肉が焼けてかすかな硝煙が上がっていた。さらには、悪魔の本体である深紅の
珠のような 『核』が露出していた。
本来なら、肉をそいでから本体を破壊するのが普通だが、例え本体が生きていても損傷のこんなに酷い肉では動かせないだろう。
(しっかし、なんで悪魔が学校に?空気清浄機あるから入りたくても入れないだろうに)
悪魔は本来、清浄な空気に満たされた空間に立ち入る事が出来ない。空気清浄機があるだけでも悪魔に対しては十分な効果が出るはず。
「さて。保健室に入るか────────!?」
彼はにとりを抱えた左肩とは反対の右手で保健室の扉を開けようとした。
しかし、彼は自らの視界に映った光景を疑った。
「生きて────っ!!?」
筋繊維はズタズタ、視覚情報はゼロ、もう既に動ける筈が無い、紫色の悪魔が死にかけの小鳥の最期の一羽ばたきのように彼とその肩に担がれていたにとりに躍りかかり爪を向けた。
(ヤバイ、リーチは向こうの方が上、何より委員長が・・・・!)
彼は何より巻き込まれただけのにとりを庇うため、そして自らの命を守るために脳内でひたすらに対策を築いていた。
イノセンスが悪魔にヒットした時には既にこちらには風穴が開いているだろう。ましてやにとりにも被害があろうものなら、それは許された結果では無い。
必死に、必死にポケットを弄り発見したそれを、現実に降りてきた一本のクモの糸だと彼は確信した。
「クッソ!仕方ないなっ!」
彼の、新居の鍵。まだ滞在して一週間もたっていなかったが、この非常事態にわちゃわちゃ言ってる暇はない。
───────イノセンスは通電する。
「イノセンス電荷!!!!!」
彼の新居の鍵を、イノセンスを巻き付けた右手で思い切り握りしめた。
さらには、一気に振りかぶる。その露出した赤色の本体に向けて。
パッキィーン!
その一撃は、正確に核を貫いていた。今度こそ、悪魔は支えを失った砂細工のような動作でフローリングに叩き潰れた。
☆
「───────。ん・・・・?」
「おっ、目が覚めたな」
褐色の肌に、少し長めの髪。サクランボのブローチの付いた髪留めで(何で桜のを持っているのかはおいといて)留められ、ポニーテールになっていた。
男なのか女なのか、ましてやどちらでも無いのか。それは分からなかったが、制服で男子だと分かった。
そんな彼は、私の顔をちょうど覗き込むような感じで目を合わせていた。
何だか私は急に顔が熱くなった。
「ッッッ~~~~~!」
「?おっと、悪いな」
彼は、申し訳無さそうな表情で、ゆっくりと顔を遠ざけた。
私は、二秒くらい前から気になっていたことを彼に尋ねた。
「ここは?保健室?」
彼は、こちらに眠そうに視線を向けて、
「ふぁ~ぁ、ん、そうだよ」
そう答えた。まるで黒いネコのような仕草だ。ちょうど、走り回って疲れたみたいなそんな感じがする。体育は四時間目なのに。
「体調は?」
「大丈夫だよ。何時もの貧血かな?だったら良いんだけど」
「ん~~~~?あー」
またしても彼は申し訳無さそうな表情を浮かべた。何だろうか。
そして彼は何かを隠し通そうとするかのように、
「ごめん!疲れた!ひと寝入りするわ」
すぅすぅ、と寝息を立てて備え付けの布団にくるまり寝てしまった。
・・・・何かあったのかな?
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