零からの逆転

Mr

出会いと別れと婆さんと

もうどれくらいの距離を歩いたのだろう、
2日ほど歩き続けたから……、全く見当もつかない、
とにかくなにかを食べたい、ふと、隣にいる妹を見る。
「お兄ちゃん…今まで…ありがとう…」
まるで死人のような目をした妹が自分に先に逝くとそう告げていた。そんな時、目の端をあるものが捉える。
民家だ、兄妹が探し求めていた民家がそこにある!
「おい百!み、民家!!家があるぞ!!」
刹那、突如目の前から妹の姿が消える、慌てて辺りを見回すと一人の影がかなりの速度で走っていることが分かる、ここから結構な距離があるがその正体が何なのかは、兄は一瞬で理解する。妹だ、異世界に来て開口一番「痛い」と、ここはどこだと聞く訳ではなく一番最初に謝って欲しいという欲求を遠回しに言っていた妹が、
全力を持ってなお、衝撃などほぼ皆無のパンチを繰り出す、そんな妹が、今、かなりの速度で走っている。
例えるなら、何ヶ月も練習してやっと自転車に乗れた時のような感動を覚える、そして…
「……お兄ちゃんを置いて行かないでェ…」
置いてきぼりにされた悲しさが兄の脳を支配した……。




「飯?ンな大層なもんはないよ」
一件の民家に入って飯を恵んでくれという前にそんなことを言われた。……まだなにも言ってないのに…
それを聞いた妹が何も言わずに倒れる、「百!?」
そんな俺たちに構わずさっきの言葉を言い放った婆さんは言う、「このご時世に飯をねだるとは、あんたさては異世界人か」あれ、この婆さんそのこと知ってんのか。
「婆さん、どうやったら飯が手に入る?」
俺は妹を背負いながら冷たい(精神的に)婆さんに訪ねる、婆さんの話によると、ここにはたまに大量の食料を見せびらかすためにサンスの人間がここら辺をうろつくらしい、そいつの言うことを聞けば少しは分けて貰えるそうだ。ということはこの婆さんはその食料で生きているのだろうか、そう思っていると、バァンッ、
とそんな近くで聞くには大きすぎる音が後に響いた。
婆さんが待ちわびたような顔をしているのを横目に、俺は後ろを見た、そこには首にヘッドホン、カラフルな帽子を被り、パーカーを羽織った少年がいた。少年の後には大量の食料がある。………………おっと、唾が…
「ヘイヘイ婆さん、今日は客がいんのか?」
少年は軽快な声と口調で後ろの婆さんに話しかける。
「突然上がってきた侵入者さね、早く飯を寄越しな」
「お兄ちゃん、ご飯…」いつの間にか起きていた百が耳元で囁く、妹は人見知りしてしまうからこの場で言うのは恥ずかしいのだろう。……仕方ないなぁ
「おい少年、お前の後にある飯少し分けてくんないか?しばらく飲まず食わずで結構辛いんだ」
俺は出来る限りの明るい声色で少年に言う
「やだね、誰がお前みたいな奴に飯を分けるか」
黙って背中にいる妹と目を合わせる、殺っちまえと目が言っていた。………怖っ、仕方ない…ここはゲームを仕掛けるしか…、重い口を開こうとすると先に少年が
「じゃ、ゲームしてよ、お前が勝ったらこの食料全部をやる、負けたらお前の後にいるやつ含め、俺の言いなりだ」と可愛げの欠片も無くそう言い放った。



5分後
「バカ乙wwwじゃあねーwww」一体どんなゲームを仕掛けられるのかとハラハラ半分、ドキドキ半分で期待していたらなんとゲームはジャンケンだった、しかも一回勝負、心理戦が大の得意な俺は余裕で勝利、
食料GETだぜッ!!と〇ケモンのサ〇シ風に心の中で言った、妹は俺が勝つことを見越していたのか表情を変えずに食料の中のひとつを貪っている。飯を勝ち取った時に飯を餌に婆さんから聞いた話だが、ここら辺のナラルの村はここ最近、貧富の差がとんでもなく激しいらしい。その事と都市への行き方を聞き、立ち去ろうとすると、婆さんは俺たちに聞いてきた
「あんた達、もしかして『コング』かい…?」
とまるで久しぶりに孫の顔でも見た祖母のような、とても優しい顔をしてそんな疑問を投げる。
「コング?それが何なのかは知らねえけど俺たちのやりたいことは単純なことだよ」
まるで主人公の決めゼリフのように、妹が続いて言う、
「この世の『常識』を壊す」
一瞬、本当に一瞬だが、婆さんの目に光が入る。
そして俺たちに背を向け、震えた声で、だがはっきりと力強い声で言う。
「がんばんな」







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はい、もう毎回当たり前のように出てくるようになった作者です、ここ最近元々好きだった作品がさらに好きになってしまって辛い作者です。
さて、今回は今までに比べ、少し平和な話だったと自分自身思っております。あ、因みに婆さんの名前はまだ決まっていません、もし良かったらどなたか付けてみてください、あ、下はダメですよ、あくまで女性ですから。
今後ゲーマー兄妹は都市に向かい、何をするのか、
書いている本人も楽しみだったりします。
今後ともゲーマー兄妹と作者をよろしくお願いします。
以上、慕ってくれていた妹がここ最近冷たくなってなにかしたかなと悩んでいる作者でした。

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