冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

魔界に乗り込みます! 3

「ちょっと! レッドさんどさくさに紛れて抱きつこうとするの辞めてもらえませんか!?」

『クソッ! お主の成長スピードが尋常じゃないから前みたいにはいかないな!』

『なんだレッド、お主そんなことをしているのか……我は闘うので精一杯なのだが?』

『何を言っておる! 我だって七割くらい本気だ! だが彼奴の逃げる速さが半端ないのだ! こうなったら……』

「あぁ!? ちょっと! 今ブラックさんと闘ってるのに横から抱きつこうなんて邪道ですよ!?」

『レッドよ! 邪魔をするのならどけ! 我は真面目にやっておるのだぞ!』

『わかった、わかったわい。我もそろそろ体が暖まってきたからのぉ。やってやるわい』

「……ハッ!」

『チッ……避けられたか……』

 ジンは、この特訓が始まってから一時間、ずっとこんな感じで動きっぱなしだった。

 お遊びも混じっていて、まぁウォーミングアップには丁度よかった。だが、次からはそうもいかない。ブラックは、本気と言いながら、まだ余力を残している。オーラを纏っていないのがいい証拠だ。
 レッドは、余裕も余裕。オーラなど使う気配を、微塵も見せておらず、今までの特訓でも、オーラを纏ったのは一、二回。そんなレッドが、今日はオーラを纏う。それに続き、ブラックもオーラを纏う。

 ブラックさんのオーラ、すげぇ綺麗な色だなぁ……黒というよりは、少し明るいなぁ。

『よしジン。ここからは我々も本気で行く。お主もオーラを纏ったらどうだ? それに、あの日言っていた「秘策」と言うのも気になるしなぁ?』

「ゲッ……まだ覚えてたんですか? ……まぁその時になったら「秘策」を使いますよ」

 そう言いながら、ジンは"赤龍の力"を発動させ、赤く燃えるオーラを纏う。

『ほぉ? レッドが言っていたのは本当だったのだなぁ……確かに、レッドに似た力を持っているな。面白い』

「ご期待に添えれば嬉しいですけど」

『あぁ、想像以上の力を感じる。これは本気で「殺しに」行っても構わんな?』

「……へ?」

『何を言っとる。我は初めからその気だが? やはり主は甘いなぁ……初めからその気で行ってると思ったぞ?』

「あれあれ?」

『そうか……悪かった。これからは気をつける』

「いやいや……」

『『でわいくぞ!』』

「まずい……!!」

 その掛け声と共に、二人は突進してくる。ブラックはレッドの後ろに付き、一列になっている。

 ジンは、どう攻撃されるかわからず、その突進と同じ速度で後ろへ回避していく。

 だが、本気のレッドのスピードには勝てず、追いつかれ、攻撃を仕掛けられる。

 左右上下から繰り出されるその殴打は、対処だけで精一杯だ。そのせいで、ブラックに意識が集中できず、後ろに回り込まれて蹴られる。

 前方に転がり、そのまま少し距離を取るが、一瞬にしてレッドに間合いを詰められる。

 なんとか攻撃をしたいジンは、先程のレッドにやられたように、左右上下から殴打を繰り出す。だが……

『ほほぉ? 我の真似をするか……舐めてるのか?』

 その呟きは、背後から聞こえてくる。今殴っていたのは残像、その声に反応して後ろに蹴りを入れるが、それも残像、すると、横からレッドに蹴り飛ばされ、ジンは吹っ飛んでいく。

「クッ……まずい、この先には!」

『そう。その先には我がおるぞ?』

 ジンが飛ばされた先には、ブラックが握り拳を作って構えていた。ジンは、なんとか体勢を立て直したいが、上手く直せない。そのまま、ジンはブラックの強烈な一撃をモロに顔面に食らう。

 更に勢いを増して、ジンは壁に衝突する。

「いってぇ……これは出し惜しみしてられねぇなぁ?」

『おぉ? 遂に秘策の登場か?』

「仕方ないですねぇ……因みに言っときますけど、この力、一日一回が限度ですし、制限時間付きです。それに、これ使った後はもう歩くことしか出来ないくらいに披露しますので、そこはわかってくださいね?」

『わかった。お主も良いな? ブラック。この力は我も見るのは初めてだ。何が起こるかわからん。心して構えておれ』

『わかった。さぁジン、その力を見せてくれ?』

「わかりました」

 そして、ジンは"龍人化"を発動し、全身に力を込める。前回同様、痛みが全身に走るが、それを悟られないように、平気なフリをする。

『…………なっ!? お主、そ、その赤い鱗の様なものは……!!』

「そうです。あの日、レッドさんにたっぷりとキスをされたあの日から、僕はどうやらこの力に目覚めたようです。さぁ、ここからは僕も殺す気行きます! 本当に死なないでくださいよ!?」

 そう言い、全身に赤い鱗を纏った姿になったジンは、目付きを変えて、ブラックとレッドの方を睨む。

 その眼光に、二人は悪寒がし、すぐさま臨戦態勢になる。それに気づいた時、二人は同じことを思い、同じタイミングでポツリと呟く。

『『本気で殺される思った……』』

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