冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

それは突然の出来事で 11

 レネードを倒したジンは、レベッカ達の方を向く。

 レベッカとマーシュは、女の魔王幹部と距離を取っており、なにやら女の魔王幹部は俯いている。

 ダネットは、雑魚をバッタバッタとなぎ倒しており、アイテムとお金がそこら中に散らばっていた。

「うわ〜! ダネットさんめっちゃ速い。それでいて軽やかだ……疾風迅雷の名前は伊達じゃないなぁ……」

 『ダネットさんは大丈夫そうだけど……レベッカさんとマーシュさんは大丈夫かなぁ……』

 そう思った瞬間だった。

 突然、ジンは全身から汗を吹き出す。

「な、なんだこの悍ましい感じは……」

 その原因を探るべく、周りを見回す。そしてその原因に気がつく。
 それはメルノドだった。

「あの女の魔王幹部、何かやばいぞ……嫌な予感しかしない……」

 その予感が外れればいいが……、と思ったが、その予感は見事に的中してしまう。

 ジンは、レベッカとマーシュが心配で眺めていると、突然レベッカの姿が無くなる。

 ジンは「……は?」と声を漏らし、どこに行ったのかとレベッカを探す。

 だが、地上には居らず、ジンは困惑する。
 すると、次は突然レベッカが、地面に埋もれる。

 ジンは「何が起きているんだ……?」と、ひたすらに考える。

 レベッカ達の方を眺めていると、地面に埋もれているレベッカの元に、突然とメルノドが姿を現した。

「あの女の魔王幹部……何が起きて……!?」

 ジンは、何故急に女の魔王幹部が現れたのか考えていると、その女の魔王幹部がとった行動に、すぐさま地面を蹴り、レベッカ達の元へ向かう。
 それは、メルノドが、地面に埋もれているレベッカに爪を立てて、殺そうと腕をゆっくりと振り上げたからだ。

『あの女の魔王幹部まじでやばい! 間に合え……』

 ジンは、全力疾走をしてレベッカの元へ向かう。

 あと数メートルとなった所で、メルノドの腕は、限界まで上がっていた。

 ジンは、「間に合えぇぇぇ!!」と叫びながら、レベッカとメルノドの爪の間へ剣を持った腕を、限界まで伸ばす。

 そして、メルノドの腕は超速で、レベッカの腹を目掛けて振り下ろされる。



 その場に数秒沈黙が訪れた後



 パキッ



 剣が壊れる音が鳴る。



 メルノドの振り下ろした手は、ジンが伸ばした剣に刺さっていた。

 ジンは、間に合った。と思い安堵する。

 だが、レベッカは血を口から吹き出し、腹から血が溢れだしていた。

 ジンは、一瞬思考が停止する。
 ジンの剣は確かに間に合った。だが、その剣を貫通して、メルノドの爪はレベッカの腹に刺さっていたのだ。

 ジンの顔色は一瞬にして青ざめる。そしてすぐさまマーシュに叫び散らす。

「マーシュさん回復魔法をかけて!!! 早くっ!!!!」

 動けないでいたマーシュは、ジンの叫びを聞き『動かなきゃっ!』と右足を出そうとする。

 『や、やっぱり動けない……このままだとレベッカさんが……! 身体の震えも止まらない……』

 ジンは、爪を引っこ抜いたまま、ボーッとしていたメルノドを蹴り飛ばし、レベッカから離れさせる。

 まだ動いていないマーシュを見て、ジンは、マーシュがビビっているのだと確信する。

 その後、直ぐに動けないでいるマーシュに近寄り、肩をつかむ。

「マーシュさん! 何をそんなにビビってるんです! 貴方がそんな事で誰が瀕死状態のレベッカさんを治すんですか!? 貴方でしょ!? レベッカさんを治すことは貴方にしか出来ない! しっかりしてください!」

「で、でもぉ……」

 すると、ジンはマーシュにビンタをする。

「貴方は……マーシュさんはまた目の前の人を死なせるんですか!? あの時学んだんではないんですか!?」

 頬に感じる痛みと、ジンの叫びによって、身体の震えが止まる。

「今もこうしてるうちにレベッカさんの体力が下がり続けてます! 今は何も考えずただ治療に専念してください!」

 マーシュは力強く頷き、今まで動かなかった足を、頑張って前に出す。

 レベッカの前まで行くと、レベッカは顔色がとても悪く、腹からは血が止まらず流れ出ており、口からも大量の血を吐いている。

 マーシュはそれを見て、心の中で『ごめんなさい……何も出来ずごめんなさい……』とひたすら謝りながら、回復魔法をかける。

 ジンはメルノドを見張りつつ、レベッカの様子も確認していた。

 レベッカの傷口が、みるみると塞がれていき、顔色が良くなっていく。

 完全に治癒が完了すると、マーシュは杖を落し、しゃがみ込んで大声で泣き出した。

「ごめんなさい……私はまた同じ事をする所でした……覚悟はできてた。でもあの恐ろしい魔王幹部を前にして、何も動けなかった。レベッカがやられるのをただ見てただけだった……ごめんなさい……」

「マーシュさん。貴方は一人じゃない。僕がいます。レベッカさんがいます。だから何も怖がらなくていいんです。頼ってください。僕が、レベッカさんが、全力で守りますから」

 ジンは優しくマーシュへ語りかけ、その言葉に、マーシュは頷きながら大声で泣き続けた。

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