冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

もう守られるだけの僕じゃない 5

「それでバカ女神様、お話なんですけど……」

『だからバカ女神は駄目って言ったでしょ!? 何? そんなに死にたいの? 女神の力甘く見てるでしょ? やるよ? やっちゃうよ?』

「はいはい。わかりましたよ。それで、次にどこへ向かえば良いのかを聞きたいんですけど、わかりますか? バカ女神様?」

『だーかーらー! しつこいわね!! ピザ頭に被せるわよ!? 絶対教えない。ジン死ね!』

 わわ……女神様怒ってるよ……ここは褒めて調子にのらせるか……

『聞こえてるんだからね!? 褒めたって無駄ですぅー。絶対に教えませんー』

「可愛い女神様。親愛なる女神様よ……僕は貴方に助けられました……僕は貴方のために頑張りたい。でも次にどこへ向かえば良いのかわからないのです……おぉどうか女神様よぉ! 愛しき女神様よ! 迷える子羊に道をお教えを……」

『そ、そこまで褒めなくてもいいのよ〜! わかってるわ! 今回は仕方なく教えてあげるわ! 仕方なくね!』

「ちょろ……」

『なんか言った?』

「女神様可愛いですよーって言いました」

『んもぉ〜! 教えちゃう!』

 この時、レベッカとマーシュは目撃した。必死に笑いを堪えるジンの姿を……

『そうねぇ……魔王軍らしき輩は見つからないわ。だから焦る必要は無いはずよ……多分今回の一件で魔王は少しダメージを負ったはずよ。なにせ二人も強力な魔王幹部を失ったのですから』

「それはそうですが…… もしかしたら怒って魔王幹部を投入してくるんじゃ……」

『それは……くちゃ……多分……くちゃ……無いわ』

「何を食べて……まさかピザですか!? ピザ食いながら喋ってるんですか!?」

『そ、そんなわけ……くちゃ……ないじゃない……ごくん』

「あぁ! 今飲み込みましたね!? ピザ食いながら喋る女神がどこにいるんですか!?」

『ここにいるじゃない! ……あっ』

「やっぱり食べてたんですね! 次会った時女神様の可愛い顔がぷっくりしてたら僕嫌ですよ……」

『からかってるの!?』

「え……? いや、本心ですけど」

『……』

「あれ? 女神様〜? 返事してくださ〜い。……ピザでも喉に詰まらせたか?」

「「ジン。貴方って人は……」」

 レベッカとマーシュは、額に手を当てながら溜息をつく。

「なんで二人そろって溜息なんかしてるんですか?」

 するとレベッカとマーシュはヒソヒソ話を始め出す。

「あいつ多分気づいてないわ……可愛いと言われて嬉しくない女なんかいないのに……鈍感にも程があるわ……」

「本当ですぅ〜。多分あいつはレベッカが隣で寝ている意味がわかって……って痛い! 殴らないで!」

「貴方が変なこと言うからでしょ!? 貴方だってさっきのは、本当は見てもらいたくてあんな格好してたんでしょ!?」

「ち、ちちちがいますよ! そんなわけ、ななな、ないじゃない!」

「あのぉ……ヒソヒソ話がいつの間にか喧嘩口調で言い合いになってるのは何故ですか……?」

「「お前は黙ってろ! この鈍感頭!」」

「ど、鈍感頭!? どういう事だ……?」

 レベッカとマーシュは殴り合いを始め、女神は黙りこんだままなにも喋らず、ジンは何が起きてるのか頭を傾げる。

 それから数分が経ち、女神が『と、とりあえず今は大丈夫よ! 動きがあったらこちらから教えるから! じゃ、じゃあね!』と言って会話は終了した。

 レベッカとマーシュは、まだ殴り合いを続けていて、そこにジンが仲裁にはいると「「お前は邪魔だァ!」」と言われ二人のグーパンチが顔面に飛んできた。

 ジンは殴られた後、勢いよく部屋から追い出される。

「追い出さないでよ……そこ、僕の部屋なんだけど……」

 装備一色は部屋に置きっぱなしだったが、運良くお金が入った袋はズボンのポケットの中にあったので、散歩に行く事にした。

「そう言えばここに来てまだしっかり町を見てないからな〜。何か美味しいものでも探そう!」

 口笛を吹きながら宿をでると、外は多くの人で賑わっていた。

 人口の大半は人族だが、時々他の種族の者も見える。中でもよく目にしたのが、柔らかそうな毛並みの尻尾と耳をもった獣人族もとい、ウルフだった。

 殆どのウルフは、狼の様な耳と尻尾を持っている。運動神経が抜群に優れており、それに加え嗅覚もスバ抜けて優れている。例外も稀にいるが、それは本当に稀にだ。

「あのふさふさそうな耳と尻尾……触ってみたい……」

 そう思いながら歩いていると、とある女性に声をかけられる。

「あら? 貴方もしかして……この町を救ったとか言ってた人族の方ではなくて?」

「え? あ、はいそうですけど……」

 そう言うとなぜか目の前にまで迫ってきて、じーっとジンの目を見つめる

「ならば歓迎しなければなりませんね!」

「……へっ?」

 その唐突な言葉に、気の抜けた声を漏らす。

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