冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

僕が守らなきゃだめなんだ 6

「テメェェェエ!」

 ムルドに飛びかかろうとするジンを、へレーナとレベッカとマーシュで抑え込む。

「ダメよジン! まだ相手が何をするか分からないのよ!? 無闇矢鱈に動いて死んだらしょうがないでしょう!?」

「でもネインが殺されたんですよ!? 黙って見過ごせる訳がないでしょう!?」

「バカっ! 貴方が死んだらもっと悲しむ人だっているの! そんなんじゃネインも報われないわ!」

「でもっ!」

「このわからずや!」

 レベッカが説得する中、全く聞こうとしないジンに、レベッカはジンにビンタをする。

「貴方にここで死なれたら困るわ! 誰が私たちを守 るの!? 誰がランとダイコを救うの!? 誰が殺されたネインのために闘うの!? ジンでしょ!? 私達でしょ!?」

「…………」

 そう言われ、ジンは冷静さを取り戻す。

「すいません……」

「御涙頂戴ごっこは終わりましたか? あぁ、それと今回試験的にやれと魔王様に頼まれたことがありましてね?」

「試験的に……だと?」

「えぇ。なのでこの二人を使わせてもらいます。では黒玉を呑み込ませてっと……」

「こ、この光景は!?」

 ジンはいつか見た夢を思い出す。それと似た状況が今目の前で起こっており、ジンは阻止しようと暴れ回る。

『ジン! あの黒玉は絶対に呑み込ませてはなりません! あれを取り込んでしまったら最後、魔族の力を手に入れてしまうことになります! なんとか阻止してください!』

「どうしたのジン!? あの黒玉がそんなにやばいの!?」

「あれは呑ませてはダメなんだ!」

「もう遅いですよ。楽しみですねぇ……」

「やめろぉぉぉぉおお!」

 気絶しているランとダイコに、黒玉を無理やり呑み込ませる。すると、突然ランとダイコが苦しみだす。

「「うがぁぁぁあ!」」

「ラン、ダイコさん!」

「これは……オカマの方は失敗か……このハーフエルフは……素晴らしい、成功だ!」

 ダイコは悶え続けながら、体中を掻きむしり、そのせいで体中から大量の血が溢れ出す。

「ダイコさんしっかりしてください!」

「アァァァア」

「ダイコさん……?」

 体中から血を流しながら、白目を向き立ち上がるダイコ。そんなダイコに、自意識など無い。

『遅かった……ああなってはもうどうすることもできません……殺すしか方法は……』

「そんな……」

 レベッカとマーシュとへレーナは、その事を全く知らず、ダイコをただ見つめている。

 ダイコは、立ち上がってからは、下を向いたまま何も動かない。

 一方、ランの方は違った。ランからはドス黒いオーラが全身から溢れだし、体が黒色へと染まっていく。

「このハーフエルフは素晴らしいぞ!! これなら魔
王様も喜んでくれるはず!」

 ムルドは両手を広げながら歓喜の叫びを挙げている。

「ランは大丈夫なんですか!?」

『あれは……意識はある。でも多分、ジン達の事は覚えていない。完全に魔王に洗脳された状態になる……つまり敵になるって事ね……』

「そんな……」

 そして、ランも立ち上がる。そして顔を上げる。そしてジン達を見回し、くるりと回ってから、ムルドの元へ行く。

 レベッカとマーシュはただ黙り、へレーナはジンへある事を問う。

「ジン、今の彼女の口元見えた?」

「……えぇ。見えました。まだ救いはあります」

 二人はランが振り向く時に確かに見た。口パクで「助けて。お願い」と言ったことを。

 ランにはまだ自我があると知り、それを心の中で呟き女神に教える。すると女神は驚く。

『そんな事があるなんて……ならまだ希望はあるは……でもその前に……』

 ダイコを何とかしなければならない。それはジンとマーシュとレベッカには到底出来ないものだ。

「ダイコさん……」

 まだ下を向いているダイコを見て、ジンは心の中で謝る。ただ謝り、心を決める。

「ジン、ダイコを何とか……」

「ごめんなさい。レベッカさん、マーシュさん」

「「えっ?」」

 ジンはそう言い、ダイコの元へ一瞬で行き、ダイコを剣で切り裂く。倒れる瞬間、ダイコが本当にギリギリ聞き取れる声で「ありがとう」と呟く。その言葉に、ジンは涙する。

 それを見ていたレベッカとマーシュは、その場に膝をつき、戦意喪失する。

「ほお……貴方は冷静ですね……それは最善の手段でしたよ?」

「だまれムルド。俺はお前を許さない」

「貴方には私は倒せませんよ?」

「僕は、三人を守れなかった。それで僕が死んでしまったら多分、死んだ二人とランは僕を呪うだろう。だから決めたんだ。もう誰も、死なせない。これからは、僕が皆を守り抜くと」

「まぁなんとでも言っていてください……どうせ死ぬのですからね?」

「へレーナさん。レベッカさんとマーシュさんは今は多分闘えません。だから僕達で二人を守りながら数を減らしていきます。そして最後の一人までムルドを残し、二人でムルドをぶっ殺しましょう」

「わかったわ」

「さぁ、我が下僕たち! 彼らを殺しなさい!」

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